ポケットモンスターHEXA BRAVE   作:オンドゥル大使

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エピローグⅡ

 

 突然にカルマとデオキシス、それにユウキとテッカニンが消えた。

 

 マキシにはそれだけが分かった。逆に言えばそれしか分からなかった。

 

「サイコブースト」が放たれたと思った瞬間の出来事である。二人と二体のポケモンがどこに行ったのか。破壊の遺伝子の向かう先は結局何だったのか。マキシが、「何が、起こって……」と呟いていると、ハリマシティ方面からこちらへと向かってくる一台のトラックがあった。トラックの窓から手を振ってこちらを見つめる人影がある。テクワだった。

 

「テクワ。無事だったのか?」

 

 マキシが歩み寄ると、トラックが停車し、テクワが降り立った。その後に続いて一人の男が黒いコートを着込んで降りてくる。マキシは目を見開いた。

 

「……親父」

 

 現れた自分の父親――カタセに驚いていると、テクワはトラックの運転手へと、「ありがとよ」と声をかけてからドラピオンを繰り出して状況の把握に努めた。マキシは、「どういう事だ?」と詰め寄る。カタセは死んだとばかり思っていた。しかし、テクワと共に自分の眼前にいる。テクワが、「カタセさんのお陰だ」と言った。

 

「どういう意味だ?」

 

「カタセさんは生き残って、俺を瓦礫から救ってくれた。カタセさんの導きで、俺はここに立っている」

 

 カタセは、「俺がした事は少ない」と謙遜気味に言った。

 

「お前らの仲間に拾われた命だ。借りは返そうと思っていた」

 

「仲間、だって。それって」

 

「黒いゴルーグの持ち主だ。彼は、いないようだな」

 

 恐らくは自分達でも把握していない事だろう。マキシが困惑の眼差しを向けた。再び見えた父親とどんな言葉を交わせばいいのか分からない。しかし、テクワは、「堅苦しくしないでよ」と声を差し挟んだ。

 

「おかえり、ただいま、でいいんだよ。カタセさんと言い、お前と言い、不器用だな」

 

 テクワの繊細さなど欠片にもない声に、「おい」と言おうとしたが、カタセは、「そうだな」と首肯した。

 

「ただいま、マキシ。ようやく、お前と向き合う事が出来る」

 

 その言葉は待ち望んでいたものだった。母親を捨て、自分を捨てた父親が何を、と抗弁を垂れようとしたが、父親の痛みも分かった今となっては、それが子供の身勝手な言い分である事は分かっている。

 

 マキシは顔を伏せていたが、やがてカタセを真っ直ぐに見据えた。

 

「おかえり、はまだ言わない。母さんにも会ってやってくれ」

 

 それが精一杯の言い分だった。カタセは弱々しく微笑んで、「ああ」と頷く。

 

「それが筋だろう。お前は、本当に強くなった」

 

 マキシが照れ隠しに顔を背けているとテクワが声を出した。

 

「お前に、レナ、それにガキンチョだけか? ユウキはどうした?」

 

「ユウキは……」

 

 マキシは口ごもった。突然に消えたとは言えなかった。マキシの様子を怪訝そうに眺めていたテクワは、「破壊の遺伝子は?」とレナに尋ねる。

 

「ユウキが手に入れたわ。そして恐らくはボスと共に加速の先へと行ってしまった。あたし達では観測出来ない無限の向こう側へと」

 

 レナの言葉にテクワは眉間に皺を寄せて、「ようするに」と口にする。

 

「ユウキはここにはいないのか」

 

「それどころか、もう私達では観測出来ない。概念存在に近い場所へと赴いてしまった」

 

 キーリの言葉に、「小難しい理屈は抜きにしようぜ」とテクワは頭を掻いた。

 

「要するに、ユウキはボスに勝ったんだな」

 

 マキシが自信なさげに頷くと、「やったじゃねぇか」とテクワは言った。

 

「ボスに勝てたんだ。これでRH計画を阻止出来た」

 

「でも、ユウキがいないんじゃ……」

 

 マキシの声にテクワは首を振った。

 

「あいつは帰ってくるさ」

 

「何を根拠にそんな事が――」

 

「分かる。あいつならきっと、帰ってくる」

 

 テクワは視線を移した。その目の先には中空を漂っているヌケニンがいる。まるで主人を捜しているかのようだった。ヌケニンは何度か爪を動かして何かを手招いているようだ。

 

「何を……」

 

「さぁ、ユウキを迎えに行こうぜ」

 

 テクワが全員に提案する。しかし、三人には諦観の空気が流れていた。もうユウキは戻ってこない。幾つもの犠牲を必要とした戦いの末に、本当に望むべき人間は遠くへと行ってしまった。マキシが歯噛みしていると、テクワは明るい声で、「帰ってくる」と告げた。

 

「あいつは必ず帰ってくる」

 

 

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