アサルトリリィPRESERVED   作:核心

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世界の中心で百合を叫ぶ。



(あれれー?おっかしいぞー?アニメ2話が終わらない……後もう1話で終わる……と思います)



ブーゲンビリア その4

 

 

 

 

 

流瑠は楓の胸の中で暫く泣いた後、まだ涙が溢れる中で、ポツポツと語り出した。

 

 

曰く、その亡くなった人は流瑠にとっても夢結にとっても大事な人だった。

曰く、その人の死因について、「夢結に殺人の疑いがかけられていた」。

 

 

「夢結がそんなことするはずない    夢結のレアスキルのことを含めても、私はそう思った。でも、間に合わなかった私が何を言ったところで、何の証明にもならなかった」

 

「夢結様のレアスキル   『ルナティックトランサー』、ですか」

 

そう、と答え、流瑠は続けた。

 

「ルナティックトランサー。精神を保ったままバーサーク状態になり、暴れまわってしまうレアスキル。でも、夢結は美鈴のことが大好きだった。ほんとに、ほんとに大好きだったの。だから絶対、夢結はやってないって    そう思った。なのに、証明する手段がない。だから、せめて夢結の心だけでも軽くしようと思って、私は夢結に言ってしまったの」

 

 

 

『夢結は悪くない。悪いのは、間に合わなかった私だ』

 

 

 

 

「結果は……見ての通り。夢結はきっと、まだ私の言葉と自分の罪の意識の狭間で苦しみ続けてる。あんな言葉、ただ夢結のことも、美鈴のことも見ようとしていなかっただけ。そんな()()()()()()()()()()()で私は夢結を突き放して……何も、してあげられなかった」

 

「お姉様……」

 

「あはは、馬鹿みたいだよね。夢結のことを思ったつもりが、何一つ夢結のためになんかなってない。

寄り添ってあげるべきだったの。寄り添って、一緒に泣いて、一緒に乗り越えていかなきゃいけなかった。

なのに私は、空回りばっかりして、自分勝手に夢結を傷つけただけ。ほんと、嫌になっちゃう」

 

「私は昔から、何も変われていない」    、そう自嘲気味に笑う流瑠に、楓は言う。

 

「でも、本当にすべきことがわかったのでしょう?なら、今から変えていけばいいのですわ」

 

楓の言葉に、流瑠は「うん」と笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

泣いて、本音を話す。そんなことすら慣れていなかった一人の少女は、泣き腫らした最高の笑顔で

 

「楓ちゃん、ありがと」

 

と伝えると、疲れからかそのまま眠ってしまった。

 

今までで一番「キュン」と来たらしい楓はその場で暫く身悶えしていたが、流瑠は亜羅椰が寮の部屋まで連れて行くということで、亜羅椰と流瑠は梨璃達とこの場で別れることになった。

 

 

 

 

 

 

 

「楓さん、ちょっといいかしら」

 

梨璃達が訓練場を出る中、楓を呼び止める声があった。

亜羅椰だ。

 

「亜羅椰さん?どうかしまして?」

 

楓が梨璃達に一言断りを入れて戻ってくると、亜羅椰は楓に深く頭を下げた。

 

 

「ありがとう、楓さん。お姉様にあそこまで言ってくれて」

「へっ!?き、急にどうされましたの!?何か悪いものでも口にされまして!?」

 

亜羅椰に頭を下げられると思っていなかった楓は、動揺して変なことを口走る。しかし、普段ならそれに反応するはずの亜羅椰は、静かに言った。

 

「あんなすっきりした顔のお姉様、久しぶりに見たわ。きっと、貴女の言葉でちゃんと泣くことができたからだと思う。だから、ありがとう」

 

「ふぅ…」と息を吐き、亜羅椰は言葉を繋ぐ。

 

「……お姉様は、強すぎたのよ。あまりにも強すぎて、()()()()()()()()()()()()()()()。当然よね。美鈴様が亡くなるまで……いや、美鈴様が亡くなった後も、お姉様と部隊を同じくして亡くなった人間なんて一人もいないのだから」

「一人も……」

 

反芻した楓に、亜羅椰は頷く。

 

「ええ。一人もよ。だから美鈴様の死でとても落ち込んで……私が悪いんだってずっと自分を責めてたのよ」

「そうだったんですの……ん?」

 

亜羅椰の言い方に、楓は疑問を覚える。

 

「その言い草……亜羅椰さん、貴女、お姉様の過去を知ってらっしゃったんですの?」

「…ええ、知ってたわ。というか、長く百合ヶ丘にいるリリィは殆ど知ってるでしょうね」

「な    

 

 

その言葉に、楓は愕然とする。

 

「知っていながら、誰もお姉様に言わなかったんですの!?『貴女の罪なんかじゃない』って!亜羅椰さん、貴女だって」

私だって!!

