ピンクの花が咲き誇る湿地帯に、一人の少女が佇んでいた。
その少女は、同年代の少女よりも小柄であった。肌は透き通るように白く、瞳は赤、髪は青色であるが髪の先端に向かうに伴い紫へ変色していた。耳はニューマンの特徴である、長く細い形をしていた。
その赤い瞳に移るのは、少女の足元で横たわっている白い少女。
白い少女は眠っているのか、呼吸をするため胸を上下させている以外に、動きはない。
「ミケ!」「
小柄な少女を呼ぶ声が聞こえてきた。
小柄な少女が声のする方へ顔を向けると、二人の少女が小柄な少女──「ミケ」に向かって来ていた。
「ヒツギ!ハリエット!無事だったんだね」
ミケは、2人の無事を喜んでいると、ヒツギと呼ばれた少女が、倒れている白い少女を見て心配そうにしていた。
「こっちは大丈夫!マトイのほうは大丈夫?」
「今は寝ているだけかな。暫くすれば起きると思う。それとシエラに、回収用のキャンプシップを準備するように連絡済みだから、ここで迎えが来るまで待機かな」
白い少女──「マトイ」を優しい表情で見ながら、ミケは答えた。
「了解!おわったぁ!無事に帰ってこられたし一件落着だね!」
ヒツギはそう答えると、大きく伸びをした。
「おかえりなさい、
ハリエットと呼ばれた少女は、そう答えつつ笑みをミケへ向けた。
その時、マトイが身動ぎをした。
ミケはもうそろそろ起きるかな?と思いマトイの顔を眺めていると、その赤い瞳が開かれた。
マトイは起きがけで焦点の合わない瞳を何度か瞬かせていると、焦点があったのかミケを瞳に映した。
その後の行動は、まさに風のようであった。瞬時に立ち上がると、ミケへ向かって突撃しその体を抱きしめると、瞳に涙を浮かべながらミケに叱責する。
「ミケ!ばか!ばかばか……!もうあんな無茶したら絶対に許さないんだからね!」
ミケは嬉しいような困ったような、なんともいえない表情を浮かべながら、自分より背の高い少女の頭に手を向け優しく撫でた。
「はいはい!お二人さん!いちゃつくのは後でもできるからね!」
ヒツギは、後頭部をかきつつ呆れたように明後日の方向に目をやる。
ハリエットは、微笑ましそうに二人を見ていたが、何かに気が付いたように空を見上げた。
「
マトイはミケの体から離れると、涙を手で拭いながら改めてミケを見つめる。
「これからは、ずっと……ずっと一緒だよ!」
そう言うと、満面の笑みをミケに向けた。
キャンプシップに搭乗し、帰還の途についている間、ミケは今までの事を思い出していた。
【終の女神シバ】からマザーシップを取り戻すために、マトイと共に突入した事。
【終の女神シバ】は倒したが、そこから【原初の闇】が現れて、取り込まれそうになった事。
取り込まれそうになった時、マトイを筆頭に、ヒツギ、ハリエットが駆け付け、救ってくれた事。
最悪は、全部自分1人で抱えこもうと考えていたが、自分には帰る場所が、愛しく思う人がいるんだなぁと実感した事。
その様な思いを胸に、今までの長く苦しい戦いの日々の終わりを迎えれた事。
様々な思いを噛み締めつつ、自分の肩に頭を乗せて眠るマトイを見つめていた。
「終の女神シバの消滅を確認……やった……やりましたよ!みなさん、本当にお疲れさまでした!そして、お帰りなさい、
その日、オラクル船団内は戦勝ムード一色となった。
アークス・ロビー内では、各アークスたちが、各々でこの空気を満喫していた。
勝利の喜びを高らかに叫ぶ者。
自慢のダンスやポーズを披露している者。
「俺の衣装倉庫が火を噴くぜー」と叫びながら早着替えを披露している者。
仲間内と祝杯を挙げるべく、フランカーズ・カフェへ談笑しながら移動する者。
アークス・ロビーはカオスな状態であった……
戦勝ムードのアークスシップ内で、ミケとマトイの姿は、艦橋にあった。
シエラから、今後の事についての説明に、耳を傾けていた。
「ミケさん、マトイさんほんとーにお疲れさまでした」
【原初の闇】が、完全消滅したことにより、新たなダーカーの発生がなくなった。そのため、現存するダーカーを殲滅すれば、ダーカーの脅威が去るであろう事。
ダーカーの残党討伐には、
「それで、
オラクル船団の目的は、ダーカーの殲滅が主目的であるが、それとは別に、外宇宙への進出のための調査などもある。
