怪獣人類の英雄探求   作:ペンペン弐式

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この小説を読んでくれている皆様、お久しぶりです。私です。

リアルの方が色々と忙しすぎて、全く執筆が進まないうえに。この先の展開の大まかなものはある程度固まっているのモノの。文章として言語化するのにとても手間取った結果更新が1年以上滞っておりました。

こんな小説でも待っていてくれた皆々様、本当に申し訳ありません。

では、言い訳はほとほとにして本編をどうぞ。

因みに今回から新しい試みとしてAIによる挿絵を使用しております。

またそれに伴ってタグも増やしましたのでご確認ください。


英雄としての在り方 弐

 

 

英雄としての在り方 弐

 

 

 

「皆さま、騎馬戦以来になりますね。改めになりますが、今回雨の怪獣から皆様への諸々の事情説明を引き継ぎました、D組並びに陽野家現世周りに所属しております渉 凪と申します」

 

雨の中を急いできたのであろう少し寄れた服に何処かくたびれた雰囲気、そして名刺を差し出したときから変わらないにへらと胡散臭い笑みを浮かべる自分たちと同じ雄英の男子生徒。

 

「って、唐突に急に言われてもな……」

 

「B組の皆様はお知り合いのようですが……まさか同じ雄英の方だったとは……」

 

「ホントにあんたが…、相澤先生の言っていた事情を説明してくれるって人……?」

 

自分たちの担任から、今までの事やこれからの事、諸々のことを詳しく説明できる人間と聞いていたので。てっきりプロヒーローやそれに準ずる何処かの組織の人間、それもきちんとした大人だと思っていたA組の面々は何処か困惑気味であった。

 

「…まさか、テメぇだったとはな。何で直ぐに言わなかったんだ?」

 

「そうネ。もっと早く行って欲しかったデス」

 

逆にB組の鎌切や角取は、不満げな視線を突きつけて抗議した。

 

「私の方も猶予が差し迫っているので。何なら入学して直ぐにでもこの界の置かれている状況を説明したかったのですが、上の方から止められていましてね。ただ、先日に漸く上の方が行っていた各方面への根回しなどの準備ができたので皆様にお伝えすることができるようになった次第です」

 

申し訳ないと言いながら、B組の面々に頭を下げる凪。どうやら、B組の面々は既に面識のある人物のようだった。

 

「この前の騎馬戦の時に、鎌切やポニーたちと一緒に騎馬を組んで一緒に戦ってくれた奴なんだ。本人の個性が、隠遁を得意とした霧?みたいな個性で、極力目立たないようにしてたから……」

 

「A組のメンツが知らなくても無理はねぇ。個性のせいもあるが、俺たちにも挨拶はしてくれたものの口数が少なすぎて碌に会話もできてなくて。騎馬戦が終わって気が付いたら何時の間にか消えてたんだからな……」

 

そう言いながらA組に凪のことを説明する一方で、どこか責めるようにジト目で凪を見つめるB組の面々に凪は少し困ったような笑みを浮かべる。

 

「まあまあ御説教は後ほどに、それよりも皆さん。まずは何故私が皆様に対しての事情説明をするために選ばれたのか、そのお話ですね。」

 

色々言いたいこと、聞きたいこと、突っ込みたいことは幾らでもあるのだが。これ以上追及しても話が進みそうにないため、B組の面々は一旦溜飲を下げて改めて凪の言葉に耳を傾けた。

 

「本題に入る前に、私の所属しております陽野家(ひのいえ)についてまずお話させてください。皆様、陽野家について聞いたことはありますでしょうか?」

 

陽野家、なになに家と聞くと自分たちが良く知るのは飲食関連や武術関連若しくは宗教団体や犯罪者集団、裏社会組織などが直ぐに思い浮かんだ。

 

「…陽野家って、何だ?どっかのヤクザ組織か?」

 