 

楓の言葉を遮り、亜羅椰は声を荒らげる。

 

「私だって、言いたかった。お姉様を慰めたかった!でも、なんて声をかければいいのよ!?あの場にいなかった私が、『特別な妹』を亡くしたお姉様に、なんて!!」

「特別な、妹?」

 

戸惑う楓に、亜羅椰は少し寂しそうに笑って、言った。

 

 

「そう。亡くなった美鈴様    川添美鈴様は、夢結様のシュッツエンゲルであり      

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今まででただ一人、流瑠お姉様のシルトだったお方よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「川添、美鈴様……」

「夢結様のシュッツエンゲルで……流瑠様のシルト……?」

「なるほどのう。つまり、夢結様は自分のシュッツエンゲルを手にかけたことを疑われとったわけか。じゃが……」

 

既に訓練場を出ていた梨璃と二水、ミリアムに追いついた楓は、亜羅椰から聞いた話を、三人にも聞かせた。

 

「らしいですわ。で、皆さん。この後ご予定はありますの?」

「あ、いえ、私は特に……」

「ワシもじゃ」

「私も大丈夫ですが、どうされたんですか?」

 

三人に確認を取った後、楓は「本題」を話し始めた。

 

 

 

「おかしいと思いませんか?普通、シュッツエンゲルは上級生と下級生の間で結ばれるもの。夢結様は今2年生ですわね。美鈴様が生きていれば、今何歳だと思いますか?」

 

その疑問に、二水が答える。

 

「詳しくはわかりませんが、最低でも3年生以上ですね」

「では、流瑠様の今の学年は?」

 

こちらには、梨璃が答える。

 

「……3年生、ですね」

 

その答えに、楓は首肯する。

 

「ちびっ子2号、わたくしの言いたいことはわかりますわね?」

「うむ。……学年が合わんの」

 

ミリアムの言葉に「我が意を得たり」といった表情をした楓は、全員に提案した。

 

「ではみなさん。行きましょうか」

「行くって、どこへ?」

「それは   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二水の疑問に、楓は訓練場を出る直前に亜羅椰に言われた言葉を思い出す。

 

 

 

『もし、流瑠様のことについて何か疑問を持つことがあったら    ()()()()()のところへ行きなさい。答えてくれるでしょう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「工廠科、ですわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが工廠科じゃ」

「地下にこんな施設があるんですね……」

 

工廠科所属であるミリアムに案内され、真島百由様がいると言う工廠科にたどり着いた四人。

ミリアムのカードキーで扉を開けて、中に入る。

 

「おーい、百由様おるかー?」

 

 

扉を開けた先では    眩い炎が燃え盛っていた。

 

「わっ、まぶし!」

 

それに慣れていないミリアム以外の三人は、眩しさに目を細める。

 

 

「ごきげんよう!ちょっと待ってー、今チャームの刃を硬化処理するところなの」

 

突然の来客に百由は振り向きもせず、自分の作業を続ける。

 

 

百由が梨璃達の方に向き直ったのは、炎が完全に収まり、硬化処理の作業が終わった後だった。

 

 

「いらっしゃーい。梨璃さんと楓さんね。えーっと、貴女は……」

「二水です!二川二水!」

 

二水を見て言葉を詰まらせた百由に、二水は鼻血を抑えながら答える。

 

「よろしくー二水さん。今いいところなの」

 

 

挨拶と状況説明を同時に行うマイペースさはいつも通りに、百由は来客を前にしてまたもチャームの方へ向き直った。

 

「さあ、上手くいってよー……」

 

どうやら、作業が終わらなければ話はできそうにない。仕方なく梨璃達は、百由と共にチャームを見守った。

 

 

と、持ち上げられたチャームの刃が「パキンッ!」と音を立てた。

 

「……あ……あぁぁ……!!この一月の努力の結晶がー!!」

 

 

初めて見る梨璃達には何が何やらちんぷんかんぷんだったが。

どうやら失敗であったらしいことだけは、梨璃達にも理解できた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なるほど。流瑠様の学年ねー。それで私に話を聞きに来たってわけかー」

 

チャームについて一通り百由とミリアムから聞いた梨璃達は、一度ラウンジに場所を移し、改めて百由に話を聞くことにした。

百由はまるで暫く食事を摂っていなかったかのように   いや、性格を考えると実際に摂っていなかったのだろうが   食べまくった後、梨璃達に話し始めた。

 

