Fate/Grand Order -East in the lost order-   作:浜田猫@執筆中

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永月輪転結界

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 空は暗く、星は消え、月は赤く充血している。この世の終わりとはかくも恐ろしく、鬼の形相をたたえるものだ。

 この幻想郷では、魑魅魍魎が跋扈するなど常日頃の事ではあるが、それにしても数が多く、またそのひとつひとつが強大であった。

 世界は今、終焉に向かっている。

 否、この一夜の後、世界は終わりを迎える。

 幻想郷も、その住人も、次の朝日を拝むことはない。

 その終末において、人影がひとつ現われる。

 虚空から出現したその影は、人ならざる怪異の中でもまた異質。身体は魔力で構成し、人格は術式から立ち上げられ、核となる魂でさえこの世のものではない。

 ――その昔、幻想郷の外からとある儀式が取り込まれた。当代の魔術師七人と、彼らによって召喚される七つの英雄の魂。彼らが一堂に競い合い、万能の願望器と呼ばれる聖杯をかけて戦うその儀式の名を、聖杯戦争と呼んだ。

 幻想郷の賢者たちはこのシステムを流用して、幻想郷の中で聖杯戦争を執り行うこととした。喚び出される英雄は、幻想郷の中で名を残した過去の異変の参加者たち。彼らに相応しいクラスを与え、現世に召喚し使役する。

 ……つまり。その人影は、終末を目前にして幻想郷に召喚されたサーヴァントである。

「グランドオーダー。……そう、マスターはいないのね」

 少女の姿をしたサーヴァントが現われたのは、闇の深い森の中。遠くの方では火の手が上がっており、風向きから考えればいずれここも飲まれるだろう。 見れば、妖怪の類いも辺りをうろついている。何匹かは彼女の姿を捉えているようだ。獲物を狙うようにじりじりと近づきながら、柔肌に牙を立てる隙を伺っている。

「見たことない妖怪ばかりだけど、世界の終わりって、あんなのがうようよ湧き出てくるのかしら」

 嫌ね、と目を伏せる。

 その瞬間を待ち受けていた様に、妖怪たちが一気呵成に襲いかかっていく。

 シン、と空気が変わった。

 放たれる一閃。

 闇を抜く閃きが一筋、切り裂くように妖魔たちを襲う。倒れた妖怪は十を超えたころ、危険を悟った他の者は姿を消した。

 少女は微睡みから目覚めるように瞼を開ける。

 今のは弓だった。この少女が放ったものではない。一匹漏らさず仕留めたのは、今少女の目の前に現われた別の人物。

「あら、思っていた人とは違ったわ」

「驚いた。よもや今になって、あなたが喚ばれるとは」

「? 会ったことがあるかしら、あなた」

「……いや、今はいいでしょう。私はアーチャー、あなたは?」

「名前? それとも、クラスというものを名乗ればいいの? だとすれば、私はオルターよ」

 アーチャーは意表を突かれたように瞠目する。

「革命者。過去の異変において、黒幕として名を残した英雄に与えられるクラス。こんな終末の大詰めに、世界を滅ぼす大災厄のサーヴァントとして召喚されるとは思わないが……。

 一応訊ねるが、あなたのマスターは?」

「さあ、皆目見当もつかないわ」

 はぐれサーヴァントか、と小さく呟かれた声をオルターは聞き取った。どうやらマスターのいないサーヴァントのことをそう呼ぶらしい。

「私は、ある人物からここに行くように言われて来た。幻想郷の終焉、それを食い止める一助となる英雄が、ここに現われると聞いたからだ」

「へぇ、すごい人なのね。会ってみたいわ」

「わかっていて言っているのか、それ」

 アーチャーが移動するというので、オルターはそれに付いていく。

 現状の理解すらままならないが、この状態ではどのみち誰に付いていっても変わりない。オルターはそう判断した。

 それにアーチャーの言っていた、とある人物というのも気になるところだ。もしもオルターが思い描いている通りの人物であれば、このままアーチャーに付いていけばまず間違いはない。たとえそうでなかったとしても、何を目的にオルターの召喚を待っていたのか。それを聞き出せれば重畳といえる。

