ハードモード地球で平成から令和を駆け抜ける   作:ありゃりゃぎ

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髑髏の火炎竜様よりイラストを再びいただきました!! 今回もありがとうございます!!
今回はゴモラのイラストでございます。めちゃくちゃかっこいい、迫力のあるイラストに仕上がっておりますので是非ご紹介させていただきます!!


【挿絵表示】



#33

 結局、あの『人形』は戦力的に必要ではない。少なくとも、闇の巨人にとっては。

 

「俺たちが直接変身して暴れた方が、ずっと強い」

 

 憮然とした表情を浮かべるのは、ダーラムだ。怪力自慢の彼にとっては、怪獣に変身する必要が欠片も感じられないのだ。

 

 それは、事実その通りである。超古代の戦士に匹敵する力を持つ怪獣など、そう多くはないのだ。

 

「それが確認できたという意味でも、今回の実験は有用だったわ」

 

 不機嫌なダーラムを、カミーラは一顧だにしない。

 

 だが、ヒュドラは苦言を呈した。

 

「けどよ、今回の件でアレを人間どもに回収させちまったぞ」

 

「いいのよ。だって、回収させるつもりだったのだし」

 

「ハァ?」

 

 訳が分からないと首をかしげるヒュドラとダーラムに対し、カミーラは笑って答えた。

 

「怪獣とは破壊の象徴。力の権化。それが宇宙人だったとはいえ、自身の肉体を、怪獣へと変貌させる手段があると人は知った。この認識は、いずれ人間に、力の希求を呼び起こすわ」

 

「力の、希求?」

 

 カミーラは頷いた。

 

「人の欲望は、計り知れない。心の奥底から湧き出てくるのよ。それこそ闇のように、ね」

 

 分かったのか、分からないのか、曖昧な表情でヒュドラは頷いた。

 

「ってことは、何だ。残りの『人形』も配るのか? だとしたら、あの『黒い棒』も一緒に配んねェとじゃねェか。あれコピーすんのめっちゃ疲れるんだぞ」

 

 心底嫌そうにヒュドラが愚痴る。ヒュドラ曰く『黒い棒』は、『人形』と共に彼らが回収したものだ。レギュラン星人に手渡したのは、闇の力で複製したものだ。

 

 その本家本元の『黒い棒』には、銀河の暗黒が宿っている。もしもこれを握ったのが、ただの人間だったならば、容易に意識を乗っ取られていただろう。

 

 闇の巨人である彼らにとっては、弱った状態のそのナニカに乗っ取られるようなことは無い。だが、このナニカが完全に復活したならば、闇の巨人たちにとっても無視できない存在になるだろう。故に、彼らはその本物の『黒い棒』を自身たちの手で管理していた。

 

「確かに、あまりコピーを作るのに私たちの力を使うのは得策ではないわ。私たちもまた、今は雌伏の時。全盛期の力を取り戻すには至っていない……」

 

 でも、とカミーラは嗤った。

 

「すでに第二の種は蒔き終えているわ。そしてそれは、早くも芽吹きつつある……。本当に、人は勤勉よね。目標ができたら一直線。たとえその先にあるものが、奈落の底だったとしても、それに気づきもしないし、考えもしない」

 

 心底楽しいと、歌うように続けた。

 

「人よ、自ら生んだ闇に呑まれなさい」

 

 

『──昨日、東京のよみかいランドの地下から出現した、怪獣ガギについての続報です──』

 

 拙さの残る新人のアナウンサーが、演技臭い表情を浮かべながら現場から中継を繋いでいた。

 

 続報と銘打ってはいるものの、俺からすればすでにイルマからタレコミ済みの情報だ。裏どり程度で十分なこともあり、最後まで見ることなくテレビの電源を切った。

 

「ガギ、か」

 

 バリヤー怪獣ガギ。過去に宇宙より飛来し、遊園地の地下に潜伏していた怪獣だ。卵が孵化することに備え、遊園地を訪れている子供たちを、自身の子供の餌にしようと襲った。

 

 昨日、そういった事情で地上に姿を現したガギは、偶然居合わせたシンジョウ隊員とその妹、そしてとある幼い兄妹の活躍によってその計画を破綻させた。そして俺の出る幕もなく、ティガによって討たれた。

 

 戦闘面については、ダイゴが随分とティガとして慣れてきているようで、危なげなく勝利を収められたので問題ではない。

 

 問題なのは、レギュラン星人の後にガギが出現したことである。

 

「ギランボも、マキーナも現れなかった……」

 

 原作ティガでは、レギュラン星人との戦いの後、異次元人ギランボとの戦い、そして守護怪獣マキーナとの戦いがあった。ガギが出現するのは、その後のはずであるのだが。

 

 ハロウィンの夜に現れる悪い魔女も、年を取らない少女も姿を見せることはなかった。

 

