怪獣人類の英雄探求   作:ペンペン弐式

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どうも、初めまして。小説を学ぶペンペン弐式という者です。仕事が忙しすぎて、書けていなかったのですが心機一転、久しぶりにまた書こうと思って始めました。

というわけで本編をどうぞ。


序章 その怪獣人との出会い
英雄の学び舎


何時どこでの記憶かは分からない

 

何かの為に戦っていた

 

戦い続けていた

 

一人の時もあった

 

大勢の大切な人たちと共にすることもあった

 

だが

 

最期には

 

やはり独になっていた

 

こことは違う場所で生きていた記憶

 

ある時は喜劇

 

またある時は悲劇

 

色々な人生を歩んできた記憶

 

その記憶を思い出す度に

 

嬉しくもなる

 

悲しくもなる

 

喪失と虚無が自分の感情を支配しそうになる

 

でも

 

どの記憶にも共通することがあった

 

どんなにどん底に落ちようとも

 

進むことを止めなかった

 

 

 

 

 

 

負けないで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼の顔を持つ龍の 一匹の怪獣が 何処までも黒の何かに埋め尽くされた空を睨みつけていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

懐かしい夢を見ていたような気がした。何処か遠くの場所に生きていたような。何か大切なことを忘れているような。

 

「また、眠っちまってたのか」

 

そう言いながら、畳の上で寝て硬くなった体を解しつつ男は立ち上がる。見慣れた古びたボロアパートの一室。家具も必要最低限の物しか置いておらず、部屋の隅においやっていたちゃぶ台の上には、粗末に開けられた封筒と書類が置いてあった。

 

「……そういや、俺は普通科志望だったから良かったが、アイツはちゃんと受かったんじゃろうか」

 

そう思った男はスマホを確認して、通話アプリを起動させる。

 

「……ほぉか、アイツはちゃんとヒーロー科に通ったみたいじゃのぉ」

 

男が思い出すのは、先日に受けた雄英高校の入試の時についてだった。自分の隣で一斉に試験を受けている際に知り合った何処か頼りないが希望に満ちた目をしていた男。ひょんなことで会話が弾み、お互いに連絡先を交換していた。男と違い、彼は倍率日本一のヒーロー科志望だったので無事に通っているか不安ではあったが、アプリでのやり取りで彼が無事に合格したという返しがあったのだ。

 

「イズク、科は違うかもしれんがこれからは同輩じゃけぇ、よろしくのぉ」

 

男も、雄英での友人の一人目ができたことを嬉しく思い、祝いの言葉をアプリで返した。

 

「よおやっと、始まるんじゃのお。俺の、新しい人生が」

 

これから始まるであろう、人生の新しい旅路に期待を持ちながら、男は窓を開けてる。未だに夜は明けておらず微かに東の方が明るくなり始める頃、眠っている街を見つめる。人生の変わり目に立ち、期待感とは別に今まで自分の歩んできた道のりも思い出させていく。

 

何時も、暗い路地裏の間から、ずっとそれを眺めていた。野良犬のように。その身に秘める力故に、親に捨てられた。誰もが自分を拒み、孤独だった。あらゆる人から憎悪を向けられ、社会にさえ殺されかけた。

 

だが、決して折れることなく。どん底に落ちても、前に向かって進み続けてきた。そうすることでしか、生きることができなかった。だけど。漸く、ここまでこれた。

 

「見極めるとするさ。今の世界に、本当に必要とされているものが一体何なのかをな。その上で、俺は」

 

自分の求めていいる、本当に望んだその場所への決意を胸に、その背に鬼の顔を持つ龍を刻む男はギラギラと目を輝かせ青く染まった広大な空を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、この数日後。彼は、本来の自分を取り戻した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「普通科志望の奴に、少し気になる奴がいるんです」

 

「気になる奴?」

 

「筆記は申し分無し、合格ラインは余裕に突破している。けれど、問題はそこじゃない。私も、その生徒と偶然にすれ違ってなければ何も思うことはなかったでしょうが」

 

「WoW!!あの辛口なイレイザーがそこまで押すとは珍しいZE!!」

 

男が合格通知を受け取る前、つまり雄英高校で合格者を決める会議が開かれているときのことだった。

 

「はっきり言って異常です。本人は周りに悟られないように上手く誤魔化していましたが、あの年齢で出せる雰囲気とはとても思えません」

 

「雰囲気?」

 