 森を抜けて丘を通る。

 遠くに見えていた火災からは離れていっているようだ。だがそれでも、上から見下ろす景色は想像していたよりもひどい。

「幻想郷の終焉、ね。本当に終わるのね」

「ああ。多くの英雄たちが死力を尽くしたが、それでも及ばなかった。このままいけば、幻想郷がこの夜を越えることはない」

「意外ね、そんなことを平然と口に出せる性格じゃないと思ってたわ」

 次の瞬間、オルターはそれに気がついた。

 遙か上空に浮かぶ漆黒の球体。光の失せた夜空よりもなお暗い、赤く染まった月の輝きすらも吸い込まんとする黒点がある。

 幻想郷に漂う終末感、終わりが近いのだと肌に感じさせる脅威の正体があれだ。説明されずとも、何も解らず放り出された赤子のような状態でも、サーヴァントであればそれくらいは理解できた。

「なるほど、あれは駄目ね。ああなる前に消さなきゃならなかった」

 アーチャーは顔に悔しさを滲ませていた。

 言われずとも解っていたことだ。何人もの英雄たちを犠牲にして、この結末を回避しようと命を賭けて戦ってきた。

 だが及ばなかった。結果だけ見れば、なんとも呆気ないものだろう。

 一番口惜しいのはアーチャーだ。戦の中で死ぬことも出来ず、救いたかったものを救えず、ただ生き恥をさらしている。何が英雄だと、毎秒自らを責め続けているのだろう。

 だから言葉は返さない。いや、返す言葉がないのだ。

 そんな言葉があれば、とっくに自分に向けている。

「あなたが悔しがることではないわ。仕方のないことだもの。叶わなかったのなら、そこが限界だったんだわ」

「慰めのつもりか?」

「いいえ、ただの事実よ」

 乾いた風が吹き抜けた。

 莫迦な妖怪たちが、風上に隠れるものだから臭いで場所が解ってしまう。いまも二人が隙を見せぬものかと、その機会を伺っているようだ。

 襲ってこないのならばそれでよしと、アーチャーは彼らを気にもとめない。その視線はまっすぐに、オルターへと向けられていた。

「――なら何故、あなたは召喚に応えた?」

「きっと、理由があるんだわ」

 アーチャーは視線だけでその理由を問う。

「喚ばれただけの私にはわからない。ただ目的はある。それだけはきちんと果たすし、きっと、あなたの目的にも添うはずよ」

 誰に喚び出されたのか、それは今を以てわからない。だが何をすればいいのかはわかる。正確には、空に浮かび上がるあの黒球を見た瞬間に、理解した。

 今自分が何をするべきか。

 何を求められているのか。

 その目的を遂行するために存在する。

 ただそのためだけに考え、動き続けることだけを求められる。

 それがサーヴァントである自分の在り方。

 或いはそうあれかしと、誰かに定められた在り方。

「――誰か近づいてくるわね」

 オルターは周囲を眺める。

「あれはバーサーカーだ」

 アーチャーと言うだけあって、さすがに目がいい。アーチャーのクラスに収まる英雄は、遠くから敵を仕留めることに特化したスキルを持っている。オルターの目には米粒程度にしか見えなくても、彼女の目ははっきりと姿形を捉えているのだろう。

「あれはちょっと危険ね」

 アーチャーも同意する。

「今はあなたを連れ帰ることが最優先だ。適度に牽制を入れつつ、途中で撒いて――」

「――逃げるのかー?」

 それは突如、二人の間から発せられた第三者の声。幼くあるが、首筋を痺れさせるほどの狂気を孕んだ声だった。

「アサシン――ッ!」

 立ち所にその正体を察したアーチャーは反射的に振り返る。だがその時にはすでに、オルターの腹部は半円型に食いちぎられていた。

 力なく倒れていくオルターを、アーチャーは咄嗟に腕を出して抱え込んだ。

「ああ、サーヴァントの肉だ! 木っ端妖怪なんかとはわけが違う! ほんとに美味い!」

「ハイエナがッ」

 漆黒の靄を纏うサーヴァント、アサシン。暗殺に長じたこのクラスのサーヴァントは、気配を断ち敵の背後を取ることを得手とする。強大な気配に気を取られ、風下から近寄られては察知する術がない。

