怪獣人類の英雄探求   作:ペンペン弐式

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猫です、じゃなくて二話です。

ではどうぞ。


開催 雄英体育祭

どうしたって、こういう場では緊張するというものだ。大勢の観衆に囲まれる中、開会式の行われる雄英のアリーナ会場に入場しながら心操の心は高鳴っていた。最後の龍鬼たちとの訓練から既に数日、個性の制御に重点を置き、訓練で散々虐めてきた身体を癒しながら精神を研ぎ澄ませ今日という日を迎えた。

 

「やっぱり、心操でも緊張すこともあるんだな」

 

「ま、かくいうアタシたちも同じだけどね」

 

「あんだけヒーロー科の連中に啖呵切ったんだ、無理もねぇよ」

 

「そんなこと言って、みんなもあの言葉でみんな火が付いちゃったんでしょ‼」

 

「当然、ヒーロー科の連中のダシに使われるつもり何て一切無いからな‼」

 

「やってやりましょ、私たちもできるってとこ‼」

 

前後からそれぞれクラスメイトたちから声がかかる。そうだ自分だけでは無い、皆緊張しているんだ。でも、普通科の生徒が殆どがこの日の為に、ヒーロー科の生徒たちに負けないぐらいの準備をしてきたんだ。自分と同じ、次の段階に上がるために。

 

(……入学時の俺なら、なりふり構ってられなかっただろうな)

 

入学時よりも格段に成長し自分自身がしっかりと道を歩けていることに多少の余裕ができ、自分だけではなく周囲の状況にも客観的に見ることができるようになった心操。クラスメイト達からかけられる声に笑顔で返した。

 

(ホントに、変わったもんだよ)

 

そんなクラスメイトたちの戦いの前の高揚を横目に心操は自分たちの列の最後尾を歩いている龍鬼へと視線を移す。相も変わらず長い髪によって顔の殆どが隠されており、何を考えているのか表情を伺い知ることはできなかったが、自分たちを取り囲んでいる観衆を物珍しそうにせわしなく眺めているようだった。

 

 

(ホントに、アイツがいなければ。俺はここまで強くなることができなかったろうな)

 

入学してから今日に至るまでの龍鬼との出会い、共に過ごしてきた日々が思い出される心操。自分の弱い部分、それを受け入れた上でどうやったら自分の個性を他の喜びの為に振るうことができるのか、二人で考え試行錯誤しながら今日という自分の力を示す恰好の舞台の為に準備をしてきた。

 

(……らしくない。だが、それでもいい。俺は今日、示してみせる‼)

 

自らを奮い立たせ、己の目指したヒーローに成るための覚悟を再度胸に込め、意志の籠ったその瞳で心操を前を向いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

開幕 雄英体育祭

 

 

 

 

 

 

選手宣誓で一悶着あったものの、その後は何もなく順調に開会式のプログラムが進行していた。

 

「最初は障害物競争、か。何かありきたりじゃのぉ」

 

「実際、現場に出たら想定外なんてものはつきものだから当然といえば当然なのかもな。つうか、いい加減お前も普通に喋ろよ。念話越しの会話だから周りに変な風に見られてるぞ。特に俺が」

 

「仕方ないじゃろ。俺のこの口当ては拘束具のようなもんじゃけぇ普通に会話する分にはこの方が楽なんよ」

 

「その口当ても拘束具なのかよ。お前、どんだけだよ」

 

「おい引くな引くな。これでもちゃんとこれ無しでも一応制御はちゃんとできるんじゃ」

 

「じゃあ、何でつけてんだよ」

 

「……その方が、かっこ付くじゃろうが‼」

 

「サムズアップしながら答えるな‼中二かよ⁉」

 

そんな何処となく余裕を感じさせる会話をしながら、二人は現在、ヒーロー科や他の科の生徒たちと共に第一種目の説明を聞いていた。今回の体育祭1年の部は主に3つに分かれている。その第一競技が障害物競争であった。