そう雄英の教師である、彼。プロヒーローであるイレイザーヘッドは語る。彼が普段こういう場において一切ふざけたことを言う人物ではなく、むしろ他の教師陣には見抜けないようなことも見抜き、きちんと言葉として伝える男から伝えられた情報は教師陣を悩ませるには十分だった。

 

「蘇我 龍鬼(そが るき)。道極中学出身。個性 超能力。少し異形系も混ざっているか。確かに道極は不良校だけど、彼の素行調査については寧ろ何処にでもいるような子だったって書いてるけど」

 

「確かに、彼は一度も問題を起こしたことがない。寧ろ、敵になりかねない素行不良な生徒たちの良き相談相手になって道を外させなかったということを、彼の担任の先生から聞いています」

 

「個性に関しても、強力な個性のようですがある程度制御できているみたいですね」

 

「六歳の頃に両親に捨てられ、親戚にも盥回し。その後、行方知れずになり3年後海外のスラム街で発見される。後に、東京の孤児院に引き取られ現在に至る。よくこんな境遇で、敵にならなかったわねこの子」

 

「イレイザーヘッドノケネンモワカルガ、トクニモンダイガナイノデハナイカ。」

 

長い髪によって顔の前が隠され、その頭部から三本の大きな角を生やし口には厳重な口当てのようなモノが付けられた他の受験生よりも遥かに大柄な男子の写真と共に彼の情報が掲載された資料を見ながら教師陣たちはそう口にする。しかし、イレイザーヘッドだけはやはり納得していないようで手元にある資料を見ながら皴をよせていた。

 

「やはり気になるんだね、相澤くん」

 

「正直、これほどの生徒がヒーロー科ではなく、普通科だけを受けていたことにも疑問があります。いくらウチの普通科が進学や就職に有利になるとは言っても、ウチの普通科を受ける殆どの生徒がヒーロー志望でありヒーロー科と一緒に受けている」

 

「つまり、ヒーロー科に通る能力があるにも関わらず、この受験生は普通科だけを受けた。君の言葉を借りるなら非効率でありそこに違和感を感じるってことだね」

 

「思いすぎならばそれでいい、しかし敵の動きも活性化している現状。あらゆる可能性を考慮して生徒たちを導いていかなければならない。それが教師の役目ですから」

 

イレイザーヘッド、相澤の言う通りヒーロー飽和社会と世間では言われているが驚異的個性を持つ敵が数多く出現してきており、敵による被害は日に日に増していた。少しでも不穏な分子があるならばそれについて警鐘を鳴らす義務がある。それが、雄英高校の教師である彼らの立場だった。

 

「……私は、彼なら大丈夫だと思う」

 

「オールマイト?」

 

だがしかし、そんな相澤の不安を拭うかのように優しい男の声が彼に待ったをかけた。

 

「相澤君の感じたものは恐らく正しいと思う。彼には恐らく、彼の境遇的に他の同年代の受験生には無い何かがあるんだと思う。だが、彼も雄英高校に来ると決めたのなら。もし彼が君の言うような危険性を帯びているならば。それを正しい光へと導くのも、私たち教師の役目だと私は思う。無論それは、相澤君も同じ考えだと思う」

 

ニッコリと笑みを携えて優しく語りかける痩せこけた骸骨のような見た目の教師。日本№1のヒーロー、オールマイトはそう語った。日本一の語るその言葉には、安心感と説得力が感じられた。

 

「……そうですね、まずは入学させてみて本人と直接話してみるのが一番効率的か」

 

「結論は出たようだね」

 

「はい。取り合えずは、様子見と言うことでいいと思います。彼、蘇我 龍鬼については」

 

そうして、教師たちの合格者会議は次の議題へと移っていった。しかし、その中で。オールマイトだけは、別の考えを思考していた。

 

(相澤君や他の教師にはあんな感じで言ってしまったが彼に対して思うことがあるのは相澤君だけではない。何故だろか、彼の名前を見て口にするたびに。私の中で懐かしさと安心感のような感情が湧いてくる)

 

イレイザーヘッドとは別の意味での思いを胸にオールマイトは新入生入学の日を迎えることになる。そして、その思いが決して気のせいでは無かったことを知るのはこれより少し先の話であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

怪獣人間の英雄探求

 

序章 その怪獣人との出会い

 

英雄の学び舎

 

 

 

 

 

 

 

 

季節は春、別れの季節も終わり始まりの季節へと入っていた。雄英高校普通科C組の始まりは、色々な想定外な事態があったヒーロー科の生徒たちとは違い、他の進学高校と同じでいたって普通であった。

 

