アサルトリリィPRESERVED   作:(確信)

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お久しぶりです。本当に。
はい、まだ書いてますよ……書いてますよ……?


ムラサキクンシ その6

 

「流瑠様の部屋に泊まる」。そう言って楽しそうに、準備するために各々の部屋に戻っていく梨璃、楓、夢結。3人の姿を眺めながら、鶴紗は隣にいる燻んだ金髪に話しかけた。

 

「……見逃してよかったの?このままじゃ流瑠ねえ、盗られちゃいそうだけど」

 

鶴紗に話しかけられた、燻んだ金髪――瑠璃は、愉快そうに口元を歪め、言葉を発した。

 

「焦らないの、鶴紗♪大丈夫、私たちには圧倒的なアドバンテージがあるんだよ?鶴紗だってわかってるでしょ?」

「……まあ、ね」

 

流瑠を手に入れるための、二人の圧倒的なアドバンテージ。それは――

 

「ノスフェラトゥ、そしてリジェネレーター。私たちは実質的な不老不死。つまり――」

「時間だけは、誰よりもある。……焦ることはないよ。私たちは待ってるだけ。そう、ただ待ってるだけで、いずれ流瑠お姉ちゃんは私たちのものになる。……ふふっ。こう言ったらなんだけど、鶴紗がノスフェラトゥに適合してくれてよかったよ。私一人だけじゃ、退屈すぎて死んじゃってたかも」

 

「死」という言葉に鶴紗は顔を顰めるが、瑠璃は「ノスフェラトゥジョークだよー」と笑う。

心底愉快そうに、瑠璃は嗤う。いつか訪れる、恋焦がれるお姉ちゃんが瑠璃と鶴紗だけを見てくれるようになる日を幻視しながら。

 

「お姉ちゃん。だーいすきな流瑠お姉ちゃん。今はちょっと貸してあげてるだけ。いずれ私たちだけのものになってくれる!今から楽しみだねぇ、鶴紗♪」

「瑠璃……」

 

嗤う。哂う。狂おしいほどの恋と愛に、瑠璃の顔が蕩ける。

あるリリィは言う。「自分は尊みのしもべで、自分が間に挟まったり、推しに好かれるなんて以ての外だ」と。

だが、瑠璃は違う。たしかに、瑠璃は女の子同士がイチャイチャしているのを見るのが好きだ。でも――

 

「……でも、私だって幸せになりたい。大好きな人に好かれたい。愛されたい。イチャイチャしたい、手に入れたい!欲しい、欲しい欲しい欲しい!!見てるだけじゃ全然足りない!!!」

 

瑠璃は叫ぶ。心に空いた穴を埋めたいと。愛が欲しいと、心から叫ぶ。

 

「鶴紗だってそうでしょ……?今までつらくて、寂しくて、苦しくて!痛くて飢えて渇いて仕方なかった!!……普通の人よりも苦しんだ分、愛されても良いって、幸せになっても良いはずだって……思うよね?わかってくれるよねぇ?幸せを追い求めることは……間違って、ないよね?」

「……」

 

その声は狂気的で、なのに子供みたいな純粋さがあって、笑っていながら泣いていて……鶴紗はその慟哭を否定できなかった。

確かに、鶴紗も何度も思った。普通の人、普通のリリィよりも、私たち強化リリィはずっと苦しい思いをしてきたはずだ。肉体的にも、精神的にも。瑠璃も鶴紗も肉親を失い、愛を貰えずに生きてきた。その埋め合わせは、普通の幸せなんかじゃ足りない。もっと欲しい。もっともっと幸せになってもいいはずなのに。そう、思ってしまったのだ。それがどれだけエゴイズムに溢れているのかわかっていながら。

だから、鶴紗は瑠璃を止められない。いや、止める理由云々よりも、上手く行けば全てが手に入ると言う誘惑の方が鶴紗の中で上回っていただけだ。

 

「まあ流瑠お姉ちゃんはいずれ手に入るとして……問題は梨璃お姉ちゃんの方だよね。梨璃お姉ちゃんはノスフェラトゥなんて無いし、施術なんてしてもらうわけにもいかないし。どうしよっかなー」

 

鶴紗が言葉を否定しなかったことで落ち着いたのか、瑠璃は「ごめんね」と一呼吸置きながらも、流瑠や梨璃を手に入れることばかりに頭を悩ませ、あーでもない、こーでもないと楽しそうに唸る。「ノスフェラトゥ」という一個人に無限の時間を与えてしまうスキルが、瑠璃の時間感覚や価値観を変えてしまったのかもしれない。

 

でも、その根本にあるのは「自分が幸せになりたい」という至極真っ当な思いだ。良識だってちゃんと持っているし、誰かを傷つけようとしているわけでもない。だから、強く止める理由はないし、鶴紗だって瑠璃と同じ目的で動こうとしている。

でも――同じノスフェラトゥを持っているのに、瑠璃は鶴紗を置いてどんどん先に進んでしまいそうな気がして、鶴紗は思わず、前を歩く瑠璃を背中からギュッと抱きしめてしまった。

 

「……鶴紗?どしたの?」

「……いや……」

 

急に抱きつかれて驚いたであろう瑠璃の疑問に、鶴紗は答えられない。何か明確な理由があったわけじゃなくて……でも、やっぱりそうしなきゃいけなかった気がして。

瑠璃は煮え切らない様子の鶴紗に少し首を傾げたが、やがて「あ、そっか♪」と得心顔で頷いた。

 

「鶴紗、嫉妬しちゃった?私が流瑠お姉ちゃんと梨璃お姉ちゃんの話ばっかりするから♪」

「……」

 

それもないことはない、のかもしれない。しかし、それは根本的な理由じゃないのだ。

何と答えていいかわからず、鶴紗が黙っていると、瑠璃は鶴紗の方を振り向いて――唇を重ねた。

 

「んむっ……ちゅっちゅ、くちゅっ、じゅるるっ」

「んっ……!?んむぅっ!ちょ、瑠璃っ!?」

 

容赦なく舌まで捩じ込む瑠璃に、鶴紗は抵抗できない。愛しさと心地よさが脳内を支配していき、思考を妨害する。

 

「たづさ……心配しなくてもだーいすきだよ。ちゅっ♡あいしてるよ♡ぢゅるっ♡」

「わた、しもっ………はむっ、ちゅっ♡るりのこと、すきっ」

 

さっきまで何を考えていたのか、もう思い出せない。何か不安があったような気がして、それを誤魔化されたような気もする。

でも、今はそんなことより、瑠璃から与えられる感覚に耐え、自分を保つことで精一杯だった。

 

「やっ……ちょ、瑠璃っ♡あっ♡んちゅっ♡」

「あはっ、鶴紗かわいい♡」

 

その内、瑠璃は舌で鶴紗の口を味わうだけでなく、鶴紗の足の間に自分の右足を入れ込み、ふとももを前後に動かし始めた。瑠璃の艶めかしい肌色の生足が、鶴紗の股の間を行ったり来たりする。

暫くそれを繰り返して、鶴紗の口から奏でられるにしては珍しいソプラノの音楽をじっくりと楽しんだ後、瑠璃は絡めていた舌と足をやっと離した。

 

「見て見て、鶴紗。これなぁに?なんで私の足、こんなに濡れてるのかなぁ?」

「っ……」

 

瑠璃が鶴紗に見せつけるようにして上げた足の、ふともも部分。そこは、透明な液体で濡れているように見えた。ただ、その液体は普通の水のようにさらさらしたものではなくて、ネトっとした、粘性のあるもののようで――鶴紗はそこまで認識して思わず顔を逸らした。

でも、どれだけ見ようとしなくても、瑠璃に与えられていた感覚は消えない。息は荒くなっていくばかりで、身体の疼きは収まりそうになかった。

 

「瑠璃、私っ……」

「あは♡スイッチ入っちゃった?なら……続きは部屋でシよっか♡

……ごめんね鶴紗、巻き込んじゃって……。でも、鶴紗のことも絶対、絶対幸せにしてあげるからね。流瑠お姉ちゃんと一緒に幸せになろーね。そのために、楓おねーちゃんや夢結おねーちゃんには絶対負けられない……

 

瑠璃が小声で何を言ったのかは聞き取れなかったが、鶴紗は瑠璃に連れられるままふらふらと鶴紗たち2人の部屋に帰る。……帰り着いた途端に、この欲望が爆発するであろうことを容易に幻視しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お邪魔しますわ!」

