「ミケさーん!やっと突破できました~~!」
ベルくんの嬉しそうな声が、ダンジョン内に響いていた。
ベルくん用に作成した
最初のバージョンは1階層から6階層までの場所で、行き止まりの通路に空間隔離を掛け、テレポーターで移動するコースを作成した。
そこで湧いているモンスターを倒しつつ最終エリアで6階層、ウォーシャドウが湧いているエリアへ進むという至って単純なコースにしていた。
しかし、ベルくんのステータスだとやはりというか、バージョン1ではモンスターが弱すぎてベルくんの相手にならなかった。
そのため、今のバージョン2では5階層から7階層でコースを作成した。
モンスターの種類も多少増え、しかも複合で現れるためどの敵から倒せば良いかという戦略性も要求される。中には素早く倒さないと仲間を呼ぶモンスターや、軽微だけど毒持ちも居る。
バージョン2からは、流石のベルくんも苦戦し突破できず悔し涙を流してた。
しかしベルくんって負けず嫌いというか、忍耐力があるというか、何度もチャレンジしていた。
そのお陰か、それともモンスターに慣れてきたのか、今回ようやく突破出来た。
「おめでとう!あとは、如何にタイムを縮めるかだね。それと武器の方はどう?そろそろ限界が近いんじゃない?」
ベルくんはナイフを好んで使用している。
しかしナイフは、硬い敵とまともに戦うような武器ではない。そのため今回のコースにいる仲間を呼ぶモンスター──キラーアント等の硬い甲殻を持ったモンスターには相性が悪いため、ナイフ自体に負担が掛かっていた。
ベルくんは、自分の武器を眺めつつため息をついた。
「確かにボロボロですね。でも今僕が買える装備だとこれが限界で……」
武器は使い慣れたのが一番だけど、この階層だと今のベルくんが買える武器では強度的にも威力的にも不足している。もう少し上のランクの武器が必要だ。
そういえばヘスティアが昨日私のドレスを借りに来たので、そろそろベルくんの武器が更新されるかな?ベルくんには黙っておいて欲しいとヘスティアには頼まれている。サプライズプレゼントだそうだ。
そのため、当たり障りのない返事をしておく。
「とりあえずは、お金貯めて上のランクの武器買うしかないかなぁ?後その武器もちゃんとメンテしとかないと壊れるよ?」
ベルくんは再度ため息をつきつつ、ですよね~~と零していた。
武器はある意味消耗品。アークスの武器もフォトンで強化しているとはいえ限界が来れば呆気なく壊れる。良く壊している筆頭はマリアさんだけど……
そのため細目なメンテナンスは必須。ベルくんの武器もメンテナンスが必要だ。
「今日はもう上がろうか?武器が壊れたら困るしね」
そう言って私は今日の訓練の終了を告げた。
装備のメンテナンスに行くベルくんと別れ、私は拠点へ戻った。
今回ベルくん用に用意した
元々は、コース予定の場所を私とトラで封鎖して、マトイにベルくんの付き添いを頼みベルくんの安全を確保しつつ廻そうとおもってたんだけど、どこからか私が
後で聞いたけど、ジョージも一枚噛んでいた。
私はそうでもないんだけど、他のアークスの人達
それからはあれよあれよという間に、空間隔離申請やテレポーターの手配、バイタル低下による転送手配等の安全措置が用意されていた。そのお陰で
ただ、悪乗りしてきたアークス達は凶悪なトラップやギミックを凝りだしたので、流石にそれは遠慮しておいた。
でもその案は、アークス用の
近いうちに、走破演習:オラリオが出来る事だろう……
ベルくんが中層迄行けるようになったら、中層のコースをアルテミス・ファミリアの人達に開放するのも良いかなと思っている。
彼女たちも強くなりたい一心で訓練してるしね。
アルテミス・ファミリアの所には現在、戦闘部の教育部隊が来ている。
今は、アークスの戦術などを学んでいるそうだ。
アルテミス・ファミリアは、元々アンタレスみたいな凶悪モンスターを監視する任務を行ている。そのため、対峙した時のために個人の強さよりも集団としての強さが求められるそうだ。
そういう意味ではアークスも集団戦闘を得意としているため、学ぶことが多い。
オラリオの冒険者は、集団というより個に赴きを置いているそうで、集団戦闘はあまり得意ではないとの事。
アルテミスさんも一緒になって学んでいるそうで、大変助かっていると通信機でお礼を貰った。
個々の強さは教導隊で面倒を見るそうだけど、教導隊は今忙しいらしくオラリオにはまだ来れないそうだ。なんでも新型の武器開発を行っているそうで、そのテストに駆り出されているらしい。
そのため、当分は私が定期的に模擬戦を行い鍛えておいて欲しいとの事。
私がやってもラッピーが増えるだけなんだけどなぁ……
翌日もベルくんはバージョン2で訓練を行っている。
「よっ、と!」
