ロクでなし魔術講師と最後の精霊   作:空白部屋

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6000文字突破。
すごーく久し振りに評価見たら☆9評価あったり、いくつかしおりあったりして嬉しかったです。
感想は返せる時もあれば、返せないときもあるかもです。


小さな意地

 

 

 

 あれからグレン先生は態度を改め、真面目に授業を取り組むことはなかった。

 生徒だけでなく教師からの評判も最悪だ。

 更にはグレン先生が女子更衣室を覗いたとか食堂でシスティーナとチャンバラみたいなことやってたとか色々噂されている。まぁ全部事実だけど。

 

 

 ---------そして十日後、遂にこの時がきた。

 

 

 パシンッ、と乾いた音が教室内に響く。

 

 

「いっ……てめっ!?」

 

 

 システィーナに頬をひっぱたかれたグレン先生は非難めいた目で見て、言葉を発する事ができなかった。

 

 

「違う……もの……魔術は……そんなんじゃ……ない……もの……」

 

 

 システィーナの目尻に涙が浮かぶ。

 彼女は泣いていた。

 大好きな魔術を人殺しの道具と侮辱され、あまつさえその表現が間違っていないものだったからだ。

 二百年前の『魔導大戦』、四十年前の『奉神戦争』に、天の知慧研究会などの外道魔術師の組織によって起きた犯罪……そのどれもが魔術が主体となって起きている。

 グレン先生の言うことはやや極論ではあるものの、決して否定することのできない事実だ。

 だからこそ、システィーナは何も言い返すことができなかったのだ。

 その様子は、子供に大人が正論ぶつけて泣かせたという表現がぴったりであり、少々大人げないと感じた。

 

 

「なんで……そんなに……酷いことばっかり言うの…? 大嫌い、貴方なんか」

 

 

 そう言い捨てて、システィーナは涙を袖で(ぬぐ)いながら荒々しく教室を出て行った。

 敢えて空気を読まずに言おう……教室の扉、かなりダメージ入ったぞ…。

 

 

「-------ち」

 

 

 当事者であるグレン先生は険しい表情のまま舌打ちした。

 

 

「あー、なんかやる気でねーから、本日の授業は自習にするわ」

 

 

 それだけ言うと、最悪の居心地となった教室からグレン先生は出ていった。

 自習か……やったぜ。これで未完成の手袋を作れる---------なんて思うほど、俺も薄情ではない。

 

 

「はぁ……この静寂が(つら)い」

 

 

 小声で独り言を呟きながら机に突っ伏する。

 出ていくならせめてこの重苦しい空気をどうにかしてから行って欲しかったと、無茶な要求を心の中で言う。

 おかげで教室内の雰囲気は第三者である俺らにとっても最悪なものとなっている。

 誰も喋ろうとしないから気まずいです。

 

 

「ねぇ、シラヌイ君」

「ん、なんだ…? ルミア」

 

 

 先程からずっと黙っていたルミアが、(うつむ)いたまま元気のない声音で俺を呼んだ。

 

 

「システィ……辛そうな顔して泣いてた」

「…………それは……まぁ…見りゃ、誰でもわかる」

「……システィを、追いかけてくれないかな…?」

 

 

 ルミアの提案に、俺は思わず眉間にしわを寄せた。

 

 

「……俺がシスティーナを慰めてこいってか…?」

「……うん、その方が一番いいと思ったから…」

「無理だと思うぞ。グレン先生の言ってた事はやや極論だが、紛れもない事実だ。それはあいつも分かってるはず。下手な言葉をかければ余計にあいつを傷付けるはめになるぞ…?」

 

 

 システィーナは賢い。だからこそ、俺が気づかないまま彼女の心を傷付ける可能性がある。それだけは、なんとしてでも避けなければならない。

 

 

「それでも、どうしても必要だと思うから…」

「……システィーナは、強い。これくらいで心が折れたりしない」

「それでも、心に負担がかかるよね? お願い、シラヌイ君……システィから逃げないであげて…」

 

 

