FATE カルデアのマスター、彼の地に来たれり 作:ダンピール
投稿してない間はFGOのんびり周回したり、別ゲーをどんどん始めたりですっかり小説のことを忘れていました……ぐだぐだイベント、皆さん周回してますか?
作者は……してませんでした。今はバトルフィールドやってます;
アルヌス駐屯地の朝は日が地平線の向こうから顔を出し始めた頃に、総員起こしのラッパが鳴り渡ってやや騒がしく始まる。
隊員達はベッドを畳んで制服に着替え、各小隊毎に点呼と健康状態の確認をしてから十五分ほど部屋の清掃を行う。
それから約30分間の食事時間が与えられた後、各々の任務に就くのだ。
一方コダ村の難民とカルデアの者達が提供された仮設住宅は少し遅れて朝食を取る。
特地の住人にあまり早起きの慣習が無かったこと―――更に言えば難民の多くは子どもであること―――を考慮して朝はゆっくり彼らのペースに合わせてあげようと伊丹が上官に進言したのだ。
カルデアのサーヴァント達は睡眠を取る必要はないものの、魔力の消費を極力抑えるために交代で霊体化してリツカの建物の周りを警戒しており、夜明けが近くなって自衛官達が動き出したのに合わせて警戒を解いた。
リツカは仮設住宅に着いて早々にベッドで眠りについたお陰で体力は回復していた。
人によっては自分に合わないベッドで眠ると睡眠の質が悪くなるということもあるのだが、リツカにとってそんな心配は杞憂であり、で硬い床だろうと地面の上だろうと眠くなればどこでも眠れる謎スキルの持ち主である彼は良く眠れたようだ。
「おはようランサー」
「おはようさんマスター。体の調子はどうかね」
「元気一杯、何時でも動けるよ!」
家を出て一番に顔を合わせたのは何処からか取り出した煙草を吹かすヘクトールだった。
煙草といっても現代にある紙煙草や葉巻とは違う、彼の時代にあった煙草に似た嗜好品である。
どういった原理で持ってきているのかはリツカも聞いたことがない。
ヘクトールの背後からスッとアスクレピオスが顔を出して開口一番。
「おいマスター、診察するぞ。服を脱げ」
「ん、俺の部屋の中でいいかな?」
「あぁ」
すぐに部屋の中に戻ったリツカはベッドに腰掛けてシャツを抜いだ。
アスクレピオスの言うとおりに腕を上げたり背中を見せたりと、昨夜開きかけた傷の具合なども確かめて貰いながらリツカはやや怖い表情のアスクレピオスにおずおずと話しかける。
「……先生、もしかして怒って―――」
「分かり切った事を態々聞くな
「うっ……ご、ごめんなさい」
あからさまにしょんぼりするリツカを見て、アスクレピオスはやれやれとため息を吐く。
その場では申し訳なさそうに謝って反省しているようだが、有事の際は恐らくそんな事を忘れてまた無茶をしてしまうのだろう。カルデアのマスターとはそういう奴だと、彼自身理解していた。
だからこそ、彼があまりに身の丈に合わない無茶をし過ぎないよう
今まではマシュ・キリエライトがその役割を担っていたが、
英霊としての力を失い、普通の少女として生きる選択肢を与えられた彼女に誰かを守って傷ついてしまう事を当たり前にして欲しくない。
それはカルデアで数年を過ごしてきた英雄全員の共通認識だった。
「――――――フゥ……兎に角だ、次の診察で傷が完治したと僕が判断するまで、お前は龍と戦った時のような無茶な立ち回りをするな。……いいか絶対だぞ?破ったらタダじゃおかないからな」
「りょ、了解」
「よし、ならこれで診察は終了だ。服を着て飯を食いにいけ」
「うん!先生も一緒にね」
「……あぁ、いいだろう」
フードとマスクを取って、アスクレピオスは着替えたリツカを待って外に出る。
外では煙草を吸いながらヘクトールが朝のお祈りをしているアビゲイルを眺めていた。
敬虔な信者としての一面もある彼女は、カルデアに来てから欠かさずそれをやっている。
時々リツカも誘われており、彼はそっと彼女の傍らで跪いて手を合わせながら首を垂れる。
「おはようマスター」
「おはようアビー……っと、今はエイトリ―だったね」
「ふふっ♪誰もいない所なら、本名で呼んでも良いと思うわ」
「……それもそうだね」
リツカは特定の神を信仰してはいない。
…というか、カルデアに居れば神そのものが人の形をとって現れるのだ、下手に何処かの神を崇めていますなんて口にした日にはカルデアで
強いて日本生まれであるが故に、仏教の教えはよく耳にするくらいだが…
「「おはよう御座いますマスターさん」」
「ふじのん、えっちゃん。おはよう」
