怪獣人類の英雄探求   作:ペンペン弐式

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騎馬戦はこれで終わり、次から3種目に入れたらいいなと思いつつ。

ではどうぞ。


再会 夢幻ノ騎馬戦 弐

予想外の展開に、会場にいる観客は全員が困惑していた。先ほどまで、見ていたことがまるで幻でも、夢でも見ていたかのような。今まで見てい光景が全て作り物であった。その事実を上手く処理できていなかったのだ。

 

『会場にいる全員が、奴の個性にかかっていたようだな。全く、規格外が』

 

『HEYイレイザー‼今この状況も、蘇我リスナーの個性ってことかい⁉』

 

解説席にいるイレイザーヘッドからの声を聴き、観客全員が彼の言葉に耳を傾ける。

 

『アイツの個性は超能力。だが、超能力と言ってもアイツの場合は複数の個性を持っているに等しい。今、会場にいる人間全員が受けたのは恐らく幻を見せる類のモノだろう』

 

『複合型の個性みたいって事かよ⁉それって、かなり強ぇえんじゃねぇの⁉』

 

『単純に言えばそうだ。そして、他の生徒たちが幻を見ている間に全て鉢巻きを回収した。まあ、現状を説明するならばこんな感じになるだろう』

 

明かされる、この状況を起こした生徒の個性。イレイザーヘッドの言葉を信じるならば、会場にいる一般人だけではなく、プロのヒーローでさえもその生徒の個性により騙されていたということになる。

 

『だから言ったんだ。規格外だって』

 

その言葉と同時に、会場に轟音が走る。発せられたのは、生徒たちが騎馬戦を行っている渦中。そちらのほうに観客の目が一斉に向く。そこには、他の生徒たちからの同時攻撃を巨大な水の壁で迎撃する龍鬼たちの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ずっと、自分のこの声が嫌いだった。僕の声は、みんなを不幸にする。だから父さんも母さんも、僕の声のせいで僕の前からいなくなった。父さんや母さんだけじゃない。親戚の人も、周囲の大人も僕の声を呪だといって僕のことを捨てた。

 

 

無理やり押し込められた孤児院でも一人ぼっちだった。僕の声のせいで、みんなが傷ついたから。だから、孤児院からも抜け出して一人で街を転々としながら生きていた。

 

 

誰も僕のことを助けてくれなかった。ヒーローでさえも、僕のことを見つけて救い出してくれなかった。僕みたいな人間が生まれてくることさえ間違いだったんだ。そう思った。

 

 

だけど、そんな僕をあの人たちは見つけてくれた。今でもよく覚えてる。薄暗い路地裏、雪が降り積もる真冬の夜。あの人たちは僕を抱きかかえ、ボロボロに痩せこけた僕を助けてくれた。僕を、あの地獄から救ってくれた。

 

 

あの人たちに拾われて、僕はあの人たちの家族になった。あの人たちは、赤の他人の筈の僕のことを心の底から愛してくれた。自分の子供のように。そして、僕をここまで育ててくれた。沢山のモノを与えてくれた。

 

 

でも、あの人たちは僕が雄英に受かったことを見届けた後。僕のことを置いて、先に天に旅に出た。旅立つ前に、あの人たちと僕は約束を交わした。

 

 

どんな困難にあっても、僕はあの人たちとの。僕のヒーローたちとの約束の為に努力しようと心に決め雄英に入学した。そのつもりだった。

 

 

けど、相変わらず僕は独りぼっちだった。個性のことを言われることは無くなったけど。それでも、周囲に馴染むことはできなかった。この先も、ずっと独りなんだと思ってしまった。

 

 

現実の壁はとても厚くて、高くて。とても一人なんかじゃ超えることなんてできなかった。また、心が辛くなった。寂しくなった。全部投げ出したくなった。

 

 

ありきたりの悲劇に、ありきたりの喜劇。もう、うんざりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ。今、自分の目の前にある光景がとても現実のように思えなかった。

 

 

「守術 鬼ノ瓦(おにのかわら)

