ありふれた職業がダークライダーなのはおかしい   作:LEGION ONE

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絶望

ぐっ……」

 

水の流れる音が聞こえ、下半身の刺すような冷たい感触を感じ、俺は目を覚ました。

 

「…………ここは一体……痛ッ」

 

確かは俺は…ベヒモスと戦って…ハジメと共に逃げようとした時に…火球が…

 

「あ〜…檜山の野郎に落とされたんだったな…」

 

あの野郎…なんのために俺たちを奈落に落としやがったんだ…

 

「大方…白崎と仲良くしているハジメを殺す為だろ…アイツ、白崎に恋心抱いていたし。んで、俺はついでか…いつもの仕返しかどちらかだな…」

 

そんなことを考えていると、俺はハジメの存在を思い出し、急いで周りを見回すも、ハジメの姿は欠片も見当たらなかった。

 

「ハジメは……一体何処に…てか、寒いな…」

 

どうやら…川に入っていたようだな。

 

俺は川から出ると、服を絞ると、十センチ位の魔方陣を書いた。

 

「求めるは火、其れは力にして光、顕現せよ、〝火種〟…だったけ?こういう長ったらしい詠唱は嫌いだな〜」

 

そう言いながら俺は魔力で起こした火で暖をとりつつ、服を乾かし始めた。

 

「状況からして水に流されて助かったのか……ここに川が流れていて良かったよ」

 

落下途中の崖の壁に穴が開いており、そこから鉄砲水の如く水が噴き出していたのだ。

 

ちょっとした滝だ。

 

そのような滝が無数にあり、俺は何度もその滝に吹き飛ばされながら次第に壁際に押しやられ、最終的に壁からせり出ていた横穴からウォータースライダーの如く流されたのだな…。

 

あれのお陰で死なずに済んだのか…とてつもない奇跡だな…。

 

俺はそう考えながら火を消し、まだ若干乾いていない服を着直した。

 

「とりあえず…川沿いに進むか…進めばハジメも見つかるだろ…」

 

俺はボロボロな身体を立たせると、先ず川沿いから捜索を開始した。ハジメも同じように流されている可能性が高い。

 

物陰から物陰に隠れながら、川沿いを下って進んで行くが、ハジメの姿は一向に見当たらなかった。

 

「一体何処にいるんだよ…ハジメ」

 

もしかして…いやいや!そんなマイナスなことを考えるな!親友を信じろ!ハジメは生きている!

 

 

 

「それにしても…エボルトの野郎…さっきから全然反応しんな…」

 

そう、さっきからエボルトが全然話しかけてこないんだ。アイツのことだから、奈落に落ちたことでからかいの一つや二つは言って来るのだが…全然話してこない。

 

 

 

 

 

 

 

 

そうしてしばらく進んでいると何かしらの影を見つけた。

 

俺は物陰から顔を少しだけ出してその影を確認すると、その影は後ろ足がやたらと発達した中型犬ぐらいの大きさをもつウサギだった。

 

しかもそのウサギの体には幾本もの紅黒い線がある。

 

「(見るからにヤバイな…)」

 

そんなことを考えていると…別の岩影から二本の尾をもつ狼の群れまで現れた。狼の群れは兎が襲いかかるが…

 

「キュウ!」

 

兎は蹴りで狼の群れを薙ぎ倒した。

 

「(マジかよ…)」

 

冗談抜きでヤバい…あんなのとエンカウントしたら一瞬でお陀仏だ…

 

それにしてもあの兎… もしかしたら単純で単調な攻撃しかしてこなかったベヒモスよりも、余程強いかもしれないな…。

 

「(そう考えたら尚もヤバイな…早くここから…)」

 

俺は「気がつかれたら絶対に死ぬ」と、感じならが無意識に後退し、ここから逃げようとゆっくりとその場から立ち去ろうとした……

 

しかし、その瞬間……俺の周りに突風が吹き荒れた。

 

「グルルルルル…!」

 

そんな低い唸りが聞こえたと同時に、全身が風で覆われた二メートル程の巨大な狼がゆっくりと姿を現した。風で覆われていない部分にはやはり、紅黒い線がある。

 

「(もっとヤバいのが来た!?)」

 

ヤバいの…あの狼…兎よりもっとヤバい…

 

俺が狼を見て唖然としていると、兎が我に返ったように、脇目も向けずに逃げようと後ろを振り向くと――、

 

「ガァァァァァッ!」

 

雄叫びと共に風狼は口から鎌鼬を兎に放ち、兎を細切れに切り刻んだ。そして、細切れになった兎を風狼は捕食してしまった。

 

 

その光景に俺は「絶対に死ぬ」と、感じ、無意識に後退てしまい――

 

 

―――カラン

 

 

足下の小石にぶつかってしまい、ぶつかった音がやたらと大きく響いた。

 

「(ヤバい!!)」

 

「グルルルルル…」

 

やってしまった俺は風狼の方に目を向けると、風狼はこちらを見ており、低く唸りながら、こちらを睨みつけていた。

 

