ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているのだろうか?
僕は間違っていなかった…と思う。
ミケさんも、出会いは良いものだと言っていた。
ミケさんと最初に出会ったのは、ホームにしている教会の前だった。僕のファミリアのホームがある場所は、お世辞にも良い場所ではない。
教会を見ながら、どう改修しようか…等と不穏なことを呟いていたので、思わず声を掛けた。
ミケさんは、最近オラリオに来て、住めそうな場所を探していたそうだ。
それで、この辺りで原型を留めている教会に、目を付けたらしい。
僕は、ここに住んでいることを伝えると、他に住めそうな場所がないか、尋ねてきた。
僕もちょっと前にオラリオに来たばかりだったので、分からない事を伝えると凄くガッカリしていた。
僕は分からないなりに、手伝う事を伝えたけど、当てのない探し物に、初めて会った人は巻き込めないよ…と言って遠慮されてしまった。僕は後ろ髪を引かれる思いで、ミケさんの後姿を見届けた後、ホームへ帰った。
その翌日に、目の前の瓦礫を一晩で大きな屋敷に変えてたのには、びっくりしたけど…
街中でミケさんを見かけた時は、僕から声を掛けたりもした。
その時にマトイさんって女性にも出会えた。ほんわかとした女性で、話をすると凄く癒される感じがした。
なんだか、ダンジョンよりも街中での出会いが多い気がする…
それから暫くダンジョンにソロで潜り、モンスターとの戦闘に悪戦苦闘していると、今度はダンジョン内でミケさん達に出会った。そこで初めて、ダンジョンでの出会いとして、トラさんに出会えた。よくよく見ると、ミケさんにそっくりだった。
トラさんは、無口な方みたいで、余り話は出来ていないけど…
ミケさん達は、冒険者では無いと思ってたから、ダンジョンで合った時はびっくりしたなぁ。ミケさん達は、アークスというオラリオから遥か遠く離れた所にある集団の一員だそうで、ダンジョンには、冒険に来たそうだ。しかも、
僕は、そんな古代の人じゃあるまいしと、半信半疑で見てたけど、その後の出来事で認識を改めさせられた。
それからミケさんは、僕にダンジョンに暫く一緒に入って欲しいと、頼み事をしてきた。なんでも、ミケさん達だけだと、上層のモンスターが寄り付かないそうで、モンスターの生息調査と言うのが出来ないらしい。
それって、僕がモンスターをおびき寄せる餌になるってことじゃぁ…
でも僕は、ミケさん達みたいな、強い人達と一緒に居る事で積める経験が得られると考え、戦い方を教えてくれる事と引き換えに了承した。残念ながら、戦い方については、教えて貰えなかったけど、戦闘アドバイスや心構え等を実践的に教えて貰えたので、僕の血肉になっている。心構えとかは、エイナさんから聞いてたけど、実践を交えると全然違った。
いかに僕が甘く考えていたかを思い知らされた…
短い間だったけど、ミケさん達とパーティを組めたことは、冒険者としての僕のレベルアップに繋がったと思う。
実際、ステータスも結構伸びたし。
パーティ解散後、ソロでダンジョンに潜る生活に戻った。
ファミリアのメンバーは、相変わらず増えていないけど、ダンジョンでの出会いで、仲間を得るという事もありかな?と思い始めている。でもやっぱり、魅力的な女性との出会いも、期待してたりして…
ミケさんも魅力的だけど、ミケさんはどちらかと言うと、近所の世話焼きなお姉さんって感じかな?実際、お隣に住んでいて僕よりも年上だし、背は神様より低いけど…
ソロに戻って改めて思ったけど、僕が戦いやすいように色々と気を使ってくれていたし、装備品についても、いいお店を紹介してくれた。
まさかバベルにあんなお店があるなんて…
今僕は、5階層に来ている。
ミケさん達が居た時、何度か来ていたのでソロでも大丈夫かな?と思い来てみたけど、今日はモンスターが少ないようで、数が余り居なかった。そこで少し調子に乗ってしまい、奥に向かって進んでいた。
ミケさんが居たら怒られるなぁ…
そして、僕は運命の出会いってのを経験してしまった。
『ミノタウロス』との出会いという…
そして今、僕は絶賛追いかけっこの最中だ。勿論僕が追いかけられている。
ミノタウロスは、雄たけびを上げながら僕を追いかけてくる。僕は、大声を出して周りに警告をしつつ逃げまわってる。
ミケさんに言われたっけ…敵わない敵にあったらとにかく逃げること、やみくもに逃げずに出口へ向かう事、そして周りに助けを求める事って…
僕の声が聞こえているか分からないけど、逃げている方向には、他の冒険者は居ない。僕は、最悪の事態を思い浮かべつつ、必死に助けを呼ぶ声を上げて、逃げまわった。
その時、後方から激しい風切り音が聞こえ、その後ミノタウロスの雄たけびが悲鳴に変わった。僕は、立ち止まり恐る恐る後ろを振り返ると、ミノタウロスが血飛沫を吹き出しながら僕のすぐ後ろに居た。
どうやらあと少し遅かったら、僕が血飛沫を上げていた状況のようだ。しかし立ち止まったのが、失敗だった。
振り向いた瞬間、その血飛沫を僕は頭からもろに被ってしまった。
そして僕は、ダンジョンで心を奪われるほどの衝撃的過ぎる出会いをしてしまった…
ダンジョン上層の調査もひと段落し、私はのんびりと街の散策をする事にした。
マトイとトラも各々やりたいことがあるそうなので、今日は別行動だ。
「とはいっても、目ぼしい所は一通り行ったからどこ行こうかな?」
私はひとりごちつつ、バベルに向かって歩き出した。バベルまで行って、そこから適当に何処に行くか考えれば良いかな?通りの露店を眺めつつ、のんびりとバベルへ向かう事にする。
時間的には、お昼を過ぎた辺りかな?