 

 

自分たちに迫りくる、ありとあらゆる個性による攻撃。それを眼前に水の塊を出すことによって自分を背に背負っている蘇我くんは悉く跳ね返して防いでみせる。

 

 

「ってマジかよ⁉」

 

 

「全部防がれた⁉」

 

 

そのことに、B組を中心としてヒーロー科の生徒たちは困惑していた。自分たちが現状出せる最高の力で放った様々な個性による攻撃をいとも簡単に防がれたということが、その反応だけで理解できた。だけど、そのことに臆することなく僕たちの騎馬に向かって突貫してくる人たちがいた。

 

 

「絶対に‼‼負けるもんか‼‼」

 

 

「鉢巻きはもらうけんね‼‼」

 

 

「まだ、終わってねぇぞ‼」

 

 

「突っ込むぞ、しっかり掴まっていてくれみんな‼‼」

 

 

「鉢巻き寄越せぇえええ‼‼クソロンゲぇえええええええ‼‼」

 

 

「俺らも突っ込むぞ、行くぞゴらぁあ‼‼」

 

 

正面からは超力の個性の緑谷くん、左側面からは氷結の個性を持つ轟くん、右側面からは爆発の個性を持つ爆豪くん。三人の騎馬が同時のタイミングで殺到してくる。

 

 

A組の、ヒーロー科の彼らの凄まじい気迫に僕は完全に飲まれていた。迫りくる三方向からの同時攻撃、一騎だけでも自分の手に余るのに三騎同時に殺到される。完全に詰みの状態。

 

 

だけど、こんな絶体絶命の状況に蘇我くんは焦ることなく自分の後ろにいる二人に指示を出す。

 

 

「マシラオ、ヒトシ」

 

 

「任せろ、龍鬼‼」

 

 

「へますんじゃねぇぞ‼」

 

 

その言葉と共に尾白くんの尾には緑のオーラのようなものが纏われ、心操くんの身体は筋肉により隆起し、蘇我くんの角が淡い光を放つ。

 

 

「星気拳」

 

 

「MIND IMPACT」

 

 

「攻術 鬼火」

 

 

それぞれの方向に相手騎馬に対して技が振りぬかれる。緑谷くんたちに対しては炎の息吹が、轟くんたちには緑のオーラによる大きな塊が、爆豪くんたちに対しては空気の圧による衝撃波が、それぞれの対応する方面の騎馬に向かって放たれた。

 

 

「ダークシャドウ‼‼」

 

 

「ここはベイビーの出番ですね‼」

 

 

「って尾白マジかよ⁉」

 

 

「くっ⁉轟さん、盾を‼」

 

 

「⁉瀬呂、爆豪を‼」

 

 

「言われなくても分かってる‼‼」

 

 

緑谷くんたちは防御の為にその場で立ち往生になり、轟くんや爆豪くんたちは攻撃を回避するために一旦距離を取った。完璧なタイミングで、ヒーロー科の生徒たちの攻撃の全てを防いでみせた。

 

 

「……天峯」

 

 

一連の起こった出来事に呆気に取られていると、自分を呼ぶ声がした。

 

 

「……大丈夫か」

 

 

安心するような優しい声、半ば放心状態になっていた自分を静かに見つめる蘇我くんと眼があった。髪で隠れてる筈のその眼が見えたような気がした。自分のことを本当に思ってくれる人の眼差し、僕の人生の中であの人たちしか自分に向けてくれなかったとても優しい眼差し。

 

 

「……うん、大丈夫。ごめん、ちょっと上がってた」

 

 

蘇我くんの御蔭で我に返り一旦息をついて、冷静に周りを見渡す。さっきの緑谷くんたちの攻勢の余波で他のみんなも正気に返ったらしく、僕たちの騎馬を包囲するようにして陣取り鋭い目で僕たちを睨みつけてた。

 

 

「……怖いか、天峯」

 

 

