ダンジョン18階層
この円柱の形をした広大な階層は、モンスターが発生しない階層「
そして何よりも目を引くのが、ダンジョン内であるにも関わらず緑豊かな土地を有し、それを彩るかの様に点在する水晶柱がこの階層の景色を彩っている。
中層以降を攻略する冒険者たちの一時の休息の場、はたまた物好きな好事家の旅行先として愛されている。
いつしかこの階層は
ただ一つ忘れてはならないのは、ここはダンジョンである。無防備な姿を晒すと、途端にダンジョンの供物へと成り果てる。ここはそういう場所である。
戻ってきました18階層。
今回はこの階層調査のため大人数で来ている。
私達は調査隊に同行していろいろ見て回るつもりだったんだけど……
調査隊の人達は目の色を変えて「俺はここ……私はここ……」と調査場所を先に決めていた。
アキさんと同じ匂いのする人達だった……
で、一か所だけ残った場所があって結局私達は残った場所、リヴィラの街を調査することに。
それと基地の設置場所については、私達がもたらした環境データと事前入手した情報よりある程度当たりを付けたらしい。なのでそっちもお任せすることにした。
この階層にはモンスターの生態等を研究する施設も作るそうだ。そのため少し大きめな基地になるらしい。
ということは、街から離れて作ることにしたのかな?
私達はいつものメンバー──マトイとトラと私──3人でリヴィラの街目指して出発した。
南部の森林地帯を抜けると、目の前には大草原が広がっていた。
その大草原には随所に水晶柱があり、大草原をアクセントとして彩を与えている。
そして階層の中央部辺りに大樹があり、根元に19階層への入り口が存在している。
そのような風光明媚な場所をミケ達は進んでいた。
「うーん?モンスターは発生しないって聞いてたけど、モンスターはいるんだね?」
マトイは天井を見上げ空を飛ぶモンスターらしき姿を眺めていた。
「他の階層から来るんだって。セレーネさんたちがそう言ってたよ」
ミケもマトイに釣られて空を見上げた。
「それじゃ、言葉通りの
「マスター、距離は遠いですが複数のモンスターの反応が在りますのでご注意下さい」
トラがモンスターを探知し注意を促してきた。
「モンスターは迂回しよっか。今日はそういう気分でもないし」
ミケは気分が乗らないとでも言うように溜息を吐きながら、皆に提案した。
「でしたら、北周りで行くのがよろしいでしょう。大樹を経由すればモンスターに遭遇しません」
ミケ達はトラの案内に従い大樹を目指し進路を変更した。
18階層の中央部に位置する場所に、中央樹と呼ばれている大樹が存在している。
そしてその根元には、19階層へ続く穴が冒険を求める冒険者達を誘うかのように口を開けていた。
ミケとマトイは、懐かしい物でも見ている様な表情をし大樹を見つめていた。
「惑星ナベリウスのお気に入りの場所にそっくり」
マトイはそう言い大樹を見上げた。
ミケは言葉にはしてないが、『今』のミケとマトイが最初にあった場所に似ている……と懐かしそうに大樹を見上げるマトイと大樹を見つめていた。
ミケ達はモンスターの気配がないことを確認した後、暫く休息をとることにした。
リヴィラの街
18階層の西側に位置する湖にある大島、その一画に建てられた冒険者の街である。
ギルドの目が届かないこの場所では、地上と比べ相場が非常に高く設定されており、この街で店を経営している冒険者は営利を貪っていた。
しかしながら補給をすることが難しいダンジョン内では、訪れる冒険者達にとってまともに補給できる場所であり休息もできる。
また、戦利品などもここで処分できるため高い料金には目をつむりつつ、冒険者達の前線基地として利用されている。
武器防具を始め、食料や各種道具類など冒険者にとって必須なものや、酒等の嗜好品、地上では手に入らないご禁制の品々も扱われている。
そしてなによりも、リヴィラの街はよく壊滅する。
モンスターの大量発生等により、過去何度も文字通り街が壊滅していた。
しかし壊滅しても、この街を愛する──お金を愛する──住人達により、何度も復興されるというバイタリティー溢れる街である。
やってきましたリヴィラの街。
丈夫そうな木製の外壁に囲まれているけど、所々修復したような箇所があったり、建物も天幕や木の小屋と言った簡素な建物が多い。
なんでも稀に発生するモンスターによる襲撃で、この街は何度も壊されては復興するということを繰り返しているらしい。
この地に住む人たちの力強さを感じるよ。
そして何よりも目を引くのが、街の至る所にある水晶。
その水晶が街の中を彩りとっても綺麗。
私達は南側にある門から街に入り、丁度中央付近にある広間まで来ていた。
「この水晶の柱、双子みたいだね」
「えっと、そのものすばり双子水晶だって」
私はセリーネから以前貰った「リヴィラの街おすすめポイント」と書かれたメモを見ながら答えた。
「うーん。なんというか調査というよりは、観光に来た気分?いいのかなぁ?」
マトイは双子水晶を見ながら苦笑いをしていた。
「まぁ観光も調査の一環だよ!それに、報告をちゃんとすればいいし」
私はそう力説した。
私の方は、観光する気満々である。
「そうだね」
