ハードモード地球で平成から令和を駆け抜ける   作:ありゃりゃぎ

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#24

 地上の光が相対する二人の巨人を照らす。

 

 三度人々の前に現れた超古代の光の戦士、ウルトラマンティガ。

 

 傲慢にも人類を導かんとするキリエル人たちの集合体、キリエロイド。

 

 両者が駆けた。

 

 すれ違いざまの刹那に二人の手刀が奔る。お互いの胸部から火花が落ちるが、両者ともにそれを気にする素振りはない。

 

 次の一手。ティガは振り向きざまにハイキックでキリエロイドの頭部を狙い、キリエロイドはそれを手の甲で受け止めた。

 

 ティガの膂力から放たれる蹴りを片手で防いだ。キリエロイドの身体能力はティガにも勝るとも劣らない。

 

 受けられたティガは即座に足を引き後退する。距離を取ってからのハンドスラッシュで牽制。キリエロイドはそれを余裕で避けた。

 

 次に行動したのはキリエロイドだった。もはや様子見は終わりだと、ギアを一段階上げた速さでティガに迫る。キリエロイドの高い敏捷性から生み出される高速の拳をティガはかろうじて捌いていくが、拳と拳の間に挟まれた蹴りにまでは対応できなかった。

 

 鳩尾に蹴りを受けたティガは腰から折れるように吹き飛ばされ、膝をついた。

 

 キリエロイドのターンは終わらない。片膝をついたティガの顔面目掛けてかち上げるようにキック。背中からビル群に突っ込んでいく。

 

 人々の日常が営まれていただろう建物が崩壊していく様は、見上げるだけの人々に無力感と恐怖、そして絶望を分かりやすく提示する最悪のヴィジョン。

 

 人々を導かんと傲然な意思をもつキリエロイドは、しかしビルが倒壊する様を見て、ただ哄笑した。彼らの本質がそこには表れている。

 

「ティガは街が壊れて笑ったりしない……!!」

 

 レナが吠えた。人々を導く? 街を壊して、人々を恐怖させて、それで勝ち誇ったように笑っているような奴に、神だなんて名乗らせない。

 

「ちょちょちょっ!? なんて無茶な軌道するつもりやレナ!! 今乗っとんのはWING1ちゃうんやで!?」

 

 ホリイも載せたWING2がキリエロイドを急襲する。中~大型に属するWING2ではWING1ほどの機動力はない。だがそれでもレナには勝算があった。

 

 ティガから視線を切ったキリエロイドがWING2に標的を定め、右手を上げて迎撃の構えを取る。

 

「甘い!!」

 

 上げた腕。その下を潜り抜ける。そしてがら空きの脇めがけてミサイルをお見舞いする。

 

 キリエロイドが怯んだ。だが、怯んだだけだった。怒りを覚えたキリエロイドが遠ざかっていくWING2を次こそ落とさんと振り向いた。

 

「俺を忘れてもらっちゃ困るぜ!!」

 

 シンジョウが援護射撃に入る。

 

 GUTSの連携でキリエロイドの攻撃の手が止まる。ティガが再起するのには十分なだけの時間を彼らは命がけで生み出した。

 

 ティガが立ち上がった。

 

 ハンドスラッシュを再び振るう。しかし今度はキリエロイドに回避する猶予はない。直撃し仰け反った。

 

 ティガの額のクリスタルが紫紺に輝いた。スカイタイプとなったティガが足を高く振り上げて、踵落とし。形勢は逆転した。

 

 戦闘スタイルが目に見えて変わったティガ相手に、キリエロイドは後手に回り続けている。足、腹部と打撃をもろに受ける。だが、キリエロイドは斃れない。スカイタイプはスピードを伸ばす代わりにパワーを犠牲にしている。一撃一撃は先のマルチタイプの時に比べても劣る。

 

 キリエロイドもそれに気づいた。肩に一撃を受けつつも、それを食いしばって耐える。そして近距離からの火炎放射がティガを襲った。

 