 

「上位46名、最初の競技で半分近くが減るな。ヒーローになった後の競争を意識してんのか」

 

「世知辛いのぉ、幾ら同じ職業でも食い合わなければのし上がれん。ヒーローも同じっちゅうことじゃろう。のぉ」

 

「そういう割には、随分と余裕そうだな龍鬼」

 

体育祭の進行役でもある雄英高の教師ミッドナイトの説明を聞いて、他の生徒たちが緊張した面持ちで聞くなかマイペースな会話をする二人。そんな感じでいるとミッドナイトの説明が終わり自分たちの前方にあるアリーナ出口への道が開き、カウントダウンが開始される。

 

「それで、作戦は」

 

「入り口は狭い、どうせおしくらまんじゅうじゃ。手筈通りに行こうかいのぉ」

 

スタートのカウントダウンが始まると先ほどまでの雰囲気とは違い集中した面持ちに変わる二人。そして、カウントダウンが終わると同時に凄まじい観客の歓声が響き渡り、アリーナにいた生徒の全員が狭い出口へと殺到する。

 

「おうおう、やっとるやっとる」

 

「……予想通りだな。飛び出さなくて正解か」

 

生徒たちが狭い出口の通路の中でもみくちゃに押し合う中、心操と龍鬼の二人はスタート地点から走り出すことはせず、ゆっくりと歩きながら出口の方へと進んでいく。二人は今日という日の為の予め情報を集め、二人で一緒に乗り切る協力体制で臨むと決めていた。歩いて進むのも二人のプランの一環だった。

 

「で、この後はお前の言ってたAクラスのエンデヴァーの息子の氷結攻撃による妨害、足止めが来るって話だったな。左手の炎使わねぇとかずいぶんと余裕だな」

 

「ショーちゃん、左手のこと気にしとるから本人の前では言うなよ。まあショーちゃんの事なら左手無くても余裕で突破できるじゃろうが」

 

そう二人が会話する中で前方の出口の方から冷気が漏れ出し、その周囲が氷漬けにされていく。これもある程度二人が予想した通りで、出口の通路の中で何人もの生徒が滑って転げている際の喧騒が聞こえてくる。予想通りといった感じなので二人は慌てる素振りは一切なく相も変わらずゆっくりと歩きながら進んでいた。

 

「おい、あの二人。開始から全然動いてないぞ」

 

「……ちょっと開始直前で繊維損失してるんじゃない?」

 

「おい‼真面目にやれっ‼」

 

「プロヒーローだって見てんだぞ‼」

 

そんな二人の姿を見て、周囲にいた観客たちから戸惑いの声が上がる。中には罵声のようなものも混じってはいたが二人の耳には一切届かず、自分のペースを保っていた。

 

「お、全員抜けたのぉ」

 

「それじゃ、往くか。ちょっと恥ずかしいけど」

 

そして数分が経過しただろう、出口での喧騒が消えて前方の出口の先に明確に光が見えるようになった。全員の生徒が、妨害があったもののきちんと抜け出すことができた用だった。

 

それを確認し終わると、龍鬼は徐に出口に方に向かって顔を向け手を地に付け四つん這いの状態になる。そして、その上に馬の上に乗るようにして心操がまたがった。突然の二人の行動に観客たちも怪気な視線を向ける。

 

「緑谷には悪いが、これも競争ってことで。頼む、龍鬼」

 

「任されよ、ヒトシ。振り落とされんように、しっかり掴まっちょれよ」

 

その言葉と共に龍鬼の中央の角が光を放つ。それと共に、彼等のいる周囲の空気が揺らぎ始める。二人の空気が変わり、先ほどまで騒いでいた観客たちの喧騒が止まる。明らかに空気が変わったのだ。そして、龍鬼の身体が尋常じゃなく震え始める。それはまるで、得物を狙う前の捕食者が駆け出す前のタメのようにも見えた。

 

「攻術 鬼赱(おにのはしり)」

 