 ルミアの言葉が少しだけ心に突き刺さる。

 

 

(逃げないであげて……か)

 

 

 ……確かに、あの時から俺はシスティーナから距離を取った。個人的な理由で、誰にもその理由を話さないまま。

 それは、逃げているのだろうか。よく、わからない。

 でも、今はそんな事どうでもいい。

 第三者から逃げていると言われれば、俺はきっと彼女から逃げているのだろう。

 

 

(……あまり気は進まないが、行ってくるか…)

 

 

 やっと決心できたので俺は自分の席を立つ。

 

 

「ルミア、ちょっとシスティーナの所に行ってくる」

「うん……気を付けてね…」

 

 

 ちょっと待って下さいルミアさん。気を付けてってどういう意味ですか? せっかく決心したのに俺の意志が揺らいでるんですけど。揺らぎまくってマグニチュード8.0くらいの大地震起こしてるんですけど! 

 これって下手な慰めしたらシスティーナの心を傷付けるんじゃなくて彼女が怒って俺が一発殴られるという意味がこもってるんですか?

 ボク、なんだかすごく行きたくなくなってきたんですが。大丈夫かな? 大丈夫じゃなさそうだなぁ…

 

 

 そんな下らないことを考えながら、俺は彼女に一発殴られる覚悟を密かに決めると、静かに教室から出ていった。

 

 

 

 ----------ちなみに学院中を探し回ったが、結局システィーナを見つける事ができなかった。

 あいつ、絶対屋敷に帰ったな……くっ! 不良女子め!

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

 その日の放課後、俺はグレン先生を探しに屋上へと向かった。

 確か原作では、夕日を見ながら屋上で黄昏(たそがれ)ているからだ……と思う。

 ヤバい、転生したのが十年以上前だから細かい所まではおぼえてない。

 ……後で部屋に隠してある原作知識を書きまくったノートの内容を確認しておかないと。

 いなかったらどうしようかと、俺は不安になりながら階段を上る。

 

 

「ああ、良かった。やっぱここにいたんすね、グレン先生」

 

 

 屋上に出れば、予想通りグレン先生が鉄製の柵に背中を預けて黄昏ていた。

 彼はこちらに視線を向けると怪訝そうな顔をした。

 

 

「ん? なんだ、シラヌイか……ってかなんでここに?」

「そりゃ、先生を探してたんですよ。先生の性格から推測してどうせ屋上で黄昏てるんだろうなって思って来てみれば見事にビンゴでしたよ」

「うっせ、冷やかしならとっとと帰れ」

 

 

 グレン先生は嫌そうな顔をするとシッシッと追い払うように手を振った。

 

 

「システィーナの件で一言だけ言いに来たんですよ」

 

 

 そう言うとグレン先生の表情が険しくなった。

 その表情には後悔や悲愴感のようなものが滲んでいる。

 

 

「あー、なんだ……やっぱお前も俺のこと恨んでるのか?」

 

 

 ふっ、と自虐的な笑みを浮かべるグレン先生。

 それに対して俺はごく真面目に答えた。

 

 

「いえ、別に一ミリも恨んでないっすよ。ちょっと黒魔改【イクスティンクション・レイ】で根源素(オリジン)まで分解してやろうかと悩んだくらいなんで」

「いや滅茶苦茶恨んでるじゃねぇか--------ッ!? むしろ憎悪抱いてんだろ!?」

「あはは、そんなまさか~」

 

 

 戦々恐々とするグレン先生には、やっぱりシリアスは似合わないと思う。

 いや、そりゃシリアスも似合う部分があるけど、やっぱ基本的にどうも締まらないのがこの人物な訳でして。

 まともに喋ったのが今日初めてだが、気楽に話せるのは好感が持てる。

 うん、やっぱりグレン先生はまじグレン先生だわ(意味不明)

 

 

 

「--------彼女の事をあまり悪く言わないでやってくれないか? 少し真面目すぎる所もあるけど、あの子はあの子なりに色々と頑張ってるんで」

「……あん時は-------あぁ…いや、悪かったな。俺もちょっと頭に血がのぼってた」

 