当たり前ように始業式をして、当たり前のようにクラスメイト達と親睦を深め、新たなる高校生活に胸躍った。

 

そして、自分たちの本当の夢。ヒーローになるべく目指す道を模索し、将来に向けての歩みを始める日々が始まった。

 

「なんて、いたって真面目で当たり障りの無い出だしで始まったが。とてもそういう状況とは思えんが。のぉ、ヒトシ」

 

「…俺は、あれだけやっておいて涼しげなお前の方が異常だと思うぞ」

 

夕暮れ時の古びた体育施設、雄英高校の真新しい施設とは違い過去に使われて今は使用する生徒も殆どいないその場所には、今二人の生徒がいた。一人は、目に何処となく隈を作り息も絶え絶えになっている紫髪のツンツン頭の生徒、心操 人使。

 

「あの程度の仕合でへばるようじゃヒーロー科編入の道は遠いぞ。オドレの個性を強化するのと同時に、まずオドレ自身の身体を強くせにゃならんからのお」

 

そして、もう一人。黒髪を腰の辺りまで伸ばし頭からは特徴的な大きな三本角、口に何かを隠すかのような口当てを身に付け、その身体はまるで歴戦の猛者の如く鍛え抜かれ只でさえ大柄な彼の体を更に大きく見せた。

 

「第一、龍鬼。何でお前みたいなやつがヒーロー科じゃなくて普通科に来てんだよ⁉明らかに選択ミスだろ‼」

 

「人にはそれぞれ事情があるっちゅうもんじゃ。ほれい、そろそろイズクが来る頃じゃ。早よ立たんかい」

 

そう言いながら大柄な生徒。蘇我 龍鬼は、座って息を整えていた人使の手を掴み強引に持ち上げた。

 

「オドレの場合、個性を生かすための手として手っ取り早いのは近接格闘戦において相手をかく乱しながら個性の発動条件を引き出す戦法。体育祭までの時間は短い、ちゃんとしたもんは無理じゃろうが、ヒトシの個性は発動さえさせれば後は煮るも焼くも好きにできる。ようは、それまでの立ち回りよ。ここを考え鍛えていけば十分次の雄英体育祭でヒーロー科の連中とも喧嘩できる。ようは頭を使えっちゅうことじゃのぉ」

 

「口にするのは簡単だけどよ、やるのはその何倍も難しい。つくづくそれを今の段階で出来てるヒーロ科の連中との差を感じちまうな」

 

「あんだけ連中に威勢良いこと口にしといてなんなら。連中だって俺たちと同じ、高校一年生。歩んできた人生の時間は一緒じゃ、ビビるこたぁない。まあ、経験という点では連中は童貞を卒業しとるがのぉ」

 

「分かってるさ、敵との大規模戦闘。緑谷たちA組とのその経験の差が大きいことくらい」

 

二人がここでヒーローとしての訓練を行っているのにも理由があった。後日に控えている雄英体育祭である。個性の台頭によって、スポーツ文化は今や廃れ、オリンピックといった過去のスポーツの祭典が軒並み衰退している現代超人社会においてオリンピックの代わりと呼ばれるほど、その注目度は高くここで活躍した生徒たちはプロのヒーローたちからも目をかけられ将来のヒーロー活動において、優位に働くことができるのだ。

 

(だが、入学時の俺とは違う。あの時よりも確実に強くなってる)

 

かいた汗を拭いながら、心操は龍鬼とここでの訓練をするようになった時の事を思い出す。入学当時、入学試験において個性の相性の問題によってヒーロー科への、ヒーローへの道が遠のいたことにいくら織り込み済みであったとはいえ半ば絶望していた人使。

 

その個性故に、なるべく自分を出さないように、普段は寡黙で考えていることをあまり口にしないようにして今まで生きてきた人使ではあったが、普通科に入ってそれに更に拍車がかかりそうになっていた。龍鬼と初めて話すまでは。

 

『ヒトシの個性、ヒーローとして最も必要とされている個性の一つだと俺は思うがのぉ。

理性を失って交渉もできない相手に対して、有無言わさず無力化できる。人質事件、未解決事件における証言集め、尋問捜査、挙げればきりがない。警察や検察、下手をすれば国の諜報組織だってオドレのことを欲しがるじゃろう。オドレの周りの人間が今までオドレ等の無知ぶちまけてどんな評価をオドレにしてたかは知らんが、俺はヒトシがヒーローに成れない、なんてことは到底思わんが』

 

