FATE カルデアのマスター、彼の地に来たれり   作:ダンピール

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主人公:カルデアのマスター 藤丸リツカ 

サーヴァント 

 セイバー・千子村正
 ランサー・ヘクトール
 アーチャー・浅上藤乃
 ライダー・マンドリカルド
 キャスター・アスクレピオス
 アサシン・望月千代女
 バーサーカー・謎のヒロインX[オルタ]
 フォーリナー・アビゲイル・ウィリアムズ

 時系列は1.5章後くらいなのでマシュはカルデア管制室にいます。



プロローグ

 

 カルデアのマスター、藤丸リツカは夢を見ていた……。

 とても懐かしい、カルデアに来る前の故郷の夢である。

 変わり映えしない日常、普通の学校生活、ありふれた友人・知人。

 一般的な家庭、穏やかな父母との会話―――――全てが、数年前に燃え尽きた。

 

 燃え盛る瓦礫の街中で、拳を握り締めて道の真ん中を歩いていた。

 周りには無数の屍、人だったもの、人でないもの、その他大勢。

 やがて道の先に瓦礫の山が現れて、瓦礫の玉座に腰かけた者とリツカは相対する。

 

「問おう―――――――憐憫の獣を否定したカルデアのマスター」

 

 玉座に座る者は人の形をしている。

 目に映る表情は狂気を孕んだ異形の笑み。

 リツカは大きく深呼吸をして、キッと玉座を見据えた。

 

「人理を救い、数多の英霊を従えて―――――あの旅で()()()()()()()()()?」

 

「―――――――――っ。」

 

 リツカの息が止まる。視界がぐにゃりと歪んでいく。

 歪んだ視界の奥で、異形が答えを出せないリツカを見て嘲笑う。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()――――そう言っている気がした。

 彼の意識は、瓦礫の街を額縁の中に飾られた絵として、現実に引き戻されていく。

 

 

 

「マスター!お願い、目を覚ましてマスター!」

 

「―――――――――――うぅ~ん」

 

 揺れる体と、頭に響く鈍い痛み、誰かの声を聞いて意識が戻った。

 彼を呼び掛けていたのは金色の長い髪にリボンをあしらった可愛らしいお人形さんのような少女、見た目は華奢だがカルデアの対バーサーカー戦力としては上位戦力に数えられる英霊の1人「フォーリナー」アビゲイル・ウィリアムズがこちらを覗き込んでいた。

 

「……アビー……?」

 

「あぁ、良かったマスター!目が覚めたのね!」

 

 視界がはっきりして、アビゲイルの瞳に涙が滲んでいる事に気が付いた。

 彼は条件反射で服の内側を漁り、ハンカチを取り出して彼女の頬に宛がう。

 

「心配かけてゴメンね」

 

「うぅ……私の涙を拭う前に、ご自分の心配をなさってマスター」

 

「自分の……?」

 

 そう言われて彼は自分がどういう状況に置かれているのか理解した。

 ちょっとやそっとの攻撃じゃ破れない筈のカルデア戦闘服、それが所々破れていた。そこが傷になって出血していたのか赤い染みがある事に気が付いてから、遅れて痛みがやってくる。

 しかし心配そうなアビゲイルを前にして、平静を装って微笑を浮かべた。

 

「平気平気。―――――アビゲイルの方こそ、大丈夫?」

 

「大丈夫よマスター。アスクレピオス先生が治療してくれたの!」

 

「先生が?」

 

 「キャスター」アスクレピオスの名前が出て、彼は自分達が何をしていたのか思い出す。

 カルデアの観測機が捉えた謎の特異点を調査しようとレイシフトを行って―――――

 レイシフト直後に原因不明の何かが干渉してきて、森みたいな場所に飛ばされた。

 

 それから大量に現れた虫のエネミーを撃退して進んでいたら、ファフニールみたいな真っ赤な竜が襲ってきて、それで―――

 