 

「流瑠様に疑問を持ったら、百由様に聞けばいいと、亜羅椰さんから聞きました。教えていただけるんでしょうか?」

 

その言葉に、百由は目を閉じる。

 

「……本人が望まないことを、私がペラペラと喋るわけにはいかないわ。リリィは税金も投入される公の存在であるけど、その個人情報は本人がそれを望まなければ、一定期間非公開にされるの。個人の心理状態が戦力と直結する上に、()()()()()10代の女子ともなれば……まあ、仕方ないかもね」

 

それは、梨璃が流瑠に夢結のことを聞いた時と同じ答えだった。

 

「……つまり、教えていただけない、と?」

「いや、教えたげるけど?」

「…………は?」

 

先ほどまでの自分の話とは真逆の答えを言う百由に、梨璃達は呆気に取られる。

 

「な、なぜですか!?さっき本人が望まなければ話せないって」

「そりゃ、本人が望んでるからよ。『自分の口からじゃなくて、私の口から言って欲しい』ってね。自分からは言いにくいんだそうよ」

 

あっけらかんとしたその答えに、梨璃達はさらに戸惑う。

 

「なら百由様、さっきの『本人が望まなければどうとか』という話はなんじゃったんじゃ?」

「あれは話の枕だよー。で、知りたいんでしょ?流瑠様の秘密」

 

百由は先ほどまでとは一転して、真面目な表情になる。

 

「ま、まあ、教えていただけるならいいのですが……」

「言っとくけど、これ他言無用ね?流瑠様からこの話を伝える条件は、『真島百由、もしくは理事長・理事長代行の口からだけ』って条件がついてるから」

「わ、わかりましたわ。皆さんもよろしいですわね?」

「は、はい!」

「わかりました!」

「了解じゃ」

 

全く雰囲気の変わった百由に、梨璃達も自然と背筋が伸びる。

 

顔つきの変わった梨璃達に、百由は話を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第四世代型チャームって、みんな知ってるかしら?

 

あ、楓さんはグランギニョル総帥の娘さんだっけ。なら知ってるわよね。

 

 

 

第四世代型チャーム。別名、「精神直結型チャーム」とも言われるわ。今開発が進んでる「第五世代型」の前の機体構想ね。

脳とチャームを直接繋げて    って言っても、もちろん無線よ?正しくは脳波とチャームを感応させてるんだけど、まあそれは置いといて。

 

これ、遠隔操作もできる優れものなの。つまり手で持たなくても、思考するだけで勝手にチャームが動いてヒュージを倒すの。もちろん、操作できる範囲に限界はあるけどね。凄いでしょ?

 

 

でも、そんなチャームを使ってるリリィ、見たことある?

無いわよね。私もほとんどないわ。

なんでこのチャームが普及してないのか。それはもちろん、このチャームに大きな    「欠陥」とも言える問題があるからよ。

 

 

 

それが    運用するリリィの、精神への大きな負担。

使ったら頭が痛くなった、気分が悪くなった、とかならまだいいわ。

継続的な偏頭痛、幻覚、幻聴、偏執病(パラノイア)   これでもまだ、症状としては軽い方。

 

 

最悪のケースは、発狂、精神崩壊    そして死亡。

こうなることは、第四世代型チャームを作る前    構想の段階から、だいたい予測がついてたの。

でも、それでもこのチャームは作られた。ひどい話よね?リリィがダメになるってわかってて作るんだから。

 

 

 

 

 

   え?なんでこんな話をするのかって?

 

そりゃもちろん    流瑠様に関係のある話だからよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

流瑠様はね。第四世代型チャームが作られる前、まだ構想の段階の時に、『第四世代型チャームに適応できるように調整されたブーステッドリリィ』、その唯一の成功例なの。

 

 

 

流瑠様は18歳の時まで普通の学生として暮らしてたんだけど、G.E.H.E.N.Aに攫われてブーステッドリリィになったの。

 

G.E.H.E.N.Aで流瑠様は、ありとあらゆる施術を受けたわ。

 

エーテルボディ(分身)エンハンスメント(強化)アルケミートレース(血液操作)アストラルガーター(無毒化)マギリフレクター(マギの盾)オートヒール(治癒)ドレイン(吸収)連続強化補助(特定スキル強化)……そして、リジェネレーター(瞬間回復)ノスフェラトゥ(老化停止)、その他もろもろの身体能力強化実験。

 