 

 何か言いかけたグレン先生だったが、すぐに何かを思い直したのか、言葉を濁すと素直に謝った。

 

 

「おや、意外っすね。もう少しひねくれてると思ってたんだけど…」

「バカ言え、俺だってもうガキじゃねーよ。理性と感情くらいきっちり分けられるさ」

 

 

 キラッと少し歯を見せて笑うグレン先生。

 この人は一々カッコつけないと生きていけないのだろうか? それはそれでなんとも悲しい性格だと憐れんでしまいそうだ。

 見ていてなんとなく腹立ったので、少しだけイタズラでもしてみようかな。

 

 

「すぐにお金をギャンブルで全部パーにして貧困する人が言いますかそれ…?」

「-----お、おまッ! なんで知ってんの-------ッ!?」

 

 

 グレン先生の顔が面白いくらいに真っ青になった。

 

 

「適当に言っただけなのに……本当だったんすね」

 

 

 何故知っているのかと理由を聞かれるのは好ましくないので、かまをかけたという形で話を進める。

 グレン先生はそんな事を気にする余裕もないのか、あたふたと慌てている。

 原作ではいつもの出来事でしかないが、そこまで慌てる理由が気になったので、俺は頭の中でいくつか有り得そうな理由を候補に挙げていく。

 ………あ、多分これアルフォネア教授が知らないんじゃないか? しかも小声だけど「や、やべぇ……セリカにバレたら……」なんて不穏な台詞が聞こえてくる。

 これは……知らないでいた方が良かったな。

 ちょっとだけばつが悪い。

 

 

「えー、あー、その、ですね……なんというか、御愁傷様っす」

 

 

 取り敢えずそのギャンブル癖を直した方がいいっすよ、と心の中で告げておく。

 すると今まで動揺していたグレン先生の動きが、ピタリと止まる。それはまるで、体に電撃(という名の閃き)がはしったかのように映った。某小学生探偵みたい。

 そしてカッと目を見開けると、いかにも三下が浮かべそうな悪い笑みで断言した。

 

 

「そうだっ! 金が僅かしかないならギャンブルで稼げばいいじゃないか☆」

「SI☆RA☆NU☆I パンチ--------ッ!!」

 

 

 少しでも同情した俺がバカだった。

 アホすぎる発想(思考停止)に、俺は思わずグレンの顎にアッパーをかました。

 普段の俺の基礎体力はゴミ以下だが、今はバレないように霊力で無理やり身体強化したので効果は抜群だ!

 

 

「ごぶげらぁッ!?」

 

 

 見事にアッパーをくらったグレン先生が、体を宙に浮かせてこれまた見事に頭から地面に落ちた。

 ゴツンという鈍い音が聞こえてくる。ふっ、いい音がなったぜ。

 しかし、相手はゴキブリ並の生命力と言われているグレン先生だ。普通の人ならともかく、この人に限ってはやり過ぎという事はないだろう。むしろ今の一撃でギャンブル癖を直してほしいものである。

 

 

「さてと、やることやったし帰るか」

 

 

 ゴミ掃除は終わった、とばかりに手をパンパンと払って俺は階段へと向かう。

 

 

「ちょ---------っと待ったああぁぁッ!」

 

 

 後ろからグレン先生の声が聞こえた。ちっ、もう生き返ったか。

 めんどくさいという感情をこれでもかというほど表情に出しながら振り向く。

 

 

「うわ、もう復活したのか」

 

 

 服が少し汚れているが、アッパーをくらった顎には傷一つない。

 ……手加減したとはいえまさかのノーダメージかよ。

 

 

「誰が生命力ゴキブリ並だ! ゴキブリに失礼だろぉ!?」

「何もそこまで言ってねーよッ!? つか、性格にみあわず自己評価低ッ!?」

 

 

 ついツッコミを入れてしまった。これは仕方ないと思う。

 

 