 この世界はあくまで、ティガの世界に似た世界であって『そのもの』ではない。それゆえの差異なのか。それとも別の理由があるのか……。

 

「既にアンタの知っている流れからは、随分と外れているんだろ? いなかったはずの怪獣がいたってなら慌てるけど、いたはずの怪獣がいなかったっていうなら、戦う回数が減って良かったって、喜んどけばいいんじゃないか?」

 

 キリノは、そうお気楽に構えているが、俺としてはどうにも座りが悪い。何か見落としている気がするのだ。

 

 とはいえ、考えていても答えの出ない問題であることは間違いない。俺の持つ原作知識も、絶対ではないということだけ覚えておくべきだろう。

 

「いや、改めて考えてみると原作通りの流れなんてほとんどなかった気がするが」

 

 邪神消滅を前に闇の巨人が復活している時点で、原作も何もない。

 

『ですがそうなると、イルマやダイゴに提供する情報も、見直さねばなりません』

 

 ユザレが口を挟んだ。

 

「……いもしない怪獣の知識を提供しても、いたずらに混乱させるだけか」

 

 それにそもそもの問題として、イルマやダイゴの周囲には、まだキリエル人が潜んでいる可能性がある。連中が地球を離れるまでは、彼らにいたずらに情報を与えられない。

 

「例えば、居るかどうか分からないけど、ミズノエノリュウとかがキリエル人に殺されでもしたら、根源的破滅招来体との最終決戦で敗北しかねないしな……」

 

 あいつらなら、嫌がらせのためだけに、ミズノエノリュウに危害を加えかねない。そういう悪い意味での信頼がある。

 

「やっぱり、これまで通り、起きた事件や出てきた怪獣に合わせてその都度助言していくしかないか」

 

 後は、ダイナに登場したゼロ・ドライブやガイアに登場したリパルサーリフトなどの先端技術の概略だけでも先んじて提示しておくとか、それくらいか。

 

 そのあたりは『人類強化プラン』と称して、ユザレに纏めさせておこう。

 

「闇の巨人についても、俺が知っているデータはまとめてイルマに提供しよう」

 

 やはり、現在において一番の問題は闇の巨人だ。奴らの目的は把握できているが、その行動を推し量ることは出来ない。

 

「そもそも、奴らがスパークドールズをどこで手に入れたのかも不明なままだ」

 

 ダークルギエルと闇の巨人が、共闘している? だとすれば最悪だが、その両者が手を取り合うだろうか?

 

 ダークルギエルの目的は、宇宙中の生命の時間を止めること。対してカミーラらの目的は、ティガの堕落、そしてこの惑星を『闇』で覆うこと。人類にとっては同じくいい迷惑であるが、行動目的は異なっている。

 

「それに、ダークルギエルが動くなら、あんな扱いにくそうな闇の巨人なんて使わずに、もっと使い勝手のいい配下を用意できるはずだ」

 

 となると、ダークルギエルと闇の巨人の共闘説は否定的と見るべきだ。

 

「それなら、カミーラは何故、スパークドールズを持っていたのかって疑問に行き着くが」

 

 もうそこは本人にでも直接聞いてみるしかない。素直に教えてくれるとは、微塵も思わないが。

 

「……まあ、こんなもんか。後は、ダイゴがティガだって、イルマに教えちゃうのもありか」

 

 裏からそれとなくダイゴ君をフォローしてもらおう。

 

『……今から、ダイゴの行動に頭を悩ましている彼女の姿が、ありありと思い浮かびますが』

 

「まあ、確かに」

 

 苦労を掛けます。ほんと、真面目に。

 

 イルマだけに負担を強いるのも良くはない。俺も俺で、最善を尽くしていこう。

 

「とりあえずは、宇宙開発センターか」

 

 次なる事件は、一人の男の抱える闇が引き金となる。彼が、暴走を始めてしまう前に止めてしまいたい。

 

 なお、そんなカツヒトの暗躍にこそ、イルマは心労を覚えているのだが。

 

 

 原作では、宇宙開発センターに勤めるサナダは、旧友ホリイへの複雑な感情を拗らせた末に、研究対象であった宇宙細胞を自身の身体に植え付けるという暴挙に出た。その副作用の末、異形進化怪獣エボリュウと変貌し暴走へと至った。

 

 今回は、そのサナダの暴挙を未然に防ぐとともに、今後多くの禍根を残すことになるエボリュウ細胞を回収してしまいたい。

 

 だが、エボリュウ細胞は宇宙開発センターからしたら貴重な研究材料である。イルマに事情を話しても、日本政府もTPC極東支部もエボリュウ細胞の破棄を素直に選択することはないだろう。

 

 そして事の発端であるサナダも、表面上は真面目で有能な研究員で通っている。彼が危険な人物である、と誰が信じるのか。

 

 正攻法でエボリュウ細胞をどうにかすることは難しい。となると、俺が裏から行動するしかないだろう。

 