「馬鹿、このご時世でただでさえ絶滅危惧種な極道組織所属の奴が。しかもその原因のヒーローを育成する高校に入学できるわけないだろ」

 

そんな中でも、陽野家という単語を聞き信じられないといった顔をしていたのが。都市伝説などに詳しい2人の生徒だった。

 

「……陽野家、実在したのか……」

 

「でもあれは、偽書ってことで誰かの創作物ってことで決着がついたはず……」

 

「常闇君、何か知ってるの?」

 

「レイ子も、何か分かったの?」

 

比較的都市伝説やホラー関連の情報に詳しい常闇とB組の柳にとって、凪が言ったその単語は確かに情報としては知っていたが、未だに信じられないといった表情のままだった。

 

「……一時期ネットで話題になった日本の最古の古文書とされた偽書、護国神話の中で語られた組織の名前だ」

 

「……偽書によれば、人の時代が始まる前の神代の時代から存在する組織で。要約すると世界を滅ぼす何から私たちを守護してくれているそうなんだけど……」

 

「あまりの突拍子もない情報なのと、その情報元が当時のネットの掲示板だったのもあって直ぐに偽書だと判断されて、掲示板も突然閉鎖をされたはずだ」

 

「まあ、あんな怪文書的な内容すぐに信じろってのが無理な話よね……」

 

「流石ですね、常闇さん、柳さん。そちらの方面には非情に明るい、そこに付け加えるならその掲示板を消させたのは我々と言うことですね」

 

そう言いながら、凪は制服のポケットから何かを取り出し生徒たちに全員に見えるように手に掲げた。それは、赤色の太陽を模した独特な形をしたシンボルの描かれているバッジであった

 

「始まりの陽の紋様…⁉」

 

「あの掲示板の情報の通り、ってことはあの怪文書はホンモノ…⁉」

 

「まあ、そういうことになります。私の所属している組織は、イルミナティやフリーメイソンといった皆様が1つは聞いたことがある都市伝説に出てくるような所謂秘密結社という物です。表と裏の世界に属する、あらゆる国家、宗教、権力、イデオロギー、英雄、敵などのコミュニティに一切属していない、世界の一部の人間でしかその存在を知ることのできない、この世界が成り立った当初から存在する最古の組織となっています」

 

そう言いながら、凪は再びバッジをポケットにしまう。しかしながら。話している内容があまりにも突飛すぎるためこの時点で置いてけぼりになっている生徒たちは困惑の表情を皆浮かべていた。

 

「まあ、こんなことを言われても何言ってんだお前状態ですよね。私も最初に現世周りに勧誘された際に同じことを説明された際には思わず病院に行けと当時小学生だったにも関わらず言ってしまいましたから…」

 

そう言いながら凪は、気持ちは解りますと頬をかきながら苦笑いを浮かべた。

 

「しかしながら、こちらも一から全て説明をしている時間がありませんので。まずは皆様に私が雨の怪獣の代理であるということと、私の話す言葉を信じていただけるようにその証拠をお見せしましょう」

 

凪がそう言葉を紡いだ瞬間であった。突如、彼の背後に濁流が出現し生徒たちを飲み込もうと殺到してきたのだ。

 

『ちょ、おま⁉』

 

余りに突然のことで、生徒は咄嗟に逃げ出すこともできずにそのまま濁流に飲み込まれてしまう。

 

言葉を発するまもなく襲ってきた濁流に自分たちの個性を使って何とか逃れようとするも、個性を発動することができず。ただ、激しい流れに身を任せるしかない状態だった。

 

「おい、何がどうなってだ⁉」

 

「みんな大丈夫⁉」

 

「って、お、おい、全員周りを見ろ‼‼」

 

そして、少して流れに身を任せる感覚がなくなって次に目を開ければ。そこは先ほどまでいた雄英高校の1室の中ではなかった。

 

周囲は朝霞で満たされた、小雨が降る荘厳な入り江のような場所となっていたのだ。

 