 そこまで考えてから他のサーヴァント達が先ほどから見当たらない事に気が付いて、焦りから大慌てて起き上がろうとした。

 

「み、皆は――――!?」

 

「ダメよマスター!まだ怪我が治っていないのに動いたら―――」

 

 アビゲイルの制止を振りほどいて立ち上がろうとした時、彼の視界の端で茂みが揺れた。

 敵かと思い人差し指と中指を伸ばして魔術礼装のガンドを構えるが――――

 

「おう、目ぇ覚めたのかリツカ」

 

「――――村正さん!」

 

 茂みの奥から現れたのは「セイバー」千子村正。リツカのサーヴァントである。

 第二再臨の姿で、脇に薪を抱えた村正は安心したように笑みを浮かべた。

 彼の背後から続けて、数人のサーヴァントが姿を現す。

 

「マスター怪我の具合は……って聞くまでもねえか」

「アビゲイルさん、マスターの看病ありがとう御座います。長い間付き添って、貴女も疲れたでしょう?後は私が見てますから、休んでて下さい」

 

「ヘクトール、ふじのん……」

「ありがとう浅上さん――――けれど、私は平気よ!」

 

「そうですか。では引き続きお願いします」

「えぇ!」

 

「っと~疲れた疲れた、どっこらしょ」

 

 トロイア戦争の大英雄「ランサー」ヘクトール

 特異点オガワハイムで召喚された女性「アーチャー」浅上藤乃

 ヘクトールは槍の先端に川で獲ってきた魚を刺して、藤乃は木の籠に沢山の果物を抱えていた。

 

「―――――よし、こんなもんか。ヘクトールの旦那、火ぃ頼むぜ」

「ほい来た」

 

 村正が薪を手製と思われる斧で割り、ヘクトールがそれに火をつけた。

 アビゲイルに付き添われながら、リツカは温かな火の前に手を翳すと、心が落ち着いた。

 

(………あれ、他の皆は………)

 

 特異点に一緒に来た英霊があと4人いた筈…

 すると彼の考えを読んでいたかのように、隣へ腰かけた藤乃が答える。

 

「キャスターの医師先生でしたら、ライダーのマンドリカルドさんを護衛に付けてマスターの怪我を治す為に薬草採りへ向かったので、もうすぐ帰ってくると思いますよ。 アサシンの望月さんは周囲の偵察に、万が一の状況を考えて、バーサーカーのX[オルタ]さんが護衛についてます。―――彼女達はまだ帰ってこないかもしれませんね」

 

「――――凄いねふじのん、俺が聞きたい事を全部言われちゃった」

 

「ふふっ…マスターの顔がそう言っているように見えたので」

 

 そこへ村正がひょいと焚火の上から串に通して焼き立ての魚を渡してくれる。

 彼の腕がパチパチ燃える火の上にあって心配だったので、リツカは思わず言ってしまう。

 

「火傷しちゃうよ?」

「ハッ、火傷が怖くて刀鍛冶が出来るかってんだ――――ほれ、冷めねぇうちに食っとけ」

 

「じゃあ、お言葉に甘えて―――――」

 

 彼と村正の付き合いは、ヘクトールやふじのんに比べて長くない。

 最近になってカルデアの召喚システムに登録されて、亜種特異点での出会いが縁となって召喚されたのが始まり。

 最初は無愛想な昔気質の鍛冶職人かと思い、リツカは話しかけるだけでも緊張してしまったが、意外にも面倒見が良く、子供サーヴァントからの慕われている。

 自分が焼き魚を頬張り始めたのを見届けて、村正はアビゲイルにも串を渡す。

 

「おらよ娘っ子。お前さんも食っとけ」

「えっ――――でも、村正さんが……」

 

(オレ)の事なんざ後でいいんだ後で、マスターと子供優先だ。受け取れ」

「……分かったわ!ちゃんと後でお返しするから!」

 