再び、蘇我くんが言葉を紡ぐ。その背中がとても大きくて、でもとても懐かしくて。蘇我くんの声を聴くたびに、僕の中が暖かくなるような気がした。ついさっきあったばかりの筈なのに。

 

 

確かに、僕の個性だけじゃとてもじゃないけどこの状況を勝ちきることはできないかもしれない。一人では絶対に無理だと思う、不安が無いというのは嘘になる。

 

 

でも。

 

 

「俺らが付いてる。この騎馬戦、絶対に勝つぞ」

 

 

「天峯さん、一緒に頑張ろう‼」

 

 

「普通科でもできるってこと、証明してやるぞ‼」

 

 

真っすぐな声で僕に語りかけてくる。そうだ。一人じゃない、一人なんかじゃない。僕の個性のことを聞いても、拒絶することなく受け入れてくれた。それは一時的なものかもしれない。簡単に裏切られるかもしれない。

 

 

けど共に、この苦境において戦ってくれる人がいる。今の自分じゃ、彼等の足手まといになるかもしない。でも。それでも。

 

 

「うん、絶対に勝とう‼みんな‼」

 

 

みんなの期待に応えたかった。この気持ちに嘘は無かった。僕だって、今日という日の為にずっと頑張ってきたんだ。乗り越えると、あの日に誓ったんだ。あの人たちとの約束を守るために。あの人たちに誇れる、ヒーローになるために‼

 

 

「行くよみんな‼これは、壁を乗り越え前に進む覚悟の、僕の唄だ‼」

 

 

だからこそ、僕は唄うよ。呪なんかじゃない。誰からも否定させない。前に進むための、僕の唄を。

 

 

 

 

 

 

 

 

再会 夢幻ノ騎馬戦 弐

 

 

 

 

 

 

 

騎馬戦に参加しているヒーロー科の生徒たちは非常に焦っていた。1騎の騎馬に対して他の全騎馬でかなりの時間総攻撃を行っているにも関わらず、鉢巻きを奪い取るどころか近づくことすらできていなかった。更に、ずっと動き続けてきたことによって体力的にも精神力的にも既に限界に近くなっていた。

 

「鉄哲わりぃい‼俺の個性でもダメだ‼」

 

「骨抜でもダメか⁉物間‼何か良い考えはねぇのか‼」

 

「近づきたくっても、全然近づかせてくれないし‼どうやら向こうも僕たちB組の個性を全部知ってるみたいだしね‼何でだろうね‼」

 

「切奈‼アンタの個性で不意打ちとかできない⁉」

 

「やってるけど無理‼あの一番前の3本角が全部無力化してくるし‼」

 

B組の生徒も全員で協力しながら何とか龍鬼たちから鉢巻きを奪おうとあの手この手で応戦しているものの全くと言っていい程手ごたえがなかった。寧ろ龍鬼たちからの反撃を喰らい、身に付けている体操服や身体に傷が付き始めていた。

 

「それにあの騎手の子、あの子が歌い始めてから騎馬の連中の個性が更に強くなった感じがするしな‼」

 

「祈り讃える歌、素晴らしいです」

 

「すっごく綺麗な声と歌ノコ‼後で絶対LAMEの交換するノコ‼」

 

「言ってる場合かよ⁉マジやべぇってこの状況‼」

 

「多分歌うことで強くする効果ネ‼とっても厄介ネ‼」

 

「ん‼」

 

アリーナに響き渡る唄。戦う者たちへの祈りと讃え、前へと進む者を祝福する力強い讃歌の唄。その唄によって龍鬼たちの動きや個性の威力は明らかに上がっていた。更に天峯の唄もあって、会場は非常に神秘的でそれでいて熱狂的な雰囲気に包まれていた。

 

『さぁあああ‼‼会場のリスナーたちも予想外の展開に盛り上がってきたZE‼‼それに、天峯リスナー‼‼超が付くほど真っすぐで最高な歌サンキュー‼‼俺のテンションもアゲアゲだZE‼‼』

 