些細なことだった。偶然、個性について二人きりで話す機会があった。ただそれだけだった。だが、今まで自分の個性がヒーローよりも敵のようだと周囲に罵られてきた人使にとって肉親以外で初めて真正面から受けた好意的で真っすぐな意見だった。

 

それから自然と二人は会話をする機会が増えるようになり、一緒にいる時間が多くなった。そして、自分自身のヒーローとして道を進むために、放課後ヒーローとしての実戦訓練をともにするようになっていた。

 

「焦り、飢えることも大切。だが何よりも大切なのは自分自身の弱さを受け入れること、か」

 

「お?爺の言葉を覚えとってくれたんか。爺も嬉しいじゃろうよ」

 

「お前がよぼよぼの爺さんの所に俺を連れて行ったときは正気かって思ったが、まあ。色々助かったよ」

 

「あの爺、見た目は耄碌死ぬ一歩手前なのに反して喧嘩がめっぽう強いからのぉ」

 

水分補給をしながら、火照った身体と精神を押しつかせる。今日の普通科の授業は諸事情により昼までだった。既に二人は半日近く、施設で訓練を行っていた。基礎体力作り、個性制御、精神、並びに戦闘訓練。それらを連続でこなしているにも関わらず一切顔色一つ変えていない同じ年齢の筈の龍鬼の姿を見て心操は自分との差を痛感していた。

 

初めて訓練をした時から分かってはいたが、龍鬼と自分との間にはとてつもない差があった。強くなっているとは言え、その差が埋まったとは到底思えなかった。

 

「……本当に、どうやったらそんな風になるんだか」

 

「俺に関しては、環境が恵まれていた、としか言えんのぉ」

 

そんな感じで二人で会話をしていると、施設の扉の入り口が開いて二人の下へと一人の生徒がやってきた。

 

「龍鬼くん、人使くん!!ごめん、約束時間よりも遅れちゃって!!」

 

「おう、イズク。ようやっと来たのぉ」

 

「おっす、緑谷」

 

何処か頼りの無そうな緑髪の生徒が、申し訳なさそうにしながら二人の前へと走っていく。ヒーロー科、1年A組の緑谷 出久だった。

 

「皆に捕まっちゃて、少し撒くのに手間取っちゃった」

 

「悪いな、緑谷。あんなこと言った手前、お前と訓練してることがばれたら色々と面倒だからな」

 

「いきなり人使君が、放課後に行くからなっていた時は何だとは思ったけど、あんなこと言っちゃうなんて正直、びっくりした」

 

「ま、多かれ少なかれ。普通科の面々はヒーロー科に対して多少なりとも思うことがあるんじゃ。ま、ガス抜きみたいなもんよ。何人かヒーロー科連中は釣れたみたいじゃがのぉ」

 

「龍鬼を見たヒーロー科の連中、圧倒されてたよな。まあ、無理もないが」

 

「龍鬼くんのこと初めて見て、かっちゃん以外に怖がらない人はいないと思うけど」

 

「失敬な⁉ルミの姐さんは全く動じんかったわい‼」

 

「№1女性ヒーロのミルコを引き合いに出されてもな…」

 

実はこの日、心操は普通科の生徒たちと共にヒーロー科に対して宣戦布告を行っていた。雄英体育祭において、その活躍が認められれば、普通科からヒーロー科への編入も可能である。故に、お前等ヒーロー科のダシに使われるつもりは一切無い。そのこともあって、ヒーロ科と普通科の間では現在、戦いの前の静けさともいうべき状況が作り出されていた。

 

「そんで。イズク、纏わす分はどれぐらいできるようになったんじゃ」

 

「うん、今は5%が限界だけど。体育祭までには8%まで出せるようにしないと‼」

 

「この前3でもう5かよ。ったく、お前も才能マンだな緑谷」

 

「二人がいてくれたおかげだよ!!僕一人だけじゃ、とても」

 

3人で訓練するようになったのは、入学して暫くたった時のことだった。雄英ではこの時、1年A組に対して敵連合を名乗る集団の襲撃事件が発生。突然の敵による襲撃により、当時の雄英高校は大混乱に陥った。しかし、今年度から赴任していた№1ヒーロー、オールマイトの活躍により辛くも最小限の被害で切り抜けた。

 

だが、敵との戦闘を肌で感じたA組の生徒たちは力不足を痛感し、こののままではヒーローになることはできないと自覚した。特にそのことを人一倍感じていたのが緑谷 出久だった。

 

「あの時に感じたんだ、もっと強くならなくちゃって‼」

 