マトイは観光気分に切り替えたようだ。
トラの方は真面目に街の様子や行き交う冒険者達、売り物などのチェックをしていた。
私とマトイも観光しつつそのあたりはある程度チェックしているので、後で情報をまとめて提出すれば立派な報告になるだろう。
次に私達が向かったのは北西にある高台。
その道中は、水晶と岩壁に囲まれた細い道になっている。道を抜けると、視界が一気に広がり手すりの付いた展望台のようなところに出た。
私は高台から見える景色を見渡した。
「ここなら街を一望できるね」
マトイは手すりに掴まり、眼下の街の様子を見ている。
「こうしてみると街の中に水晶があるんじゃなくて、水晶の林の中に街があるみたい」
私もマトイの傍に行き、同じく街の様子を眺めた。
「オラリオの街とはまた違った感じがして良いね。トラはどう思う?」
私はトラが居た場所を見たけど、別の冒険者と何やら話し込んでいた。
何かあったのかな?そう思いトラの方へ行こうとすると、丁度話が終わったようでトラの方から近付いてきた。
「トラ、何かあったの?」
「いえ、街の中で聞いた噂話の確認をしておりました」
トラによると、何日か前に大規模な集団が19階へ向けて移動していたとの話を聞いたそうで、そのことについて確認していたらしい。
「それで何かわかったの?」
「ロキ・ファミリアというオラリオでも屈指のファミリアが、遠征をしているそうです」
「やっぱり、下の階層は大変なんだ?」
「モンスターも強力になりますが、どちらかというと帰りのことが大きいようです」
私達は1日行けるところまで行ってテレパイプで戻ってを繰り返していけばいいけど、普通は進んだ分戻らないといけない。
そのため下層を攻略する場合は、大規模な遠征という形で行われるそうだ。
それでその様な遠征をよく行っているのが、ロキ・ファミリア等の規模が大きく、優秀な人たちが揃っているファミリアだそうだ。
「それじゃ、わたし達も人数を揃えて進んだほうがいいのかな?」
いつの間にかマトイも近くに来てそう零した。
「その辺はジョージと相談かなぁ?」
アークスの惑星「オラリオ」の調査は、オメガの時みたいに私が中心になっている訳ではない。そのためアークスとして、どの様に調査を行うかはジョージが決定している。
今回得た情報を元にどの様に進めるかを確認する必要がありそうだ。
「まぁ今考えてもしょうがないね。私は行けるところまで行ってって考えてたけど、後続の人達の事もあるしね。それよりも今はこの街を堪能しよう!」
そう言って私は次の場所へ2人を誘った。
次の場所は一番のお勧めである北側だ。
北の街路は群晶街路《クラスターストリート》と呼ばれており、水晶壁に囲まれた通路となっている。
そしてこの道は唯一整備されている。きっと目玉の場所であり自慢の通りなのだろう。
「すごいねこの壁、まるで鏡みたい」
マトイは水晶の壁に映る自分の姿をみて、楽しそうにしている。
「うん。この街で一番のお勧めポイントだって」
私はマトイと同じようにしている他の冒険者達を眺めた後、マトイと同じように壁に映る自分の姿を見つめた。
私達は暫く群晶街路《クラスターストリート》を堪能した後、中央広場に戻ってきた。
街の調査(観光)としては、西側と東側が残っているけど展望台である程度確認出来ている。
そのため、他の班の状況を確認することにした。
……皆さんもとても楽しそうに調査を行ているみたい。
それから基地の設置場所は、北東に決めたらしい。
人があまり来ておらず、北側にモンスターが群れている地帯があるため、研究にもってこいの場所だそうだ。
私達も一度様子を見に行こうと思っていると、周りが薄暗くなってきた。そろそろ夜の時間らしい。
他の班の人達は一度帰還して、明るくなったら再開するそうだ。
私達は泊りの用意はしていたけど、結局他の所の調査はお任せになっちゃったからなぁ。
「どうしようか?」
「泊るにしても、街では無理だよね?わたし達お金そんなに持ってないし……」
マトイの言うように、この世界のお金をあまり持っていない。
使う機会が殆どないのと、かさばるためである。
「どちらにしても、街の外に出よっか」
私達は街がある島の外まで移動する事にした。
他の階層と違って、薄暗く青い色の水晶がぼんやり光っている以外の光源はない。
そのため私達は、基地を設営しているポイントまでの移動を諦め帰還することにした。
私がテレパイプの準備をしていると、マトイから声が掛けられた。
「ミケ見て!」
マトイは、天井を指さしながら興奮しているようだ。
マトイが指さす方を持て私も目を見開いた。
「ここダンジョンだよね?」
天井には星空が広がっていた。
トラが近くにある青い水晶を指さしながら「この水晶の光が、星のように見えている様です」と答えた。
「すごく幻想的な光景だね……よし、今日はここに天幕張って星空を堪能しよう!」
私はテレパイプを片付けて天幕の準備を始める。マトイも賛成なのか、私の手伝いを買って出た。トラは無言ではあるが賛成なようで、準備の手伝いをしてくれている。
天幕を張り終えた私達は、天井に煌めく水晶の星を眺めながら夜を過ごすことにした。
結局、リヴィラの街の要所観光になりました。