瞬間、アリーナ全体に轟音が響き渡る。空気が破裂するかのような膨大な音と、爆風が観客たちを含めアリーナにいた全ての人間に飛んでいく。突然のことで、怒号と悲鳴が飛び交った。しかし、いち早く我に返ったプロヒーローと呼ばれる者たちは二人のいた場所を確認する。だが、そこにあったのは焼け焦げた地面と何かが地面を飛び出して駆け出したようなクレーターの後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ⁉入試の時の仮想敵、更に強くなってる‼」

 

その頃、自身の個性を使用していち早く第一関門に辿り着いて緑谷を含めた複数の生徒たち。しかし、その前方に全身を巨大なアームなどによって武装された大型のロボット軍団が立ちふさがっていた。ヒーロー科を受験した生徒たちは既に入試の時の遭遇していた超大型の仮想敵ロボット。

 

緑谷は何とか彼らの攻撃をかわしながら前に出ようとするも、如何せん数が多く苦戦していた。そして、それは他の生徒たちも同様だった。個性を発動しても防がれ、必死になって前に出ようとしてもロボットの巨大な腕によって阻まれている状態だった。

 

「イズク、下がれや」

 

突然頭の中に友人の声が響く、その声を聞いた緑谷は咄嗟に個性を発動して隣にいたおかっぱ頭の女子生徒を抱きかかえ全速力で後退する。

 

「っちょ、デ、デクくん!?」

 

突然の行動に彼の隣にいた女子生徒、麗日 お茶子は、クラスメイトの突然の行動に顔を赤くし戸惑いの声を上げるがそれが直ぐに間違っていなかったことを悟る。

 

「攻術 鬼ノ手刀(おにのてがたな)」

 

男の声だった。ノイズ交じりではあった。低く、重く、今に震え上がりそうな声がその場で立ち往生していた全生徒の頭の中に響く。次の瞬間だった、自分たちの眼前にいたロボットたちの全ての上半身が無くなっていたのは。

 

[……は?]

 

誰がつぶやいたのか定かではなかったが、その場にいた全員が同じ気持ちであったのは間違いなかった。放心状態になる生徒たちではあったが、直ぐに襲ってきた爆音と風圧によって我に返る。

 

「ちょ、どうなってんだよ!?」

 

「何だ‼何が起きた!?」

 

「仮想敵が一瞬で粉々になってたよ!?」

 

「クソがぁあっ‼どうなってんだこれっ⁉」

 

突然のことに誰もが多いに戸惑う。当然だ、自分たちが苦戦していた巨大な敵が瞬きする暇も無く一瞬で無力化されていたのだ。何が起こっているのか、全く理解できていなかった。だがそんな中で直ぐに動き出した生徒たちがいた。

 

「っち。やっぱ、そう来るよな‼龍鬼‼」

 

「っ‼行こう、麗日さん‼急がないと、二人に追いつけなくなる‼」

 

「デクくん⁉何が起きた説明してよっ⁉」

 

「緑谷君、今起きたことを知っているのか⁉」

 

「緑谷さん‼私たちにも分かるように説明してください‼」

 

「待てやぁあクソデクゥウ‼‼」

 

緑谷を含めたA組の生徒たちだった。いち早く我に返り、自分たちよりも先に誰かがゴールへと向かっていったということを理解し直ぐに走り出したのだ。そして、それに続く形で他の生徒たちも正気に戻り、ゴールを目指して走り出すのだった。

 

 

 

 

 

 

「で、良かったんかヒトシ。目立つの防ぐんは分かるけど、もう充分目立っちょるし、俺の力ならこんな谷間飛び越えるくらいわけないが」

 

「良いんだ、お前に頼りっぱなしもよくねぇし。それに、今後の為にネタバレはあんまし良くねぇし」

 

「いくら距離稼いだとはいえ、イズクやショーちゃんのことじゃけぇ直ぐに来るぞ」

 