「そいで、俺とヒトシが放課後ここで鍛えちょるってことを言ったら一緒にやるって言ったんじゃったのぉ」

 

「あれももう数週間前か、あっという間だな」

 

「準備期間っちゅうのは、そういうもんじゃ。あるように見えて、その実まったく足りん」

 

「それには、僕も同意」

 

自身の無力を痛感した緑谷はそのことを入試の時に仲良くなった普通科にいた龍鬼に相談した。元々、入学前から色々な話をしており、特に個性面でのアドバイスを出久は龍鬼から受けていた。そして、龍鬼が実践的な武術に長けていることも聞いておりそのことも含めて強くなりたいと相談した結果、今にいたっていた。

 

「ヒトシのと違って、イズクの場合はでかいエネルギーを使った超力。おまけに個性が発現してまだ1年ぐらいしか経っとらん。そがぁな身体にいきなり全力で個性を出せっちゅう方が無理な話じゃい」

 

「まだ耐久力の弱い器に許容の限界の力を入れて破裂させるようなものだもんな」

 

「だから、身体に慣れさせるために力を最も弱い状態で全身に纏わせるようにして体を慣れさせる必要があるんだよね」

 

「ほぉよ、最初は慣らしじゃい。最初から全力出して身体を壊したら元も子もない。如何に身体を慣らし、制御し、力を自分のもんにするかよ。のぉ」

 

そう言いながら二人と距離を取る龍鬼、その行動を見て二人も察しがついたのか直ぐに息を整え、身体を動かしやすいように手に持っていた水筒などを施設の隅に投げる。

 

「話は此処までじゃ、本題に入ろうかのぉ。ある程度、形になってきたのは分かっとるから、今日は個性を使いながら二人同時に俺と戦ってもらう。縛りを外す。ヒトシもイズクも個性を使いんさい、今までと違って個性アリでの実践訓練じゃ。連携も含めて、オドレ等がどれでやれるようになったんか見させて貰う」

 

そうして、ある程度距離を取った龍鬼は二人に方に向いて構えを取る。

 

「遠慮なくやらせてもらうぞ龍鬼。俺も、進まなきゃいけねぇんだ‼」

 

心操はその言葉と共に、構えを取りながら自身の個性を発動させる。この雄英に入って、龍鬼と二人で編み出した自分の新しい力を。

 

『身体は強くなる』

 

心操は言葉と共に自分自身の身体に洗脳、暗示をかける。これは、龍鬼の発案と彼の個性の下に完成した人使の新しい戦い方の一つだった。ヒトシの言葉と共に彼自身の身体の筋肉が締まり、身体の全身が強くなる。一時的な身体強化状態、自己暗示強化(マインド・バフ)である。

 

「ほう。俺の龍鬼術が個性と身体に馴染んで洗脳の個性が成長したか。そこまで出せるようになるとはのぉ」

 

「まだ、制御できる時間は短いがな‼」

 

「それでも十分じゃい。よお短い時間でここまでやってくれたのぉ。流石じゃい、ヒトシ」

 

「人使くん凄いよ‼自己暗示強化をここまで完成させるなんて‼僕も、負けられない‼」

 

隣で心操が変化するのを見て、自分のことのように喜んでいた緑谷ではあったが自分も負けられないと思い、3人の訓練によって完成させた力を引き出していく。自分の中にある力を身体の全てに流し込み、纏わせるように。

 

「ワン・フォー・オール‼フルカウル‼」

 

緑谷の全身に血管の如くエネルギーの流れる線が浮かび上がる。未だ全力の個性に耐えられない緑谷に対して、龍鬼と心操のアドバイスを受けて緑谷自身が編み出した常時個性発動状態。これにより、素早い動きと超人的な力を維持して出すことが可能になった。

 

「さあ、始めよか。かかってきんちゃい‼」

 

「今日こそ、お前をそっから引きずりまわしてやるぞ‼」

 

「行くよ、龍鬼君‼」

 

その言葉と共に二人は同時に龍鬼に向かって向かっていく。今までの手合わせで二人は一度も龍鬼に勝てたことは無い。それどころ、傷をつけることや一つの箇所から動かすことさえできていなかっ。

 

真正面からの攻撃は殆どいなされ、かと言って後ろから攻めても普通に対応され、逆にカウンターを受けて返り討ちに合ってしまっていた。死角が無いようにさえ思えていた。だがそれは、あくまでも個性を使わない状態。己の戦闘技術でのみの話だ。

 

(前から攻めても、後から攻めても今まで防がれてきた。それなら‼)

