ありふれた職業がダークライダーなのはおかしい 作:LEGION ONE
あの後… 俺たち日本組一行は国王との謁見の為に王宮内を歩いていた。
王座の間とやらに向かう間、騎士っぽい装備を身につけた者や文官らしき者、メイド等の使用人とすれ違うのだが、皆一様に期待に満ちた、あるいは畏敬の念に満ちた眼差しを向けて来る。
「(あのクソジジイか…それとも別の存在が事前に話したんだろうな…)」
俺は体を縮こまらせて歩くハジメの隣を歩いていると王座の間に着き、兵士コンビが大声を上げて俺達を部屋に入れた。
そして、この国の王、エリヒド・S・B・ハイリヒ、王妃のルルアリア、王子のランデル、王女のリリアーナと俺たちは謁見した。
謁見をすませた事で、国王とイシュタルの上下関係が分かった。
どうやら、立場的にはイシュタルの方が上らしい。
「(なるほどな…これでこの国を実質的に動かしているのはイシュタルが言っている神…エヒトということか)」
それにしても…怪しい匂いかプンプンスるぜ…あのクソジジイもエヒトという神様も…。
「(それに…エヒトが恐れた…闇の戦士達…か…)」
国王との謁見の中でイシュタルがとある壁画を見せながら俺たちに話した。その話は…ずっと前に人間族と魔族…絶望に叩きつけた闇の戦士達がいたらしい。もうずっと前の話でホントかどうかは分からないらしいが…
「(なんだか…俺が夢で見た仮面の戦士達と似ているな)」
似ているだけならいいが…ここに来てから疑問に思うことばかりだ…
翌日
いくら俺たちに才能があるといっても、そこは戦争とは縁のないましてや人を殺したことがない…平和な所で育った日本人、しかも学生。
その為、今日から戦闘の訓練と座学が始まることになった。
指導教官は、ハイリヒ王国の騎士団長であるメルド・ロギンスが担当することになった。
「勇者御一行、協力感謝する!私はハイリヒ王国騎士団長を務めるメルド・ロギンスだ!」
メルド団長はそう言って俺たちに自己紹介をしながら銀色の金属プレートが渡してきた。
「よし、全員に配り終わったな? このプレートはステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれる物だ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」
「(ある意味…命綱のようなものか…)」
非常に気楽な喋り方をするメルド団長。彼は豪放磊落な性格で「これから戦友になるかも知れないってのに何時までも他人行儀に話せるか!」と、他の騎士団員にも普通に接するように忠告するくらいだ。
「(この世界では…信頼出来る存在だな)」
俺はそう考えながらメルド団長を見ていると…
「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう? そこに一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らすと、それだけで所持者が登録される。ステータスオープンと言えば表に自分のステータスが表示される筈だ。原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな? 神代のアーティファクトの類だ」
「アーティファクト?」
天之河がそう言ってメルド団長に訊ねる。
「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現出来無い強力な力を持った魔法の道具の代物の事だ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな……複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及している物としては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが……これは一般市民にも流通している。身分証になるからな」
納得したらしい生徒達は各々に指先へ針を指して、流血を魔方陣に擦り付ける。俺も流血を魔法陣に擦り付けた。そして、内容を確認するためにプレートに視線を移すと…
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天職:闇の戦士・ダークライダー
筋力:測定不能
体力:測定不能
耐性:測定不能
敏捷:測定不能
魔力:測定不能
魔耐:測定不能
技能:武術・剣術・槍術・闇の戦士・光属性無効化・闇属性吸収・全属性耐性・物理耐性・超人剛力・瞬間移動・悪意・気配感知・予測・魔力感知・限界突破・言語理解
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「はぁ?」
なんですかこれ?ステータスが中途半端に表示されてる。数字が表示される所が『測定不能』ってなんだよ。
しかも天職が…闇の戦士?それにもう一つあるけど霞んでよく読めねぇ…しかも…なんだよ悪意て…怖いわ!バグか?バグなのか!?