祈りを終えて立ち上がったリツカに藤乃と謎のヒロインX[オルタ]が声を掛ける。
残りの三人は何処にいったのかとリツカが視線を周りへと向けると、事情を知っている藤乃がクスクスと笑って少し離れた仮設住宅の方を指差した。
そこには目をキラキラさせた男の子に囲まれてオロオロしているマンドリカルドと、女の子達に見慣れない衣服を引っ張られて同じくオロオロしている千代女の姿があった。
「村正さんに続いて、お2人も子供達と打ち解けたみたいで……」
「アハハ、マンドリカルドは何時ものことだけど……千代女さんがあんな風に困ってる姿って久しぶりに見たかもしれないね」
「ライダーさんもアサシンさんも、コミュ力が高い方ではありませんしね」
と自分のことを棚に上げて制服姿のマフラーで口元を隠す謎のヒロインX[オルタ]
そこに霊体化せずにベッドで横になっていた村正が欠伸をしながらやってきた。
子供たちの何人かがバッと一斉に彼の下へ集まる。
「お、おぉ?なんでいなんでい、朝からガキんちょは元気だねえ……くぁ……」
「む、むらまs―――セイバー殿、おはよう御座います!起きて早々に申し訳ないのですが、童たちの面倒を見て頂けないでしょうか。拙者どうにもこういった事に滅法弱いので……」
「せ、セイバーさん!俺からも出来ればお願いしまっス!」
「なんだいアサシンの嬢ちゃんにライダーの坊主、ガキの面倒くらい見てやれねえのかい?……つーかこのガキ共も、こんな偏屈ジジイと朝から話して何が楽しいのやら」
そう言いつつも、腹の辺りから見上げて来る子ども1人1人の頭を自然に撫でる村正。
言葉が通じなければどうすればいいのか?考える間もなく、相手の喜びそうな事をとりあえず実行に移せるのは年の功とでも言うべきか、或いは依り代となった少年の性質なのか。
マンドリカルド、千代女もそれを見て恐る恐るだが子供たちの頭を撫でて不器用に笑いかける。
するとますます子供たちは喜んで三人はもみくちゃにされてしまう。
微笑んでそれを見守っていたリツカの前で仮設住宅の扉が一つ開かれた。
「ん……おはよう異邦の人、お互いによく眠れたようだ」
姿を現したのは寝起きで髪が少し乱れたレレイだった。
目を擦っていた彼女はリツカの姿を捉えるとぼんやりしたまま挨拶をする。
リツカも挨拶を返して、仮設住宅が賑やかになり始めた頃……
「皆さん~朝ごはんの支度が出来ましたよ!」
声を張り上げてリツカ達を呼びに来たのは第三偵察隊の陸士長・古田均だった。
彼は他の隊員と共に野外炊具1号を使って、難民とカルデアの人達の朝食作りを任されていた。
リツカ達はすぐに理解出来たが、言葉の意味が理解出来ないレレイや子供たちが首を傾げる。
すると古田はハッとした顔で咳払いをし、特地の言葉で「ご飯」とジェスチャー交じりに伝えた。
たどたどしい特地語だが、彼女らにも意図は伝わったようだ。
*
「わ、日本食だ!」
「へえ、まさかレイシフト先で故郷の味に再会出来るたぁな」
「これは嬉しい驚きですね」
「ええ…とても楽しい朝食になりそう」
屋外用の事務机と椅子を並べたところに座って、リツカ含め日本育ちのサーヴァントにとっては見慣れた朝食の風景が広がっていた。
見慣れた白いご飯と具がたっぷり入った味噌汁、煮物や漬物が並んでいる。
カルデアの調理場でも料理が得意な赤い外套のアーチャーが和食をよく作っていた。
そのためヘクトール達もすぐにそれが日本食と分かって感嘆の息を漏らす。
米を知らない特地の子どもたちの為に、パンも用意されている。
「米食とパン食、お好きな方が選べますので、ご希望の方は私に言って下さい」
レレイは見たこともない機械、野外炊具1号や古田が皮むきをしている大根という特地では見慣れない食材に目を丸くしていたり、自分達の知る硬いパンとは違って柔らかく甘い香りのするそれに賢者カトーが歓喜の声を上げていた。
全員が席に着いたのを見届けてリツカを始めとするサーヴァント達が手を合わせる。
既にカトーや子供たちは食事に手をつけ始めていたが、傍らでレレイもリツカ達と同じようにする。その意味をカトーが問うと、レレイは端的に答えた。
「これは彼らの国の慣習、食事の前はこうして手を合わせて……こう言うらしい―――――――――いただきます、と」
テュカとロゥリィが空気なのは気にしてはいけない……
英霊剣豪のコミカライズ版第四巻を読んで悶えました。
やはりパライソはいい……退け!俺は盛時様だぞ!(狂化EX)
次回「駐屯地の穏やかな日々」