『アイツの歌で蘇我達の動きも良くなってる、加えて天峯や蘇我の個性だけじゃない。両翼を守る尾白と心操もかなり鍛えてるようだな。完全にこの場を支配してる』

 

解説しているイレイザーの言う通りだった。完全に騎馬戦の流れを支配しているのは龍鬼たちであり、その他の者たちは彼らに完全に負けている状態だった。

 

(本当ならA組の連中を負かすつもりだったのに、とんだサプライズだよ‼)

 

苦虫を噛み潰したように顔を歪ませるのはB組のリーダー、物間寧人。元々、A組の活躍が入学時からB組より目立っていることに対して憤りを感じ、対抗心むき出しでこの体育祭でB組の全員の力でA組を負かして力を示そうと画策していた。

 

にも関わらず、普通科という全く眼中に無かった想定外の存在によって今はそれどころではなく寧ろ力を示すどころから普通科の生徒である龍鬼たちの噛ませ犬になっている状態、完全に追い詰められていた。

 

「⁉物間、避けろ‼‼」

 

その声に物間は我に返る、一瞬の気の迷いの内に自分の騎馬の眼前には巨大な炎の塊が迫っていた。咄嗟に騎馬の生徒の個性で空気の壁を作るがそれもいとも簡単に砕け散り、炎の塊が自分たちを飲み込もうとする。

 

「おいB組連中、伏せろ」

 

しかし、その炎を飲み込むくらいの巨大な氷が炎ごとB組の騎馬集団の眼前にいる龍鬼たちの騎馬を逆に飲み込んだ。氷の塊が発生した方を見るとそこには、氷を放った轟をはじめとしたA組の騎馬が集まっていた。全員自分たちと同じで息も絶え絶えになり、完全に疲労していた。

 

「あれぇえ⁉A組の皆さん‼随分とボロボロだね‼‼情けないn」

 

「んなこと言ってる場合かこのアホ‼‼」

 

助けられたことに特に感謝することも無く逆に厭味ったらしく物間が言おうとするが、何時も暴走する彼を止める役であるB組の女子生徒 拳藤 一佳が自身の個性を使用して彼を殴り飛ばす。

 

「あ、あの‼B組の人に提案があるんだけど……」

 

「アンタは確か……、あの三本角とさっき一緒にいた……」

 

物間を黙らせた拳藤たちの前に緑谷の騎馬が出る。

 

「……正直、このまま無理に攻め続けても龍鬼くんたちには敵わない。はっきり言って、龍鬼くんの思うつぼだと思うんだ」

 

「アンタ、アイツのこと知ってるんでしょ?何か、弱点とかないの?」

 

「……あると信じたいけど、少なくとも今の僕らじゃ分かっていたとしてもそれを突けるだけの余力は無いよ」

 

緑谷の言葉には、この場にいる生徒全員が同意せざるを得なかった。A組の生徒たちもまたB組の生徒と同じようにずっと攻め続けていたことによって体力も気力も限界に来ていたのだ。

 

「だから‼ここにいる全員で、連携して鉢巻きを奪いに行くしかないと思うんだ」

 

「つまり、私たちB組とA組で共同戦線を作るって事?」

 

「今打てる最良の手だと思う。このまま我武者羅に攻め続けても、多分全員鉢巻きを奪えないで終わる」

 

そう言いながら、緑谷は残り時間が刻まれるモニターのほうに視線を向ける。既に残り時間3分を切っており今のまま攻め続けたとしても、全員共倒れになると考えたのだ。

 

「アンタは兎も角、他のA組の連中はいいの?特に、アイツは納得してないみたいだけど」

 

そう言いながら指を射すのは、何処か納得のいってないような雰囲気を出す爆豪であった。元々、非常にプライドが高く負けず嫌いの爆豪ではあるが現状、自分が如何なる手を尽くそうとも全くが歯が立たず、突破口を見いだせないでいる中で、緑谷や他の生徒の力を借りる他なく、そのことに対して自分にやるせなさと不甲斐なさを感じていたのだ。

 

「どうしようもねぇよ。どっちにしろ、俺ら全員でやらねぇと」

 