「うるせ! これでも俺は立派な非常勤講師様だぞ。生徒のお前にやられっぱなしっつーのは我慢できねぇ! くらえっ! 魔法の鉄拳、マジカル☆パァアアアアンチッ!!」

 

 

 そう言いながらグレン先生は俺の顎に向かって蹴りを放った。

 ---------が、俺は咄嗟(とっさ)に体を後ろに傾けることによってギリギリ回避することができた。

 こういう技は是非ともテロリストにやってもらいたいものだ。

 

 

「うぉあっ!? っぶねぇ!! てめこのヒキニート! いきなりなにしやがんだ!?」

 

 

 いつもとは違う、乱暴な口調で怒鳴る。

 それに対しグレン先生はふっ、と鼻で笑うと滅茶苦茶うざいドヤ顔で言った。

 

 

「残念でした~! ボク、今は立派な非常勤講師ですぅ!」

「左手に辞表握り締めた奴が言うなッ!」

 

 

 いつ書いたのかは知らないが、グレン先生の右手には辞表が握られている。

 今回のことで教師を辞めようとでも考えていたのだろう。だがそうはさせんッ!

 

 

「もし辞表出して講師やめたらアルフォネア教授にある事ない事吹き込んでやる!」

「ってめ!? なんてことを!」

 

 

 グレン先生が狼狽(ろうばい)する様子を見て、俺は先ほど彼がやった様にふっ、と鼻で笑うとドヤ顔で告げる。

 

 

「辞めたかったら辞めてもいいんだぜ? グレン先生。でも、その後はアルフォネア教授が一体どんな形相でお前を待っているだろうなぁ?」

「あ、悪魔かお前は!?」

 

 

 ブルブルと恐怖で震えるグレン。そして小悪党みたいにクククと俺。完全に脅迫現場である。

 

 

「ま、それが嫌なら講師を続けることだな」

 

 

 そうじゃなきゃストーリー進まないんで。

 仮に進んだとしてもいつか来るテロリストに対処できないし、色々と面倒が起こるのでそれらはグレン先生に丸投げしたい。

 

 

「お前…」

 

 

 何か察したように、グレン先生が呟く。気を遣われたと思っているのかもしれない。

 がしかし、このまま終わるのはなんだが負けたような気分になるので---------

 

 

「いい歳こいて大人げなく子供を泣かした罰だとでも思え! ふはははははははッ!!」

「俺の感動を返せ!」

 

 

 まるで悪役令嬢が笑う時のようなポーズをとり、高笑いした。

 もうなんというか、台無しであった。

 

 

「--------あ、それから西館の魔術実験室に誰か無断で入ってったの見たから先生としてちゃんと指導よろしく。もしサボったら明日くらいから教師全員にグレン先生に対して良くない噂が流れるかもしれないんで」

「うぉいっ! さらっと面倒事を押し付けてんじゃねぇ!?」

 

 

 ついでと言わんばかりにルミアとのイベントをこなせるように誘導しつつ、その上でもしもの時がないように脅しておく。

 脅すのは好きではないが、これも未来への先行投資ということで。

 我ながらちゃっかりしてると思う。

 

 

「そんじゃっ、俺はこれから用事があるんで! せいぜい道端で物ごいしないように頑張ることだな! バーカ! バーカ! ふははははははは----------------ッ!」

 

 

 悪の三下みたいに捨て台詞のような事を言いながら、俺は屋上から走り去る。

 自分でも不器用だと分かってはいるが、これは思っているより重症かもしれないと、今日改めて再認識した。

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

 シラヌイが去った後、グレンはなんとも言えない雰囲気の中ため息を吐いて後頭部を両手で掻きむしった。

 

 

「あー、ったく、面倒事押し付けやがって…」

 

 

 そう口にはするものの、グレンはシラヌイに少しばかり感謝していた。

 かなり……いや、もう壊滅的なまでに不器用ではあったが、いくつもの修羅場を潜り抜けたグレンにとって、彼が気を遣って励ましてくれた事は少しだけ伝わった。

 