「別に良い、その時はその時で対処すれば、それに予定より10秒も早い。少し余裕が出たしな」

 

「あれがヒトシの言っちょったヒーロー科の入試の時の一番の仮想敵じゃったんじゃろ。話に聞いちょったわりにあっさりささらもさらになちょったが」

 

「お前が異常なだけだ、この常識破壊者」

 

他の生徒たちが第一障害物であるロボ・インフェルノから走り出す頃、第二障害物、ザ・フォールの前に辿り着いていた龍鬼たちは二人で会話をしながら綱渡りを行っていた。巨大な谷間のような底なしの場所を、僅かに伸ばされた綱と岩場を頼りに進む難所。ヒトシは雲梯の要領で猿の如く警戒に綱を掴みながら進み、その横で龍鬼は綱の上を忍者のように抜群の平衡感覚を保ち、走りながら進んでいた。

 

「ヒトシ。昨日も言ったが、やっぱ随分ごつくなったのぉ。個性無しでそこまでできるようになったんじゃから」

 

「散々、お前に、扱かれ、たからな‼嫌でも、ごつく、なるさ‼」

 

現在二人は個性を使用せずに障害物を乗り越えている。理由としては、心操は自分の個性が使用しない状態でどれほどのことができるのか試すために。龍鬼はその付き添いであった。

 

「お、ヒトシ。イズクとショーちゃんが来たようじゃ」

 

「やっぱ早えな、緑谷。A組の奴も何人かいるか」

 

「まあ、そんぐらいやってもらわんと。こっちも張り合いないしのぉ」

 

綱渡りも終盤に差し掛かった頃、遥か後方、綱渡りの最初の方に緑谷たちA組の面々が見えていた。だが二人は既に谷間の対岸をまじかに見えていたで、焦ることなく進んでいた。

 

「待てやこのクソモブどもぉおおおおおお‼‼」

 

「負けねぇぞ、龍鬼‼」

 

「ダメだかっちゃん‼轟君‼正面から龍鬼君に挑んじゃ‼」

 

そんな中、緑谷の静止の声とけたたまし罵声が聞こえてくる。後方の一団から龍鬼たちに向かって二人の生徒が突貫してくる。

 

「ショーちゃんとありゃあ確か、イズクの幼馴染の」

 

「爆豪ってA組の敵擬きだ。エンデヴァーの息子は兎も角、あんだけ開会式で威勢の良いこと言っておいて、俺たちが先にいることが許せねぇんだろ」

 

自分たちに対して突貫してくる轟と爆豪に向かってそんな呑気なことを言いながら二人は綱を渡りき対岸に到着する。心操は次の障害物に向けて走り出そうとするが、龍鬼は止まっていた。

 

「……のぉ、ヒトシ。改めて確認なんじゃが、妨害はありじゃったのぉ」

 

「おい、顔が完全に敵になってんのが見えなくとも分かるぞ。俺は先に行ってるからな」

 

何をしようとしているのかある程度予想がついた心操はそう龍鬼に声をかけると先の方へと走り出す。心操を先に行かせた龍鬼は後の方へと、今にもこちらに爆破と氷結の個性を叩きこもうとしている二人の方へと振り返り両手を前に突き出す。

 

「まずい⁉逃げてかっちゃん、轟君‼」

 

「今更遅せぇ‼‼」

 

「うるせぇえええ‼‼俺に指図すんな‼‼」

 

緑谷の忠告は聞こえていたが、それでも二人は龍鬼めがけて特攻する。今更回避は間に合いはしない。それが分かっていたからこそ二人は己の個性を発動すべく爆豪と轟は右手をかざした。だが、二人が個性を発動するよりも早く、龍鬼の個性が発動する。

 

「攻術 鬼葟火(おにはなび)」

 