「っるせぇ半分野郎。つか、何であのクソロン毛と知り合いなんだよてめぇは」

 

「俺だけじゃなく、尾白にも言えよ。尾白の事、俺だってさっき知ったばかりなんだからな」

 

「つうか、尾白の個性。尻尾だったんじゃねぇのかよ」

 

「その辺は、後できっちり尾白くんに問い詰めよぉ‼」

 

「……他のA組の連中はどうなの?」

 

「異論は無い、緑谷の提案にA組の全員が既に賛同済みだ」

 

「悔しいけど、このままじゃウチらも全滅やからね」

 

その言葉に、A組の全員が首を縦に振った。はっきり言って、今の自分たちだけではとてもではないけど勝てる相手では無い。少しでもこの状況を打開できるというのなら、やれることはやるべきであるという判断であった。

 

「……分かった、その案に乗るよ。どの道、私たちだけじゃ無理だし。みんなもそれでいい?」

 

「しゃぁねぇよな‼よっしゃ‼俺は乗ったぜ‼」

 

「やろうぜ‼あの野郎負かして、俺らがヒーロー科だってこと見せつけてやろうぜ‼」

 

「良い、このシリアスな雰囲気‼」

 

「私たちB組の力、お見せ致しましょう‼」

 

緑谷たちA組の提案に、B組も賛成した。目の前に存在する圧倒的な実力を持つ相手。今自分たちの出せる全力を出したとしても決して勝てない現実。最早、いがみ合っている場合では無かった。ここに、ヒーロー科共同戦線が相成ることとなった。

 

「で、でも。その、倒れてる人はいいのかな……」

 

「また何か言いだしたら、私が黙らせるから大丈夫。それで作戦は」

 

「うん、鍵になるのは……」

 

そうして緑谷が作戦を全員に伝える終わるのと同時に、自分たちの眼前にあった巨大な氷の塊は音を立てて木端微塵に砕け散る。

 

「そいで、何かできたんかイズク?」

 

依然として、無傷で余裕のある龍鬼たちの騎馬の姿がそこにはあった。それに対して、やられっぱなしであったヒーロー科たちが一致団結して相対する。ヒーロー科共同戦線による反撃が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり、個々で攻め続けるのは悪手と見た、か」

 

「時間や体力的にも、恐らく次が最後じゃろ。天峯、まだ持つか?」

 

「ごめん、僕はちょっともう限界かな。一応まだ言霊は使えるよ」

 

「マシラオはどうじゃ?星技(ほしわざ)、アレまだ未完成じゃろ?ガタは来とらんか?」

 

「次のこと考えなければまだやれるけど、この後のことを考えたらちょっと厳しいかな」

 

「ヒトシ、オドレは?」

 

「体力的には俺はまだやれる。俺の個性自体、本当の意味での使い方はまだやってねぇし。だけど、俺も次を考えるとなるべく温存してぇのが本音だ」

 

度重なるヒーロー科を中心とした騎馬たちによる怒涛の攻撃。未だに士気は衰えていないものの龍鬼や心操は余力を残しているのに対し、天峯は息を切らし尾白の尾は全体的に垂れ下がりと、二人にはかなり疲労の色が見て取れた。

 

「すまんのぉ。さっきはかましのつもりでヒーロー科の連中にああ言ってしもうたが……」

 

「分かってる、お前が枷を付けられてるせいで個性の発動に制限がかかってるってことくらい」

 

「さっきのアレが最後まで使えたら、ホントは良かったんだけどね」

 

「俺は良いさ。正直な話、龍鬼ばかりに頼るのもアレだし。自分の力で最後はやれるから、今の方が良いんだよね」

 

事前に作戦を練る際に、龍鬼は3人に現在自分の力を抑えられていることで自分の力が中途半端にしか発動しないことを話しており3人はそのことに了承したうえで龍鬼の作戦に乗っていた。

 