普通のリリィは、どれか一つでも耐えきれればいい方。優秀なブーステッドリリィは3つか4つくらいかしらね。それ以上施術すると    はっきり言って、命の保証はないわ。

 

 

でも流瑠様はそれらに全て耐えた。耐え切ってしまった。そして最後の施術    第四世代型チャームへの適応のための施術をされた後に、それは起こった。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

当然、実験を行なった連中は焦ったわ。これでは戦力を低下させただけだと。

 

でもね、違った。流瑠様は元のレアスキルを失ってしまう代わりに、新たなスキルを手に入れたの。

 

 

 

 

それが    フリーレン(停滞)」というスキルよ。

 

流瑠様はあのスキルを「ヒュージやマギを凍らせるスキル」だって説明するけど、実際は少し違うわ。

「フリーレン」というスキルはまず、自分の近くにあるマギの活動を極端に減退    いえ、この言い方は違うわね。マギの運動を()()()()()させることができるの。流瑠様がよく使うヒュージの凍結。あれは、ヒュージの身体を構成するマギの分子運動が完全に停止した結果、極端に低温になって、ヒュージの周りの水分まで凍らせてるって状態なの。

さらに、自分に干渉してくるヒュージエナジーやマギによる攻撃も停止させることができる強力な力よ。

その代わり、本人は周囲のマギ濃度上昇による身体能力の向上の恩恵を受けづらいんだけど……まあそこまで影響はないわね。

 

 

で、「フリーレン」の二つ目の効果なんだけど   え?終わりじゃないのかって?まだまだあるわよー。

 

2つ目の効果は、「身体の成長の停止」よ。これは「ノスフェラトゥ」が「フリーレン」に統合された結果とも言われているんだけど、流瑠様は施術を受けた18歳の時から、一切身体の構造が変わっていないわ。テロメアの長さも全く変わってなくて、要するにヘイフリック限界が……え?そういうのはいい?

まあつまり、流瑠様は施術を受けたウン年前からずっと、18歳の身体のままなのよね。

 

 

3つ目の効果は    大丈夫大丈夫、これが最後だから。

3つ目は、「精神の停滞」。これのせいで、流瑠様の精神は18歳の時から殆ど成長していないの。

……あ、心が無くなっちゃったとか、感情が動かなくなったってわけじゃないわよ?単に、「経験という外的刺激による精神の成熟」が無くなった……いや、かなり遅くなったってだけ。まあ、「だけ」って言ったらダメなんだけどね。

 

総合すると、この「フリーレン」っていうスキルは、「持ち主の変化を拒絶するもの」であると言ってもいいわ。実験やらなんやらで、散々変化させられてきた身体の拒絶反応、ってことなのかしらね……。実際にこのスキルが発現して以降、G.E.H.E.N.Aによる流瑠様へのブーステッド施術は、何の成果も残せなかったらしいわ。

 

 

……で、この3つ目の「精神の停滞」。これが連中の欲しがってたものなの。

 

精神の成長が停滞すると言うことは、「外部からの刺激に強くなる」ってこと。これを、脳や精神への負担が大きいってわかりきってる第四世代型チャームの実験に使えないかって連中は思ったのね。

 

 

え?それなら最初から廃人にして、その人に第四世代型を使わせればいいって?

 

いやいや、そう簡単な問題じゃないのよ。

言ったでしょ?第四世代型チャームは、「思考することで動く」の。被験者を廃人にしたところで、思考能力が無ければなんの意味もないのよ。

それに、G.E.H.E.N.Aは()()()「正義の会社」よ。表立ってわざとリリィを廃人にしたりはしないわ。それ以外のことならなんだってやるけどね!

 

……あ、ちょっとムカっ腹が立ってきたわ。ごめんなさい。

 

 

……ふぅ。どこまで話したっけ?……ああ、外部刺激に強くなるってところまで話したかな?

 

まあ、結果的に連中の実験は成功したわ。流瑠様は第四世代型チャームに完全に適応した。ええ、()()()よ。流瑠様はどれだけ第四世代型のチャームを使っても、何のデメリットも後遺症もなかったわ。

 

そのおかげで    というのは完全に皮肉だけど、第四世代型チャームの研究は飛躍的に進んだわ。理論の確立から完成まで、一足で飛び越えたの。

第四世代型チャームは、流瑠様のおかげで短期間で完成をみた。

でもね、一つ問題があったのよ。

 

 

    第四世代型のチャームを扱えるリリィが、少なすぎたの。

 

いないわけじゃないわ。でも本当に少ないの。第四世代型が完成してから、この結論   ほとんどのリリィが扱える代物じゃないっていう結論が出るまで、どれくらいのリリィが犠牲になったと思う?