「お邪魔しまーす!」

「相変わらず広いわね……」

 

楓さん、お姉様と一緒に流瑠お姉ちゃんの部屋に招かれた

私――一柳梨璃は、勇んでお姉ちゃんの部屋に足を踏み入れる楓さんの後に続いて入っていく。

実の所、私はこの部屋に何度か来たことがあった。瑠璃ちゃんの一件で「罰」として夢結お姉様と一緒に添い寝した時から、何度かこの部屋をお姉様と使わせてもらって、一緒に寝たりしている。

だが、楓さんやこの部屋の主であるお姉ちゃんと一緒に、というのは初めてだ。しかも4人という大所帯。私以外はみんな凄いリリィばかりで、いつも一緒にいるのに、なんとなく緊張してしまう。

 

「あはは……こんなに広くしなくていいって言ったんだけど、理事長達が『誰よりも長く戦い続けている貴女を特別扱いしないわけにはいかない』って譲らなくてねー」

「でも、こういう広いお部屋って憧れます!」

「あら梨璃さん、広い部屋をお望みでして?でしたら是非わたくしのお部屋に!二部屋ぶち抜いて大部屋にしてますのよ!」

 

おーっほっほ、とアピールする楓さん。しかし「いや、それはいいかな……」と私の口から自然に出た言葉で、「なぜですのー!?」と崩れ落ちた。いや、楓さんの部屋にも興味がないことはないし、楓さんのことも大好きなのだが……最近、私の口は楓さんに少し毒を吐くようになってしまっている気がする。気をつけなきゃ。

 

「楓の部屋も広いし綺麗だよねー。私は好きだよ!キラキラしてて、ベッドも可愛くておっきいしね!」

「そういえばお姉様、楓さんの部屋に何度か行ってたわね……」

「そう言われたら、ちょっと行ってみたいかも」

 

先ほども述懐したが、楓さんの部屋に興味自体はあるのだ。ギニョギニョ?というcharmメーカーの御令嬢だからお金持ちだろうし、きっとキラキラしているのだろう。

それに、楓さんの部屋で楓さんと二人っきりになったら……もしかしたら、楓さんのかわいい顔とか見れちゃうかもしれないし。という下心が無きにしも有らずなのだが。

 

「手のひらクルクルですわ!?」と良いリアクションをする楓さん共々、きゃいきゃいと騒ぎながらも、持ってきた荷物を置いて4人で大きなベッドに腰掛けさせてもらう。

その中でも、恐らくは着替えなどとは別であろう、どかっと置かれた一際大きな荷物に、流瑠お姉ちゃんは首を傾げた。お姉様が持ってきたもので、私はそれに見覚えがあった。うちのクーラーボックスと同じやつだ。

 

「夢結のその荷物……クーラーボックス?」

「ああ、これは梨璃のご両親に貰ったものなのだけど……何か食べ物らしくて。今日中に食べた方がいいかと思って持ってきたの」

 

私の口から自然に、「お父さんとお母さんから……?」と言葉が出てくる。私にはお父さんとお母さんが誕生日に渡してくれる食べ物に心当たりがなかった。ケーキとかなら事前に用意しておかないとだろうし、お姉様は今回突発的に甲州まで行ってきたのだから、そんな余裕はなかったぢろう。

楓さんは楓さんで、「この時間に食べ物なんて、夢結様が言うとは思いませんでしたわ」と私とは別の反応を見せる。たしかに、早寝のリリィはもう寝るくらいの時間だろう。こんな時間に食べ物なんて食べていいのだろうか、という疑問はあった。

だが、そういうことに厳しいと思っていたお姉様とお姉ちゃんの反応は意外なものだった。

 

「まあ梨璃の誕生日なのだし。たまにはそれくらい良いんじゃないかしら」

「そうそう!こういうおめでたい日は細かいこと気にしちゃダメだよ!」

 

そんなものだろうか?リリィってもっと厳しい感じなんじゃないのか?色々思うところはあったが、楓さんも「まあ食べた分は明日発散すればいいですしね」と納得している。みんながそう言うならそれでいい……のかな?

それに、私もお父さんとお母さんが何を送ってくれたのかとても興味がある。「わかりました」と了承すると、お姉ちゃんは満足げに頷いて、手をパンと1つ打った。

 

「じゃあ、それは後で食べるとして……まずはみんなで、お風呂入ろっか♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わあ……!お姉ちゃんの部屋、お風呂も広いんだぁ!」

「これは……個人の部屋の浴室とは思えない広さね」

「まさか梨璃さんや流瑠お姉様と一緒にお風呂に入れるなんて……ぐふふ!夢結様もいますが、まぁそれは些細な問題ですわ!というか、お風呂のお誘いを受けた上に同衾!?これはもう何をしてもオッケーだというサインなのでは……」

 

服を脱ぎ、タオルだけを巻いて浴場に入る。普通のリリィの寮でも、流石百合ヶ丘というべきか、シャワーと浴槽は全部屋に備え付けてある。でも、お姉ちゃんの部屋のように4人が一気に入れるような浴槽なんてものはもちろん無い。内装自体は他の部屋と変わらないが、広さが変わると印象がまるで違って見えた。

楓さんは何か言っているが、別に何をしてもいいと言った覚えはない。……まあ、楓さんやお姉様、お姉ちゃんになら何をされてもいいと思えるかもしれないけど。

 

「かーえーでっ、今日はそういうのじゃないでしょー?梨璃の誕生日を祝う日なんだから、梨璃がしてほしいことを私たちがやってあげるんだよ」

 

先に入った私たち3人を追うように、お姉ちゃんも浴室に入ってくる。もちろん、タオルは付けたままだ。お姉ちゃんは入ってくるなり、楓さんを注意しながらも後ろからやわく抱きしめる。最近楓さんはお姉ちゃんにぎゅ〜っとされすぎるとビクンビクンしてしまうので、お姉ちゃんは抱きしめる腕を手加減する他無いようだった。当の楓さんは、「最近お姉様にぎゅっとされるのが弱くてもどかしい、でも強くされると下着がいくらあっても……」などと贅沢な悩みを抱えていたが。

 

「それで?今お風呂だけど……梨璃は何かして欲しいこととかある?」

「ひゃい!?」

 

いつの間にか楓さんを離していたお姉ちゃんは、今度は私を後ろから抱きしめ、耳元で囁く。私の背中にバスタオル1枚しか隔てるものが無いふにっとした感触が押し当てられ、私はドキドキしてしまった。

 

「なんでもいいんだよ?私と、夢結と、楓。3人で梨璃のして欲しいこと、なんでもしてあげる♡さっきまではパーティで、色んな娘達が梨璃のこと祝ってくれてたけど……これからは私たち4人だけの時間だからね♡」

「わ、私たちだけの……」

 

その言葉に、私のドキドキはさらに早くなる。お姉ちゃん、楓さん、お姉様、そして私。大好きな人達だけとの特別な時間。想像するだけで素敵な時間だ。

 

「そうですわよ梨璃さん。梨璃さんのして欲しいことでしたら、なんだってして差し上げますわ!あんなことや、こんなことだって……」

「わ、私も……梨璃がして欲しいことなら……」

「か、楓さん……お姉様まで……」

 

楓さんとお姉様も、私の両横から抱きしめてくれる。後ろと右と左。3方向からたわわな3対の果実を押し付けられれば、どうしてもそれを意識してしまう。3人とも私よりも大きくて、ふかふかで、でもそこからどうしていいかわからない。

あわあわしていると、背後からくすっと笑う声が聞こえ、再度耳元で囁かれた。

 

「ふふ……梨璃のえっち♡」

「と、取り敢えず身体を洗ってお風呂に入りましょう!!」

 

こうやって3人に抱きしめられているのは至福の時間だが、ずっとこうしていると心臓が保ちそうにない。そう判断した私は、兎にも角にもこのお風呂を乗り切ろうと決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が洗ってあげるね」と名乗り出たお姉ちゃんに一人ずつ身体を洗ってもらった私たちは、その手技に完全に翻弄され、へにょへにょの骨抜きにされて湯船に浸かった。

最後にお姉ちゃんが入ってくるまで、せっかくなので私はお姉様に甘えさせてもらうことにした。

 

「あ、あの……今日はちょっとだけ、お姉様に甘えたいなって……い、いいでしょうか?」

「ええ、いいわよ。……ほら、こっちへ来て、梨璃」

 