ダーカーについては、ある程度の目途がたったため、もう一方の目的である外宇宙への進出へ力を入れるのであろうことは、容易に想像できた。
ミケがアークスになった切っ掛けは、様々な世界を見に行きたいそしてその世界を冒険したい、と考え期待を胸に志願したのだが、紆余曲折の末、気が付いたら
そのため、シエラの説明を聞きながら、当初のきっかけを思い出し、赤い瞳をキラキラさせながら、話に聞き入っていた。
「カスラさんによれば、以前接触のあった
『
オラクル船団は、今まで様々な世界と一時的な接触を行ってきていた。接触当時は、接触世界との接続が不安定であり人員を派遣することが困難であったため、表層情報の入手のみに留めていた。その時に、その世界の髪型や装飾品、衣装等のファッションの取り込みや、技術をまねて武器への反映などを行ってきた。
これらの世界をオラクル船団では、
尚、この時に何名かのアークスが行方不明となっているが、因果関係は不明である。
「今話せる範囲はここまでです。この後、祝賀会の用意がございます。お二人とも、楽しんできてください!」
祝賀会の後、ミケとマトイはショップエリアのベンチに腰掛け、祝賀会の余韻に浸っていた。
「わたしね、またこうしてミケのそばにいられて、本当幸せなんだ」
ミケはマトイの手を取り、マトイを見つめた。
「マトイには、ちゃんと言葉で伝えてなかったね。私もマトイと一緒にいられるのが嬉しいよ!」
それぞれの瞳に相手を映し、改めてそれぞれの思いを伝え合った。
マトイは、恥ずかしくなったのか、ミケから手を離すと、話題を変えるべく話しかけた。
「んーと、えーっと、それでね、シエラちゃんの説明を受けてた時、ミケの瞳がものすごく輝いていたけど、何か良い事あった?」
「マトイには話してなかったっけ?私は元々まだ見ぬ世界に冒険を求めてアークスになったんだよ。だから念願の冒険ができるなぁって思うと、わくわくしちゃって」
「そっか。その時はわたしも一緒だよ?」
「もちろん!いっしょに冒険しよ!」
「うん!」
【原初の闇】消滅から幾ばくかの月日が流れたある日、私とマトイは艦橋に集まった。
シエラより、調査任務についての詳細が決まったとの連絡を受けたためだ。
シエラの説明によると、この世界の名前は現地の一番大きな都市の名前を取って「オラリオ」と名付けられたらしい。
この世界では、上位存在である神々が下位存在である人と共に、生活を行っているそうだ。
神ではなく神々である。沢山の神がこの世界にいるのだろう。
その神々は神格はあるので、【
但し、その神の力は使用せず、下位存在である人と同じ力の範囲内で生活を行っているという。
なんとも不思議なことだ。まぁ神の力を振りかざしていたら、下位存在たる人々は、たまったものではないだろうが。
現在は、情報部にてベース基地の建設準備を行っているそうだ。
私たちの任務は、ベース基地の建設予定地の周辺調査と安全確保である。とりあえずは、ベース基地ができてから、本格的な調査になるのかな?と考えていると情報部からの緊急回線が繋がった。
「こちらオラリオ一次先遣隊、巨大な
その通信を聞き、マトイに目配せする。
マトイは、瞬時に頷いた。
「シエラ!マトイと現地にいくね?」
シエラは私の言葉に頷くと、出発準備に取り掛かる。
「了解です!キャンプシップの準備を行いますので、ミケさんマトイさんはロビーへ向かって下さい」
私とマトイは、シエラの言葉に了解と答えつつ、艦橋からアークス・ロビーへ向かう。
道すがら、マトイは苦笑しつつ、なんだか慌ただしくなっちゃったね?と言い、私もいつもの事だよね。と答えつつ先を急いだ。
ロビーに到着後、キャンプシップの管制を行っているアンネリーゼの元へ向かう。
「
「了解!ありがとうねアンネリーゼ」
アンネリーゼに手早く挨拶を行い、搭乗ゲートへ急ぐ。
キャンプシップへマトイと共に乗り込むと、パイロットへ搭乗完了の連絡を行う。
パイロットからの発進シーケンスを聞きながら、装備のチェックを行いつつマトイへ確認を行う。
「マトイ、準備は大丈夫?」
「うん、こっちは大丈夫」
マトイからの返事と同時にキャンプシップが発進した。
私は、狩猟の女神アルテミス。
以前封印したアンタレス復活の兆しを感じ、【アルテミス・ファミリア】の主力メンバーと共に封印した遺跡へ向かった。
遺跡に到着すると封印はすでに解かれており、多数のアンタレスの眷属に襲われた。
