アークナイツのシュヴァルツとセイロンの一幕が降りてきたので投稿です。
年下が押せ押せの百合主従好き。

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息をするにも一人。

「ありがとうございました」

 

「はい。お疲れ様でしたアドナキエルさん、クルースさん」

 

ガシャコン。とボーガンを地面に下ろす。

狙撃オペレーターの訓練が終わって、ちょうどつきっきりで訓練していた2人が、やっと終わったと体を伸ばす。

 

「疲れたよ〜」

 

「キッチン行こうか」

 

「フェンちゃんが待ってるって言ってたしね〜」

 

と、片付けを終わらせて休憩に向かうオペレーターたちの背を見送って、こっそりフゥと、ため息をつく。

 

ゾクッという疼きが、仕事中だからと意識をそらしていた疼きが、送れてやってくる。

無視できなくはない。

 

いや、ちゃんと意識の外側においている。

ただ、それが、戻ってくるときには随分と大きな感触を伴うというだけで。

 

いつも着用しているから、むしろ外していると違和感があると言われるようにまでなった、自分のマフラー。

 

今、その下で存在を主張しているのは、セイロンさまに留められた、鈍く光沢を発している首輪だ。

スゥと細く息を吸えば、さほど。

けれど、喉を開いて、大きく息を吸い込めば、キュンと存在を主張して、首元を優しく締め上げてくるそれ。

 

シエスタの一件のあと、ロドスにオペレーターとして加入して。

 

そうしてこれまでの経歴を提出して。

 

誰かに見られることもないだろうと、そう油断していたら、セイロンさまが全てをしっかりご覧になっていた。

珍しく自分が、酔い潰れた時の、恥ずかしい話まで….

 

と、それを見られてた時の会話を思い出して赤面する。

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 

「ふぅん。内なる獣がいらっしゃるのね?シュヴァルツ?」

 

「その、やめてください…」

 

「わたくしの側にいれば、忘れていられる?」

 

「は、はい…」

 

照れと、こ恥ずかしさと、そして、安らぎを感じながら。

 

ほら。と、ベッドに腰掛けて、膝をぽんぽんと叩くセイロンお嬢様の膝元に、そっと頭を乗せて横になった。

 

その時は、愛玩動物として。

 

何もかも忘れて、されるがままになっていた。

さわさわと頭を撫でる手の感触に、意識せずともぴこぴこと耳が反応する。

探るように指が這い回って、頭の耳の付け根をコリコリといじる。

 

こそばゆさが半分、そして、ちょうどかゆいところを掻かれた心地よさが半分。

 

トロンとしたまどろみに身も心も、意識も全部委ねて。

そう。伝えた通りに、今だけは、ただ今だけは自分がただのシュヴァルツでいられる。

 

「ねぇシュヴァルツ?」

 

と、ふと沈んだ意識が呼び戻される。

同時に、ぞぞっと背筋を這い上がる予感。

 

ツゥと指が伝っていたというだけでなく、これは過去にも既視感のある予感。

 

具体的に言えば、まだ幼い頃のセイロンさまがはちゃめちゃなイタズラを思いついて、その準備の片棒をかつがされた時のものだっただろうか。

あるいは、急な思いつきに対して意見を求められた時のそれだろうか。

 

暗殺者時代のそれとはまた違う、自分の生死に関わるようなものではないけれど、確実に面倒臭い、あるいは、ロクでもないことが起きるという予感。

 

「裁縫に長けている方に指南していただいて作ったのだけれど」

 

と、セイロンさまがゴソゴソと、バッグから何かを取り出して見せつける。

 

「チョーカー、つけてみないかしら?」

 

アーツの補助具として、割と使用しているそれとはまた違う。

チョーカーと呼ぶには、随分と無骨で、分厚くて。

鈍く光沢を持ち、そしてずっしりと重みのあるそれ。

 

首輪、と言ったほうが近いだろう。

 

それはただ革で縫製された元とはまた違う、よくよく観察してみれば、手にとって確かめてみてみれば、中に金属の薄板を仕込んでいて、耐久性も、非破壊性にも長けた、高速性能の高い首輪。

 

「これを、ですか?」

 

ゴクリ、とじぶんの喉が音を立てた。

膝の上に寝転がっていた自分の首に、すっと指が這っていて、きっと飲んだ生唾の感触も伝わっているだろう。

 

「ね?」

 

と、にこやかに笑う主人の圧に抗いきれず、は、はい。と尻すぼみするような返事だけが、口から出せた。

 

 

 

  ◇

 

 

そんなことがあった。

 

結論から言えば、正解、あまりにも正解だった。

 

呼吸をするたびに、首元にセイロンさまを感じる。

 

初めて着用するときに、スゥと首元に伸ばされた指先。

 

ツゥと喉を、顎裏を、首元を、うなじを這い滑る指先に、恍惚としたくすぐったさを感じて、思わず色の乗った声を漏らしそうになった。

 

その感触が、感情が、想いが、例えば息を吸うたびに蘇る。

 

ただ存在する。

 

生きるために、生命を維持するために息を吸う。

 

ただ無意識に行う生理現象。

 

そのたびに、首元でキュゥと存在を主張する物体が一つ。

 

結果として獣はしっかりと飼い主の手元に繋がれている。

 

必要な時には、当然折から出てきて、それを意識せずに暴れることはできる。

 

ただ、息が落ち着けば、熱が引けば、すっと引き戻される感触がある。

 

帰るケージはここだと、帰る場所はここだと。

 

この甘くて心地いい拘束感に、私は帰る家を感じることができた。

 

 

またある日

 

 

「ねぇシュヴァルツ、首輪に鍵をかけてみない?」

 

セイロンさま…..

 


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