「兎に角、次が最後じゃ。1000万のタスキさえ取られなきゃ俺らの勝ちじゃ。他のタスキは全部餌に使う。絶対に、勝つぞ」

 

「ここまで来たんだ。みんな、勝とうよ‼」

 

「正面は任せたよ、龍鬼‼」

 

「耐えるぞ、龍鬼‼」

 

残り時間は1分を切った。自分たちの眼前にいる騎馬たちは陣形を取り一気に自分たち目掛けて突貫してくる。

 

「⁉鋒矢か‼オドレら、しっかり掴まっちょれよ‼」

 

先頭を走る3騎の騎馬が矢じりの陣形を取りながら、一気に間合いを詰めてくる。龍鬼はそれに向かって蹴りを放ち、衝撃波を起こして迎撃しようとする。狙い通りに3騎の騎馬は動きを止めるが、そこから幾つもの紫色の球体と長い舌、青いレーザー、プラグ、巨大な樹木の蔓の波が押し寄せる。

 

「守術 鬼壁(おにかべ)

 

その攻撃に対して龍鬼は自分たちの正面に鬼の顔をした巨大なエネルギーの壁を作って防御する。だが、その間に龍鬼たちの両翼にそれぞれ三騎の騎馬が展開し、それぞれの個性で攻撃してくる。

 

「マシラオ‼ヒトシ‼」

 

「言われなくても分かってる‼」

 

「流石に、A組連中は俺の所にくるよね‼」

 

「みんな、頑張って‼あと少しだよ‼」

 

数多にくる多種多様な個性による攻撃を、天峯は声を使って鼓舞し、尾白は緑のオーラを纏った尻尾で心操は筋肉で隆起した剛足を使って必死にいなす。一切龍鬼たちに反撃の隙を与えず、龍鬼たち騎馬目掛けて個性による攻撃が間髪入れずに続く。

 

そして、その絶え間ない攻撃に鉢巻きを持つ天峯への守りに一瞬の隙が生まれた。

 

その機会を待っていたと言わんばかりに、騎馬たちの後ろに隠れていた緑谷と爆豪がそれぞれの騎馬から飛び立ち、天峯目掛けて殺到する。

 

「SMAAAAAAAAAAAAAAAASH‼‼」

 

「死ねやクソモブゥううううううううう‼‼」

 

他の騎馬によって断続的に攻撃が続いており、避けたくても避けれない状況。天峯は自身の声を使って迎撃しようとするが、ここまで個性を酷使したことは初めてだったため完全に燃料切れだった。二人が何もできなくなった天峯の眼前にまで迫り、鉢巻きを奪おうとする。

 

「守術 鬼籠(おにごもり)

 

天峯の周囲を取り囲むようにエネルギーの壁が作られる。掴もうとした手は弾かれ、緑谷と爆豪はそれぞれの騎馬の生徒たちの個性によって直ぐに回収され離脱した。だがこの瞬間、龍鬼たちの眼前にあった壁がなくなったのだ。そのことを確認すると全ての騎馬が龍鬼に向かって最大限の威力で個性による攻撃を放つ。

 

「天峯、掴まれ‼‼」

 

「え、蘇我くん⁉」

 

その攻撃を防ぐために龍鬼は自分の身体を前に出した。龍鬼の急な動きによって天峯は龍鬼の背に身体を預けるよな形になる。そして、正面からくる全ての攻撃が龍鬼に命中した。敢えて全ての攻撃を諸に受けることで流れ弾が天峯に当たらないように、龍鬼は天峯を守ったのだ。攻撃を受けたことによる衝撃で煙が舞い、それにより龍鬼が少しよろめき片膝を付く。そして彼らの騎馬のバランスが崩れる。

 

「今だぁあああああ‼‼」

 

「鉢巻きを奪ええええ‼‼」

 

「行っくよぉお‼尾白くん‼」

 

「やれっ‼‼ダークシャドウ‼‼」

 

「悪く思うなよ、尾白‼」

 

その隙を逃さず、全ての騎馬が一斉に殺到する。既に、残り10秒を切った。これが、最大にして最後のチャンスだった。

 