ベルくんは、掛け声と共にコース最後のモンスターを倒した。
モンスターを倒した後も残身しつつ周囲に気を配っている。
「ベルくん、おつかれ。終わりだよ」
私がそう告げると、ほっと息を吐きつつ武器を収めた。
「う~~ん。タイムはどうでした?」
ベルくんは、今回の周回での自分の動きに納得出来てなさそうな顔で尋ねてきた。
「うん。ベルくんの予想通りあんまり変わらないかな。キラーアント地帯が今のベルくんの鬼門だねぇ」
あれから安定してコースの走破は出来る様になったけど、タイムは伸び悩んでいた。やはり硬いモンスターで時間が掛かるため、現状ではこれ以上は厳しい。
ベルくんは、左手で自分の武器を持ち右手で指折り数えた後、ガックリと首を下げた。
「やっぱり武器ですね~。まだまだ稼がないと良い武器は遠いです……」
ベルくんは目当ての武器でもあるのか、全然たりないや~とぼやいていた。
「そうだね。ベルくんの武器が更新出来たらまたチャレンジしてみると良いよ。それまでは金策頑張って!」
ドレスを貸す時に3日程で武器を持ってくるとヘスティアが言っていたので、明日以降武器が更新される。どんな武器になるか分からないけど、きっと喜んで使うだろう。
私はベルくんにそう伝え、訓練の終了を告げた。
ベルくんとの別れ際、丁度明日は
ベルくんは
ヘスティアは用事で留守にしているそうなので、一人で周ってみますと言っていた。
懸想している相手でも誘えば良いのにね……
「ミケおかえり。明日はどうするの?」
私が拠点に帰ると、マトイが出迎えると同時に明日の予定を聞いてきた。
ベルくんのステータスは現在更新されていない。ヘスティアが武器の作成依頼で留守にしているためだ。
ステータスと武器を更新したらきっとベルくんは余裕で今のバージョンを攻略しちゃいそう。
そのためにも、新しいコースの設定は必要になる。
「明後日以降ダンジョン調査に戻るから、それまでに次のコース考えておかないと……だから明日は拠点に籠ってコース作成を行うつもり」
私がそう言うとマトイは、それならばとダンジョン調査の準備をトラと共に進めてくれるそうだ。
私はマトイだけでも
「ミケが頑張っているのに私だけ休めないよ?」
マトイは首を振りつつそう言った。こういう時マトイは梃子でも動かない。
そのため私は素直に準備のお願いをすることにした。
日が明けて翌日。
私は上層
10階層からは確か霧が発生していた。視界を奪う天然のギミックとなるのでそういう場所を含みつつコースになりそうな場所を選択していく。
モンスターも人より大きなモンスターが出てくる。きっとベル君も苦戦するだろう…………苦戦するよね?
上層にはたしかボス的なモンスターが居たような?確かインファイトドラゴンって言ってたっけ。
資料を取り出しで確認してみたけど絶対数が少ないようで、なかなか会えないらしい。
私も会ってなかったっけ?コースの下見ついでに探してみようかな?
他はハードアーマーというガロンコ見たいなモンスターもいる。
終盤にこの辺りのモンスターを混ぜて最後にシルバーバックがいる地帯を最終エリアに設定っと。
運が良ければ、インファイトドラゴンと出会えるって感じでコースを纏めていった。
それから私はダンジョンに籠るから、付きっ切りでベルくんに付き合えなくなる。そのため
しかし、予想以上にベルくんの成長が早い。
戦い方は特に誰に教えて貰ったとかは無いそうだ。元々センスが良いのだろう。
失敗しても、そこから自分で学んでいけている。
ホント凄いね……自身の努力もそうだけど、これもあのスキルのお陰なのかな?
コース設置の手配を行い終え、一息つくためにテラスへ向かう。
外は夕闇が迫っていた。
今日は一日中自分の部屋に籠ってたなぁ。
私はテラスで伸びをしつつ眼下に広がる廃墟を眺めていた。
外の景色を眺めているとジョージから通信が来た。
なんでも
騒動の際、アークスも協力してモンスターの討伐を行ったそうだ。
主催であるガネーシャ・ファミリアの人に感謝されたと喜んでいた。
アークスとしても良い切っ掛けがあれば、介入して面識を得て交流を深めていくとの事。
いい方向で交流を持てれば、仲良くなれるしね。
それと討伐時、資料に無い植物型モンスターも居たらしい。討伐時に共闘していたファミリアの人──ロキ・ファミリアらしい──も新種と言っていたそうだ。
ダンジョン調査の際、そのモンスターにつていも調べて欲しいとジョージからも依頼された。
有名どころのファミリアの人も知らないって、ダンジョンはやはり未知の領域なんだね。
私は明日からのダンジョン調査を楽しみにしつつ、夕闇に沈むオラリオを眺めていた。
モンスターフィリアについては主人公はスルーになりましたが、他のアークスが活躍する形になりました。