FATE カルデアのマスター、彼の地に来たれり   作:ダンピール

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 投稿遅くなって申し訳ないです;
皆さんは六章クリアしましたか?作者はまだです()
オベロン、モルガン、バゲ子ときたのにバーヴァンシ―だけ来なかった…
水着は今のところ様子見ですが……推しに来て欲しいとお願いつつも来たら来たでお財布が崩壊しちゃうと恐れています。


現在を生きる亜神

 ロゥリィ・マーキュリーは特地の神エムロイに仕える亜神である。

亜神は人の肉体に神としての力を得た存在。

規格外の強さを持つ彼女の戦闘力は、恐らくサーヴァントにも匹敵する。

 

 窓からじっと中の様子を窺っていたロゥリィ。

気配を察知できなかったことに千代女は目を見開いて冷や汗を流す。アスクレピオスも自身の張った人払いの結界を破られたことを多少なりとも驚いていた。

冷静さを保っていたヘクトールは陽気に笑みを浮かべて話しかける。

 

「オイオイ、夜分遅くに他人の部屋を覗き見なんて良い趣味じゃないねぇ……。鍵は開いてんだ、そんなところで見てないで入って来なよ」

 

「いいのかしらぁ?貴方達だけでしか共有しない内緒話をしてたんじゃないのぉ?私のことなんて気にせず、どんどん続けて貰っても構わないのよぉ~」

 

 クスクス、クスクスと口元に手を添えて上品に笑うロゥリィ。

しかしその一挙手一投足、ヘクトールは見逃すことをしなかった。

油断すれば一瞬の内に攻撃される……彼女からはそんな気配をヒシヒシと感じる。

自身が警戒されていることに気が付いたロゥリィは笑みを絶やさず言った。

 

「そんなに怖い顔で身構えないでくれるかしらぁ―――――――――余計に昂っちゃうじゃない

 

 ズン!と目に見えない圧のようなものがサーヴァント達に加わった。

喩えるなら間近で神霊クラスと相対した時に感じるプレッシャーのようなものだ。

これに耐えて膝をつかなかったのは村正、ヘクトール、マンドリカルド、ヒロインX[オルタ]、アビゲイルの5人だけ。藤乃とアスクレピオス、千代女の3人は膝をつき、荒い呼吸を繰り返す。

 

「いやはや参った参った。こりゃあこの世界の女神様かなんかかいアンタ」

 

「そんな大層な存在じゃないわぁ。私は神に仕えるもの、神官と言えば分かるかしらぁ?」

 

「ハハッ、俺の知る限り神官はこんな凄い力を持ってたりしないけどねぇ……!」

 

 ロゥリィはひたすらに一歩前へ進み出て話すヘクトールに興味が沸いたのか、彼女は部屋の扉にゆっくりと手をかけてドアノブを回し、軽やかな足取りで中へと入ってくる。

次第にその気が失せたのか、サーヴァント達に圧し掛かっていた力は霧散した。

ひとまずは安心できる様子だと判断した村正がやれやれと息を吐く。

 

「ったく……爺をちったぁ労われってんだ……生きた心地がしなかったぞ」

 

「あらぁ?貴方、見た目はとっても若々しいのに……魂は随分とお爺さんなのねぇ?」

 

「なんでぇ、お前さん()()()()のが見えたりすんのかい」

 

「?? よくは分からないけど、色々と見えるわよぉ♪」

 

 彼女、ロゥリィが見ているのはサーヴァント達の肉体というガワではない。

エーテル体によって包み隠されたサーヴァントの本体、霊核を見ているのだ。

故に霊核に秘められたサーヴァントの本質が彼女は手に取るように分かる。

そんな中である疑問を抱いた藤乃がそっと手を上げた。

 

「えっと、ロゥリィさんとお呼びしても宜しいでしょうか?」

 

「いいわよぉ♪神官様とか死神なんて呼び名より親しみがあってぇ」

 

「では質問なのですが……どうやって()()()()()を理解しているのですか?」

 

「簡単よぉ。貴女達の中にある霊核(それ)、そこから溢れてる力の流れを枝から辿って根っこにあるもの、貴方達の世界の概念というものをちょっと調べて覚えただけよぉ」

 