「デュアアアッ!?」

 

 火炎に煽られてティガが吹き飛ばされる。

 

 両者の距離が空いた。

 

 この隙に、キリエロイドが身体を震わせると、奴の両腕から鋭い逆さ刃が伸びた。そしてその刃から放たれる光刃がティガを切り裂いた。

 

「あれは……ネクストの腕……!? キリエル人はあの戦いも見ていたの!?」

 

 5年前の新宿事変で姿を見せた、銀色の体色に、血管を思わせる赤い光のラインが奔る巨人。その力を模倣して見せたのだ。

 

 イルマは愕然とした。キリエル人は学習し、順応して強くなっていくのだ。このまま戦いが長引けば長引くだけ、キリエロイドは有利になっていくだろう。このままではティガが負けてしまう。

 

 ついに再び膝をついたティガ。そして追い打ちをかけるように胸のカラータイマーが赤に点滅を開始した。もう時間がないが、逆転の手立てはない。にじり寄ってくるキリエロイドを前に、ティガは次の一手を打てないままだ。

 

「ティガ、負けちゃダメ!!」

 

 レナが叫び、そして地上のイルマもまた天に──否、彼女のよく知る彼に願った。

 

「どうか、ティガを助けて」

 

 その言葉が届いたのかどうか─────

 

 キリエロイドとティガの間に光の柱が突如として立ち上がった。

 

「なんだ、アレ……」

 

 空から警戒を続けるシンジョウやホリイ、レナたちにもその光が地上から立ち上るのが見えた。

 

 そして光がやむ。

 

 膝をつくティガを庇うようにして現れたのは、二人目の巨人。

 

「もう一人の、ティガ……」

 

 ティガに類似した、くすんだ銀と青き目の光の戦士。その巨人がこの日、初めて東京の大地に立った。

 

 

 ティガとキリエロイドの戦い。原作では、苦戦しながらもティガはキリエロイドに勝ち星を挙げている。そのため俺は最初、ティガとキリエロイドの戦いを見守る選択をした。これは今回の騒動でまったく姿を見せないあの闇の3巨人を警戒してのことでもあった。

 

 とはいえ、それもティガが勝てばの話。

 

 想定以上にキリエロイドが強い。挙句、ネクストの力の模倣までして見せた。奴らは5年前の戦いを観察し、そして学習。己の力へと昇華させたのだ。ティガ本編において、二度目の戦いでティガのタイプチェンジを模倣したときのように。

 

 これ以上戦闘を長引かせれば、キリエル人にいらぬ知恵を与えるだろう。ということでこのタイミングで俺は二人の戦闘に割って入った。

 

「ズェヤアアアァァァ!!」

 

 まずはまだ準備できていないキリエロイドの鳩尾に、不意打ち気味にストレート。これが決まって、キリエロイドは数歩後退した。

 

 まずは初手でイニシアチブをとった。次はどうするか。

 

 キリエロイドの出方を待ちはしない。預言者は俺が光の戦士であることを見抜いていた。であるならば、キリエル人はティガと俺、両方を同時に相手取る可能性も考えていたはずだ。

 

 その備えを発揮されればこの戦闘もどうなるか分からない。故に、対抗策を打つ隙を作らせない。

 

 蹴りを数度、牽制目的で放つ。そしてキリエロイドが反撃を試みるタイミングで、次の一手。

 

 右腕から伸ばした光の剣。ゼペリオン・スピア。

 

 突如伸びた光の刃で間合いは詰められた。

 

 慌てたキリエロイドがネクストを真似た腕の刃で受け止める。そのまま弾き、腕の刃から光刃を飛ばしてくる。

 

──程度の低い物真似で!!

 

 ネクストの一撃はもっと重いし、もっとキレがある。奴程度に再現できる技量ではない。

 

 返す刀で光刃を打ち返す。3つの斬撃のうち、2つを左右に弾く。そして最後の1つをキリエロイドに打ち返した。

 

 自らの攻撃を打ち返されてキリエロイドが後退した。

 

──ここだ!!