 

「そういや、西館の実験室に誰かいるんだっけか…」

 

 

 つい反射的に文句を言ったが、これからも教師を続けていくならば、勝手に魔術実験室を使う生徒に注意しておかなければならないだろう。

 それが教師としての仕事の一つであり、やらなきゃシラヌイによって変な噂が流れかねない。

 少々面倒と感じつつも、これらの理由から致し方なく西館の実験室に向かおうと、グレンが屋上にある鉄柵から離れたその時だ。

 

 

「ん?」

 

 

 この魔術学院校舎は本館の東西に東館と西館が、屈折して隣接する構造を取っている。今、東館の屋上にいるグレンは、西館が正面に見下ろせる。

 そしてその西館のとある窓のそばで、影が動いたような気がした。

 

 

「なんだ…?」

 

 

 シラヌイもそうだが、普通はこんな時間まで生徒が残ったりはしない。それも西館の魔術実験室なら尚更だ。

 もしかしたらシラヌイが言っていた生徒なのかもしれない。

 

 

「《彼方(かなた)此方(こなた)へ・怜悧(れいり)なる我が(まなこ)は・万里を見晴るかす》」

 

 

 グレンは右目を閉じて三節で遠見の魔術------黒魔【アキュレイト・スコープ】の呪文を唱えた。その瞬間、まるで窓のすぐそばから実験室の中を覗き見ているような光景が(まぶた)の裏に広がる。

 

 

「あの金髪娘は……」

 

 

 実験室の中にいたのは見覚えのある生徒だった。

 (くだん)の銀髪少女ことシスティーナに、子犬のようについて回るあの少女だ。

 たしか……ルミア、とシラヌイに呼ばれていた。

 

 

「何やってんだ? こんな時間に」

 

 

 ルミアは教科書を開き、それを見ながら色々な事をしている。その様子をなんとなく観察(※ただの覗きです)を続けていると、なんの実験をしているのか分かった。

 

 

「ほう? 流転の五芒……あれは……懐かしいな。魔力円環陣か」

 

 

 この法陣は特に何か起こるものではない。法陣上を流れる魔力の流れを視覚的に理解するための、言わば学習用の魔術だ。これを何も見ずに構築できるようになれば、法陣構築術の基礎を押さえたことになるが------

 

 

「しっかし、下手くそだな……」

 

 

 率直な感想を述べる。メンタルの弱い生徒なら傷つくこと間違いなし。

 

 

「ほら、第七霊点が綻んでるぞ? あーあ、水銀が流れちまってる……って、おい、触媒の配置場所はそこじゃねー……お、流石に気付いたか」

 

 

 しかもやれやれ、といった感じで(物理的にも)上から指摘してくる始末。

 間違いを指摘するのは良いことだが、それはルミアには届かないし、なにせ覗きながらではなんとも言えない。

 

 

「ばーか、そんなんで上手くいくかよ…」

 

 

 どこか懐かしむように呟くグレン。

 しかし、覗きをしながら言っているため何も知らない第三者から見ればただの変人である(非情な現実)。

 

 

「……アホくさ」

 

 

 ルミアは何度も教科書と床の法陣を見比べて確認し、ちょこっと法陣の端を手直ししては呪文を唱えて失敗する。

 何度繰り返し(おこな)っても結果は同じ。

 ルミアは何故上手くいかないのかと考えながらも肩を落とした。

 

 

「しゃーねぇ、ちょっと手伝ってくるか…」

 

 

 見ていられなくなったグレンは、遠見の魔術を解除して屋上を後にした。

 ……その後ろ姿は、ここへ来たときよりも幾分(いくぶん)かマシになっていた。

 

 

 

 




【鈴谷奈 不知火の秘密:その1】

・声真似や物真似が得意。前世は高校の文化祭で演劇をしたこともある。ただ、演劇の配役はヒロインであり、何度か女装させられたとのこと。


《一言コメント》
「あんまり乗り気じゃなかったけど、背の高いヒロインが流行ってたんですよ…」
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