私達は人通りの多い大通りを通り、ギルドの建物の前までたどり着いた。
ギルドは、白い柱が特徴的な作りをしている。
こういう建物、地球の資料で見たことあるなぁ……と資料に書かれていた事を思い出しながらギルドを眺めていた。
私がギルド前で立ち止まってなかなか動かないのを見かねたのか、マトイが私の背中を押しながら早く中に入ろうと促してきた。
私は背中を押されながら、他の人は自分の意志でギルドの中へ進んだ。
ギルドの中は訪れている冒険者が少ないようで、複数ある受付は一か所しか開いていない。
奥の執務スペースでは、近くの同僚と談笑している人達、机に突っ伏している人、大量の書類に涙目になりながら立ち向かっている人等が居た。
私は先ほどの人達が居ないか辺りを見渡したが、見た限りでは居ないようだ。
私達が受付の方へ向かっていると、受付の人がアルテミスさんを目に留めると、慌てたように受付から出て来てアルテミスさんの前でお辞儀をした。
「アルテミス様、お待ちしておりました。ウラノス様からアルテミス様が来られたらお通しするようにと承っております」
そう言うと、奥にある扉を開け案内しよとしたが、アルテミスさんがそれを引き留め、私とマトイの方を向きこの二人も連れていくと伝えた。
「お連れの方々はその……」
受付の人は言い難そうにし、なんとか思いとどまってもらおうと四苦八苦している様に見える。
まぁ、行き成り見ず知らずの人をお偉いさんに合わせろってのは、戸惑うよね。
押し問答をしている内に、アルテミスさんは若干煩わしそうな表情をした後に開け放たれた扉の奥を見つめ、良いだろう?ウラノス、この二人は当事者だ、と言い放った。
そうすると、奥の方から声が聞こえてきた。
……良かろう、その者達も通せ。
その声に、受付の人は慌てたように扉の奥向かってお辞儀をし、私達も扉の奥へ案内してくれた。
アルテミスさんはルーナに向かって、集合場所はいつものところでと伝え、開かれた扉をへ進んでいく。
私とマトイもアルテミスさんの後を追うように扉へ向かった。
暫く長い廊下を歩いていくと、途中に下へ降りる階段が見えてきた。
アルテミスさんは迷うことなく、その階段を下って行く。
長い階段の終着点には巨大な扉があり、アルテミスさんはその扉を躊躇することなく開け、中に入って行った。
私達もそれに続いて扉の奥へ向かう。
中は所々にかがり火が灯っているが、薄暗く部屋の全容が掴めない。
部屋の中央には祭壇の様な物があり、その頂上には背の大きな老人が椅子に腰掛けて、私達を見下ろしていた。
この老人がウラノスかな?多分私の身長を倍にしても届かなそう……
そんなことを考えていると、アルテミスさんは挨拶もそこそこに、エルソスの遺跡でのあらましと私達『アークス』の事についてウラノスへ語った。
私達の話が出ると、ウラノスは私とマトイへ視線を向け話を聞いていた。
マトイはその視線に若干居心地悪そうにしていたが、私は……なんで祭壇の上に座っているんだろう?……薄暗いから目が悪くならないのかな?などと考えていた。
アルテミスさんが一通り話を終えた後、ウラノスは私達に話し掛けてきた。
「アルテミスを助けてくれたこと、礼を言おう。それで、そなたらはこの地に何をしに来た?」
私は一瞬冒険に……と答えそうになったが、それは私の答えであって『アークス』の答えではない。
難しいことは、後で詳しい人に来てもらい、伝える事を前置きして説明を行う。
「異種族と交流し皆と仲良くなることですね。もちろんそれ以外にも困難なことが起きたら協力するとか、技術や文化を教え合うとかありますが」
ウラノスは、皆と仲良くか……と呟き暫く考え込むように沈黙し、視線に威圧を込めて私に質問してきた。
「もし、もしだ、敵対していたもの、そうだな……モンスターが言葉を得、敵対しない、仲良くしたい、と伝えてきたらどうする?」
私は特に臆することなく答える。
「仲良くする意思が本心であれば、当然仲良くしますよ」
私はウラノスへそう言い、以前の出来事……惑星アムドゥスキアで龍族と知り合った時のことを話した。
龍族と『アークス』は、当初敵対関係であった。しかしそれはダーカー因子による暴走であり、本来の彼らは理性的な種族である。
そのダーカー因子の除去──病の治療──を行い、信頼を得ることに成功し、そこから交流が生まれ、現在もダーカーとの共闘や龍族の指導者的立場にいる、ロ・カミツとも親交がある事を伝えた。
しかしながら、それに関係なく敵対する龍族もいる事も伝える。
その龍族の対応としては、友好的な龍族の言葉に従い倒している事も……
ウラノスは、静かに私の説明を聞いていた。
そしてしばらく考え込んだ後、言葉を発した。
「フェルズ、あれを渡してやれ」
ウラノスがそういうと、祭壇の陰からフードを深く被った人物が一枚の紙を手に現れた。
その人物は私に紙を差し出すと、紙の説明をしてくれた。
「それは、君と君と共にいる者に、オラリオの往来を自由にして良いという書状だ。門の受付へ見せればすぐに通してくれるだろう」
私はその紙を受け取ると、フェルズと呼ばれた人物にお礼を言った。
「今日の話はここまでだ。アルテミス、ご苦労であった。ミケよ、また会おう」
ウラノスはそう言い、目を瞑った。
私達がギルドを後にしたのは、日が傾きかけているがまだ明るい時間であった。
アルテミスさんと私達は、ルーナとの合流地点へ向かいながら、ウラノスとの会話の話をしていた。
「まさかウラノスがその書状をミケに渡すとはな」
アルテミスさんは、あの書状は余程の信用と信頼がないと、まず渡されることがない物だと。
アルテミスさんが持っているものは、アルテミスさんとアルテミスさんといる場合の【ファミリア】のみ通行可能な書状らしい。
【ファミリア】達のみで来た場合は、書状が有っても入れないらしい。
門を通った時にアルテミスさんが、無言で頷いたのは、私とマトイがオラリオへ入る際の審査時間を省くためにしたことだそうだ。
私が貰った書状は、私と私と一緒にいる人を無条件で通すことができる物なので、この書状を使う際は、よく考えて使うよう注意された。
まぁ私が使うときは、私とマトイが通るときか、後はジョージを連れてきた時くらいかな?