「餓鬼が律儀に一飯の恩義に報いろうなんざ十年早ぇよ。いいから食え」

「人から恩を受けたら返すのは当たり前の事よ。そこに子供か大人かなんて関係ないわ!……だから、ありがとう村正さん。―――いただきまーす」

 

 むっと頬を膨らませて子ども扱いする村正を睨むアビゲイル。

 しかしその顔は焼き魚を食べ始めたら次第に蕩けて、幸せそうに笑った。

 村正は何も言わず、次の串をそっと藤乃へと差し出す。

 しかし彼女は「果物だけで平気ですよ」と、村正がそれを食べるよう促した。

 

「あれぇ村正の爺様、おじさんの分は?」

「(もぐもぐ)――――――あぁ?自分で焼け、そんくらい」

 

「オイオイオイ、マスター&レディーファーストでおじさんは無しかよ」

 

 「ちぇっ」と言いながら、ヘクトールは渋々自分で魚に串を通して火の前に置く。

 再び、3人が来た方向とは別の茂みが音を立てて揺れた。

 ほんの僅かだが、村正とヘクトールの眉が動いて手が止まった。

 しかし次の瞬間聞こえてきた声を聞いて、2人の警戒は解かれた。

 

「よう、マンドリカルドにアスクレピオス。薬草は集め終わったかい?」

 

「当然だ」

「殆ど先生1人で見つけてましたんで、俺は大して役に立ってないっスけどね……」

 

「なぁに言ってんのさ。アスクレピオスの護衛がお前さんの役目で、薬草集めの手伝いは二の次でしょうよ。2人揃って無事に帰ってこれたんだから、それで十分じゃねえの」

 

「――――へ、ヘクトールさんがそう言うのなら……そういう事で……」

 

 村正の問いに、籠の中から切り傷や打ち身によく効く薬草を取り出して、小鉢の中ですり潰していく「キャスター」アスクレピオス。その表情はペストマスクに覆われて自分からは見えないが、恐らくいつも通り無表情なのだろう。

 

 「ライダー」マンドリカルドは顔を暗くして焚火の明かりが当たらない影から下を向いて喋る。

 召喚されてから相変わらず陰気な彼だが、生前はもっと尊大で俺様TUEEE!みたいな王だった。

 色々あって自信を無くし、常に陰気属性を纏って周りから距離を置くのがマンドリカルド。

 

 しかし彼の陰鬱な空気を、朗らかに笑ったヘクトールがあっさり打ち払う。

 マンドリカルドにとってヘクトールは憧れの大英雄であり、生前はヘクトールが残したという武具を欲してシャルルマーニュ十二勇士等と争った事がある。

 ヘクトールに優しく肩を叩かれて、マンドリカルドは顔を赤らめて頷いた。

 

「これで後は千代女さんとえっちゃんだけか……」

 

 そう呟いて、リツカは手の甲に刻まれた令呪をじっと見つめる。

 2人に何かあれば何時でも令呪を以ってこの場に呼び出せるようにと考えながら…

 

 何もないと思いたいが…服の内側で、治りかけの傷がズキズキと疼く。

 まるで、悪いことが起きると無自覚の第六感が知らせているかのように…

 そんな時だった、突如リツカの頭の中で声がした。

 

《―――――お館様。聞こえますか?》

《―――――千代女さん?》

 

 頭の中に響く声はこの場にいない、偵察にいった「アサシン」望月千代女の声だ。

 令呪でマスターとサーヴァントは繋がっており、離れた場所でも会話が出来る。

 念のためにとカルデアから通信機等をサーヴァントにも所持させてはいるが、盗聴される危険性を考えて、戦闘時や移動中は前者を使う方が多い。

 

《報告と相談―――の前に。怪我の具合の方は大事ないでござるか?》

《平気だよ。心配してくれて、ありがとう千代女さん》

 

《はっ。――――では偵察の報告に入らせて頂きます》

 

 千代女が報告してくれた事は、彼らの次の行動を決めるのに大いに役立った。

 「バーサーカー」謎のヒロインX[オルタ]に周囲の警戒をお願いして、千代女は地面に簡易な周辺の地図を書いて周囲の地形を教える。

 