「■■■■■■■■!」

 怒号が空気を震わせる。まだ遠く離れているバーサーカーもまた、獲物を仕留めようと走り出した。

「次から次へと……順番を待てというのだ、たわけ」

 アーチャーの背後が揺らぐ。収束する魔力が形を取り、閃く刃を作り出す。光り輝く灼かなる宝剣、宝槍。その数、実に十四挺。

 黒い靄の中で息を呑む気配がある。

「虚仮威しにしちゃ、ちょっと背筋が寒いや」

「なら試してみるといい。もとより、首級は貰うつもりだ」

 アサシンは靄の範囲を広げ、それを押し潰すようにアーチャーの武器が疾走する。勝敗は見るまでもない。靄はたった三挺の攻撃であっという間に霧散し、中に潜んでいたアサシンの本体が転び出てくる。

「宵闇妖怪、正体見たり」

「おのれ、アーチャー。貴様――」

「■■■■■! ■■■■■■■■!」

「ッ、バーサーカー!」

 突如躍り出る人影。予想していたよりも到着が早かったのか、単にアサシンには見えていなかったのか、バーサーカーの登場には目を剥いて驚いている。

 この隙は願ってもないものだ。

 アーチャーは二体のサーヴァントを剣の雨で牽制し、本命の一撃を呼び覚ます文言を唱える。

「――宝具解放」

 現われたるは光り輝く硝子の円盤。太陽の化身であり、その光を一身に集めた三大神器のひとつ。アーチャーの頭上に顕現したその宝具は、光輝を放つ鏡面をアサシンとバーサーカーに向けている。

「な、なんだってのさ、この光は!」

 アサシンが断末魔の悲鳴を上げる。

「この光は文字通り命を焼く。貴様のような生粋の魔ではさぞ辛かろうよ、宵闇」

 夜の帳は払われた。

 この宝具の前に、決して魔は栄えない。

 その昔、兄弟の暴走に耐えかねた太陽の神が、天岩戸に閉じこもったことで世界から昼が消えた。困り果てた神々は偽りの太陽を作り出し、その光に己が神威を見て取った太陽神は、その正体を暴くべくついに岩戸から顔を出した。

 世界に光を取り戻し、それ自体もまた恒星としての力を持つこの宝具は、天照大御神が神威を再現する、この世にふたつとない神造兵装。

「――偽・八咫鏡(やたのかがみ)

 その極光は闇を抜く矛。地上を焦土に変える神威の光条は、問答無用で二体のサーヴァントを飲み込んでいく。

 対魔、対霊の装備としては破格の威力である。しかし見た目以上に魔力を消耗するらしく、光が収束し爆煙のみが残った戦場を前に、アーチャーは地面に両手を突いて荒い呼吸を繰り返していた。

 ――出力、が上がりすぎた……ッ。

 宝具の正しい担い手であれば、『発動に使う魔力』と『出力に使う魔力』の総量くらいは手足の感覚のように把握している。もちろんアーチャーも『偽・八咫鏡』のそれらについては十分理解しているが、今回の宝具使用については設定値を越える魔力を出力時に持って行かれた。