広めの浴槽をお姉様のところまで犬かきのように泳いでいく。「し、失礼します……」と一言断りを入れてからお姉様の膝の上に座ると、お姉様はぎゅっと後ろから抱きしめてくれた。

 

「ふぁ……」

「こ、こんな感じでどうかしら……?」

 

お湯の中で抱きしめられるのは、外で抱きしめられるのとまた違う。お湯もお姉様もあったかくて、凄く気持ちいい。頭の中にじんわりと温かさが広がって、安心感と幸福感に満たされていく。

 

「……梨璃、あなたはいつもよく頑張ってるわね。あなたの姉として、私は梨璃のことを誇りに思うわ」

「お姉様……」

 

お姉様は片腕で私を抱きしめたまま、もう片腕で私の頭を撫でる。撫でてもらいながら褒められるなんて、今までお姉様にされた事はなかった。文字通り、お姉様は精一杯私のことを甘やかしてくれているのだろう。

 

「あ、あの、お姉様……もう一ついいですか?」

「ええ。何かしら?」

 

それが嬉しくて、今なら本当にどんなことでもしてくれそうだ。そう思ってしまった私は、お姉様にもう一つわがままを言ってみることにした。

 

「お姉様と……キス、したいです」

 

その言葉にお姉様は一瞬だけ戸惑ったが、「……わかったわ」と私をお姉様の方に向かせてくれた。

 

「じゃ、じゃあ、するわよ……」

「は、はい……」

 

お姉様とキスするのはこれが初めてではない。でも、何故か凄くドキドキしてしまう。意味深な目で私たちを見ている楓さんを視界に捉えてドキッとしてしまったので、人前でしているからかもしれない。

 

「梨璃……」

「お姉様……」

 

段々と二人の距離は縮まっていき……楓さんに見られながら、私たちは唇を重ねた。なんだか凄く背徳感がある。

楓さんに見せつけるように、ちゅっちゅっと何度もキスする。お風呂でしているからか、頭がぼーっとして気持ちがいい。自然に両手の指を絡ませ、タオル越しの身体をお姉様と擦り合わせると、気持ち良さはもっともっと強くなっていく。

 

「りりっ……」

「おね、しゃまっ」

 

息もまともにできないほど、お姉様と唇を合わせる。お姉様は顔が赤くなって、なんだかえっちな表情になっていた。多分、私も同じような表情なのだろう。それに興奮して、また私たちはキスを重ねた。

そんな私を、横からさらに抱きしめる腕があった。

 

「り、梨璃さん……わたくし、今日が梨璃さんの誕生日で、梨璃さんの望むことをしなきゃならないというのは重々承知してますわ。けど……我慢できませんのっ!わ、わたくしとも♡わたくしともキスしてくださいませ♡」

「かえで、さん……♡」

 

それは、身体を火照らせてお姉様と似たような表情になっている楓さんだった。私とお姉様のキスに当てられたのか、顔も赤くなって、かなり息が荒い。

蕩けるような、それでいて必死な表情で楓さんは私とのキスをせがむ。そんな可愛くてえっちな楓さんにたまらなくなって、私は楓さんとも唇を重ねた。

 

「楓さんっ!」

「り、りりさ♡りりさんっ♡」

 

さっきまでお姉様とキスしていた唇で、今度は楓さんと。片手はまだお姉様と絡めたまま、もう片方は楓さんときゅっと指を絡め、濃厚なキスを交わす。多幸感と背徳感、そしてふわふわと脳を茹でる身体の熱で、頭がおかしくなってしまいそうになる。

 

「り、梨璃!私とももう一度……!」

「お姉様ぁ……」

「梨璃さん!今度はわたくしとぉっ!」

「かえでさ、んあっ♡」

 

お姉様と楓さん、二人と交互にキスを続ける罪の味を堪能する。「こっちに来て欲しい」、「いや私と」と主張するように、絡み合った指がにぎにぎと刺激されるのが気持ち良い。しかし、そうやって私が何度か二人とキスをしていると、さらに別のところから私は身体を抱きしめられて引き離された。「「あっ……」」と、二人から残念そうな声が出てくる。

 

「……私抜きで楽しそうなことしてるねぇ、3人とも♪」

「お、お姉ちゃん」

 

今度は、身体を洗い終わったらしいお姉ちゃんだ。お姉ちゃんは後ろから私を抱きしめると、また耳元で囁いた。どうやらお姉ちゃんは、こういうやり方が好きらしい。

 

「……ねえ梨璃。私も、梨璃のこと大好き〜ってしてもいい?二人ばっかりずるいもん♡私も梨璃と大好きってしたいなぁ♡」

「おねえちゃ……ひゃんっ」

 

抱きしめられたまま首筋をつーっとなぞられ、私の口からは高い音が出る。さらにヒップラインを撫でられながら、耳にふーっと息を吹きかけられ、私は「やぁっ♡」と声を上げてしまった。

 

「ねぇいいでしょー?ね、ね?大好きしようよー♡」

「わ、わかりましたから♡お姉ちゃんと大好きっ、したいです♡」

 

お姉ちゃんからの熱烈なアプローチに、ついに根負けしてしまう。すると、その言葉を待ってましたとばかりにお姉ちゃんは私の唇を奪った。もちろん、楓さんとお姉様が見ている前で、見せつけるように。

お姉ちゃんは私の唇を、しつこく、ねちっこく求めてくる。もちろん嫌なわけがない。むしろ、そのやり方が私に「求められてるんだ」と教えてくれて、私を満たしてくれる。

一通り私の唇を楽しんだのか、お姉ちゃんは口を離して、ペロリと艶やかに舌舐めずりした。

 

「んふふ♡梨璃の唇、夢結と楓の味がするね♡」

「お、おねえちゃん……そんなことっ……」

 

間違いなく、お姉ちゃんはわかって言っている。お姉様とも楓さんともキスした事実を私に突きつけているのだ。

私たちは世間一般的にはイケナイことをしているのだと理解させられる。でもお姉ちゃんは、そんな私の頭を撫でて、言い聞かせるように言葉を紡いだ。

 

「だいじょーぶだよ。それでいいの。私たちは4人で1つ。だからね、今までちゃんとできてなかったけど……この味が、私たちの正しい味なんだよ♡」

 

お姉様とキスした唇で、楓さんと。そして楓さんとキスした唇でまたお姉様と。それを繰り返して、さらにお姉ちゃんともキス。背徳感と快感で、もう頭がどうにかなってしまいそうだった。

でも、私たちが誓い合った「4人で一緒に」とは、つまりこういうことなのだ。4人で愛し合い、4人で添い遂げる。これはその第一歩に過ぎない。これからこうやって愛し合っていくのだと、それを教えてもらっただけ。

そう思うと、私の背筋はゾクゾクと震える。こんなに気持ちよくて幸せなことを、今日限りでなく、ずっとしていけるなんて。衝動的にお姉ちゃんにもう一度キスすると、お姉ちゃんは嬉しそうにそれを受け入れてくれた。

 

「りり♡私たちのかわいい梨璃♡だいすきだよ♡」

「おねえちゃっ♡すきっ♡はぁ、しゅきぃっ♡」

 

思いもキスも、どんどんヒートアップしていく。

お姉様とのキスはぼーっとして幸せに包まれる感じで、楓さんとのキスは甘くてのぼせてしまいそうで……お姉ちゃんとのキスは、クラクラして気持ちよくなってしまうようだった。

何度も何度も、唇を重ねる。強く押しつけたり、吸い付いたり、啄むようにちゅっちゅっとしたり。一度キスするたびに、どんどん私の中の常識や罪悪感が、そして理性が、ドロドロに溶かされていく。

 

「ほら、二人も一緒に大好きしよ♡いいよね、梨璃?」

「は、はい♡お姉様とも楓さんとも、一緒に大好きしたいです♡」

 

お姉ちゃんは、とうとう二人も巻き込んだ。形だけ確認を取ってくれたが、私の首は当然のように躊躇いなく頷く。

私たちの言葉で、羨ましそうにこちらを見ていた楓さんとお姉様も混ざる。お姉ちゃんに耳を舌で愛撫されながらお姉様とキスして、抱きしめてくれる楓さんと肌を擦り合わせる。

 

「梨璃、耳をぺろぺろくちゅくちゅされるの大好きだもんね?」

「すきっ♡きもちぃですっ♡」

「りり……っ」

「おねえさまとキスすき♡おねえさまぁっ♡」

「すきですりりさん♡だいすきですっ♡」

「わたしも楓さんだいすきっ♡楓さんとからだスリスリきもちいいよぉ♡」

 

