オラクル船団がオラリオにやってきた   作:縁側

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大変遅くなりましたが十四話目です。


十四話

ダンジョン上層

1階層から12階層までの天然洞窟を模した階層であり、駆け出し冒険者達が、最初に訪れ経験を積む階層である。

しかしながら、オラリオに住む冒険者の大多数が、この階層から中々抜け出せない。

長い時間を掛け、様々な経験を積むことにより、成長を行う必要があるからだ。

そのため、碌な経験を積めず、時間ばかりが過ぎ、この階層で冒険者としての一生を終える者も数多く存在している。

それに、こういう言葉もある。

 

『冒険者は冒険をしてはいけない』

 

とあるギルド職員の言葉ではあるが、真実を突いている。

手っ取り早く、冒険者が冒険を行うには、自分より強いモンスターの相手をする…つまりは、命を掛ける事である。

血気盛んな駆け出し冒険者達が、功を焦りその命を燃え尽くしてしまうか、冒険者生命を絶ってしまうか…それらを事前に防ぐための戒めの言葉である。しかしながら、その言葉に耳を傾けず、多くの冒険者達がその命を燃やし尽くしている。

この様に、ダンジョン上層とは、大多数の冒険者達の活躍の場であり、燻る場所でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここ数日、午前は街の探索、午後はダンジョン1-5階層の探索を行っている。

街の探索の方は服屋を周ったり、繁華街にも出かけてみた。

服については、どんな服があるか気になったので、覗くだけだったけど、和服っぽい服を見つけた。

聞いてみたら、極東ってところの服らしい。やっぱり、地球と同じ文化の並行世界なのかも?

繁華街については、残念ながら朝から空いているところは殆ど無かった。やっぱりこういう所は、夜に来るべきだね。

 

 

 

それからダンジョン探索の方だけど、かなり難航してる。

最初に来た時は、偶々だったのか、そこまで多くの冒険者は見かけなかったけど、今回は結構な頻度で、他の冒険者を見かけた。

始めは、駆け出しさんが多いのかな?って思ってたけど、装備やらを見るとそういう訳でもないみたい。

そのため上層の特に浅い所は、モンスターの奪い合いになっている様だった。

私達もモンスターを探しているんだけど、中々見つけられずにいた。

これはもう戦闘データを取るのは諦めて、姿だけでもって思って、戦闘の気配を感じたら見に行っているんだけど、結局他の冒険者に倒された後にしか遭遇できなかった。

 

「ここまで出会えないって、そんなことあるのかなぁ?」

 

「モンスターの反応を見る限りでは、そもそも数が少ないというのもあるようです。」

 

「湧いた瞬間に、他の冒険者さん達に倒されてるってことなのかな?」

 

私達は、揃って首を傾げながら、考え込んでいると、壁から破砕音が聞こえてきた。

 

「マトイ!トラ!やっと会えるかも!」

 

私達は、音のする壁の方へ武器を構え、モンスターが出てくるのを見守った。

出てきたモンスターは、小人のような姿をしたモンスターだった。

 

「資料にある、ゴブリンのようです。特徴が一致します。」

 

トラが、モンスターの名前を教えてくれた。これで戦闘データも取れそうだね。

私はようやくデータ取りできると、嬉々としてゴブリンに向かおうとしたら、私達の姿を見たゴブリンは、方向転換すると、一目散にダンジョンの奥へと走って行った…

 

「はい?」

 

私は突然の出来事に、呆然としたまま、ゴブリンの後姿を見送っていた。

 

「逃げちゃった…のかなぁ?」

 

「先ほどのゴブリンですが、私の探知範囲から離れてしまいました。」

 

マトイとトラも私と同じく、ゴブリンの後ろ姿を見送りながら呟いた。

 

「まぁこういう事もあるのかな?」

 

私達は、気を取り直して探索を再開した。

 

 

 

その後、何度かゴブリンに遭遇できるようにはなったけど、結局私達を見ると一目散に逃げて行った…

 

「今まで殆ど出会えなかったのって、わたし達を見て逃げてたからなのかな?」

 

マトイの呟きに、私とトラは何とも言えない表情をしてお互いの顔を見合わせた。

 

「とりあえず、ゴブリンの姿は見れたから…後は何が居たっけ?」

 

「1-5階層のモンスターは、先ほどのゴブリン、後はコボルトとダンジョン・リザードとフロッグ・シューターです。」

 

「…先は長そうだね。」

 

私達は、重い足取りで先に進む事にした。

 

 

 

暫く探索をしていると、見覚えのある少年が戦闘をしていた。

その少年…ベルくんは、コボルトと思わしきモンスターと対峙していた。

ベルくんは、自身の俊敏性を武器にしている様で、モンスターの攻撃を大きく避けながらモンスターに、少しずつダメージを与えていた。

暫くそうやって戦っている内に、モンスターの動きが鈍くなってきた。その隙を付いて、ベルくんは止めを刺し、モンスターを霧散させた。

モンスターを倒したベルくんは、額の汗を拭いつつ、周りを警戒するように見渡し、私達を見つけると驚いた様な顔をした。

 