「龍鬼‼しっかりしろ‼」

 

「尾白‼一旦立て直すぞ‼」

 

殺到してくる騎馬に対して対応しようと尾白と心操は動こうとするが、足が動かないことに気付く。足元を確認すると、自分たちの足首から下が凍り付き、更に氷を抜け出さないようにその周りには紫色の球体が張り付いていた。二人だけではない、特に龍鬼は下半身丸ごと、封じられていた。

 

「悪いが、逃がさねぇ‼」

 

「さっきはよくもオイラのモギモギ燃やしてくれたなぁ‼‼」

 

正に万事休す、何とか天峯を死守しようと身体を動かす尾白と心操。しかし、足元を取られているうえに流石に攻撃を身体に疲労が蓄積されており上手く動けなかった。

 

ヒーロー科の作戦はいたってシンプルな物だった。緑谷や普段の龍鬼との訓練において、龍鬼が個性、複数の術を使用する際は若干のラグのようなものが発生することを知っていた。だから、何とかその状況を作り出し龍鬼を無防備な状態にしその隙をついて一番の障害である龍鬼に向かって全力による一斉攻撃をするというものだった。

 

「やった、成功だ‼‼行くよ、みんな‼‼」

 

「テメぇえの負けだ‼‼クソモブどもぉおおおおおお‼‼」

 

「残念だけど‼‼普通科に負けるつもりはないんだよね‼‼」

 

「勝つのは、私たちだ‼‼」

 

見事にヒーロー科たちの策は嵌り、龍鬼たちの騎馬の動きは完全に封じられる形になった。龍鬼という存在によって今までピンチだったヒーロー科の生徒たちによる一発逆転の攻勢に、場内の観客から凄まじい歓声が飛んだ。

 

「いいぞぉおおヒーロー科‼‼そのまま鉢巻き奪っちまえ‼‼」

 

「頑張れぇえヒーロー科‼‼負けるなぁあ‼‼」

 

「普通科も頑張れぇえええ‼‼」

 

「ここまで来たんだ‼‼負けるなぁああ‼‼」

 

観客たちの歓声が、ヒーロー科の生徒たちを盛り上げる。ほとんどがヒーロー科の生徒を応援するものだった。しかし、微かにだが、自分たち普通科を応援する声も届いていた。天峯は、身を挺して自分を守ってくれた龍鬼の為に己を奮い立たせ鉢巻きを奪われぬように防御の姿勢を取る。

 

「絶対、負けない‼‼」

 

迫りくる騎馬の集団を睨みつける天峯、そして尾白も心操も何とか防御に入ろうと必死に互いの身体を寄せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「                                          」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だがその瞬間、龍鬼の眼と騎馬戦に参加していた全ての生徒たちとの眼が合い全員が動きを止めた。果敢に攻めようとした全員の動作が突然止まったのだ。まるで時が止まったかのように。

 

 

否、止まったのでは無かった。止められたのだ、圧されたのだ。龍鬼のその眼に。

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

龍鬼の姿に

 

 

騎馬戦に参加した1年の生徒の全員が幻視した

 

 

重い雨の降りしきる

 

 

黒の大地の果てに佇む

 

 

龍の姿をした鬼を

 

 

一匹の怪なる獣を

 

 

 

 

龍鬼たちを覆っていた氷が一瞬で砕け散る。そのことで、止まっていた生徒たちは我に返り再び龍鬼たちの鉢巻きを奪おうとする。だが、間髪入れずに動けるようになった龍鬼が右足で地面を踏みぬいた。

 

まるで何か巨大なものが空から降ってきたような衝撃と共に地は砕け散る。そして、その衝撃がヒーロー科の生徒たちだけではなく会場を全体に広まり、凄まじい衝撃波と土煙が上がった。

 

あまりの衝撃に会場にいた観客も慌てふためいた。同時に、観戦に来ていたプロのヒーローたちは思わず周囲にいた人たちの前に立ち防御の姿勢に取っていた。圧されたのは、生徒たちだけでは無かったのだ。