「オイらたち、夢でも見てるのか。それとも、この前の体育祭の時みたいに幻でも見せられてんのか⁉」

 

「わりぃ爆豪‼俺を殴って、っていてぇよ⁉言い終わる前に殴んじゃねぇよ‼‼‼」

 

「コントやってる場合⁉何がどうなってんのよ⁉」

 

余りの急激な展開に困惑する生徒たち、しかしそんな生徒たちの気持ちを待たずして頭上に突如として巨大な影が覆いかぶさった。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「ふう~。この姿に戻るのも、半年ぶりになりますか。やはり、元の姿に戻るのは気持ちがいい。加えて、間界にも良い雨もお呼びいただいている。これで、漸く私も雨の怪獣の旗の下に集う権利を得ることができたとういうわけですか」

 

感慨深くそう言葉を発する巨大な銀の魚獣の声色は、確かに先ほどまで自分たちの前で話していた凪のものだった。

 

「これで、私の言葉を信じていただけると思いますが如何でしょうか?」

 

空中を泳ぐように舞っていた魚獣は、そのまま生徒たちの前へと静かに降り立った。そして、そんな凪の怪獣としての姿を見て、彼の存在がどういう者なのか納得したように爆轟がつぶやいた。

 

「……そういうことかよ……、テメェもその後ろに居る奴らも。あのロン毛と同じってことか……」

 

「その通りです爆豪さん、我々の組織に所属する人間は雨の怪獣と同じ人種、その始まりの祖を怪獣に持つ人類、所謂、怪獣人類と呼ばれる種に属する者たちによって構成されております」

 

体育祭で見た龍鬼とは違うが、同じような怪獣として凪の姿に思わず息のむ生徒たち、だがそんな中でも。緑谷だけは、険しい表情を崩さないまま自分の胸元で仄かに光の灯る勾玉を握りながら凪の言葉を待っていた。

 

「護の者もお待ちのようですね……。それでは、時間も押しておりますので。改めて、雨の怪獣から皆様にお伝えするように言われた内容を話させていただければと思います」

 

そう言いながら、凪は口から白の煙霞を生徒たちの眼前に吐息として出していく。やがてそれは形を成して、生徒たちの前でまるで劇を見るかの如く動き始めた。

 

「皆様も既に聞いているとは思いますが、雨の怪獣が皆様に接触し力をつけさせようとしているのは決して偶然ではありません。これから1年も経たずして、私たちの住む世界の外側から敵がやってきます。皆様の知る敵など足元にも及ばない、想像を絶するような強さを持った軍団が私たちの住むこの世界を滅ぼしにやってきます」

 

語られたのは、これから自分たちが紡いでいくことになる壮大な英雄譚。そして、聞きたくもない、逃げ出したくなるような、残酷な未来についての話であった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い巨大な空間の中、特徴的な甲高い巨獣の咆哮がけたたましく鳴り響く。時折閃光がほとばしり、それが線となって空間を切り裂いた。

 

「GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!」

 

赤く光る飢えた2つの目玉がぎょろりと周囲をうっとおしく見渡す。こぼれる吐息に血が混じり、焼けただれた巨翼で周囲を飛び回る2つの影を叩き落とそうとでたらめに振り回す。

 

「ちぃっ‼‼この害鳥が、いい加減くたばりやがれっ‼‼」

 

「埒があかねぇ、ミルコ下がれ‼‼今度こそ炎で一気に消し飛ばす‼‼」

 

「クソが‼‼譲ってやるから、へますんじゃねぇぞガキ‼‼」

 

一つの影が自分の周囲から離れ、鼻先に青い炎を纏った影が踊り出てきた。先ほどから己が身を焼く炎の攻撃が来ると分かっている物の、その前にかみ砕いて粉砕しようと口を大きく開けて突進する。

 

蒼炎拳、ブルーファイア‼‼‼

 