龍鬼の角が発光しその手には煌々とした火が纏われる。やがてそれが一つの小さな塊になって爆豪たちの頭上めがけて飛び出す。一瞬何が来るのか分からなかった爆豪と轟ではあったがその火を見た瞬間、本能でまずいと悟り爆豪は両手から出る爆発の個性を使用して迎撃しようとその火の塊に向かって爆破を行使し、轟は岩場へと急いで渡り氷の壁を作る。

 

「イズクの忠告、ちゃあんと聞けば良かったのぉ。お前等のせいでみいんなしまいじゃい」

 

意地の悪そうな声が爆豪と轟の頭の中に響く、がそれに反応する暇も無くそれと同時に頭上にあった火の塊は爆豪の個性などまるであざ笑うかの如く、爆音を立て夜空に咲く葟の如く、小さな炎の雨矢となって爆豪と轟、他の生徒たちに襲い掛かった。

 

回避しようとするが、それは正に雨の如く容赦なく降り注ぎ、諸に受けた爆豪は谷間の間にあった岩場に墜落し、轟の氷の壁は難なく破壊され身体に直撃した。そして火の雨矢は他の生徒たちにも容赦なく襲い、防御の為にその場に足止めされてしまう。

 

「俺は優しいけぇ、紐は燃やさんよおしとった。後は頑張りんさい、ヒーロー科の皆様」

 

それはもう嫌味たっぷりな声がその場にいたヒーロー科の生徒たちに響き、それと同時、はるか前方にいる人物が自分たちに向かって敬礼のポーズをとっていることに気付いた。完全に煽られていた。

 

「んの野郎舐めやがって‼‼」

 

「ぎゃあああ、オイラのモギモギが燃えてるうぅう‼‼」

 

「ていうか、アイツあれでホントに普通科かよ‼‼完全に俺らより上じゃねえか‼」

 

「くっ⁉この火の粉、払っても身体に纏わりついてくる⁉」

 

「この炎、まるで地獄鬼の火‼」

 

『チクショオォオ、マブシイヨォオ』

 

そして、そんなヒーロー科の面々の反応をある程度確認した龍鬼は満足し、心操に追いつくべく、その場から姿を消す。

 

「クソ⁉予想はしてたけど、やっぱり人使君と龍鬼くんは組んでる‼」

 

「デクくん、それって確か普通科の生徒の人たちの名前」

 

「ごめん、麗日さん。この大会が終わったら二人のことちゃんと紹介するから」

 

一方、綱を地道に渡っていた緑谷は手に持っていた仮想敵の装甲版を使って麗日と共に龍鬼の雨のような攻撃を凌いでいた。

 

(けどこのままじゃ、龍鬼くんたちに先にゴールされる。どうすれば‼)

 

二人が組んでいることはある程度頭の中にはあった。二人は数週間前に自分たちのクラスに普通科の面々と共にやってきて態々あんなことを言ったんだ。二人は、確実にこの体育祭の一番を本気で取りに来ている。正直、あの二人が組んで今の自分に挑めるのか、不安が緑谷の心の中を支配した。

 

「……デクくん、私に考えがあるの」

 

しかしそんな状況の中、必死にこの状況を打開する策を考えていると自分の後ろにいた麗日から声がかかった。そして、この考えが緑谷にとっての起死回生の打開策となった。

 

 

 

 

 

 

「そいで、こんの地雷地帯をどうやって突破しようか悩んでたっちゅうことか」

 

「力技で突破してもいいけど、そしたらヒーロー科の連中にも道を作っちまう。後で来る普通科の他の奴のことも考えなくちゃいけねぇ」

 

一方、第三障害物に辿り着いた二人、目の前に広がる縦に非常に長い直線の平野コースの前で立ち往生していた。第三障害物は、地雷地帯の中を突破するシンプルな物。怒りのアフガンと何処かの老舗アメリカン映画にでもありそうな名前ではあったがその長さは馬鹿にできず、どう突破する二人は悩んでいた。

 

「ここは、再び俺の出番かのぉ」

 

「悪い、頼めるか龍鬼」

 