そんなことを、私たちはお風呂の中で代わる代わる続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………のぼせたわ」

「のぼせましたわね……」

「あはは、ちょっとやりすぎちゃった?」

「…………」

 

私たちはお風呂の中でのイチャイチャを1時間くらい続けた結果、完全に湯のぼせしてしまった。お姉様も楓さんもふらふらだ。もちろん私も。お姉ちゃんだけは何故か平気そうだが。

なんというか、こうして終わってみると現実感がない。まるでお風呂で湯だった頭が見せた幻覚だったかのようだ。

まだ頭がぼーっとしている。寝起きで気持ちの良い夢の世界の余韻を引き摺っているような感覚だ。

 

「梨璃、大丈夫?顔が赤いけど……」

「……あ、はい。大丈夫です……」

 

さっきまでのことを思い出しながらのそのそとパジャマに着替えていると、お姉ちゃんに心配そうな顔で見つめられてしまった。どうやらまだのぼせているらしい。少しフラフラしてしまう。

 

「あっ……」

「だ、大丈夫ですの梨璃さん?ほら、捕まってくださいまし」

 

歩こうとしてフラついたところを、綺麗なネグリジェに身を包んだ楓さんが支えてくれた。ありがたく肩を借りて、一緒に脱衣所を後にする。さらっとお尻を触られるが、そのくらいどうということはない。他に見ている人がいれば多少の恥ずかしさもあるがそういうわけでもないし、楓さんの手つきはやらしいけど優しく、愛しい人に触られていると思えば気持ちよさすらあるので、変わらず楓さんに身を預ける。しかし、お尻を触る手は途中で止まってしまったので、「……それだけ?もっと触ってくれないの?気持ちよかったのになぁ」と耳元で訊くと、楓さんは顔を真っ赤にして慌てていた。自分でお尻を触ったのに、「もっと」と言ったら赤くなってしまうのは何故だろう。よくわからなかったけど、かわいい。まだ少しぼーっとした頭ながら、思わずくすっと笑ってしまう。

 

「うーん、ほんとに少しやりすぎちゃったねぇ。身体を冷やせるものでもあるといいんだけど……何かあったかな?」

 

お姉ちゃんは、飲み物か何かを出そうと冷蔵庫を漁ってくれているらしい。それを見ていたお姉様は、「そういえば」とクーラーボックスを開けて、アレを取り出した。

 

「まだラムネが何本かあるわよ。梨璃、飲むかしら?」

「ラムネ……飲みます!」

 

お姉様に渡されたラムネは、クーラーボックスに入っていてまだしっかりと冷えていた。お姉様は楓さんやお姉ちゃんにも配ると、「じゃあ飲みましょうか」と開栓した。私もラムネを開ける。ビー玉が落ちて、しゅわしゅわと泡が上ってくるのが気持ちいい。

たまらず、私は口をつけた。冷えたラムネが私の口から喉を通っていき、炭酸の感覚と甘さが弾ける。長風呂してからのラムネは、至福の一杯だった。爽快感に、「くぅーっ」と思わず声を出してしまい、恥ずかしくなって手で口を塞いだ。

そんな私を見て微笑みながらラムネを飲むお姉ちゃん達は、私と違って優雅にビンに口をつけ、少しずつ飲んでいる。その姿は何故だか凄く様になっていて、ラムネを飲んでいるだけなのに見惚れてしまいそうだった。ぐいぐいと飲んでしまった自分がなんだか恥ずかしくなる。

……それに、ラムネを飲み込むたびに動くお姉ちゃん達の喉は何処か艶やかで、少しドキドキしてしまった。お風呂上がりだから、というのもあるかもしれない。

 

「……うん。ラムネ、久しぶりに飲むと美味しいね」

「ラムネ……今日初めて飲んだけれど、たしかに面白い飲み物ね。口の中でしゅわしゅわ弾けて……こう、爽やかな感じで」

 

お姉ちゃんやお姉様はあまり普段からラムネを飲まないようだったが、良さをわかってくれてとても嬉しい。一方で私とよくラムネを飲んでいる楓さんは、飲み慣れた様子でごくごくと飲み干して「ぷはーっ!」と声を上げた。……お嬢様、それでいいのだろうか。でも、そんな姿も何故かよく似合っている。

 

「お風呂あがりのラムネは一段と美味しいですわね!」

「うん。それもだけど……」

 

もちろん、お風呂あがりだから美味しい、というのもある。でも、私にとっては――

 

「お姉様や楓さん、お姉ちゃん……大好きな人たちと一緒に飲めるのが、私は一番嬉しいな」

「梨璃……」

「えへへ……実はずっと思ってたんです。いつか、みんなでラムネを飲んでみたいなって」

 

紛れもない本心だった。お姉ちゃんやお姉様はあんまりこういうのが好きじゃないかもしれないと思っていたから遠慮していたが、こうやって好きな人と好きなものを共有できたらいいなと、ずっと思っていたのだ。

そして……それを叶えてくれたのは、わざわざ甲州まで足を運んでくれたお姉様だ。

 

「ありがとうございます、お姉様。私、みんなでこうやってラムネを飲めて、すっごく嬉しいです!」

 

お礼を言うと、お姉様は少しだけポカンとした後、優しい笑顔になって、私を抱きしめてくれた。

 

「……いいのよ、梨璃。私、梨璃にいつも貰ってばかりだもの。だからずっと、あなたに何かを返せたらって思っていたの」

「お姉様……」

「いつもありがとう、梨璃。これで少しでもあなたに返せたなら……それだけで私は嬉しいわ」

 

お礼を言っていたのに、反対に言われてしまった。お姉様は「いつも貰ってばかりだ」と言うが、私はそんなにお姉様に何かをしてあげられているのだろうか。自信がない。

 

「……大丈夫だよ、梨璃」

「お姉、ちゃん?」

 

そんな私を抱きしめてくれたのは、お姉ちゃんだ。いや、お姉ちゃんだけじゃない。反対側から楓さんも抱きしめてくれている。

 

「梨璃はね、そのままでいいんだよ。梨璃のそのままの生き方が……生き様が、私たちにたくさんのものをくれるの」

「そうですわ。無理に頑張ろうとなんてしなくていいのです。梨璃さんの自然体が、わたくし達は大好きなのですから」

 

さっきのように、また3人から抱きしめられたしまった。今日の私はどうなってしまうのだろう。幸せすぎて死んでしまうのでは無いだろうか。

胸がドキドキと脈打つのがわかる。なのに、その暖かさに心はなんだか安心して落ち着いていく。

 

「……今日はちゃんと誕生日パーティに出られなくてごめんね。そのかわり、今夜と……それから明日は、梨璃にずっと付き合ってあげるから」

「明日?」

 

何度も言っている通り、パーティにお姉ちゃんやお姉様が出られなかったのを、二人が悪いと思っているわけではない。確かに寂しくはあったが、楓さんも梅様もいてくれたし、ちゃんと二人も合流して祝ってくれて……そして、お風呂でいっぱい愛してもらって。ちゃんと愛されてるんだってわかったから、私はそれだけで満足だった。

でも、唐突にお姉ちゃんの口からは謝罪と同時に「明日」という単語が飛び出す。楓さんとお姉様も心当たりがないのか、首を傾げている。

そんな私たちに、お姉ちゃんは心底楽しそうに笑顔を見せた。

 

「うん!明日ね、史房ちゃん達に頼んで私達みんな休みにしてもらったんだ〜!外出届も、使うかはわからないけど一応出しておいたから!だから、今日と明日はずーっと梨璃に構ってあげられるよ!」

 

その言葉に、私たちはポカンとしてしまう。まさか、そこまで手を回してくれていたなんて。

 

「お、お姉様……いつから?」

「んー?昨日夢結が甲州に行くって聞いた時からね。せっかくだし、4人でちゃんと一緒に過ごせる時間が作れればいいなって。まあそしたら、直後に私もお仕事が入っちゃったんだけど……」

「じゃあ……!」

「うん、明日はみんなで一緒にいられるよ!」

 

お姉ちゃんはお姉様を気遣って先に休みを取っていてくれたらしい。明日は平日で、今日が終わったらもういつも通り……そう思っていた私は、突然の休暇と、そして大好きなみんなで一緒にいられるという期待に心が躍るようだった。

 

「お姉ちゃん!ありがとう!」

 