 自分達がいる場所は小さな森で、レイシフト直後に遭遇した小型エネミー等は殆どいない。

 千代女と謎のヒロインX[オルタ]がいるのは森から少し離れた緩やかな斜面の山道近く。

 そこで彼女らは大荷物を積んで馬車と共に歩く人々を見かけた。

 

 顔立ちは西洋人寄り、着ている服は現代のそれではなく、フランスやローマの特異点にいたような村民に近いという。また、杖を手にした小柄で青髪の少女が特に千代女の目を惹いた。

 

《その子はサーヴァント?》

《―――――拙者もその可能性を疑いはしましたが、それらしい気配を感じ取れませぬ。仮に英霊であれば術師の類、拙者の目に気づいていた可能性も考えられるかと……》

 

 

 青髪の少女の傍らには、とんがり帽子を被った杖を持つ老人の姿もあった。

 2人は徒歩の村民達に対して、ロバのような動物の牽く馬車に乗っているらしい。

 そして千代女は、最も驚愕した集団の先頭の者達について伝える。

 

《緑の迷彩柄で統一された戦装束に現代のものと思しき鉄砲、その鉄砲を天辺に取り付けた機械仕掛けの四輪車両がおります。―――――明らかに村民達とは別の集団でござる》

 

 リツカの頭の中にパっと思い浮かんだイメージは、映画に出て来るような軍隊。

 千代女の言う鉄砲のついた四輪車両からして確実に軍用車両だ。 

 しかし――――馬車や徒歩の村民達と現代風の軍隊が一緒に動いているのは何故か?

 

 最悪の可能性が脳裏を過ぎるが、兎に角いまは彼女達と合流するのが先だろう。

 

「――――先生、治療薬の方はいけそう?」

「あぁ。後は布に染み込ませて傷口に宛がうだけだが……それを聞いてどうするつもりだ」

 

「すぐに動くから一応確認をね。――――二人とも動ける?」

「そりゃ動けますけど……。マスターはまだ動かない方がいいんじゃないのかね?」

「―――そうっすね。怪我が治るまでは、2人との合流は俺達に任せた方が……」

 

「いや、俺も含めて全員で合流した方がいい。…ふじのんとアビーはどうかな?」

「私はマスターの指示に従います」

「…本当はマスターに動いてほしくはないのだけれど…マスターが望むなら…」

 

「無茶ばっかでごめん。―――村正さん」

「……そんな風に切羽詰まって動き出すって事は、嬢ちゃん達に何かあったか?」

 

「2人には何もないよ。――――――ただ、急いで合流した方が良い…嫌な予感がする」

 

 説明不足なマスターの突発的な行動は今に始まった事ではない。

 直感に突き動かされて、それを信じたお陰で危機的な場面を何度か乗り越えた。

 そして今回は、脳裏に過ぎった一抹の不安を解消すべく現地住民達の下へと向かわなければならない気がして。その為に2人とも早く合流する。

 

 戦闘服のチャックを全開にし、アスクレピオスから受け取った包帯を傷口に巻きつける。

 じんわりと傷に染み込む薬の効果が、痛みを伴って全身を走り抜けた。

 リツカは奥歯をグッと噛み締めて堪え、包帯が動かないようにチャックをキツく締める。

 

「―――――――いくよ!!」

 

 これから始まる物語は、異世界で戦う自衛隊と、カルデアのマスター、英霊達の物語だ。

 そこに正義、善意、悪意、混沌、狂気が渦巻き――――新たな聖杯戦争の狼煙があがる。

 

―――Fate/Grand_Order「特別地域神聖戦争アルヌス」―――開幕。

 




 勢いで書いてしまった、後悔はない……。
 感想が沢山あると、作者のモチベーションが上がります。
 「これおかしくね?」みたいな指摘もウェルカムです!

次回
  「通りすがりのカルデアの者です」
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