その様な話をしている内に、ルーナとの合流地点である公園へたどり着いた。
ルーナは先に合流地点に着いていた。
私達を見かけると手を振りながら近づいてきた。
「ルーナ、
アルテミスがルーナにそう問いかけると、ルーナは荷物を軽く叩きながら満面の笑みを浮かべている。
「これで、団長達も元気になります!」
ルーナはそう言いつつ、私に紙の束を渡してきた。
「それは、ダンジョンの階層情報になります。中層迄のマップ、出現モンスターとその特徴が記載されています」
私はその紙の束を受け取ると、ルーナにお礼を言った。
「それではあの子達に、
それから早々にオラリオを後にし、ベース基地への帰路についた。
ミケ達がベース基地へ到着したのは、夜も更けてきた頃であった。
着陸した輸送機の近くには、ジョージと看護官が出迎えに来ていた。
アルテミスは看護官に、今から
看護官は嬉しそうにし、直ぐに許可を出した。
アルテミスとルーナそれに看護官は、【ファミリア】達が休んでいる医療用トレーラーへ向かっていった。
ミケとマトイは、ジョージにウラノスとの話を伝えるため3人で、指揮用トレーラーへ向かった。
ミケは指揮用トレーラーにある会議室にて、ウラノスとの会話内容をジョージに話し、詳しい話ができる人を連れていく旨を話していることを伝えた。
ジョージはミケが話した内容を聞き終わった後、ため息をつきつつこぼした。
「いやはや、ミケ様が入ると話が進むのが物凄く早いですな。我々だけでここまで漕ぎつけるのにどれだけ掛かるやら……」
そういいつつも、やはり話が早く進むのは嬉しいのだろう。笑顔になり、カスラに話をするが自分が次の話し合いに出るだろうことを伝えた。
話を終え、ミケ達はアルテミス達の様子を見に行こうと席を立った時、来客を知らせるベルの音が響いた。
扉を開けると、アルテミスとその【ファミリア】達が全員来ていた。
ミケ達は怪我をしていた人達とは、救出時以来会っていなかったため元気な姿を見て喜んでいた。
ジョージはアルテミスとその【ファミリア】達を会議室へ招き入れ席を勧めた。
席に着くと、アルテミスが横に座っている人物を促している。
件の人物は立ち上がると、
「アルテミス様並びに、我々を助けていただき、感謝致します」
そう言って頭を下げた。
この人物が【アルテミス・ファミリア】の団長である。
【ファミリア】を代表して、ミケ達にお礼が言いたいとここまで来ている。
ミケとマトイは、その人物に笑顔で答えた。
「
「元気になってよかったね。困ったときはお互い様だよ」
団長は嬉しそうにミケ達に応え、出来る事があれば【ファミリア】として協力は辞さない旨宣言した。
ミケは、なんだか大げさだなぁと思いつつも、仲良くしてくれればいいよと伝えた。
団長はそういうわけには……と更に言い募ろうとしたが、アルテミスに止められた。
アルテミスは、ミケはこういう子なのだと団長を説得している。
団長も困惑しながらも、アルテミスの言葉に従い引き下がった。
「えーっとそれで、皆さんはこれからどうします?今日はもう遅いからここに泊るとして、ホームにも帰りたいだろうし……」
ミケがそう提案すると、アルテミスが意を決した表情で答えた。
「それなのだが、我々は自分たちの戦力不足を痛感してな、出来ればでよいのだが……この子達を『アークス』で鍛えてもらえないだろうか?無論我々は、君たちが使うフォトンは扱えないが、実戦形式でなら我々の足りないところを鍛えられるのでは?と思ってな……この子達もさらに強くなりたいとの意志が固く、私もこの子達を後押ししたいが、今以上となると手立てがなくてな……」
ミケは困ったようにジョージに顔を向けた。
ジョージは暫く考えた後、相談してみることをアルテミス達に伝えた。
「今この場で返事はできません。我々は戦闘を司る部署の者ではないため、上司を経由して教導部か戦闘部に可能かどうか確認してもらいます。暫く時間が掛かるかと思われますので、一度あなた方のホームへ帰還して下さい。ホームで待っている方々も心配しているでしょうし。返事は必ず行いますので」
アルテミス達はジョージの返事に一応の納得をした。
ミケは自分も教導部に知り合いがいるので、可能か聞いてみると伝えた。
それに模擬戦なら自分もできるので、まずはそこからでどうかと提案した。
団長たちは模擬戦の話をミケがすると、全員席から立ち真剣な顔で、是非お願いしますと頭を下げてきた。
ミケはちょっと安請け合いしすぎたかと、若干後悔しつつも了承した。
一応の一区切りです。
今後の方向性はまだ決めていないので、次回の投稿は少し先になります。