 

騎馬戦終了のブザーが既に会場に鳴り響いていたが、未だに騎馬戦に参加する生徒たちのいる場は土煙で視界が良くなく生徒たちの状態が分からなかった。観客たちからは、心配する声も上がっていた。

 

『……心配するな、奴は冷静だ。ったく、いくら興行だからって派手にやり過ぎだ』

 

イレイザーの言葉と共に、土煙も晴れていき生徒たちの様子が確認できるようになる。生徒たちのいる場は地面が滅茶苦茶になっており、完全に破壊されている状態だった。何組かの騎馬は崩れ、目を回しながら凹凸の激しい地面に倒れ伏していた。

 

そして、そんな惨状でも4つの騎馬が騎馬を崩すことなく立っていた。

 

「タスキは何本か取られた、か。流石は、ヒーロー科って所か。のぉ、イズク」

 

身に付けていた服は、個性による攻撃を受けてことによってボロボロにはなっているもののまるで何事も無かったかように立つ龍鬼と彼に守られた三人の姿。

 

「僕‼‼だって‼‼ただで負けるつもりは‼‼無いから‼‼」

 

「く、くそがああああああ‼‼」

 

「……何とか、奪えたか。クソ、まだお前には届かねぇってことか‼‼」

 

息を切らし身なりもボロボロ。満身創痍になり今にも倒れそうな状態になりながらも龍鬼たちから鉢巻きを奪うことに成功した緑谷、爆豪、轟たちの騎馬の姿がそこにはあった。

 

だが、肝心の1000万の鉢巻きは、未だに天峯の頭に巻かれたままだった。

 

『そこまで‼‼勝負あり‼‼騎馬戦第一位は、天峯さんチーム‼‼』

 

主審であるミッドナイトの言葉によって、アリーナに凄まじい歓声が響き渡る。ヒーロー科の生徒を応援していた観客の誰もが魅了され、彼ら普通科の強さを認めたのだ。

 

「い、一応俺はヒーロー科なんだけど。みんなこれ勘違いしてないかな」

 

「別に良いだろ、相手側にも普通科やサポート科も混じってたわけだし。それより、後でヒーロー科の連中の質問攻めが待ってるだろうから頑張れよ、尾白」

 

「うわ…、気が滅入りそう」

 

騎馬戦を戦い抜いたことに緊張の糸が解け、ほっと溜息を付きながら尾白と心操は胸をなでおろした。

 

「か、勝ったの?僕たち」

 

ポツリと口にする天峯、未だに自分たちの状況を上手く呑み込めておらず未だに信じられないような目で喚起に包まれた周囲を見渡していた。

 

そんな彼女を龍鬼はゆっくりと降ろし、語りかけた。

 

「そうだ、俺たちの勝ちだ」

 

そう言いながら、龍鬼は彼女の右手を優しく掴み天に向かって掲げた。それと同時に、尾白と心操も会場の観客たちに向かって手を振った。会場のボルテージは最高潮に高まり観客の全員が席を立ち、戦い抜いた彼らに惜しみない賛辞を贈った。

 

「やったな、天峯」

 

その言葉を聞き、溢れる感情をこらえ切れなくなりそうになる。しかし、それでも彼女は涙を浮かべることなく溢れんばかりの笑顔で応えた。

 

「ありがとう、みんな」

 

雄英体育祭が始まって以来無かった、普通科の生徒たちによる正に下剋上の瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




唐突な質問ですが、皆さんは怪獣で何が一番好きですか?

因みに私は……。と思ったんですがダメだ選べない(本末転倒)

全部魅力的で思い出深く、一番に選べない現象。

それはそうとモンスターバースの新作であるゴジラvsコング、楽しみですね。

モンスターバースの作品をまだ見たことないという人は是非見てみてください。

あ、あとシン・ウルトラマンの予告も短いですが公開されたのでそちらも是非見てみてください。

今年は、また良い怪獣の年になりそうです。

ではまた。



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