ダンジョンまでが遠い…
迷宮都市オラリオ
太古の昔より存在するこの広大な都市は、都市中心部にあるダンジョンの入り口に蓋をする様に建てられてた塔「バベル」を中心に放射状に広がっている。
バベル及びバベルから続く8つの大通りを中心に人が集中しており、一歩外れると歴史に忘れられた様な地域が幾つか存在していた。
その一画、廃墟にしか見えない場所に小柄な少女が一人佇んでいた。
その少女は辺りを見渡しながら、歴史に思いを馳せ感動でもしているのか、小刻みに体を震わせ辺りの景色を堪能してるように見える。
いやいやいやいやいや。
流石にこれはない。
ジョージからオラリオ内の拠点候補地を教えてもらい、意気揚々と来てみれば無事な建物が一つもない廃墟だった。
探索している途中で見つけた住居跡とかなら私も、どんな人がどんな感じで住んで居たんだろう……とか思いながら感慨にふけることもできるけど、流石に自分が住むとなると話は別。
で、さっきジョージに通信で聞いてみたら、空いている建物付きの土地は流石に無かったらしい。
ジョージも悪いと思ったのか、空間隔離と手伝いの手配をしてくれるそうだ。
後は、いい場所を見つけたらそこの座標を教えて欲しいとの事。
この一帯は特に誰の持ち物でもないそうなので、好きなところを選んでいいって……
私は目ぼしい場所を探しながら、この一帯を歩くことにした。
暫く歩いていると、唯一原型を留めている建物を見つけた。
ここを改修して、住めるようにしようかな?と思い建物を眺めていると声を掛けられた。
「あのー。何か御用ですか?」
声のした方をみるとそこには、耳のない白兎がいた……
違った、白い髪と赤い瞳の少年が困惑した表情でこちらを見ていた。
「こんにちは?」
私もまさか、こんな所で人に合うとは思ってなかったのでびっくりしてしまい、おかしな挨拶をしてしまった。
その少年の話だと、私が眺めていた場所は少年の住居だそうだ。
私は、この辺りに住めそうな場所がないか聞いてみたが、少年も最近ここに来たらしく知らないと返された。
私がどうしたものかと悩んでいると、その少年が一緒に探しましょうか?と声をかけてきた。
流石に当てのない探し物に初対面の人を巻き込めないので、有難い申し出だったけど断った。
しかし、このような場所で当てのないものを一緒に探すと申し出るとか、かなりのお人好しなんだろうなぁ。
お前が言うなって聞こえた気がするけど幻聴かな……
私はその少年と別れ、当てのない旅を続けることにした。
しかし、とても外壁に囲まれた都市とは思えない広さだ。
所々柱のようなものが立っているが辺り一面、倒壊した建物跡しか無かった。
これはもう、一から建物作ったほうがいいかも?と思っているとまたもや声を掛けられた。
「おーい!そこのエルフ君~」
私の見た目は、ここではエルフという種族に見えるんだっけ?アルテミスさんとの会話を思い出して声のした方を見てみると、なんかとても見覚えのある服を着た少女がいた。
あれって確か最初の接触時に作られた服……
まさか、オリジナルの服を着ている人に会えるとは。
うん、やっぱりあれくらい胸ないとあの服はダメだね。
以前店で見かけたときに試着してみたけど、胸の辺りがスカスカなのと心許ない布面積だったから買わなかった。
そんなことを考えていると、その少女は私の近くまで来て私の方をびしっと指さしながら、
「君!見たところ『
と一気に捲し立てられた。
ん?ということはこの少女は神なのかな?
私は、もう一度その少女……神を観察した。
アルテミスさんとはまた違った雰囲気だった。
こちらを指さしながら、私の返事を待っているのだろう……その姿はとても神には見えなかった。
それと、腕を上げているので青い紐が胸を押し上げており、豊かな胸がさらに強調されていた。あの紐って胸を強調するための物なのかな?
私がなかなか返事をしなかったため、腕を震わせながら若干不安そうな顔になっていた。
「ごめんなさい。ファミリアに入っちゃいけないって言われているので……」
私が断ると腕を降ろし、すごく残念そうな顔をしながら落ち込んでしまった。
私は申し訳なく思い、事情を聴くことにした。
なんでも最近ファミリアを立ち上げたのはいいが、なかなか眷属が集まらないらしい。
現在は一人いるだけとの事。
今いる子はとてもいい子で、もう二人だけでいいかな?っと思っていたところに私を見かけて感じるものがあり誘ってみたそうだ。
「ところで、君はこんな何もないところで何をしているのだい?」
私はダンジョン攻略のためにこの地に来たが拠点が欲しくなり、この辺りなら住んでもよいと言われ来てみたものの、いい場所がなくて彷徨っていることを話した。
「『
私を諭すようにそう言い、やはり『
なんだろう、すごくいい人……神だなぁ。
さっきの少年といい、私が事前に聞いてたオラリオ内の神や人とは随分違っていた。
私は自分達の事を話すことにした。
まぁ話しちゃダメって言われてないしね。
その神は、私の話を聞き終わると腕を組み難しい顔をしていた。
やっぱりなかなか信じられないよね。
アルテミスさんも最初は同じようにしてたし……
「わかった、君を信じよう。折角遠い所から来たんだ。僕は君を歓迎しようじゃないか!」
そういうと、じゃぁこの辺りを案内しよう……そう言い私の腕を引っ張りながら案内をしてくれた。
案内といってもこの辺りはほぼ瓦礫しかないので、自分が気に入っている場所とか、ここから見る景色がいいとか、そういう案内を受けていると見覚えのある場所まで来た。
「そして、ここが僕達のホームさ!」
そう言うと見覚えのある建物……あの少年が住んでいると言っていた……を差しながら自慢げに胸を張った。
「案内はここまでだ。何かあれば力になろう。是非頼ってくれたまえ!」
そういうと別れを告げ建物へ入っていった。
私はその後姿を眺めつつ、心の中が温かくなっていくのを感じた。
そして踵を返すと目の前の瓦礫の山を見つめた。
「うん。ここがいいな」
私は、瓦礫の山の座標をジョージへ送った。
僕は、いつもの時間に目を覚ました。
寝ていたソファーから体を起こし、周りを見てみるとベットで神様がすやすやと眠っていた。
僕は、神様を起こさないように準備を始める。
今日からいよいよ、ダンジョンに入るんだ!
僕は期待を胸に準備を終えると、まだ寝ている神様に行ってきますと小声で挨拶をし、外へ出るための階段を上った。
礼拝堂を抜け扉を開け放ち、早朝の新鮮な空気を胸一杯に溜め勢いよく息を吐いた。
そして、ダンジョンに出会いを可愛い女の子達と出会いハーレムを目指すんだ!
と心の中で叫びつつ意気揚々と外へ足を踏み出した。
そして絶叫した。
昨日までは、この教会の前は瓦礫の山だったはずだ。
しかし、今目の前には金属?製の建物が建っていた。
え?
なんで?
僕は、混乱する頭で辺りを見渡していると声を掛けられた。
「昨日ぶりだね?今日からここに引っ越してきたミケだよ!よろしくー」
その声の方を向くと、昨日ホームを覗いていたエルフの少女が笑顔で手を振っていた。
おじいちゃん、ダンジョンに入る前に出会いがあったよ……
次こそは…