「み、ミケさん!?どうしてダンジョンに?危ないですよ!」

 

ベルくんは、私達に近づいてくると、私達に怪我がないかを確認しつつ、心配そうな顔をしていた。

 

「あれ?ヘスティア様から聞いてない?私達は、ダンジョンの探索をしにオラリオに来たんだよ。」

 

「えっ?ということは何処かのファミリアの人ですか?」

 

ベルくんは、そう言えば、神様の事知ってたし…と呟きながら首を捻っていた。

私は簡単に、アークスという遠くから来た集団の一員であること、ギルドやファミリアには所属していないことをベルくんに説明した。

 

「まるで、古代に居た『神の恩恵(ファルナ)』を受けずに、戦っていた人達みたいです…」

 

ベルくんは、半信半疑な様子で私の話を聞いていた。うーん、この世界の人達的には、『神の恩恵(ファルナ)』無しで戦えるのは、不思議なのかな?

その様な話をしていると、壁から破砕音が聞こえてきた。

 

「モンスター!?」

 

ベルくんは素早く、破砕音のした方に向かって身構え、そして顔を引き攣らせた。

 

「嘘ぅ!?」

 

壁からは、6匹のコボルトが出現した。そのコボルトは、私達を見て一瞬怯むも、ベルくんを見ると、私達だけの時とは違い、ベルくんに向けて威嚇行動を取り出した。

 

ベルくんは、顔を引き攣らせつつ私達の方を一瞥すると…女の子は守らなくちゃ…と呟き、顔を引き締めコボルト達に対峙した。

 

うん、女の子扱いされたのは初めてかも…私は、若干震えているベルくんを優しく脇に押し退けると、武器を取り出しコボルト達へ向けて一閃した。

私の攻撃を受けたコボルト達は、一撃で霞となって消え魔石に姿を変えた。

 

「ええっ!?い、一撃っ!?」

 

ベルくんは、驚愕した様子で私と魔石になったモンスターを交互に見ていた。

私は、先ほどのモンスターの行動を思い出し、ベルくんにお願いをすることにした。

 

「ベルくん、もし良ければ、少しの間私達と一緒にダンジョンに入ってくれないかな?私達は、この辺りの階層のモンスターの調査をしているんだけど、私達だけだとこの辺りのモンスターみんな逃げちゃうんだよ…」

 

「えっ!?、えっとそのぅ…」

 

「もちろん、ベルくんの成長の邪魔はしないよ!さっきみたいに、ベルくんの手に負えそうにない場合だけ、手を貸すから!マトイ達もいいよね?」

 

「ミケがいいならいいよ。」「マスターが宜しければ。」

 

「で、どうかな?」

 

ベルくんは、しどろもどろになりながらも、僕でお役に立てるなら…と了承してくれた。

 

「それじゃ今日はもう遅い時間みたいだから、明日の正午に待ち合わせでもいいかな?ベルくんには手間をかけるけど…」

 

時間を確認すると、結構遅い時間になっていたので、そう提案した。ベルくんは少し言い難そうにした後、意を決した様に私に話し掛けた。

 

「あ、あのぅ、一緒に行くのは構わないのですが、その代わりと言っては何ですが…僕に戦い方を教えて下さい!」

 

ベルくんによれば、今までは独学で戦っていたそうだ。他のファミリアだと先輩の人がいろいろ教えてくれるらしいけど、ベルくんのファミリアは一人だけなのでそうもいかず、手探りで戦いをしていたそうだ。

 

「うーん、私はあまりそういうのは向かないんだけど、戦い方のアドバイスならできるかも?」

 

「それでもいいです!お願いします!」

 

ベルくんはそう言って、深々と頭を下げた。

 

 

 

 

 

それから私達は、ベルくんと一緒にダンジョンを後にした。ベルくんは、ギルドに向かうそうなので、バベルの広場で別れた後、拠点へ戻った。

 

 

 

「とりあえず、ダンジョン上層のモンスター調査は何とかなりそうだね。」

 

私は湯船につかりつつ、ベルくんと知り合いて良かった…と腕を組みうんうんと感慨に耽っていた。

 

「でも、ベルくんに戦い方を教えるのはどうするの?」

 

マトイは体を洗いながら、セレーネさん達みたいに、ならなければいいけど?と心配していた。

セレーネさん達は、私と模擬戦してラッピーまみれになったっけ…

 

「うん、だから、私が直接模擬戦とかしても糧にならないかもだから、モンスターとの戦闘を見せてもらって、こう動けばいいよ、とかのアドバイスをしようと思ってる。」

 

「ベル少年は、独学とはいえ基本的な動きは出来ている様でしたので、それだけでもだいぶ変わると思います。」

 

トラは、マトイと並び体を洗いつつそう感想を述べた。

 

私は、ベルくんの戦い方を思い出しながらどういうアドバイスがいいかな?と考えながら湯船に深く浸かった。

 

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