思わず、お姉ちゃんに抱きつく。自分でも自分の声が弾んでいるのがわかった。

顔がニヤけてしまう。楽しみすぎて、抑えようと思っても抑えられない。だから、お姉ちゃんの胸に顔を押し付けた。

お姉ちゃんも私を受け止めて抱き返してくれる。

 

「ううん、いいの。梨璃に寂しい思いさせちゃったしね。それに――」

 

お姉ちゃんは私の耳元に口を寄せた。情念を含んだ熱い吐息が耳にかかって、ゾクゾクしてしまう。

 

「夜はこれからだよ?明日も楽しみだけど、まだまだ今日(梨璃の誕生日)をめいっぱい楽しまないと、ね?」

 

愛する妹に向ける声でありながら、恋人に向ける艶と情欲も孕んだ熱っぽい声。

そんなお姉ちゃんの声に、私はこれから起こることにさらに期待を膨らませながら、蕩ける頭で頷いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、これなんだけど」

 

一旦ヒートアップしそうになってしまった心を落ち着けた私たちは、そういえば、とお姉様が持ってきたクーラーボックスを思い出した。

お姉ちゃんの部屋に鎮座するクーラーボックス。そこまで大きいわけではないが、ある程度の食べ物が入りそうな大きさではある。

 

「食べ物、なんですわよね?」

「何の食べ物なのか聞いてないの?」

「ええ。一緒に持っていって欲しい、と言われただけで……梨璃のご両親からは、開けてからのお楽しみだと」

「そっかー、なんだろね?」

 

正直、お父さんとお母さんがお姉様に何を持たせたのか見当もつかない。突然不安になってくる。お姉ちゃん達に食べさせても大丈夫だろうか、と。

 

「じゃあ、開けてみましょうか……」

 

全員が固唾を飲んで見守る中、お姉様はゆっくりとクーラーボックスを開け、中から何かを取り出した。そこに入っていたのは……

 

「これって――」

 

ちぎられたレタス。輪切りにされたトマト。スライスチーズ。袋に入ったソース。ハンバーグ。そして、半分に切られた丸いパン。

私はそれらに、強く見覚えがあった。

 

「手作りハンバーガーだ!」

 

思わず、私は声を上げた。声が大きかったのか、楓さんとお姉様がギョッとした目でこちらを見る。しかし、今の私はそんな視線も気にならないほど気分が高揚していた。

 

「り、梨璃さん?」

「お姉ちゃん!この部屋、オーブントースターってありますか?」

 

私が尋ねると、お姉ちゃんはにこやかに頷いてキッチンの方を指さす。私は材料を持って、急ぎ足でオーブントースターに向かった。

 

 

 

作り方は簡単。

まず、パンと既に焼かれたハンバーグをオーブントースターで加熱する。

パンの上にレタス、ハンバーグを乗せたら、ハンバーグの中央の窪んでいる部分に、袋に入っていたソースを流し込む。その上からチーズ、トマトを乗せ、最後にパンの上部分を乗っければ……完成だ。

私はそれを、てきぱきと4人分作っていく。

 

 

 

 

 

「梨璃、テンション高いわね……?」

「サイドテールがぴょこぴょこ動いて……可愛らしいですわ!」

「ふふ。梨璃、よっぽど嬉しかったんだねぇ」

「何ができるのかしら?」

「さあ?ですが……」

「うん。梨璃が楽しそうで何よりだよ」

 

 

 

 

 

「できました!手作りハンバーガーです!」

 

あっという間に、私の前には4つのハンバーガーが鎮座することになった。

テーブルに運ぶと、お姉様達は物珍しそうにそれを見に来た。

 

「手作りハンバーガー……?」

「美味しそうな匂いですわね」

 

付け合わせのポテトとかは流石に無いが、お皿に乗ったハンバーガーは結構なボリュームに見える。本来ならこんな時間に食べるものでは無いが……だからこそ、私のお腹は「ぐぅ〜っ」と主張する。パーティでたらふく食べたとはいえ、そこはリリィ。消化も早いのだ。そういうことにしておきたい。

 

「ふふっ、梨璃は食いしん坊さんね」

「ほんとですわね。でも育ち盛りですから、良いことですわ」

「えへへ……」

 

お姉様や楓さんに言われてしまったが、二人の顔は私を嗜めようとしているものではなく、「姉」としての呆れたような……でも、私を大切に思ってくれているような、そんな優しい顔だった。もしかしたら、私はこの中で一番末っ子なのかもしれない。実家では一番上のお姉ちゃんだったから、なんだか新鮮だ。

 

「ですが、ハンバーガーを実家で手作りなんて珍しいんじゃありませんの?大抵はお店で食べるものだと聞いていましたが」

 

楓さんの疑問に、私は頷く。

 

「私、ハンバーガーが大好きなんです。でも、うちの実家、すごく田舎にあるから近くにハンバーガー屋さんが無くて……。たまに街に行った時は連れて行ってもらってましたけど、そんなに頻繁にいくわけでもなくて。だから、お母さんが我が儘を言う私に、作ってくれるようになったんです」

 

ハンバーガーを1つ手に取る。見た目も、触り心地も、匂いも、何もかもが昔のままだ。それが、何だか嬉しい。

 

「お母さんが忙しい時も、『ちゃんとあったかいのが食べれるように』って、あっためれば一人で作れるようにって作り置きしてくれて……それがこの「手作りハンバーガー」なんです」

「……そっか。梨璃にとっては、思い出の味なんだね」

 

お姉ちゃんは私の言葉に感慨深げに頷くと、目を開いて顔を上げた。

 

「じゃあせっかく梨璃と梨璃のご家族が作ってくれたんだし、いただこっか!」

 

お姉ちゃんが手を合わせると、楓さんもお姉様も頷く。

「いただきます」とみんなで手を合わせて、一緒に齧り付いた。

一口齧ると、まずオーブントースターで焼いたパンがふかっとした感触を口に与え、次いでトマトの水分とハンバーグに閉じ込められていた肉汁がブワッと溢れてくる。自家製のソースは甘辛くて、それをチーズのコクとレタスのさっぱりした味が包んで優しく纏めてくれている。それらを上下から挟むパンは、いつも実家で食べていた、小麦の甘みが強いもの。小麦の味、肉の味、野菜の味、ソースの味。それら全てが絡み合って、「家庭の味」でありながら絶妙なハーモニーを醸し出している。

実家で食べていた時と変わらない、美味しいハンバーガーだった。思わず、胸がいっぱいになる。

 

「……っ!おいしいですわ!」

「ええ、これは……」

「うん。凄く優しい味……。なんだか心があったかくなるような、安心するような……こういうの、なんて言うんだろう……?」

 

みんなにも好評だった。普通のお店のハンバーガーはともかく、家庭で作ったハンバーガーなんて食べたことがなさそうな3人だったから、同じものを食べて、同じようにおいしいと言ってくれることがすごく嬉しい。

お姉ちゃんが言う、「安心する、あったかくなる」味……私もわかる気がする。そういうのを、確か――

 

「実家の味、かな……?」

 

そう。確かそういう風に言うのだ。素朴で、家庭的で、食べ慣れていて……だからこそ安心する味。食べる人のことを一番に考えた、あったかい味。それが、実家の味だ。

そう呟くと、お姉ちゃんは感心したように頷いた。

 

「そっか、これが……実家の味、なんだね」

 

それは、まるで「実家の味を知らない」というようにも聞こえて――私は、「あっ」と声を上げてしまった。

そうだ。そういえばお姉ちゃんは以前の記憶を失っていたんだった。デリカシーの無いことを言ってしまった、と思って「ご、ごめんなさ……」と謝ろうとした私の言葉は、しかしそこで止まった。

 

「ふふっ、これがそうなんだね。うん。あったかくて……すごく、美味しい」

「お姉ちゃん……」

 

お姉ちゃんは、とても嬉しそうだった。噛み締めるように目を閉じてハンバーガーを咀嚼するお姉ちゃんは、口の中のそれをごくんと飲み込んで、口を開いた。また、齧り付く。お姉ちゃんにしては珍しく、無言でどんどん食べ進めていく。

お姉様や楓さんもそんなお姉ちゃんが珍しかったのか、食べながらもお姉ちゃんを見ている。

もぐもぐと食べ進めたお姉ちゃんは、「梨璃、ラムネをもう一本貰ってもいいかな?」と私に尋ねた。もちろん、と私が頷くと、「ありがとう!」とお姉ちゃんは嬉しそうにクーラーボックスから取り出し、開栓して飲み始めた。さっきと違ってちびちび飲むんじゃなく、口をつけてゴクゴクと。