しかしその判断は間違えだった、先ほどまでの炎と違う自分の巨体すら飲み込む程の高熱の蒼炎が襲い掛かる。

 

「GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!」

 

再びの絶叫、全身焼き尽くす炎のあまりの激痛に巨獣が倒れこみもだえ苦しむ。

 

「ちぃっ‼‼まだなじまねぇのかクソが、制御が上手く効かねぇな畜生…‼‼」

 

目の前で苦しむ巨獣に、確かな手ごたえを感じつつも過度に出力を長時間上げ続けたため身体がオーバーヒートしてしまい片膝をついてしまう。

 

「GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO‼‼」

 

己の身を今まで以上に激しく焼かれた痛みに激昂し、攻撃の反動で動けない獲物めがけて残り少ない力を振り絞って止めを刺そうとする。

 

しかし、それを待っていたと言わんばかりに巨獣の頭上から白の弾丸が突貫した。

 

「やっはああああ‼‼止めはもらったあああああああああああ‼‼‼」

 

頭部を的確に捉えた激・踵半月輪による衝撃によって地が陥没し、凄まじい衝撃が周囲に走った。巨獣が陣取っていた祭壇は粉々に砕け散り、空間を覆っていた天蓋は音を立てて崩れ落ちた。

 

月が顔のぞかせ、地下に隠されていた巨大な空間に光が差し込む。二人が戦っていた場所は、何かの地下施設だったようで至る所に、特徴的な塔やモニュメントがいくつも点在していた。

 

月光が未だに土煙が舞う施設を照らす中、流石の巨獣も最後の一撃が応えたらしく全く動くことはなく死に絶えているように思えた。

 

「ったく、やっとくたばったのかよ‼これで、まだ雛って冗談だろうが⁉」

 

「なんだ泣き言か?2位の息子のくせして、なまっちょろいなお坊ちゃん‼‼」

 

「るっせぇ‼‼そういうテメぇも俺が態々援軍に来なかったら今頃あのクソ鳥の腹の中にいた癖に偉そうにしてんじゃねぇよ‼‼」

 

「はっ‼‼テメぇが勝手に来ただけだろうが‼‼偉そうにアタシのこと心配してんじゃねぇよおしゃぶり坊やが‼‼」

 

「上等だ。その減らず口が二度と叩けねぇよおに、今からこの場所ごと焼き払って兎の丸焼きにしてやる‼‼‼」

 

「やってみろ七光り‼‼今度もテメぇのことを泣かしてやる‼‼」

 

戦いが終わったと思っていた二人はそのまま聞くに堪えない口論を始め、そのままの勢いで何時もの喧嘩を始めようとする。

 

しかし、その瞬間二人の頭上に影が覆う。見上げれば、先ほどまで死んでいたと思っていた巨獣が立ち上がり自分たちを踏みつぶそうとその巨体諸共倒れこんでくる。

 

咄嗟に力を入れようとするも、2人とも先ほどまでの激闘のせいで上手く体に力を入れることができずに膝をついてしまう。

 

「GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!」

 

ここにきて、巨獣は勝ちを確信し卑しい笑みをうかべてけたたましい咆哮を上げる。しかし、勝ちを確信したのもつかの間、突き刺すような寒気を感じてしまい思わず目線を前に向けた。

 

巨大な水の柱が自分に迫ってきている、それがその巨獣にとっての最後に見た光景であった。

 

『あれほど、肉喰らいは生命力が高いので雛であろうと油断するなと言っていたはずだが。敵の死を確実に確認もしないで呑気にお喋りとは、何時からそれほどまでに力を付けた?』

 

先ほどまで遺跡を照らしていた月に突如として分厚い雲がかかり、程なくして雨が降り始める。自分たちに迫っていた巨獣の身体は跡形も無く、残った残証でさえ雨によって洗い流された。

 

「おい、何でお前がいるんだ龍鬼?聖域潰しはアタシに任せろって言っただろうが」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

