かすみんの可愛さが伝わりすぎた世界線   作:AQUA BLUE

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まだ続きました、でもって短めです


かすみんの可愛さが伝わりすぎた世界線:4

「はっ……はあっ!」

 

 

 逃げ惑うようにかすみは寮の廊下やら階段やらを走る。限界だ、と思いながら。いずれ監禁等をされてもおかしくないと、底知れぬイメージがかすみの全身を冷たくする。

 

「……きゃっ!」

「った……」

 

 散漫になっていた注意力。脇目も降らず進んでいたために、かすみは思いっきり角から出てきた人影にぶつかってしまった。

 

「あらあら、怪我はない?」

 

 尻餅をついたのはかすみだたけだったようで、彼女の上から手が伸びる。少しだけ冷静さを取り戻したかすみは、謝りながら相手の方を確認するのだが――

 

「果林先輩……!?」

「うふふっ」

 

 よりにもよって、会いたくない相手だった。

 彼女もまた、同好会メンバーにしてエマの親友。朝香果林。

 

 メンバー内でエマに次ぐ長身にして、出るところは出て締まるところは締まったモデル体型。多くの男性のみならず女性も屈服させる美貌。時々藍のショートヘアをかきあげる癖も、彼女の色気に拍車をかける一つのポイントだったりする。

 

 

 四面楚歌と後ずさるかすみだったが、果林は動じず彼女を見守っている。いまひとつ読めない彼女のリアクションに、耐えられならなくなったかすみが先に切り出した。

 

 

「果林先輩は! か、かすみんになんにもしないんですか?」

「どうして? まぁ、強いて言うならそうね……エマの様子がおかしかったから、ちょっと様子を見に行こうとは思っていたのだけれど。杞憂だったみたいね」

「そ、そうですか」

「そ れ と も……「何か」して欲しかった?」

 

 さらっと耳打ちをする果林。してやられた恥ずかしさと、セクシーな声色にかすみんは赤面した。からかいが成功したことで、果林は満足げに笑う。そして、肩にかけていた鞄をかすみに差し出した。

 

「部室に置きっぱなしだったわよ」

「ありがとうございます……」

 

 一応は身構えながらも、かすみは果林から鞄を受け取る。慌てるあまり今の今まで忘れていたが、かすみは荷物を持っていなかった。

 

 

 ……真に落ち着いたことで、かすみの中で色々と疑問が沸き上がる。

 

 

(荷物は……かすみんを運ぶのに必死で忘れられたのかな? あと、さっきの着信はたぶんりな子から……もしかしたらだけど、こっちのピンチを知ってて? いや、でも……)

 

 だんだんと思考を巡らせていくかすみに、果林はふうっと息を吐くと、彼女に語りかける。

 

「考え事中水を差すようだけど、早く帰った方がいいんじゃないかしら? エマが追ってきたらどうするつもり?」

「確かに! すぐここから離れないと……あれ? なんでエマ先輩の所にいたの知ってるんですか、果林先輩」

「エマって名前を出しただけなのに、さっきのかすちゃんの顔がすごいことになってたから。あれだけ動揺していたら、誰だってわかるわ」

 

 ウィンクする果林。うぅ、とたじろぎながらも、かすみはせっせと鞄を持ち変える。

 

「さ、行きなさい」

 

 背中を押す果林の一言を最後に、かすみは後輩として一礼し再び足を動かした。彼女の意思を汲み取って。

 

 

「まったく……あんなにあっさり白状しちゃって。私だってあなたのことを狙っている一人なの、本当にわかってるのかしら」

 

 かすみの遠くなっていくシルエットを送った後、果林は呆れ混じりに苦笑する。彼女としては、かすみを見つけ次第自分のものにするよう動くつもりだった。

 それがどうだ。切羽詰まった彼女の顔を見たとき、そんな欲望にまみれた気持ちはどこかに消えてしまった。

 

「惚れた弱み、ってやつかも。かえって守りたくなっちゃったわ」

 

 

 まるで靄が晴れたかのよう。彼女は思い出したのだ。かすみには魅了するだけの可愛さだけではなく、守りたくなるような危なっかしさ、可愛げも持ち合わせていることを。

 

 

「果林ちゃん」

 

 数十秒して、知り尽くした親友(エマ)が果林の眼前に姿を現す。彼女の若干髪は乱れ、また肩で息をしていた。先を伝えられずとも、用件はわかりきっていた。

 

「エマ。……なんだか、いつも会っているのにものすごく久しぶりな気がするわね。調子はどう?」

 

「通してくれないかな?」

 

誰かに(・・・)会いに行くの? もうとっくに日は暮れたわよ」

 

「通して」

 

「そういうわけには、いかないのよね」

 

「通してよ!」

 

 

 

 掃除の行き届いた硝子に二人の虚像が明瞭に映る。月明かり指す、夜のとばりが降りた寮の廊下。

 

 

 かくして。中須かすみに魅せられたもの同士の、衝突(話し合い)が始まった。

 

 

 




(バトルものじゃ)ないです
だいぶ拗れて参りました(続けるとは言ってない)
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