意外だった。お姉ちゃんがハンバーガーとラムネをこんな風に食べたりするなんて。

ラムネを飲み終えたお姉ちゃんは「ぷはっ!」と声をあげて……愛おしげに微笑んだ。

 

「私、梨璃のハンバーガーを食べて、実家の味ってこんなのなんだって、凄く実感が湧いたんだ。あったかくて、優しくて、安心する味……。これが梨璃の実家の味と同じだって思ったらね、梨璃と家族になった気がして、凄く嬉しかった。今度、ちゃんとお礼を言いに行かなきゃね!」

 

はにかむお姉ちゃんはどこか儚げで、私はそんなお姉ちゃんに何かをしてあげたいと思って……何をしたらいいかわからなくて、抱きしめた。

 

「梨璃……?」

「お姉ちゃん。誕生日なので、わがまま言ってもいいですか?私……お姉ちゃんが欲しいんです」

「へっ……!?」

「なっ……!」

「り、梨璃さん……大胆ですわ……!」

 

私の言葉に、お姉ちゃんは珍しく動揺した。お姉様や楓さんも慄いている。何かおかしなことを言っただろうか?と首を捻って思って思い返す。

私は、「お姉ちゃんが欲しい」と言った。……あ、確かにこれじゃあプロポーズみたいだ。

いや、そういう意味でお姉ちゃんが欲しいのも嘘ではない。でも私が言いたいことは少し違う。

 

「あ、そ、そうじゃなくて!いや、違わなくもないですけど!私、いつも家ではお姉ちゃんだったので……お姉ちゃんに、私の家族としての「お姉ちゃん」になって欲しいんです」

「え……」

 

お姉ちゃんは、この言葉にも驚いたようで、しばし言葉を無くした。楓さんやお姉様は「なんだ……」という安心?したような顔をしているが。

お姉ちゃんは少しの無言の後、口を開く。

 

「それは……で、でも私、梨璃のこと、その……」

 

お姉ちゃんは言葉を濁すが、言いたいことはわかった。私のことを「恋愛的な意味で」好いてくれているということだろう。それはとても嬉しいし、私も同じように好きだ。

でも――

 

「お姉ちゃんの言いたいこと、わかります。でも私、お姉ちゃんと家族みたいになっても、恋人じゃなくなるわけじゃないと思います!お姉ちゃんとは、恋人と家族、両方がいいんです。……わがまま、でしょうか?」

 

思いを伝えると、お姉ちゃんは戸惑っていた。あまり見ない様子だったけど、でもちゃんと考えてくれているようだったから私も答えを待つ。お姉様たちも固唾を飲んで、というほど緊張はしていなかったが、お姉ちゃんが口を開くのを待っていた。

 

「梨璃、私……みんなのお姉ちゃんだって思ってきたから、お姉ちゃんにはなってあげられるって思ってた……。でも、家族は、上手くできるかわかんない……」

 

やがて口を開いたお姉ちゃんの言葉は、これまた珍しいことに自信なさげだった。何でもできそうなお姉ちゃんが、家族のことになると途端に自信を失う。少し不謹慎ではあるが、そんなお姉ちゃんの姿がすごく可愛らしく見えて、私は抱きしめる腕を強めた。

 

「大丈夫です。少しずつ、家族になっていければ。……大好きだよ、お姉ちゃん」

 

お姉ちゃんは、私を抱き返そうと腕を後ろに回す。しかし、その力はいつもよりずっと弱い。揺れる瞳は、お姉ちゃんの不安を表しているようだった。

 

「その大好きは……どういう、意味?家族として?それとも……恋人として?」

 

そんなの、決まっている。私はお姉ちゃんの分まで力を入れて、ギュッと抱きしめた。

 

「両方です!私、お姉ちゃんのこと、2倍愛してます!」

「梨璃……。私も、梨璃と家族に……なりたい。なりたいよ。だって、梨璃のこと、ほんとの妹みたいに……」

 

そのたどたどしい言葉が嬉しくて、私は笑顔になってしまう。

 

「……お姉ちゃんは、ほんとの妹みたいな娘に恋しちゃう上に……ほんとのお姉ちゃんみたいに思ってる娘にまで恋させちゃう、いけない人ですね♪」

「っ、梨璃……!」

 

やっと、お姉ちゃんもギュッと抱きしめてくれた。いつもよりもっと強く、痛いほど。

嬉しい。その痛さが、お姉ちゃんの愛だってわかっているから。

 

「ほんとに、梨璃が家族になってくれるの?私、上手くできるかわかんないけど、それでもいいの?」

「もう、私から頼んでるんだよ?お姉ちゃん。……さっきお姉ちゃん、私に言ってくれたでしょ?そのままの私でいいんだって。お姉ちゃんもそうだよ。お姉ちゃんはお姉ちゃんのままでいいの。無理しなくても、そのままのお姉ちゃんが私の大好きなお姉ちゃんだから」

 

だから、もう寂しがる必要なんてない。欠けた記憶の穴を憂う必要なんてないんだ。そんな思いを込めて、私はまた抱きしめる力を強くする。お姉ちゃんは、小さく「ありがと」とだけ言って、私を抱きしめ続けた。

 

 

 

 

「……羨ましいですわね。わたくしも梨璃さんやお姉様と家族になりたいですわ。そして2倍愛されて……ぐふふ……」

「あら、そんなに愛されたいの?……私がしてあげましょうか?」

「……は?夢結様は何をお寝ぼけになってらっしゃるんですの?」

「ふふ……冗談よ、楓」

「んにゃっ!?き、急に呼び捨てにするのはやめてくださいまし!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無事、我が儘を押し通すことに成功し、ハンバーガーを食べ終えた私は、今……

 

 

お姉ちゃん達に、ベッドに連れ込まれていた。

 

「あ、あああああの……!?わ、私、一緒に寝ていいんですか……?」

「何言ってるのー?梨璃の誕生日でしょ?……ふふ。梨璃、かわいいねぇ♡」

「で、でもこんな大人数でなんて……」

「たまにはいいじゃない、梨璃。私も梨璃と一緒に寝るの好きよ」

「ですわ!わたくし、まだ一度も梨璃さんと一緒に寝られていませんし……」

 

もちろん、お姉ちゃんだけじゃない。お姉様や楓さんも一緒だ。

お姉ちゃんの部屋のベッドは、やたら大きい。私たち4人が全員川の字になって寝られるほどだ。その上で、私たちはかなりぎゅうぎゅうにくっ付いているので、割と余裕がある。

 

……いや、そうではなく。私がこんなところで一緒に寝ていいのだろうか?

改めて、場違い感のようなものを感じてしまう。灰色の綺麗な髪を靡かせる美人で愛嬌もあるお姉ちゃん。綺麗な黒髪でこちらも美人なお姉様。少し癖毛の赤毛が白い肌に映える美少女、楓さん。

この中に私が混じって大丈夫なのだろうか?いくら誕生日といっても、流石にこれはご褒美が過ぎるのでは?

 

「もう、梨璃さんはまたそうやって。いいんですわ、梨璃さんのことがみんな大好きなんですもの」

「んふふ〜。梨璃かわいい♡しゅきしゅき♡」

 

お姉様を挟んで向こう側にいる楓さんが、私の顔を見て察したのか私のネガティブな考えを否定する。まるで心を読まれてるみたいだ。……楓さんに読まれるなら、悪い気はしないけど。

楓さんは「ね、夢結様?」と隣にいるお姉様にも同意を求めた。

 

「そうね。梨璃ももう少し自信を持っていいわ。持ちすぎるのもどうかと思うけれど、今のあなたに必要なのは謙遜ではなく自信よ。……貴女は私の自慢のシルトなのだから、胸を張りなさい」

「お姉様……」

「りり♡かわいいよ♡すりすりしちゃっていい?いいよね?しゅりしゅり〜♡」

 

お姉様にも言われて、私もいいのかな?と思えてくる。

目の前にあるお姉様の顔はとっても優しくて、普段のスパルタはどこへやらだ。これも誕生日だからだろうか?