バベルの広間に差し掛かった時、バベルの中から赤い物体が飛び出してきた。
はい?
私は思わず2度見した。
真っ赤に染まっているが、ベルくんだった。ただならぬ状態だったので、ベルくんを呼び止めて話を聞いてみる事にした。
「ベルくん?どうしたの?」
ベルくんは私の声に気が付いて、私の方へ近づいてきた。
「ミケさん!アイズ・ヴァレンシュタインさんですよ!!」
ベルくんは物凄く興奮した口調で、そう捲し立てた。
言ってる意味が分からないんだけど…
とりあえず、ベルくんの様子を見た限りだと、赤いのはモンスターの返り血かな?ベルくんから生臭さが漂ってきている。モンスターの戦闘中にでも浴びたのだろうか?でもベルくんのスタイルだと返り血は浴びにくいと思うけど?それと見た限りでは怪我とかもしていない。
私は困惑しつつも、何があったかベルくんに聞いてみた。
なんでも、5階層を探索中にミノタウロスと遭遇したらしい。それで、助けを求めて逃げ回っている最中に、ベルくんの言っていたアイズ・ヴァレンシュタインという人に助けられたそうだ。
5階層にミノタウロス?5階層では出なかったと思うけど…
「それで、ミケさんはアイズ・ヴァレンシュタインさんの事知ってますか?」
ベルくんは、妙に目をキラキラさせて私にそう聞いてきたが、生憎とベルくん以外の冒険者だと、アルテミス・ファミリアの人達しか知らない。
私が知らない事を伝えると、ベルくんはびっくりした顔になった。
「ええっ?知らないんですか?ロキ・ファミリアの第1級冒険者、アイズ・ヴァレンシュタインさんですよ!?」
幾つか気になるワードがあったけど、私はベルくんに、ミノタウロスが何故5階層に居たのかを尋ねてみた。
「その人の事は兎も角、なんで5階層にミノタウロスが居たの?あれって確か中層のモンスターだったよね?」
私がそう言うとベルくんも、そう言えば…と言いつつ首を傾げた。ベルくんも分からないか…
中層のモンスターが上層に来るという事は、資料にもなかった。大体生息範囲は決まっている。ダンジョン内で何か起きたのかな?
私は、ダンジョン内の事が気になったので、予定を変更してダンジョンに行く事にした。
「私も気になるから、ダンジョンに行ってみるよ。ベルくんはこの事をギルドに報告したほうが良いんじゃない?ギルドって、確かダンジョンの管理をしてるんでしょ?」
ベルくんは、そうでした!と答えると、ギルドへ向けて走り出した。
私は慌てて、ベルくんの背中に声を掛けた。
「ベルくん!ギルドに行く前に、その血は洗い流した方が良いよ!」
私がそう声を掛けると、ベルくんは方向転換して、バベルへ向かっていった。バベルのギルド施設にあるシャワーを使うのだろう。
私もベルくんの後を追う形で、バベルへ向かった。
バベルの地階に行くと、数多くの冒険者が集まって話をしていた。
話に聞き耳を立てると、上層に居るはずのないミノタウロスが、5階層で見つかり、慌てて逃げて来たらしい。その際、ミノタウロスに追われていた冒険者が、周りに警告を発しながら逃げていたそうなので、事なきを得た様だ。
きっとベルくんの事だね。
私は、騒然としている地階を抜け、ダンジョンに向け歩みを進めた。
ダンジョンに入ると、冒険者は無論、モンスターの姿も見えなかった。そのため、すんなりとベルくんが、ミノタウロスと遭遇した5階層まで来れた。まぁモンスターに関しては、逃げちゃうからなぁ…
今の所、ミノタウロスの姿は見掛けない。
ベルくんが言ってた冒険者に、もう倒されちゃったかな?
私は更に、下層へ向かって歩みを進めた。
うーん、上層階を一通り見て周ったけど、ミノタウロスの姿は無かった。
やっぱりもう倒されちゃったのかな?
私はそう思い、一度戻ろうかと踵を返すと、中層階の方から人の気配がしてきた。
結構な数の団体さんだった。ミノタウロスの事について何か知らないかと思い、思い切ってその団体さんに聞いてみることにした。
「あのーすみません。上層でミノタウロスが出たって聞いて、来てみたんですけど何か知りませんか?」
私がそう声を掛けると、団体の中から槍を持った少年が出てきた。
「すまない、そのミノタウロスは、我々が取り逃がしたんだ。全て倒したので安心して欲しい」
その少年はそう言ってきた。
よかった、既に倒されていたんだね。それとモンスターって逃げ出すと、階層跨ぐのかぁ…私も注意しないとね。
「そうですか、では安心ですね。それでは失礼します」
私はそう言い、彼らが来た方へ向かって進んだ。ここからだと、18階層に行った方が帰るの早いしね。
「リヴェリア、さっきのエルフ知ってるかい?」
先ほど、ミケと話をしていた少年…
「知らぬ。しかし…」
リヴェリアはそう言い淀み、考え込んでしまった。
「とんでもない化け物じゃったなぁ。他の連中なぞ委縮して、一言も発せなかった様だぞ?」
そう言いながら体格の良いドワーフ…ガレス・ランドロックが口髭を撫でながら、件のエルフが去っていた方を見ていた。
「これは、とんでもない土産話が出来たね」
フィンはそう言い、動きが止まっている団員に向かって一喝し、帰還する旨を伝えた。
エイナさんの役割を奪ってる気がしないでもない…