正直数えたくもないわ。夥しい数のリリィが、この第四世代型の適応実験で亡くなっていったの。

しかも、仮に適応したとしても、使い続ければ廃人化する子も少なくなかった。

 

 

流瑠様は    悲しんだわ。自分が第四世代型を完成させてしまったために、多くのリリィが犠牲になったと、そう思ったの。自分が適応しなければ、第四世代型が完成することもなく、リリィの犠牲も少なかったんじゃ無いかって。

 

 

そんな悲しみに暮れていた流瑠様を、G.E.H.E.N.Aの連中はどうしたと思う?

 

 

 

   ガーデンに丸投げしたのよ。「もうお前に弄れるところはない、お前に研究価値は無い。あとはせいぜい戦闘で役に立て」ってね。

しかも、第四世代型に適応するリリィが少なすぎることから、研究は頓挫。殆どの企業で開発は打ち切られ、その後すぐに第五世代型の研究に切り替えられているわ。

 

 

 

 

自分の関わった研究は役に立てず、闇雲にリリィの犠牲を増やしただけ   そんな思いの中で捨てられた流瑠様を哀れに思ったのが、当時既に百合ヶ丘女学院の理事長になっていた、高松祇恵良(しえら)理事長よ。

 

 

理事長は、流瑠様を高等部の3年生として迎え入れることにしたわ。この学院で、流瑠様は狂った様にヒュージを倒した。何体も何体も、まるで第四世代型に適応できず死んでいったリリィ達に贖罪するかのように。

 

でもね、迎え入れられたのはいいけど    流瑠様は()()()()()()()()の。

 

 

卒業したところで、身体も心も成長しない自分は、周りに置いていかれるだけ。それを流瑠様は悟ってたのね。しかも、ガーデンを卒業すると言うことは、「戦闘の最前線から離れる」という意味でもある。

 

流瑠様は   ヒュージとの戦闘を、心の拠り所にしてしまっていたの。自分のせいで死んでしまったリリィ達への贖いと、戦いの運命の中で命を落とすかもしれないリリィ達を守ること。それを、ヒュージと戦うことでしか実感できなかった。

 

 

それで、祇恵良理事長は流瑠様を特別に、このガーデンの3年生として無期限で在籍させることにしたの。これが、貴女達が求めてた答えよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   流瑠様は百合ヶ丘の永遠の3年生として、多くのリリィを見守り、見送ってきたわ。心も身体も傷つくリリィ達を、時には鍛え、時には癒し、守り、共に戦ってきた。この百合ヶ丘の卒業生に、流瑠様のお世話になっていない人なんか殆どいないでしょうね。

本人は『みんなのお姉ちゃん』なんて自嘲気味に言うけど   彼女は本当に、本当に多くのリリィにとっての(守護天使)なのよ」

 

 

 

 

      。」

 

その話は、四人にとってはあまりにも凄絶だった。

何も言えない。何かを口に出すことさえ憚られる。

 

 

G.E.H.E.N.Aの実験で成長を失った?

第四世代型の研究で多くの犠牲を出した?

ずっと3年生として、この百合ヶ丘で贖いのために戦い続けてきた   

 

だとしたら、彼女の運命はあまりにも    

 

 

 

 

「……(むご)い」

 

「……そうね。確かにその通りだわ……。

……でもね、そんな流瑠様のリリィとしての生活の中でも、大きく流瑠様を変えるできごとがあったの。精神の成長が停滞したはずの流瑠様を、ね。それが   流瑠様のシルト、美鈴様との出会い」

 

   それって」

 

「おっと言いすぎたー!あとは本人に聞いてー。教えてくれるならねー」

 

 

「じゃあ私はこれでー」と去っていく百由を追える者はいなかった。

 

 

 

 

 





・流瑠様
過去が明かされた。入学初日に明かされる情報量じゃない。お前(情報量が)重いんだよ!
実年齢?永遠の18歳だから……(震え声)

・百由様
流瑠様の過去を暴露。こういう話をする権限を持っている程度には流瑠と関わりが深い人。流瑠様の扱いには科学者として思うところがある様子。

・美鈴様
夢結様のシュッツエンゲルで流瑠様のシルト。流瑠様から戦闘訓練で一本取ったやべーやつ。推しを曇らせる趣味とか持ってそう(偏見)


沢山のUA、お気に入り、感想、評価等ありがとうございます!
百合を求める多くの人に喜んでいただけるよう、精進して参ります!

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