 

 追撃。腕から伸ばしたゼペリオン・スピアを自身最速のスピードで突く。狙いはがら空きになった脇腹だ。

 

 キリエロイドの俊敏さでもこれには対応できない。脇腹に深く、剣が差し込まれた。

 

 絶叫。火事場の馬鹿力で俺を振り払うも、その傷は深いはずだ。

 

「グガアアアッ!!」

 

 キリエロイドが雄叫びを上げる。すると業火が地下の至る所から噴火のように噴き出した。

 

 こいつ、やるに事欠いてなんて範囲攻撃を……!!

 

 俺とティガが炎に巻き上げられる。超人の皮膚といえど、これだけの高熱に曝されればダメージは避けられない。

 

 炎でこちらの動きを封じ、キリエロイドが遠距離から攻撃してくる。奴の光線技に大技がないだけマシだが、いつまで持つか分かったものではない。

 

 背後のティガも炎熱に苦しみながらも、この炎の檻から逃れるべくフリーザー光線を放つ。が、火の勢いは僅かに弱まったが、熱を完全に奪うには至らない。ティガがガス欠に陥りフリーザー光線を辞めれば再び火は勢いを取り戻した。

 

 キリエロイドの光線技が連続して殺到する。致命に至らない程度に急所を外していくが、これ以上、耐えるのは無理だ。

 

 となればここで無理にでも状況を打開するしかない。

 

──ティガ、俺が道を切り開く。隙をついて大技を叩き込め。

 

 一方的に思念を送り、俺は業火の壁に向かって駆けた。

 

──なんて無茶な真似を!!

 

 ダイゴの声が脳内に響いたが無視。あいにく、今はこれしか思いつかない。

 

「グッ……」

 

 表皮が爛れる。だが足は止めない。

 

 キリエロイドからしてみれば狂気の沙汰に見えただろう。炎の壁を超えた時点で俺は瀕死に近い。このままキリエロイドと戦ったところで、もう手も足も出せずに嬲られるだろう。

 

 だが、それは俺が一人だったならの話だ。

 

 俺の背後には超古代最強の戦士がいる。

 

 覚束ない足取り。それでもこの剣で奴の首を掻き切れる。

 

 俺の殺気にキリエロイドが怯んだ。だが怯みながらも迎撃の姿勢。

 

 こちらは満身創痍。四肢に力が入らない。だがそれがほどよい脱力となったのか。それともこの局面で過度に神経が集中しているのか。

 

 迫り来る悪魔の右腕。顔面狙いのそれを、膝抜きで身体を沈めて躱す。そのまま下半身にかかった体重が自然に足を運ばせる。

 

 超古代の戦士の肉体と、俺が培ってきた人間の技術が噛み合ってきている。

 

 流水の動き。意識の間隙を狙い澄ます斬撃が下から上へ。逆袈裟の一撃。キリエロイドの胸に一文字の切り傷を与え、火花が咲いた。

 

「グガアアア!?」

 

 仰け反ったキリエロイド。そして揺らいだ精神では炎の檻を維持し続けることは能わなかった。

 

 火が揺らぎ、明らかにその強さを減じた。

 

──今だ!!

 

 炎の檻の中で、業火に炙られながらも機を狙っていたティガが、その隙を見逃すことは無い。

 

 紫一色の姿から、赤と紫のラインが奔るマルチタイプへと変じていたティガが、渾身の力を振り絞って両腕をL字に組んだ。

 

 放たれる必殺の一撃。ティガ最大火力を誇るゼペリオン光線がキリエロイドの躰に直撃した。

 

「ぐ、ぎ」

 

 断末魔にもならない断末魔。

 

 ズガガガガガガッ————ン

 

 それを最後に、異形の悪魔は爆散した。悪魔をくべた爆炎が、一瞬だけ夜を昼間のように照らし、そして止んだ。

 

 東京メトロポリスの長い夜は、こうして幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

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