 彼女の云う概念の根っこ、それが魔術師の目指す根源でないことを切に願いたい。

この場にいる数名が何となくそれを理解して無理やり納得させる。

彼女は神ではないにしろ、神に匹敵する力の持ち主なのだと。

ヘクトールは心の中でぼそっと呟いた。

 

(この世界にこんなおっかないのが沢山いなきゃいいけど……)

 

「うふふふっ♪他のヒトはぁ?私に質問はないのかしらぁ~」

 

「で、では拙者からも……拙者達が施した人払いの結界を―――」

 

「あぁ、あれぇ?ちょっと煩わしかったから、手で軽く払ったわよぉ」

 

「……冗談、ではなさそうだな。……聞けば聞くほど規格外な奴だ……」

 

 千代女の質問に陽気な態度で答えるロゥリィ。

アスクレピオスは専門外とはいえ師から教わった結界があっさりと破られたことが少し悔しかったが、それは後で対策を考えようと思考を切り替える。

 

「あ、あの~……俺からも質問いいすか?」

 

 意外にも次の質問を行ったのはマンドリカルドだった。

彼はロゥリィが入ってきてから終始驚きっぱなしで固まっていたのだが

マスターの為、他のサーヴァント仲間達の為にも自ら進んで情報収集に参加した。

そして、思い切りが良すぎた彼はロゥリィにとんでもない質問を飛ばす。

 

「アンタは俺達と……マスターの……敵ではないんスか?」

 

「「「「「ッ!?」」」」」

 

「……ふふっ!どぉ~かしらねぇ?私にとっての判断基準は死と断罪の神エムロイの教義に従う事だから。そうねぇ、今は敵じゃないかもしれないけどぉ明日から味方という保証は出来ないわぁ」

 

 言い終えると彼女は話し合いが済んだと思ったのか踵を返した。

マンドリカルドは「っスか」と短い返事だけして黙り込んでしまう。

扉を開け放って出て行くロゥリィは一度だけ足を止めて振り返ると――――――

 

「お互い、敵じゃないと思ってる内は仲良くしましょうねぇ?」

 

「……だな、理由もなく邪険にするのはお互いの得にならんし」

 

「うふふっ。それじゃあ、おやすみなさぁい」

 

 パタンと扉が閉まってロゥリィの気配が遠ざかるのを感じたサーヴァント達は一同にハァと安心しきって溜息を吐きながらその場に座り込んだり壁に寄り掛かったりする。

マンドリカルドはガタガタ震えながらヘクトールに話しかけた。

 

「す、すんませんでしたヘクトールさん……オレ、滅茶苦茶ヤバいことを」

 

「問題ないさ。寧ろド直球に聞いたお陰で向こうさんの機嫌を損ねずに済んだ」

 

「もしあの女が遠回りな事が嫌いなタイプだったら、この部屋は今頃吹っ飛んでいただろう」

 

 マンドリカルドを優しくフォローするヘクトールだが、しれっとアスクレピオスがとんでもないことを口走って、マンドリカルドは更に顔色を真っ青にして今にも倒れてしまいそうだ。

村正はまたやれやれといった風に腰をトントンと叩いて、藤乃も静かに胸を撫で下ろす。

千代女はふと未だに黙ったままのヒロインX[オルタ]とアビゲイルに振り返り―――――

 

「お、お二方ぁ!!?」

 

「………(立ったまま気絶中)」

「………(備え付けのベッドの上でぬいぐるみを抱えたまま気絶中)」

 

 これにて話し合いはとりあえずのところ中断となった。

気絶した二人が目覚めるまで千代女と藤乃が付き添う事となり、村正とヘクトール、マンドリカルドは各々の部屋に戻っていき、アスクレピオスは「愚患者の様子を見て来る」とリツカの部屋へ。

 

 アルヌス駐屯地の夜は一歩間違えれば神話の戦いが繰り広げられていた。

等と当の本人たち以外が知ることはなく、穏やかな日の光に照らされて朝を迎えるのだった。

 




 ロゥリィの圧のイメージは作者の中で平安京にいた伊吹童子のアレっぽく。
圧が掛かって腰が不安なお爺ちゃん、耐えてるけどキツいヘクおじとふじのん、耐えつつ相手の様子を窺っている千代女、医神先生、マイフレンド、耐えた後で恐怖心が勝って安らかに気絶したXオルタとアビーでした(アビーの中のは逆に反応してそう)

次回「駐屯地の賑やかな朝食」

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