 それに伴って威力も普段より格段に上がっているが、意図せず魔力を搾り取られた結果、身体の自由が利かなくなるほどの欠乏状態となってしまったのだ。

「昼間の戦闘では、ここまで……」

「あの黒球の影響でしょうね」

 聞こえた声に息を飲む。だがそれがアサシンでもバーサーカーでもなく、オルターのものであることに気がつく。

 彼女はさび付いた機械のように、緩慢に身体を起こし始めていた。

「オルター、あなた意識が」

「八咫鏡とはね。おかげであなたの真名も察しが付いた……いえ、思い出したわ。人里の守護者が弓兵で喚ばれるなんて、心強いことね」

「――ッ、まずい!」

 立ちこめる土煙の中に魔力の発生を感知した。オルターを抱えてその場から離れると、突如地面が隆起し、凶暴な形をした植物が顔を出す。

「バーサーカーめ、これでも倒れないのか」

「丈夫なのね」

 振り払われた土煙。中から出てきたのは、まったく傷を負った様子のない五体満足のバーサーカーだった。

「手加減でもしたの?」

「こっちが倒れるくらい本気だったよ。あなたも見ただろう」

「なら逃げてみる?」

「それがいい」

 二人は一斉に駆けだした。アーチャーは先導する形でオルターの先を走る。

「■■■■■■!」

 当然、バーサーカーも猛然とそれを追いかける。

 アーチャーは森の地形を熟知しているらしく、木々に紛れながら進んでいった。おかげでいくらかの目くらましになり、バーサーカーとも一定の距離を開けることができている。

 だが何らかの感覚が働いているのか、向こうもおおよその位置は把握できるらしく、撒くまでには至らない。

「あんな英雄、幻想郷にいたかしら」

「あれはバーサーカー。地上最強の名を恣にした庭園の姫、風見幽香」

「嫌ね、地上最強なんて。恐ろしい」

「どういう理屈か、あれは戦闘で倒すことはできない。どんなにダメージを負わせても立ち上がってくる」

「八咫鏡の光を受けてあれだけ元気なら、そういうことなのでしょうね」

「あれではまるで不死だ。風見幽香が不死であったという伝承はないというのに」

 オルターはふうん、とつまらなそうに言って、その場で立ち止まった。いまもなお追いかけて来ているバーサーカーへ立ち向かうように、先を行くアーチャーに背を向けた

「オルター、何を――!」

「試してみようかと思って、本当に死なないのか」

 アーチャーも即座に立ち止まる。

「あなたならまだしも、私の足ではいずれ追いつかれるわ。だったら私が残るから、あなたは先に行って応援でも何でも呼んできて頂戴な」

「それでは本末転倒だ。殿なら私が」

「現実的じゃない、って自分で思わない? あなた籠城戦は得意だけど、ただの足止めって苦手でしょう。それに不死に対しては一家言あるのよ、ちょっと興味もあるし」

「何を莫迦な。あなたはサーヴァント、一度は死んでいる身だ。殺されたら死ぬんだぞ。生前のように、何度殺しても死なないなんてことはない」

 そうね、とオルターは他人事のように相づちを打つ。

「呆れるくらい、当たり前の事だわ」

 突如、躍り出てくる人影。それは棒立ちのオルターに向かって襲いかかる。不意を突かれたアーチャーは対応が遅れ、衝突による風に煽られる。

「■■■■■■■■!」

 バーサーカー。庭園の姫、風見幽香。

 狂化の影響か、肌や髪の色が鈍くくすんでいるが、彼女が本来持つ生命力の強さは溢れ出る魔力から見て取れる。

 冷たい汗がこめかみを落ちていく。

 陣営の半数はこのサーヴァントによって倒された。正面から打ち合うことだけは、避けなければいけなかったのに――。

「っ、オルター!」

 風によって巻き上げられた土埃が晴れる。

 バーサーカーの攻撃を受け止めたオルターは、逆にバーサーカーの両手を掴み取って動きを封じている。見た目にそぐわない恐ろしいパワーだった。

「いまこの幻想郷に、八意永琳はいるのかしら」

 アーチャーは我に返ったようにハッとなる。

「あ、ああ。私を使いに寄越した方がそうだ。先の戦闘で重傷を負い、今は動くことができない」

 オルターはそう、と言ってバーサーカーを解放する。

 枷から解き放たれた肉食獣のように、バーサーカーは咆号を上げて獲物を威嚇する。純粋な殺意は魔力を乗せ、物理的に痛覚を刺激してくる。また、それほどの質量を持った殺意によって、呼応した草花が変質し妖魔化していく。