俺がステータスプレートと睨めっこを繰り返していると、メルド団長が口を開いた。
「全員見れたか? 説明するぞ? まず、最初に『レベル』があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」
なるほど…よくあるRPGみたいなものか…
「次に『天職』ってのがあるだろう? それは言うなれば『才能』だ。末尾にある『技能』と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」
そんなこと言われても…俺の天職が闇の戦士ですが…
「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな!全く羨ましい限りだ!あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」
どうする…報告するか?いや…後々めんどくさいことになりそうだし…メルド団長には悪いが黙っておくかな…
「ハジメ。お前はどうだった?」
俺はそう言ってハジメに近づいた。
「あ、一夜…。えっと……」
ハジメに尋ねると、どこか気まずそうに渡してくる。
そこに書かれていたのは、
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1
天職:錬成師
筋力:10
体力:10
耐性:10
敏捷:10
魔力:10
魔耐:10
技能:錬成・言語理解
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「…なんだろう…とてつもない…悪意を感じるな」
「僕も思うよ……」
なんというか、バリバリ平均だった。ハジメはがっつり非戦系だった。
ハジメになんとも形容しがたい表情を向けると、ハジメに俺のも見せてくれと頼まれた。俺はハジメは信頼出来る存在だから快く見せた。
するとハジメは一通り目を通した後、俺に返却しながら言う。
「一夜は技能の数は多いけど何で測定不能なんだろうね。後、天職が『闇の戦士』って…それに…もう一つあるけど霞んでいて…」
「言うな。とりあえず追及しないでくれ」
本当に大丈夫なのか?俺…
その時、一角から「おぉっ!!」と歓声が響いてきた。俺とハジメはそっちを見ると、天之河のステータスプレートが周りに向けられていた。
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天之河光輝 17歳 男 レベル:1
天職:勇者
筋力:100
体力:100
耐性:100
敏捷:100
魔力:100
魔耐:100
技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
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なんというか、なるべくしてなったというか、チートの権化としか言いようがなかった。
「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め!頼もしい限りだ!」
「いや~、あはは……」
気恥ずかし気に頬を掻くその姿に白けた視線を送った。
そんな光輝に続いてどんどんクラスメイトたちが自分のステータスプレートを見せに行く。竜騎は最後の方に行きハジメの一つ前になるように並んでステータスプレートを見せた。
団長は「うん?」と首を傾げてハジメのステータスプレートと俺のステータスプレートを叩いたり、光に翳してみたりする。
それから困惑した表情のハジメと、どう言い訳しようか考えている俺に返し…
「ああ、その、なんだ……まず錬成師というのはまあ、言ってみれば鍛冶職の事だ。鍛冶する時に便利だとか……」
「つまり……ハジメは後方支援職と言う事か」
「ま、まあそうなるな……しかし一夜は……これはどういう事だ? 天職も有って尚且つ見た事のない天職…それにもう一つ天職があるが…霞んでよく分からん。その他にも技能も勇者様と同等な数はある…なのにステータス数が表示されないとは………まあ戦士という事から戦闘系だとは思うが……」
これを聞いて普段ハジメを目の敵にしている輩が黙って見ている筈もなく、
「おいおい南雲。もしかしてお前非戦系か? 鍛冶職でどうやって戦うんだよ? そんなんで戦える訳? ステータスはどうなってんだよ」
案の定、ハジメいびり筆頭の檜山がやってきた…。こいつ…自分には力があるからて調子に乗って… ハジメは呆れたようにため息を吐きながらステータスプレートを差し出す。
すると檜山は爆笑し、他の連中も内容を見て爆笑なり嘲笑なりをしていく。
「ぶっははははっ~!! 何だこれ!完全に一般人じゃねえか!」
「むしろ平均が10なんだから、場合によっちゃその辺の子供より弱いかもな!」
「ヒァハハハ~、無理無理!直ぐ死ぬってコイツ!肉壁にもならねぇよ!」
こいつらは…さっきのメルド団長の発言を聞いていなかったのか?
「まったく、バカだな、お前ら」
「あぁ? 何言ってんだテメェ?」
俺が呆れたように呟くと、今度は俺に矛先を向けてきた。俺は呆れた表情をしながら檜山達の方を向いた。
「鍛冶職だからってバカにしてるが、戦場じゃむしろいなきゃ話にならんぞ? 鍛冶師がいなければ、誰が武器の整備をするんだ? 後衛ってのは、戦線を維持するのに必要不可欠なんだよ」
「な……!?」
「それに、俺達には普通よりも才能があるんだろ? だったら、メルド団長の言ってたアーティファクトを作る事だってできるかもしれないぞ?」
「ぐっ……」
「そんな事も考えないで、よく人の事をバカにできたものだな。ちゃんと人の話を聞け馬鹿が」
俺の正論に檜山達は一旦黙った。そして、俺のことを睨みつけると何処かに行ってしまった。
「やれやれ…異世界に来ても…変わらないな」
俺はそう言って行ってしまった檜山達のことを呆れた表情で見ていた。
尚、ハジメを慰める為に愛子先生が自分のステータスを見せていたが、それが逆にハジメにトドメを刺した。
どんまい…ハジメ…