 

「……ところで、お姉ちゃんはさっきから何を……?」

「え?可愛い妹に大好きしてるだけだけど?」

 

それよりも何よりも気になるのは、私の片腕にしっかりと抱きついているお姉ちゃんだ。さっきからずーっとこの調子で私に引っ付き続け、頬をすりすりと擦り付けたりしてくる。

私の質問にあっけらかんと答えるお姉ちゃんだが、結局さっきから何度か出ているその「大好きする」というのはなんなんだろうか。

 

「『大好きする』は『大好きする』だよー。大好きーって思いをそのままぶつけてるだけ!……もしかして、梨璃は嫌だった?」

 

……ずるい。そんな捨てられた子犬みたいな目をしないで欲しい。

嫌なわけがない。大好きなお姉ちゃんが身体全体を使って愛を伝えてくれているのだ。こんなに嬉しいことはない。

でもなんかこう、今までの感じとは何か違うというか……もしや、これがお姉ちゃんと家族になってしまった弊害(?)なのだろうか。

 

「……梨璃は何かして欲しいこと、ないの?ほら、せっかくこうやって4人で一緒にお布団に入ってるんだし……」

 

そう言われても、と私は視線を左右に飛ばす。

私の右にお姉様。その向こうに楓さん。

私の左にお姉ちゃん。

3人とも私に期待した視線を向けてくるが、この3人を一度に好きなようにできるなんてあまりにも贅沢すぎる。どうするべきなのだろうか。

……いや、正確に言えば、して欲しいことなんて山のようにあるのだ。撫でてもらったり、抱きしめてもらったり、愛を囁いてもらったり、キスもまだし足りないし、それに――

 

それに、えっちなことだって。

愛したい。愛されたい。私だって思春期だ。大好きな人のカラダには興味もある。

ちら、と隣のお姉ちゃんを見る。優しい笑顔。赤い瞳。楓さんやお姉様ほどではないとはいえ、大きめの胸。指はシラウオみたいで、すごくしなやかそうな身体。

私の視線に気づいたのか、お姉ちゃんはくすっと笑う。その笑顔に、恥ずかしくなって私は目を逸らした。

お姉ちゃんだけではない。お姉様も楓さんも、抜群のプロポーションだ。いや、プロポーションがいいから好きになったわけではない……はずなのだが、でもやっぱり好きな人のカラダは気になるわけで。

触れてみたいし、その熱を直に感じてみたい。きっと肌と肌で触れ合えば、とても気持ちいいんじゃないかと、そう夢想してしまう。

でも、そんなことを誕生日だからって頼むのはどうなのだろう、と私の理性が告げている。だから、代替案を考えようと――

 

「梨璃、これでいいの?」

 

思考に浸っていた私の耳に、お姉ちゃんの声が聞こえた。「へ?」と声を上げてそちらを見れば――お姉ちゃんは、下着も何も一切付けずに、真っ裸になって布団に入り込むところだった。

 

「!?お、おおおお姉ちゃ……!?」

「なるほど、梨璃さんはそちらがお望みでしたのね!もちろんお応えいたしますわ!ふんすふんす!」

「り、梨璃になら……ええ。梨璃のためなら、私も……」

 

逆を見れば、楓さんとお姉様も同じように裸になって布団に入り込んでいた。

右を見ても左を見ても、みんなの白い肌が目に入ってしまう。鎖骨を見るだけでも恥ずかしくなってくるのに、その下まで目をやると……私の頭はぐるぐるぐちゃぐちゃになって、何を考えているのかわからなくなる。

 

「えっと、触りたいんだっけ?いいよ。はい、どーぞ」

 

いや、どーぞと言われても……と尻込みしている私の手をお姉ちゃんは掴んで、ぐいと引き寄せる。そして、目的のソレを私の手に触れさせた。

 

「どう?これでいいかな?」

 

……やわい。どのような表現をしていいのか全くわからないし、緊張しすぎてよくわからないが、凄く柔らかくてあったかいのはわかった。

マシュマロみたい、という表現をよく見る気がするが、そんなものよりもずっと柔らかくて、ふかふかで、なのに形は崩れてなくて――ずっと、触っていたくなる。

 

「やんっ、梨璃、そんなとこ触っちゃ……んぅっ!」

「お、お姉ちゃ……お姉ちゃん……っ!」

 

触られているお姉ちゃんの声に、段々熱と艶が含まれていく。もう自分がどこを触っているのかもわからない。ただ衝動に任せてお姉ちゃんのカラダを弄っていく。

 

「梨璃さ〜ん♡ノリノリのところ申し訳ありませんが、わたくしの方もいかがですか?ほら、わたくしもプロポーションには自信がありましてよ♡」

「か、楓さん……?」

 

突然、私はぐいっと後ろを向かせられる。そこにいたのは楓さんだった。楓さんの目は熱に潤んでいて……でも、どこか嫉妬のようなものもちらっと見えるような気がした。もしかしたら、私とお姉ちゃんの行為に何か思うところがあったのかもしれない。

楓さんは私の頭を、ぎゅむっと胸に押しつけた。私の顔を柔らかい感覚と、少しばかりの汗の匂いが覆う。その匂いに……何故か、興奮を覚えてしまった。

 

「……梨璃さんもお姉様もわたくしのもの……。贅沢なのはわかっていますが、わたくしは……両方とも、わたくしだけのものにしたい。ふふ、梨璃さんとお姉様の行為にすら嫉妬してしまうなんて、我ながら強欲ですわね」

 

……そっか。楓さん、そんな風に思ってくれてたんだ。

嬉しい。胸がキュンとなる。だって、こんなにも求められているのだ。嬉しくないわけがない。

 

「……じゃあ、もっと嫉妬させちゃう?」

「え、お姉ちゃ……ひゃあんっ!?」

 

後ろからそう聞こえた途端、私の反応すら許さず、私の耳を温かい感覚が襲った。そのままお姉ちゃんの方に引っ張られ、必然、私は仰向けに寝転ぶことになった。

 

「あっ、お姉様!?今は私と梨璃さんが……!」

「ごめんね、楓が嫉妬してるのがすごく可愛かったから♡」

「あっ、やぁっ、お姉ちゃっ、にゃぁっ!」

 

お風呂の時と同じように、私の耳はお姉ちゃんの舌で蹂躙される。これをやられたのは足湯の時が初めてだったが、完全にハマってしまった。

耳の表面を口に含まれ、優しく愛撫される。耳の輪郭を丁寧に舐められると、ゾクゾクとした感覚が背筋を伝う。

そして、耳の中まで舌を入れられ、ぐちゅぐちゅと犯されると、私のカラダはビクンと反応してしまった。

しかも、合間合間に「しゅき♡」「あいひてる♡」「りりらいしゅき♡」と愛の囁きを混ぜてくるものだから、私は身体も心もグズグズに溶かされてしまうようだった。

 

「ほら、楓もやってあげて?梨璃、耳ぺろぺろするとすっごく気持ち良さそうにしてくれるよ♡」

「へっ?ま、まって、両耳なんてされたら――ひゃんっ!やぁっ、あっ♡にゃっ、ひぅう!」

 

私の懇願も聞いてもらえず、楓さんはお姉ちゃんの言う通り、反対側の耳にむしゃぶりついた。お姉ちゃんが私の耳を舐めるのをみて息を荒くしていたから、どっちにしろ我慢できなかったのだろう。

楓さんの耳舐めはお姉ちゃんよりも少し乱暴だが、強めに吸われたり、細かいところまで丁寧に舐めてくれて、それが反対の耳とは違う感覚だ。アシンメトリーな快感に、私の身体は強く反応してしまう。

両耳を、ぐちゅぐちゅという水音と熱のこもった吐息、そして「りり、らいしゅきぃ♡」「りりひゃん♡ひゅきれす♡あいひてまひゅ♡」という愛の言葉で支配され、もうわけがわからない。耳を通して、脳まで犯されているようだった。

 

「お、お姉様……私はどうすれば……」

 

しかし、どうしていいかわからなかったのはオロオロそわそわとしていたお姉様だった。私の両耳はお姉ちゃんと楓さんに取られてしまって、両脇を固められている。除け者にされたみたいだ、と思ったのだろうか。そんなお姉様をみて、お姉ちゃんはくすりと笑って私の耳から一旦口を離した。

 

「特等席を空けてあるでしょ?……梨璃のこと、愛してあげて」

 

その一言でお姉様は理解したのか、頷いて、両横から耳を攻められている私に真上から覆い被さった。どうやら私は、両横からお姉ちゃんと楓さんに、上からお姉様に襲われるらしい。どこか他人事にそう思った。

 