 庭園の姫の名の通り、彼女のためだけに動く、物言わぬ兵である。

「上白沢慧音」

 その全てと対峙し、オルターは穏やかな声でアーチャーの真名を呼んだ。

「喜びなさい、あなたの献身はここに成就する。負け続けた甲斐があったわね」

「なにを言って」

 アーチャーがその言葉の真意を尋ねる間もなく、オルターは全身に魔力を充足させ、戦闘態勢に入った。

「永琳に伝えなさい。終末の幻想郷に永夜の帳を下ろす。蓬莱山輝夜の名において、永月輪転結界を発動すると」

「っ、駄目だオルター、輝夜殿――!」

 駆け寄ろうとするアーチャー。その行く手を、突如地面から突き上げるように生えた壁に阻まれた。

 天を突くほどの大障壁。彼の四天王が仏に賜わせたという、石の鉢の一欠片である。

「くそっ、おい、我儘も大概にしろ! 子どもの駄々じゃないんだぞ!」

 アーチャーは眉間に青筋を浮かべて抗議する。

 壁を形成している魔力を見れば、こ間違いなく宝具に違いない。いま出せる全力の攻撃でも、壊せるかどうかはまったくわからなかった。

「一体どれだけの希望が、あなたの背に乗っていると思っている! こんなところで、軽々に賭けていい命じゃないんだ!」

「勝って当たり前の勝負に挑むことを、賭けとは呼ばないわ」

 オルターのここに至ってなお穏やかであった。

 数々のサーヴァントを滅ぼしてきた死神のような強さを誇る狂戦士。一切の攻撃が通らず、逆に腕の一振りでさえ致命的な威力となる、およそ規格外の霊基。その怖ろしさは、いま正面から対峙しているオルターにも伝わっているはずだ。

 それでも、オルターは平静さを欠いていない。

 やれるのか、と。同朋を殺され続けてきたアーチャーにさえ、そう思わせるほどの自信が彼女の声には秘められている。

「信じろというのか。酷な言葉だ」

「違うわ、これは信頼よ。私もあなたを信じている。幻想郷の存亡を賭けたこの一手、しかと実現して見せなさい。上白沢慧音」

「その減らず口を後悔させてやるぞ。……絶対、後悔させてやるからな」

 アーチャーは壁に背を向け、走り出す。魔力の少ない身体に鞭を打って、全速力で八意永琳の元へ。破滅へ向かう世界に落とされたたったひとつの希望、その計略を成就させるため。

「だから頼む。頼むから生きていてくれ、輝夜殿――!」

 かつて幻想郷には明けない夜があった。

 その異変の首謀者の名こそ、蓬莱山輝夜。彼女がオルターとして召喚された経緯は、その異変にこそある。

 永夜の帳、永月輪転結界。それは明けない夜の再現。この結界が成就すれば、夜は明けず、世界は滅亡の半歩手前で踏み留まる。

「事ここに至り私が喚び出されるということは、ここが幻想郷の限界ということなのでしょう。ここまで状況が切迫してしまえば、私なんてただの延命装置にしかならない」

 つまるところ、そこで打ち止め。終末に喚び出された最後のサーヴァント、世界が用意できる最大の抑止力をもってしても、根本の解決には至らない。

「次の手があるのか、はたまた、ただ終わりを先延ばしにしたいだけなのか。答えは私にもわからない」

 だが、やることだけはわかっている。

 せめてその目的だけは達成させてもらおう。

 オルターは壁を背に立つ。植物兵を増産するバーサーカーを前に、少しの余裕も崩さない。

 相手が本当に不死であろうが関係はない。そんな些事に対する恐怖など、永劫の刻の前には塵芥も同然。この身はもとより、不変の干渉は受け付けない。

「行かせないし、殺されないわ。あの子が死んでも私が死んでも、幻想郷は滅びるのだから」

 

「――宝具。五大神宝・竹取飛翔」

 

 虚空を照らす宝珠。

 展開するは虹霓結界。

 やがてこの世界を永夜の帳が包む頃、草木の一本さえ、壁の中には残らなかった。

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