俺は逃げようとした瞬間…目の前から風狼が突然居なくなった。

 

「ッ!何処に行っ『ザシュッ!』え……」

 

何が起こった…今、ザシュッて…俺が混乱していると、風狼が何かを咀嚼していた。

 

俺は理解できない事態に混乱しながら、何故かスッと軽くなった左腕を見た。

 

「あ、あれ?な、なんで…俺の左腕は…?」

 

俺は顔を引き攣らせながら、何度も腕があった場所を手で触れようとする。

 

嘘だ…そんな訳ない…そんな訳…

 

瞬間、腕を襲うすさまじい激痛が俺を現実に引き戻した。

 

「あ、あ、あがぁぁぁあああーーー!!!」

 

痛い!痛い!痛い!死ぬッ!死ぬッ!死ぬゥゥゥゥゥゥッ!

 

俺の絶叫が迷宮内に木霊した。俺の左腕は肘から先がスッパリと風狼によって喰われていたのだ…あの一瞬で…俺の左腕を!

 

 

「あ……ぁあ…………あああ…………嫌だ…嫌だ…嫌だ……」

 

 

ゆっくりとこちらへ向かいながら、鎌鼬を放とうとする風狼…。

 

次はお前を喰らう…そんな目付きで俺を睨みつけていた。

 

「(死ぬッ!このままじゃあ…死んじゃう!!)」

 

俺は恐怖で押しつぶされそうになりながらも何とか立ち上がり、その場から逃げようとした。

 

「ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」

 

そんな俺を逃がさんと言わんばかりに風狼は鎌鼬を俺に向かって放った。

 

「ヒィッ!」

 

俺は咄嗟に横に跳んでかわすも―――

 

 

ザシュッ!

 

 

「ァァァァァァァァァッ!足がァァァ足がァァァァァァァァァァァァァァァッ!」

 

 

その鎌鼬は俺の右膝部分に当たり、容赦なくその部分が切り飛ばされた。

 

右足を失ったことにより、倒れてしまった。

 

歩くこともできず、必死に這いつくばってでもここから逃げようとしたが…血を流しすぎたのか…意識がなくなりかけてきた。

 

 

「(痛いッ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だァァァァァァァァァッ!死にたくない!死にたくない!死にたくない!)」

 

なんでこんなことになったんだよ!なんで…俺はこんな目に合うんだよ…ッ!

 

檜山の勝手な悪意に落とされたからか?

 

天之河が戦争に参加しようと言ったから?

 

 

違う…俺を…俺たちを勝手に巻き込んだあのクソ神だ…巫山戯んな…なんで…なんでだよッ!

 

「巫山戯んな…ふざけ…んな…殺して…や…る」

 

俺はふつふつと湧き上がる憎しみを抱きながら…だんだんと意識がなくなってきた。

 

『やれやれ…しょうがない野郎だな』

 

意識を失う前…エボルトの声をした仮面の戦士が俺の目の前に現れた。そして、その仮面の戦士を見た瞬間…俺は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『グルルルルル…』

 

風狼は意識を失った一夜を喰らう為にゆっくりと一夜に近づこうとした…その瞬間…

 

『やれやれ…しょうがない野郎だな』

 

迷宮内にエボルトの声が響き、一夜の身体から光の球体が現れた。その球体は人型に形成され、一人の仮面の戦士を作り上げた。

 

『よォわんこ…うちの宿主に何の用だ?』

 

その戦士は… 声はエボルトだが…天球儀や星座早見盤など宇宙に関連する器具が全身にあしらわれ大量のディテールを使用された複雑かつ凶悪なデザインの鎧を纏った仮面の戦士の見た目をしていた。

 

『グルッ!?』

 

風狼は驚きを隠せなかった。当然だ…自分が喰おうとしていた存在から仮面の戦士が現れたからだ。誰でも驚く。

 

しかし、風狼の驚きはそれだけではなかった。仮面の戦士が纏うとてつもないオーラに驚いてたのだ。

 

あの爪熊を超えるこの狼はこの迷宮内では敵無しだと思っていた。しかし、自分の目の前にいる仮面の戦士は自分を余裕で超える力とオーラを纏わせていたのだ。

 

『一回しか言わないからよく聞けよ…今すぐにここから立ち去れ。今なら、見逃してやるよ…しかし、それを無視したら……灰にさせるぞ…』

 

『ッ!?』

 

仮面の戦士のとてつもない殺気に風狼は完全に怯え、キャインキャインと鳴いてその場から一目散に逃げていった。

 

風狼を追っ払った仮面の戦士は意識を失っている一夜の元に駆け寄った。

 

『あーぁ、左腕に右足を喰われてやがるな。ま、いつかどうせ生えるんだし』

 

そう言うと、仮面の戦士は意識を失っている一夜を担いだ。

 

『ふん…これでようやく俺たちの力が復活するぜ……』

 

仮面の戦士は一夜を見ながらそう呟くと…何処かにワープ移動し、この迷宮内から去っていった。

 

 

 

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