人間に戻りたい狐。現在、奮闘中ッ!! 作:マッカーサ軍曹∠( ̄^ ̄)
「ただいま〜……って言っても誰もいないわよね」
「キュ、キュウ……」(く、苦しい……)
「ごめんなさいねわたあめ。まだケージを買っていないから苦しかったわよね……もう出てきていいわよ」
「キュー……キュ」(あー……しんどかった)
俺の名前が決まった後、俺はそのままマリアさんの家で飼われることになった。
実は、俺は名前が決まった時はわたあめって名前は普通によかったと思っていたのだが、それよりもまず驚くことがあった……それは、彼女がトップアーティストのあのマリアだったからだ。
俺は元々動物番組かニュース番組しか見たことがなかったのだが、それでもトップアーティストのあのマリアのことは知っていた筈だったけど、あの時は空腹だったし、自分が狐だったことをずっと意識していたので本人が名乗るまでは本当に分からなかった。
……よくよく考えたらあの青髪の女性は翼さんだったんだ……って待てよ?ならあの銀髪の女性って一体誰なんだ?クリスって呼ばれてたけど……
「えっと、まずは家で出来る簡易的な物で何とかしましょうか。確か司令が言ってた物で作れるのは……寝床ね、ってよくよく考えたら映画をみれば大体出来る司令って凄いわよね」
「キュー」(映画見て大体出来るって……司令って何者なんだよ)
「あら、お腹が空いたの?ごめんなさいねわたあめ。少しだけ待ったら貴方の寝床が出来るか」
そう言って作業を続けるマリアさん。
今、俺は話の内容にツッコミをしただけだったのだが、マリアさんはお腹が空いたと解釈したらしいので、やはり狐なのでうまく意思疎通が出来ないのは仕方ないだろう。
……しかし──
(この部屋広いなぁ……いい匂いもするし、流石トップアーティストの家だな)
よくよく考えてみれば、トップアーティストの家に一般人が入ったなんて知れば確実にスキャンダルである。
今はまだ自分が狐だから問題はないのだが、これがもし何らかの形で人間に戻った時にそれが目撃されたら完全にストーカー扱いか泥棒扱いだ。
だから、俺も慎重に物事を考えなければならない……その為にもまずは情報が先だよな。
「キュー……キュ」(えっと……リモコンは、あった。えい)
とりあえずまずはニュースでも見て情報収集だな。
「わたあめ、寝床が出来た……って、え!?わ、わたあめがテレビを見てる」
(そんなに驚くことだろうか?……いや、普通に考えたらニュースを見る狐なんていなかったわ。迂闊だった)
「……わたあめ、頭がいいのね。司令が言ってたように狐は頭がいいとは聞いたけど、もしかしてこの子昔に誰かに飼われてたのかしら?」
……どうやら違う意味で解釈したらしい。
俺的には少しホッとしたのだが、マリアさん……せめてそのスマホを俺に向けて写真を撮らなければカリスマのあるイメージがあったのになぁ……
「あの時は翼とクリスがいたからあまり写真とか触ることが出来なかったけど……家だから問題ないわね♪」
「キュ、キュウ……」(こ、今度は写真じゃなくてしっぽをモフり始めたし……)
「はあああああぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜……………いいわね。わたあめは可愛いし、しっぽはふわふわだし……最近はノイズや仕事が多かったから癒されるわね……」
「キュー……キュッ!?」(確かにトップアーティストは仕事が多いから忙しいもんな……ってうおっ!?)
「ふふっ、もっふもふ〜もっふもふ〜♡」
(……うん。俺、人間に戻れたらマリアさんのCD買おう)
俺は、あまりにもマリアさんのその姿を見て、今度からマリアさんの歌を聞いてみようと思った。
だって、こんなにもカリスマを備えた人がここまで動物に対して性格がコロッと変わるのだ。
……いや、これは多分俺自身が可愛い姿だからと言えるからかもしれないが、こんな美人な人にもふもふされて嫌な気分にはならないだろう。
「……やっぱり動物は癒されるわね。ってそろそろご飯の準備をしたいのだけど……せっかくだから先にお風呂に入りましょうか」
「キュー……キュッ!?」(あーお風呂を一緒にですね。分かりま……へッ!?)
「さ、行きましょ♪」
「キュー、キューッ!!」(ちょ、マリアさんッ!待てくださいッ!俺中身人間ですからッ!待ってえええええぇぇぇぇぇッッッッッ!!!!!)
どうやら狐になっていいことばかりではないらしい。
『ここでニュースです。〇〇市〇〇大学の愛原雅人さん21歳が行方不明となりました。警察は誘拐事件と判断し、現在は近隣での注意の呼びかけと捜索を行っています』
次回狐、現在入浴中ッ!