 

(緑谷は上から行くか、なら俺は‼)

 

二人は阿吽の呼吸でそれぞれ最初の一手を理解し二手に別れて龍鬼に殺到する。その間にも動き続け、龍鬼に何処から攻撃が来るか悟れないようにする。

 

「今までは散々防がれてきたけど‼」

 

「これならどう受ける、龍鬼‼」

 

動きが早い状態での二面性攻撃。一人は後に回り、もう一人は上から。今までは動きが遅いため対応されてきたと考えた二人は素早い立ち回りによって一気に龍鬼に肉薄し対応できないようにして攻撃をするつもりだった。

 

「DETROIT SMASH‼」

 

「MIND IMPACT‼」

 

何よりも二人は短期決戦という風にお互い理解していた。長引けば、龍鬼のペースにはまってしまいそのままずるずると引きずられてしまうのを、多くの手合わせで理解していたからだ。今までは頭で分かっていても、実践することがなかなか難しかった動き。だが今は、違った。二人の渾身を込めた一撃を、今現在において出せる最大限の一撃を龍鬼に叩き込む。

 

「……狙いは悪くない、普通ならば対応は難しいじゃろう。じゃけどのぉ」

 

だが、それでも。二人の全力の拳は龍鬼に届くことは無かった。心操の攻撃は左手を後ろに回し、緑谷の攻撃は右手を上にあげて、二人の全力を込めた拳を何の労もせずにつかみ取って防ぐ。受け止めた力の余波によって、施設全体が揺れる。如何に二人の込めた力が強かったかが物語る。しかし、龍鬼はそれをものともせず軽く受け止めてみせたのだ。

 

「っく、防がれた‼」

 

「相変わらずの規格外が‼」

 

二人はある程度、この結果を予測していたもののいざ目の当たりにすると苦虫を噛み潰したような、歯がゆい気持ちになる。強くなった、だがそれでも目の前の友を超えることは叶わない。しかし、そんなことを思考する暇も龍鬼は与えない。そのまま二人の手首に掴みなおし、コマの要領で自分を回転させながら二人を最初の位置へと放り投げる。直ぐに体制を立て直そうとする二人だが、そこに龍鬼の個性が間髪入れずに発動する。

 

「攻術(せめわざ) 鬼火弾(おにびはじき)」

 

龍鬼の中央の角が怪しく発光し両手を二人の方へと向ける。手は深紅の炎に纏われ、その火が弾丸の如く二人に向かって殺到する。直ぐに防御の姿勢を取るが未だに中に浮いている状態であり龍鬼の攻撃が二人の身体に諸に直撃する。

 

「っまた、届かなかった‼」

 

「全く、どんだけだよ龍鬼‼」

 

直ぐに立て直し二人は立ち上がってみせるが、想定以上のダメージを受けてしまっていてふらついてしまう。だがそれでも、個性の制御について一切乱れることなく維持することができていた。

 

「いや、流石に今の堪えた。こりゃあ、想定以上じゃ。のぉ」

 

そう言いながら、龍鬼は二人に自身の手のひらを向ける。先ほど攻撃を受け止めた手には確かに焼け焦げたような後が残っていた。二人の今出せる最高の一撃は、龍鬼に確かに届いていたのだ。

 

「傷を入れられるんは、初めてじゃったのぉ。それに、術使うつもりも無かった。素手ごろだけで十分じゃあ思うとった。ホント、オドレ等の成長速度は異常じゃい」

 

だが二人が初めて龍鬼に一矢報いることができたことに喜んでるいるのもつかの間だった。龍鬼の周りにある空気の質が変わる。それに伴って、龍鬼の三本角も妖しく光を放ち、全身の筋肉が隆起していく。

 

「次の段階じゃい、今度は俺も力を使う。久しぶりに俺も火付いたわ」

 

明らかに何時もは違う龍鬼の様子に驚愕すると共に、新たなに超えるべき壁を前にして二人の気持ちが昂っていく。

 

「それで終わりじゃないじゃろ。ほれい、俺をここから動かして見んさい‼」

 

その言葉と共に再び龍鬼に向かって駆け出していく二人。それに応えるかの如く龍鬼は二人に向かって左手を振り上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、ヒーローが職業として確立した世界。善悪渦巻く超人社会において、一匹の怪獣人類が一つの場所に向かって、進み続ける物語である。

 

 




タグもおいおい増えていくと思います。仕事が忙しいので不定期になると思いますがエタラ無いように頑張りたいとおもいます。

ではまた。
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