眷属自体はそこまで強くはなかったが、数が多く苦戦を強いられた。
私は現状を見極め、一時撤退して応援を呼ぼうと考えていたが、アンタレスは自身を封印した私を仕留めたかったらしい。後方より忍び寄り私に襲い掛かってきた。
気が付いた時には【ファミリア】達と引き離されていた。
私はアンタレスを再度封印すべく立ち向かったが、アンタレスは以前封印した時より強化され更に強固な外殻により、私の攻撃を受け付けなかった。
私は徐々に傷を受け、倒されるのも時間の問題となっていた。【ファミリア】達も私の危機に気付き加勢に来ようとしていたが、眷属達により道を阻まれていた。
ここで私が死ねば、【ファミリア】達に与えた『
それは何としても避けたかった。だが現状がそれを許さない。
最悪は『
そう考えている内に、一人また一人と【ファミリア】達が眷属達に圧し潰されていた。
「ここまでか……」
私は、どうにもならない現状と、【ファミリア】達が倒されて行くのに耐え切れず、せめて自分の手でと『
その時上空から
「やっちゃうよーーーーーーーーー」
との掛け声と共に、一条の巨大な光の矢が飛んできた。
いや、矢では無い──少女だった。
その少女が、アンタレスへ向かって突撃を仕掛けている。
無謀だと思いつつ、その突撃した少女の姿を確認しようと目を向けると、信じられないことが起こっていた。
なんと私の攻撃をも弾いた強固な外殻が、まるで飴細工のように粉々に砕け、更にアンタレスの魔石と思わしき結晶をも粉々に砕いていた。魔石が砕けたことにより、一撃でアンタレスの姿が霞のように消えていった。それに伴い、無数にいた眷属達も同じく霞のように消えていった。
「まさか、あのアンタレスが一撃で……」
私は改めて、矢のように飛んできた少女を確認する。
その姿は小柄だな。神友たるヘスティアと同じくらいの身長、赤い瞳、そして印象的なのが、青髪ではあるが髪の先端へ向かうに伴い紫へ変化している髪をした、エルフの少女であった。
「大丈夫ですか?」
エルフの少女から、安否を確認する言葉が紡がれた。
私は大丈夫だと答えつつ、私の【ファミリア】達の安否を確認する。
眷属に圧し潰され致命傷を受けていたが、まだ命の灯は消えていない。
急いで
「ミケ、怪我している人たちの治療は済んだよ。テクニックでの治療だから、応急手当にしかならないけど……」
「あぁ、そっか。とりあえずお疲れ様、マトイ!」
その言葉を聞き、私は安堵の息を吐いた。あのまま放置していたら、【ファミリア】達の命の灯は消えていただろう。
治療した者へ礼を述べようと、マトイと呼ばれた者へ視線を向ける。
その姿は、まさに白と形容しても可笑しくないいでたちであった。髪は白、白を基調とした衣装、そして、その瞳だけ赤色をした、ヒューマンの少女であった。
エルフの少女と同じ瞳の色だなと、なんとなく考えているとマトイが私へ近づいてきた。
「怪我の治療をするよ。応急手当にしかならないけど、幾分かましになるはず……」
そう言うと私へ手をかざしてきた。手を中心に空間が淡い光を帯び、その光が私を包み込んだ。その瞬間、体中で悲鳴を上げていた痛みが幾分か和らいできた。
「今の段階で出来る治療は、ここまでかな。」
そう言うとマトイは、私から離れた。
見たことのない治療魔法だなと思いつつ、礼を述べる。
「助けて貰ったこと感謝する。私は【アルテミス・ファミリア】の主神アルテミス。お礼をしたいのだが、あなた方は何処の【ファミリア】か?」
そう言うと、二人は目を大きく見開いて驚きの表情をし、お互いの顔を見合わせていた。
「まさか、いきなり神に遭遇するなんて。えーっと私はミケ、こっちはマトイです。私たちはファミリア?ってのではないです。応援要請を受けて急行した所、貴方達が襲われていたので助けた次第です」
なんと!『
「とりあえず応急手当は行いましたが、ちゃんとした治療が必要になります。私たちの仮拠点へ行きませんか?そこなら皆様の治療も出来ます。」
願ってもない提案であったので即座に頷いた。
アンタレスが倒された事、【ファミリア】達の安全が確保された事で緊張の糸が切れたのだろう、私はそのまま意識を失った。
アルテミスについては、映画をみただけなので性格などはよくわかっておらずオリキャラ見たいな感じになっております。