降り始めた雨によって、今まで傷だらけだった身体が癒されていく。漸く一息つけると兎の個性を持つプロヒーローのミルコは、一度屈伸をしてその場に座り込みながら自分たちの後方へと目線を向ける。視線の先には先ほどの攻撃を放ったであろう、怪獣の姿に戻っていた龍鬼がいた。

 

『本土における最後の聖域をこの目で確かめたかったので、雨界での用事を一旦切り上げて様子を見に来たが、お邪魔だったか?』

 

「アタシの獲物を横取りしてんじゃねぇよ。というか龍鬼、確認したいってここってお前が50年前に壊した場所じゃねぇのかよ」

 

『ルミ、それに燈矢。お前たちにはまだ言っていなかったが。今回、お前たちが世界を周って潰してくれた聖域は全て私が旅立った後にできたものだ』

 

「……そういうことは最初に言え馬鹿、にしてもどんだけだよ。俺が壊したのでさえ100近くはあったぞ」

 

「アタシもそれくらいだ、どんだけしぶてぇんだよ。ゴキブリと変わりねぇぞこれじゃぁ」

 

『信仰を甘く見ない方が良い、特に終末にこだわる連中の信じる力という物は我々が想像する以上のものがある』

 

2人の悪態を聞きつつも、己の眼で周囲の状況を確認する。

 

この場所で羽化した巨獣は無事に討滅し、先ほどのミルコの一撃によって隠されていた天蓋が崩れ、無事に祓いの雨を降らせることをできたため、この場所に貯めこまれ淀んでいた穢れも全て洗い流されいずれは世界を循環し陽の力によって浄化されるだろう。

 

そう判断した龍鬼は、先ほどまでの戦いで疲れ切っている2人を肩に乗せて瓦礫となった施設を後にする。

 

『これで小笠原とニライカナイ周辺にあるとされる聖域以外は全て潰せたことになる。後のことは陽野家が引き継ぐ。二人とも一旦は任務完了だ、ご苦労様』

 

「んな悠長なこと言ってる場合かよ龍鬼、さっきの害鳥でさえ雛鳥なんだろ?あと1年も経たずに、あの成体の群れがアタシ等の世界の防壁を破って大挙して押し寄せてくるんだぞ」

 

『解っている。だが、前回のお前たちでさえ撃退まではできていることが既に判明している。完全に元の状態に戻れば、群れ相手でも十分に戦える。それに今回は私もいることだし、上手くことを運びさえすれば誰の犠牲も無く乗り切れる』

 

「頼もしいこった、ただアタシ等も足手まといになるつもりはねぇからな」

 

『当然だ、私におんぶにだっこの奴を連れていけるほどこの先の戦いは楽ではないし。私が選んだ戦士は、そんな弱き者は一人もいない』

 

雨雲の中を駆けて東京へと移動しつつ、会話をする龍鬼とミルコ。しかしその横で、施設を後にしてからずっと硬く浮かない表情で沈黙をしている人物がいた。

 

『……やはり、弟たちや敵連合の友だった者たちが気になるか?』

 

「相変わらず、なんでもかんでもお見通しってわけか……」

 

『お前は他の者より遥かに枷を解くのが速い。順調ではあるがその分悩み事が増えている、顔にそう書いてあるぞ』

 

「……はぁ、何でこうも解ってしまうのか。ため息が出ちまう」

 

「相変わらずテメぇは解りやすい奴だな、心配し過ぎるとふけるぞ?」

 

龍鬼の言葉に思わず気まずそうに頭をかいてしまう白髪の人物、燈矢と呼ばれた青年は見透かされている自分の心境に思わず苦笑いしてしまう。

 

『心配するな。いい材料として、以前のループの時とは違いお前は格段に強くなっていること、誰よりも先にある程度のことを思い出したこと、そしてそれによってお前自身の問題もある程度解決していること、この3つがある』

 

「……そのことなんだけどよ、龍鬼。3日前から、どういうわけだか俺のスマホに親父とお袋から鬼電がかかってるんだが?」

 

