シャングリラ・フロンティア ワンドロ集   作:斯波涼佑

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ここからすべてはじまった


お題「晩餐会」 笑ってはいけない「旅狼」前奏曲

 『招待状』が届けられたのは年の瀬も迫るある寒い日だった。なに? 半裸だから常に寒いだろう? ゲームだから別に寒くねぇんだよ、心配すんな。

「なんだこりゃ」

「落胆(オイオイ):二度も繰り返すとは……契約者は本当に人類ですか? これは、紙です」

「お前も二度繰り返すな天丼概念持ち越してんじゃねぇよ分かってんだよ原材料は。で、アンタプレイヤーだよね? 鉛筆にいいように使い走りさせられてるけど反逆とかしないの?」

「ぞくぞくします」

 このプレイヤーはもう駄目じゃ、もうすでに鉛筆の沼に沈んでおる。

 手遅れ感満載なプレイヤーを置き去りにして、『招待状』をまずは放り投げる。【永劫の眼】(クロノスタキサイア)起動。スローモーションで落ちていく手紙の封蝋を投げナイフで開く。

「ふむ。爆発はなし、か」

「確認(ちょっと待て):契約者は何か、恨みでも買っているのですか?」

「よく覚えておけサイナ。ペンシルゴンは愉快という理由だけで人を陥れる罠を仕込む」

 仕込んでいた場合、手紙を手渡したこの無垢というには歪みすぎた彼がPK判定を受けるのだが……それすら受け入れそうなのが怖いなぁこのプレイヤー。妹にシャンフロを勧められない理由がまた増えた。嫌だよ妹が鉄砲玉になるなんて。

 さて招待状の内容は……。

「要するに年末の忘年会か」

 リアル事情その他もろもろ、物理的に集まることの難しい『旅狼』。しかしなんかやりたい、と考えた我らがクランリーダーペンシルゴンは、今ある立場を十全に生かし、サードレマ大公の城にて内輪の晩餐会を開くことにした。

 ついては指定した日時に集合してほしいとのこと。もちろん、盛装で。

「もし断った場合は?」

「先輩方から爆弾を預かっていますので僭越ながら自爆を」

 自爆って文化なの?

 

 根回しをして『豪奢な会場に鉛筆がポツンと一人』という精神にクる嫌がらせをしようとしたが、それぞれがそれぞれに何らかの手段で脅されたらしく、サードレマの城には割とレアなことに『旅狼』全員がそろっていた。

 そして俺は笑いものにされていた。

「いや、盛装で来いっては言ったけどさぁ。まさか喪服で来るとは思わないじゃん」

「いいだろうが死者を悼む礼儀(マナー)この上ない盛装だぞ」

「盛装というより葬装じゃないのそれ」

 お前を墓場に連れてってやるという決意をこれ以上なく盛り込んでいるから盛装だぞ。

 ほかのメンツはまぁなかなかだ。

 レアモンスターの素材をふんだんに使用したという露出の少ない純白のドレスを着たレイ氏。

「なんかウェディングドレスみたいだね」

「ヴェッ」

「え、なに吐き気!? 大丈夫レイ氏? ログアウトする?」

「だびっ、だびじょぶでぶ、えへへ」

「そう? いやでもさすがレイ氏。(装備が)綺麗だね」

「ほぴゃあ!」

 がくがく震え始めたレイ氏の大丈夫という言葉を信じほかに目を向ける。

 和服が好きなのか豪奢な花びらが舞っている柄の和装を着た京極。極妻みたい。

「は?」

 長ドスを胸から抜くな。どこに仕込んでたんだそんなもん。

 俺の胸でボクシングを始めるなカッツォ、リアルでやったら乳房を支えるクーパー靱帯が伸びて三十年後に殺されるぞ、お返しに俺もボクシングを始めるが燕尾服を着てぎっちり固めているので揺れない。お前だからやるんだよって? やだちょっとキュンとした。キュンとしたからお前も心停止しろやコラァ!

 秋津茜は、うん、すごい。お姫様みたいだ。竜をあしらった胸のブローチからワンピース型の青みがかったドレスやら、何から何までオンリーワン。ユニーク装備といわれても納得の……え、それノワルリンドからもらった素材でできてる? あのちょっとあとで相談が……。

 ルストとモルドは……思いつかなかったんだね。学生服だ。いやこのゲームで学生服作るとかすごいなその鍛冶職。ウチのビィラックも似たようなの作ってたけど。今度紹介して?

 そして我らがリーダー、アーサー・ペンシルゴンはドレスだった。

 ここで晩餐会のマナーを紹介したい。

 主催者は、客より豪奢なものを着てはならない。これが俺がクソゲーで学んだ晩餐会での礼儀の第一だ。スパイ潜入もので面白かったなぁあのゲーム。ある面がいろいろ手段あったけど難易度高すぎで、晩餐会のシェフに化けて料理に毒仕込んで参加者全員殺すのが最適解という潜入なのか虐殺なのか分からなくなるゲームだったけど。

 話をマナーに戻そう。

 ペンシルゴンのドレスは豪奢だった。なんなら誰よりも豪華だった。

 黒を基調にした桜の花弁が重なり合ってできたかのような織り、全身のきわどいところまで入ったスリットが扇情的で、中身を知らなければ男なら誘惑に負けてしまうだろう。

「やぁやぁ諸君。それじゃあ……」

 

 鉛筆のフィンガースナップで部屋を囲むように鉄格子が落ちる。

 やはり罠……! しかし主催者の鉛筆はとてもいい笑顔で、

「よくあつまったお前ら! ではこれより、『笑ってはいけない『旅狼』24時』を始めます!」

 

 俺たち(特にモルド)の地獄が始まる……!

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