「何言いよんなら、普通科の連中に持たせたいんじゃろ?遠慮することは無い、俺も普通科じゃけぇのぉ」

 

龍鬼の角が再び発光し龍鬼はかがんで地面を両手に付ける。そしてその両肩に心操が手をかけ目を閉じた。二人は何かを探るような素振りを見せながら暫くその状態でいると、頷きながら再び立ち上がった。

 

「取り合えず全部把握できた。敷き詰められちょるように見えて、ちゃんと穴があった。道順はこれで割れたけぇあと進みながら印をつけようかいのぉ」

 

「行くぞ、龍鬼。そろそろ緑谷や他の生徒が来ることろだ」

 

そう言いながら、二人は龍鬼を先頭にして大量の地雷が進む地帯へと迷いなく向かって走り出したのだった。

 

 

 

 

 

 

龍鬼たちが地雷原の中を進んでいるころ、観客が詰めかけている会場ではモニターに移された下馬評とは全く違う展開に興奮の坩堝と化していた。あの先頭を走っている普通科の生徒たちは一体何者なのか。どんな個性を持っているのか。話題は全く尽きなかった。

 

「……イレイザー、リスナーの動き。追えたか?」

 

「全くダメだ、事実を言えば下手をすればオールマイトよりも速い。彼奴に聞くことがまた増えたな」

 

そんな観客たちの反応とは別に教職の立場に付く、イレイザーヘッドとプレゼント・マイクの表情は非常に険しいものがあった。二人は、アリーナで一年生の部の実況を行っていたが観客が自分たちで盛り上がっている僅かの間にオフレコで言葉を交わしていた。

 

「校長が独自に調べたらしいが、アイツの個性。正確には個性じゃないらしい」

 

「おい、それってどういうことだ」

 

突然聞かされるイレイザーヘッドの言葉にプレゼント・マイクは戸惑いの声を上げる。

 

「アイツが幼少の頃に他の奴と同様に個性検査を行われた。だが、アイツの判定は無個性だった。何度も調べたが、結果は変わらなかったそうだ。実際にアイツの個性を消そうとしても全く消えなかったから、恐らくそれは正しいってことになる」

 

「どいうことだそれ‼つまり、リスナーは本当に無個性ってことか⁉どう見たって、個性を持ってるじゃねぇかよ⁉」

 

今、トップを独走している片割れがまさかの無個性である。あれほど個性とも言えるような力を使っておいて。雄英高校始まって以来のあり得もしなかったとんでも発言だった。

 

「初め話を聞いたとき信じられなかったのは俺もさ。でも、俺以上に困ったのが当時の役所だった。だから役所は困って一応は説明のつかない力。個性 超能力、ってことで処理させたらしい。この話を今雄英で知ってるのは、校長と俺、後はオールマイトだけだ」

 

科学的力でも、個性でもない、第三の力。それを行使しているのが蘇我 龍鬼という男だった。

 

「おいそれじゃあ、リスナーが捨てられたのって」

 

「……恐怖故だろうな、訳の分からない存在に本当に自分の子供どうかも分からなくなり、両親が耐え切れなくなった。アイツに関わる全ての大人がその義務を放棄した結果、ストリートチルドレンになったアイツは敵に拉致されて海外の闇個性研究機関に高値で売り飛ばされた。そして、独になった。と言ったところか」

 

「胸糞わりぃ‼完全にリスナーは被害者じゃねぇかよ‼」

 

「そう、そんな世界を憎悪してもおかしくない筈の男が今その真逆の場所で活躍している。普通科で共に学ぶ生徒を強くしながら」

 

そう二人で話しながら、依然として変わらないペースで地雷原を突き進む龍鬼を冷静に見つめるイレイザーヘッド。

 

「見届ける必要があるだろ。人間の闇の深い所をあの若さで見てきた蘇我 龍鬼という男が、この雄英体育祭という舞台で何を示すのか」

 