「梨璃……大好きよ」

「お姉様っ……」

 

お姉様と両手をしっかり絡めて、キスをする。お風呂の時は唇を合わせる軽いキスばかりだったが、今度はそうじゃない。

お姉様から舌を入れてくれたのだ。熱に浮かされた顔のお姉様は、耳を愛撫している二人に当てられたのだろう。キスしてすぐ、私の口に舌をねじ込む。

もちろん嫌なわけがない。私もお姉様の舌を受け入れて絡め合う。

しばらく舌を貪り合って口を離すと、私とお姉様の舌は淫靡な銀色の糸で繋がっていた。半分酸欠になるまで貪っていたから、お互いに息も荒い。

 

「りりっ……」

「おねえしゃまっ♡」

 

お互いの上気した顔に興奮して、またキスをする。お姉様は私に覆い被さっているから、その大きな胸が私に押しつけられている。

でも、私は一人だけパジャマだ。もどかしい。きっと、肌と肌で触れ合えばもっと良くなれるはずなのに――

 

「ねぇ梨璃、もっともっとしようよ♡これだけじゃ足りないでしょ?」

「そうですわ梨璃さん、遠慮することなんてありませんわ♡」

「梨璃、わたしも……」

「み、んな……」

 

どうやら、もどかしくて足りなかったのは私だけじゃなかったらしい。それがわかって安堵すると同時に、その心の隙間を見計らったかのように、お姉ちゃんは私のパジャマのボタンに手をかけ、私にとどめを刺した。

 

「……みんなで大好き、しよ?」

 

断れるほどの理性は、残っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お姉様は、私の憧れだった。

憧れを追って百合ヶ丘まで来て、そしてお姉様に惹かれて。シュッツエンゲルになって、お姉様のことを知って、もっともっと大好きになった。

お姉様も、私を必要だと言ってくれる。「私たちは1つだ」と言ってくれる。今では大好きなお姉様で、愛を捧げる恋人でもある。

 

楓さんは、こんな私を好きになってくれた。

最初は変な人かと思ったけど、私に向けてくれる感情は本物だった。それに、凄くいい人だ。かっこよくて、綺麗で、リリィとしても優秀で、非の打ち所のないお嬢様。

なのに、私にはえっちな目を向けてくれる。私のことを好きでいてくれる。あと、赤ちゃんみたいに甘えてくれることもある。そのギャップがたまらなく愛おしい。

こんなにカッコよくて綺麗な人が、私には凄く可愛い一面を見せてくれる。そんなところが大好きになった。そして……楓さんのことが欲しいと思うようになったし、楓さんにもっと求められたいとも思った。

 

お姉ちゃんは、私の価値観を壊してくれた人だ。

最初は、凄く優しくて包容力のある人だと思っていた。今でもそれは変わらないが、その愛の深さゆえに孤独を怖がって震えている人であることも知った。

そんなお姉ちゃんに惹かれ始めたのは、アールヴヘイムのパーティの時だろう。実験で過去の記憶をなくしたお姉ちゃんの「家族」になりたいと思い始めて……そして、あのヒュージとの戦いと、足湯での一件。「好き」「愛してる」と囁かれ、感じたことのない感覚を与えられ、「女の子が女の子を好きになっちゃいけないの?」という言葉で私の価値観は壊された。

お姉様を恋人だと思えたのも、楓さんの想いを受け入れられたのも、お姉ちゃんのおかげだ。お姉ちゃんが価値観を壊してくれなかったら、きっと私はまだ止まったままだっただろう。そしてそれだけじゃなくて、お姉ちゃんもまた私が恋をした人でもある。全てのリリィへ惜しみなく愛を与えるお姉ちゃんを好きにならないわけもなかった。そして……その愛を独り占めしたいと、そう思った。

お姉ちゃんも、私を特別だと言ってくれる。なんで私がお姉ちゃんの特別になれたのか、それはわからないが……でも、間違いなくお姉ちゃんは本気だ。それが嬉しいし、その想いに応えたいと、私の心も強く願っている気がした。

 

 

そんな3人から、私は同時に愛された。もう身も心もトロトロだ。気持ちよくない箇所なんてない。つま先から頭のてっぺん、そして心の奥底まで全部気持ちいい。

こんなことになるなんて、甲州から出てきた時には思ってもいなかった。

 

行為が終わって、心地良い疲れが私の身体を包む。

痙攣しっぱなしだった私の身体もどうにか収まり、みんなも落ち着いたみたいだった。

かなり長いこと、絡み合っていたように思う。誰の指が、誰の足が、誰の口が……最終的には全くわからなくなっていた。

愛して、愛されて……ただ、愛の営みというのは思っていたよりずっと体力を使うもので。私は愛に包まれながら、温かい微睡みに身を任せそうになっていた。

 

「ふぁ……」

 

うとうとと船を漕いでしまう中、私は誰かの温もりに抱きしめられる。

 

「……梨璃、お誕生日おめでとう」

「梨璃、生まれてきてくれてありがとう。だーいすきだよ。私の……たった一人の家族」

「梨璃さんはわたくしが何を賭してでも、絶対に守ってみせますわ」

 

優しい闇に思考を包まれていく私の耳に届いたのは、愛してやまない人達の声。意識が落ちるその寸前まで、私は気持ちよさの中にいるままだった。

 

「……みんな、だいすき……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……寝ちゃったね」

「安心、したのかもしれないわね」

「ふふ、可愛らしい寝顔ですわ」

 

体力を使い果たしたのか、安心したのか、はたまた両方か。梨璃はすぅすぅと寝入っている。

その横で梨璃の寝顔を愛でていた楓さんも、一つ欠伸をした。

 

「ふぁ……流石にわたくしも疲れました。梨璃さんったら、あんなに求めてくださるんですもの。……凄く、嬉しかったですけれど。ふふっ」

「うん。……寝よっか」

 

電気を消すと、疲れたという楓さんの言葉は本当だったようで、楓さんもすぐに寝息を立て始めた。ちゃっかり梨璃の隣で、梨璃と手を絡めて、抱きしめるようにしながら。

 

先ほどまでとは打って変わって静かになった部屋に、お姉様の声が耳朶を打つ。

 

「……ねぇ、夢結」

「流瑠お姉様……?」

 

流瑠お姉様は、寝ている二人を起こさないように優しく抱きしめた。その表情からは、深い慈しみと愛が感じられる。

 

「絶対、守らなきゃね……」

「そう、ですね」

 

その言葉に、深く同意する。

もう、行くところまで行ってしまった。私たちは二度と離れられない。お姉様と梨璃だけじゃない。楓さんも含めて、だ。楓さんが私のことをどう思っているかは知らないが……私は、楓さんのことも好きなのだから。

 

「夢結。……自分と向き合う覚悟、ある?」

「…………」

 

唐突に向けられた言葉。それに私は少しだけ、ほんの少しだけ尻込みした。

……でも。

 

「あります。……それが、この子達と……それからお姉様を、守ることに繋がるなら」

 

覚悟は、決まった。私は私と向き合い、そして克服してみせる。その決意とともに、私もお姉様とは反対側から、楓さんと梨璃を抱きしめる。お姉様はそんな私を見て優しく頷いた。

 

「うん。……大丈夫、私が……私たちがついてるからね」

 

梨璃の誕生日を通して、私たちの繋がりはさらに強くなった。だからこそ、私たちは誰一人として失うわけにはいかない。

だから、もっと強くならなければ。

お姉様も、梨璃も、楓さんもいてくれる。だからきっと大丈夫。大丈夫だ。

 

「……おやすみ。大好きだよ、夢結」

「おやすみなさい。大好きです、お姉様」

 

この温もりは、絶対に無くしたりしない。

……美鈴お姉様。どうか、私に力を。

 

 




・瑠璃ちゃん、鶴紗さん
きっと多くの強化リリィが思っているであろうと私が勝手に妄想している想い。強化リリィ、幸せになれ……

・ゆゆりりかえるる
梨璃ちゃんの誕生日を通してさらに関係が深まった。というかこれ以上深まりようがあるの?というところまで深まった。深淵。


はい。ほんとに遅くなって申し訳ないばかりです。はい。
2ヶ月放置は流石にやばいですね☆まあこれからもこんな感じで不定期になっていくとは思いますが、ちゃんと書きますんでほんと……。

次回は……もう1話だけ第5話が続きますかね。もうちょっとイチャイチャしてもらいましょう。足りないので(当社比)
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