『よかったじゃないか、構ってもらえて。ご両親、私の力で今までのことをある程度思い出してからというものの相当へこんでいたからな』

 

「いや、逆にこのまま家に帰ったら龍鬼のところに戻れそうにないんだが……?」

 

『その点は大丈夫、既に世界中から私が選んだ英雄たちは準備期間に入った。勿論、お前のお父さんもだ。今度、私の下に戻るときはお前の家族全員でということになる』

 

「……お袋や、冬美に夏雄の説得が面倒だ。代わりに龍鬼がやってくれねぇか……?」

 

『長男が情けないことを言うんじゃない、私ですら両親への説得をする際は殴られながら説得したんだ。存分に殴られて、愛を確かめてきなさい』

 

げんなりとしわしわな顔になっていく燈矢、それを見て爆笑するミルコであったが。そんな2人のやり取りをどこか遠い懐かしさを感じながらも、2人に龍鬼がこれからのことを話し始める。

 

『改めてだ。ルミ、燈矢。お前たちにはこれから2週間、休暇を与える。その間に身辺の整理などを済ませておきなさい』

 

龍鬼の声色が変わる、その声を聴き今までリラックスしていた2人の心身が急に引き締まる。

 

「いよいよ、始まるってわけか……。ヒーロー科の連中への説明はどうすんだ?」

 

『代理の者を立てて、既に説明を済ませている。彼らが此度の戦の中心だ、ひと先ずは彼らの成り行きに任せて“分岐点”となる時点を探す。そこから、一気に流れが変わるはずだ』

 

「……敵連合、オールフォーワンはどうする?」

 

『あのクソガキも私が戻ってきていることには既に気が付いているだろうが、奴も流れには逆らえない。ひと先ずは、様子見といったところだろう。心配するな、奴にお灸をすえる役割はがやり、お前の友を連れ戻すのはお前彼らがやる。それまでは、今はこの因果の流れに身をゆだねようではないか』

 

いよいよ、始まることになるであろう。自分が龍鬼と共に出逢った時に聞かされて、思い出すことのできた、これから始まる自分たちの世界の命運をかけた大戦、その序章が……。

 

「それで、準備を始めるのは良いけどよ龍鬼。この先の大戦を勝つためにカギを握るお前の幼馴染の様子はどうなんだ?」

 

『彼女は、若君たちの下で自らのルーツを思い出す作業をしている。お前たちを東京に戻した後は、私も雨界に戻って手伝うことになっている』

 

「これで、陽野家の連中も含めて怪獣の数はある程度揃えられたってことか……」

 

『大怪獣の先人たちがいないのは心もとないが、今の我々にできる精一杯だ』

 

しかし、どうしても頭によぎる。何度繰り返そうとも、何度立ち上がろうとも、何度も諦めずに戦おうとも。その全てが打ち砕かれ、無残に敗北してきた記憶。

 

そんな、2人を察して龍鬼は角を光らせながら2人の魂に直接言葉を響かせる。

 

臆することはない、今までのことは全て我々の想定の範囲内だ。お前たちはこれからも、ただ眼前を阻む敵を悉く討ち滅ぼしなさい

 

だが、今回は龍鬼がいる。一度、この世界を滅びから救ってくれた存在が。そのことだけでも、2人の中では確かな心の支えとなっているのだった。

 





如何でしたでしょうか?

だんだん、怪獣をチラ見せできつつあるのでこのまま頑張りたいところです。

さて、今回は少し短めですが色々とオリジナルな用語や気になるワードが出てきましたがおいおい色々判明していくことになります。

次回の投稿も何とか早くとは思いますが何とか最後まで続けられたと思いますので、次回も気長にお待ちいただけたらと思います。

また誤字脱字に関しても、ちょっとずつではありますが対応しますので、随時言っていただければと思います。

それではまたお会いしましょう。
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