過酷な人生を歩んできた。世界を呪ってもいいくらいの。その強大な力で復讐の為に全てを破壊する権化になってもおかしくなかった。だが、そんな男が今いるのは、その真逆の光射す表の世界の舞台。

 

(負けるなよ、お前等。超える壁は、遥かに大きいぞ)

 

そんな龍鬼というとてつもなく大きな壁を目の当たりにしている自分の持つA組の生徒たちへの健闘を祈るイレイザーヘッド。

 

そして、次の瞬間爆音と共にモニターに映し出されたのは自分の生徒の一人である緑谷がトップを走る二人を地雷の爆発に巻き込みながら抜き去る映像だった。

 

 

 

 

 

 

 

「クソ⁉やるな、緑谷‼」

 

「重力制御の子の個性を使ってあの火を強引に脱出してきて、個性を使って敢えて地雷を爆破させてそれで得た風圧でここまで飛んできたのかい。考えたのぉイズク」

 

「冷静に言ってる場合かよ⁉」

 

桃色の煙に包まれながらそう言葉をこぼす龍鬼と心操。今まで優勢に保っていたがここで一気にその差を埋められ緑谷に抜かれてしまう。

 

緑谷が先ほど麗日から受けた提案、麗日の個性で重力制御によって無理やりザ・フォールを突破するというものだった。そして、見事にその策は成功し、火の雨が降り注ぐ中を強引に突破、その後持ってきていたロボの装甲版で地雷のある地面を叩き、ソリを滑るかの如く爆発で生じた風圧を使って二人を追い抜いたのだ。

 

「麗日さんと約束したんだ‼僕も‼二人には‼絶対に負けないよ‼」

 

個性を使って地雷原を一気に抜ける緑谷。眼前にはアリーナとその入り口が見えていた。ゴールは目前だった。

 

「……印も設定できたし。やるか、ヒトシ。奥の手じゃい」

 

「え?」

 

抜かれてある程度の差ができたことに対して、少し考える素振りを見せた龍鬼は後ろにいた心操の襟を右手で掴み左足を高々と上げて何処かで見たようなポーズをとる。そして、そのポーズを見て目の前にいる龍鬼がいったい何をしようとしてるのか察する心操。

 

「おい、待て⁉それやったら俺の身体が持たねえって‼」

 

「気張れよぉおおおおお、ヒトシィィィィィ」

 

髪に隠れて見えない筈の龍鬼の目に燃える炎がともり、そのまま見事な投球フォームで振りかぶり心操をアリーナの入り口に向かって投げ込んだ。

 

「必殺 火ノ魂超直球」

 

「これ完全にお前の趣味じゃねぇかああああああああ‼‼」

 

哀れ心操、凄まじいスピードでゴールめがけて投げ飛ばされる。通った後には衝撃波が発生しそれと共に地雷が誘爆していく。

 

爆音と共に後ろから突っ込んでくる心操を見て緑谷も個性を発動させる。

 

「ワン・フォー・オール‼フル‼‼カウル‼‼」

 

一気にタメを作り地を蹴り上げて駆け出す緑谷。そして、龍鬼に投げられたことによってゴールまじかでその横に追いつき我に返った心操が負けまいまいと地面を蹴り上げ一気に加速する。

 

「負けねぇぞ、緑谷‼」

 

「勝つのは、僕だ‼」

 

完全に二人のデッドヒート、力も五分五分。どちらが勝っても不思議では無かった。そして、その勝者が大勢の歓声で湧くアリーナの中へと入場した。

 

 

 

 

 

 

 

「勝負あり‼‼勝者、1年A組 緑谷 出久‼‼」

 

勝ったのは、緑谷だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




所々、原作とは違う箇所もありますが。まあ、基本は通りで。

ヒーロー科の面々と絡むのは体育祭が終わったあたりから。

轟くんと主人公の話はまた次辺りに。

次に多分、オリキャラでるかもです。

後、爆豪くん。非力な(描写表現の)私を許してほしい。

ではまた。
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