 TPCに侵入した実績がある、キリノとのコンビで今回もスニーキングミッションである。

 

「白衣って意外と暑いんだな」

 

 額に滲む汗をしきりにハンカチでキリノが拭う。確かに白衣が暑いのは確かだが、汗の理由はそれだけではないだろう。

 

「入り組んでるな……」

 

 施設は多くのセクションに分かれており、その構造もそれなりに複雑だ。

 

 すでに多くの研究員は、帰宅している。丁度、残業していた研究員たちも徐々に退居し、もうしばらくすれば夜間の警備システムが作動する頃合いだ。

 

 警備システムであれば、ユザレのハッキングで解除はたやすい。勿論、ログに痕跡が残る可能性は依然として残るため、あまり多用はできないが。

 

 人の目が無くなる時間帯。そこを狙って俺たちは滑り込んだ。

 

 キリノの超能力ですれ違う職員の記憶を盗み見たところ、ここ最近サナダは誰よりも最後までこの施設に残っているらしい。もうあまり時間の猶予はないように思われる。下手すれば、今日にでも彼は自身の身体にエボリュウ細胞を植え付けるだろう。

 

 人気のない廊下を進んでいくと、煌々と明かりが灯ったままの部屋を見つけた。恐らくはそこに、サナダとエボリュウ細胞があるはずだ。

 

 部屋の入口は、電子錠が掛けられている。俺は、拝借したカードキーを読み取らせた。

 

 電子錠のランプが赤から青に切り替わった。

 

 僅かばかりの隙間の分だけ、引き戸の扉を開いた。まずは部屋にいるサナダの様子を伺いたい。

 

 覗き見える研究室は、想像に反してよく片付いている。研究主任のサナダの、几帳面な性格が読み取れた。

 

 彼は、研究室の一番奥。自分のデスクに座っていた。俺たちのいる部屋の入口からは、背を向けている。どうやら、誰かと電話しているようだ。

 

「……りがとう……います。これで……究も大幅に進み……。マサ……さんにも、どうぞよろ……お伝え……さい」

 

 気位の高いはずのサナダが、電話先にへりくだった対応をしている。社会人の常識といえばそれまでなのだが、俺はその電話相手が気になった。

 

「キリノ、サナダが誰と電話しているのか、ちょっと見てくれないか……?」

 

 サナダから視線を離すことなく、キリノにそう指示を出すが、何故かキリノの反応がない。

 

「キリノ……?」

 

 不思議に思って振り返れば、キリノがひどく顔を歪め、頭を押さえこんでいた。

 

「う、ぐ……」

 

「どうした、キリノっ!?」

 

 明らかに尋常ではない様子のキリノは、息も絶え絶えに喘いだ。

 

「頭が、おかしくなる……っ。何なんだ、この部屋……。ヒト、なのに、ヒトじゃないのが、たくさん……」

 

 その言葉を最後に、キリノは意識を失った。力の抜けたキリノの身体を受け止め損ねて、彼の眼鏡が床に落ちた。

 

 人気もなく、音もなかったこの場所で、眼鏡のフレームがからんと軽い音を立てて転がった。

 

「ダレダッ!!」

 

 気づかれた。

 

 どうするべきか。判断に迷う。キリノの言葉は気になるが、当の本人が気を失っていて、続きは望めない。男一人を担いで逃げ切れるだろうか……?

 

 強硬手段に訴えるべきか、今、俺たちを見咎めたのはサナダだけだ。デスクワークの研究員相手なら、いっそ意識を奪った方が──

 

「追え、逃がすな!!」

 

 続く言葉が、俺から強硬手段の一手を取らせなかった。

 

 明らかな命令口調。サナダのほかに、誰かいるのか……?

 

 意識を失う直前の、キリノの言葉が反響する。いったい、何が『たくさん』なんだ。

 

 研究室の扉を蹴破って飛び出してくるナニカ。間一髪、キリノを抱えたまま跳んだ。初手の攻撃を躱し、襲撃者に視線を向けた。

 

「人間、か……?」

 

 鉄製の扉から十数本の「手」が伸びている。衝撃的なホラーな絵面だが、驚くのはそれに対してではない。

 

 手は、人の手であり、人の手ではなかった。

 

 異形化した、もとは人の手であったのだろう手。

 

 最早、用をなさなくなった扉が打ち捨てられ、研究室から出てきたのは、やはり人間「だった」もの。

 

 幽鬼のような足取りで、計七人の──七体の怪人が迫る。

 

 それを怪人と形容するべきか、俺は判断に迷った。胡乱な瞳、口端から垂らした涎。放置されたままの、致命傷の傷。七体のどれもが、既に死相を浮かべている。その状態のまま動いているのだ。

 

 ゾンビ。

 

 ──ではない。

 

「ビースト、ヒューマンだと……!?」

 

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