時は十二月二十四日、二十五日になるまであと数時間残した深夜である。
例え明日が世界三大宗教の開祖の生まれた日だろうがゲーマーにはなんの関係もない。ただイベントのある日というだけだ。そう言った意味ではクリスマスにも、バレンタインデーにも同じだけの価値しかない、というのが陽務楽郎(クソゲーマー)の価値観だった。
「とはいえイベントであれば何が起こるかを確認するのもゲーマーと言うもので……」
非常に珍しいことにシャングリラ・フロンティアにもクリスマスイベントが訪れた。神ゲーと呼ばれる事実をほしいままにするこのゲームに難点がひとつあるとすれば、季節のイベントをほとんど考慮しないという点にある。まぁバハムートで手に入れた情報を総合すれば地球はもはや穴あきチーズ以下の状態になっている事は理解できているし、そこからサンタクロースが出張してくれるとは考えにくい。あとついでにサンタを理解している存在なんてほとんどいないのが当たり前の年数が経っているのだ。
しかし。しかしだ。ウチの相棒たちはなぜか知っていた。サイナはまだ分かる。文化の継承を願った者、アンドリュー・ジッタードールに作られた彼女含む征服人形は地球文化を形式的ながら保持している。
保持であり、『理解』ではないのが悲しいところで、つまりどうなっているのかというと、
「………インテリジェンス」
二十四日だというのに寝ておられる。
寝言でインテリジェンス言うあたりいよいよ鳴き声化が著しい。
いや分かるよ? 昼間は今も着ているサンタ服(アンドリュー君渾身のミニスカサンタ)で事務所(ドールベース)を散歩して他人形たちに笑顔でマウント取るのに忙しかったもんな。
でもサンタが働くのは夜だろうに、夜寝るサンタがどこにいる。
「まあ好都合だしいっか」
サンタとは、夜中に忍んで置くものなり。
インベントリから服を取り出し綺麗に畳んでサイナの胸の上に置いておく。勇魚に頼んで作ってもらった衣装、結構高かったのでイベント内容通り好感度超上昇効果を発揮してもらいたいものだ。
今回のイベントは至ってシンプル。
NPCにプレゼントを渡すと好感度超上昇と翌日同価値程度のアイテムをくれる、さらには二十五日零時から二十四時まで限定でドロップ率向上効果のある『聖夜の奇跡』特殊状態になる。
いや凄かった。聖女ちゃんのいる三神教会スカルアヅチ支部がプレゼントで埋まっている光景は思わずスクショしたし、幼女先生に「極光アウロラカムイ盛」を差し出しやり切った感満載のサバイバアルは燃え尽きて真っ白になっていた。俺はその五倍の値段を誇る「リヴァイアサンパフェ フルトッピング神代のかほり」を渡してきたので明日が楽しみだなぁ。
「……さて」
ゲームにおいてはメインイベント。
我が相棒、エムル。
なんでか「明日はクリスマスだからちゃんと夜に寝なきゃいけないですわ!」と言っていそいそとパジャマに着替えて今俺の部屋でベッドに入っているウサギ娘である。
「まぁこういうことしろってことだよなぁ」
何故かビィラックに呼び出され、
何故か覚悟を問われ、
何故か無料で渡されたこの赤い服と赤い帽子と赤いズボン。
「タイムリミットは三分。潜入、配置、そして脱出。いいぜやってやろうじゃねぇか!」
用意したプレゼントは「ラビッツカフェ食べ放題券」! めくるめく人参の楽園にご招待!
子どもの夢は壊さない。それが俺のサンタど
「おう、サンラク。遅かったなぁ。俺等ぁはもう置いてきたから静かにな?」
サンタ・ヴァッシュ!?
ご丁寧にサンタの格好をした極道兎が一切の音を立てず俺の部屋から出てきて動転する。
「あ、兄貴ィ!?(小声)」
「あぁ? このカッコかぁ? 事をなすにはまず形から、これもひとつの致命魂ってな」
じゃあな、まだちっこいのがいるからよぅ、と消えていくヴァッシュの後ろ姿を見送り、タイムアタックの難易度がさらに跳ね上がった事を理解して。
「やったろうじゃねぇか!(小声)」
俺の挑戦が始まった。
なお室内に侵入し、置いてあった人間の大きさを超えた超巨大人参にびっくりしてバレかけた