英雄の弟は侍である。   作:霜月優斗

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お久しぶりです。ホントはもっと速くにあげれる予定だったのですが、継ぎ足したらこんなに遅れました……
ぞれでは、お楽しみ下さいませ。


裏切りと怒りの夕焼け

 天高く聳える鋼鉄の城、その百層から成る城の第一層のフィールドでユキトは戦っていた。

 ユキトに相対するはSAOの序盤モンスターであるフレンジー・ボアが二頭。戦い始めてから一時間、ようやく戦うことに慣れて来たために少しだけ相手を見る余裕が生まれてきたのか、フレンジー・ボアが攻撃するタイミングを掴み、攻撃を避けては切りを繰り返すとあっけなくHPを削り尽くしてポリゴンの欠片となって四散する。それと同時にユキトのレベルが4に上がった。

 

 そろそろ疲れて来たから持っていた曲刀を鞘にしまい、フィールドの外を見やるとそこには幻想的な景色が広がっていた。

 夕暮れの空が仮想の産物でしかないというのに。なんて美しいのだろうと思っていると後ろの方にいるキリト達が何やら騒がしく言い合っている。一体どうしたのだろうか? 

「どうかしたのか」と僕が問うと、クラインが切羽詰まったような表情でこう言った。

「そのなぁ……ログアウトボタンがねぇんだ」

「そんな馬鹿な。僕も確認するよ」

 そう言いながら僕はメニューを開きログアウトボタンがある場所を開くが、無い。なんでさ。

 

 この本来なら有り得ない状況にユキト達は困却した。

 しばらくその場で硬直していると、がっくりと肩を下ろしていたクラインが突然立ち上がって言った。

「コマンドがあれば脱出できたりしないのか? 脱出!! ログアウト!!」

 クラインが叫ぼうとこの世界に脱出コマンドは存在しない。まずそんなものがあるなんて聞いたことがない。

 その直後、世界はそのありようを永久に変えた。

 

 

 

 フィールドの向こうからリンゴ―ン、リンゴ―ンと、鐘の音が鳴り響くと同時にユキト達を取り囲むように青白く輝く、直後に謎の浮遊感を感じ、ユキトは思わず目をつぶる。

 次にユキトが目を開くと、広大な石畳、見渡せば周囲を囲む街路樹と瀟洒な中世風の街並みが目に映る。そこは見間違えようもなく数時間前に自身がログインした場所である中央広場であった。

「ここは……転移門広場?」

 僕には一体何が起きたのかが全く理解できなかった。自身の周りにも同じ様に突然中央広場にいて困惑する人もいて、阿鼻叫喚とまではいかないけどそれなりにざわついている。

「お、おい!! 上を見ろ!」

 誰かがそう叫んだ。

 僕たちは反射的に空を見上げる。

 すると突如空に赤い市松模様が浸食するように広がり始め、それは直ぐに天井を覆い尽くした。よく見ると『warning』『System Announcement』と、赤いフォントで綴られている。

 そして、その市松模様の隙間から血のような液体が零れて次第に真っ赤なフードを被ってローブを纏った人のような形になる。人々はその異様な光景に口をつぐんだ。

『ようこそ諸君、私の世界へ』

 その沈黙を破るように僕がよく聞いた養父(じいさん)の声が鼓膜に響く。

『私の名前は茅場明彦。今やこの世界をコントロール出来る唯一の人間だ』

 

「な…………」

 その言葉に隣にいたキリトが息を吞む。

 それもそうだろう。養父(じいさん)は数年前まで弱小だったアーガスが、最大手と呼ばれるまでに成長した原動力となったゲームデザイナー兼量子物理学者であり、尚且つ

 だけどそんな普段滅多にメディアに出ない養父(じいさん)が何故ゲームマスターとしてここにいるのだろうか。そのことに対して得体の知れない悪寒が背筋をスッとなぞっている。そんな得も言われぬ雰囲気の中で養父(じいさん)は話し続ける。

 

『プレイヤーの諸君は、既にメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う。しかしそれはゲームの不具合ではない。繰り返す。これは不具合ではなく、()()()()()()()()()()()()本来の仕様である』

 

「これが……仕様だと……?」

 キリトと一緒にいたクラインが割れた声で零すが僕は今それが耳に入るほど冷静ではいられなかった。

 これ(ログアウト不可)が本来の仕様だって? 冗談じゃない。こんなことをして何になると言うんだ──と声を張り上げて叫ぼうとした瞬間、衝撃的な事実を聞かされる。

 

『諸君はこの城の頂を極めるまで、自発的にこのゲームからログアウトすることは出来ない』

 

 この城、その真の意味を秒で理解することは僕には出来なかった。周りにいるプレイヤーも同様に重苦しい静寂が包んだ。

 その重苦しい空気の中、茅場明彦(じいさん)は言をつなぐ。

『また、外部の人間により、ナーヴギアの強制停止、解除はないと思ってほしい。もしもそれが行われた時──』

 僅かな間を開けて彼は告げた。

『──ナーヴギアの信号素子から発する高出力マイクロウェーブによって諸君の脳を破壊、生命活動を停止するだろう』

 

 それを聞いた時、時が止まったかのような錯覚に見舞われた。彼は、養父(じいさん)は今何と言った? ナーヴギアを停止させたらマイクロウェーブで脳を焼き切る? 出来るのか、そんなことが。

「そんな……噓だよな?」

 噓だと言ってくれよ。なぁ、養父(じいさん) 。僕は忌諱するように、縋るようにこれが噓であることを願ったが、それは現実であることを知った。

 

「……いや、できないわけではないよ。原理上ならできないことはないけど……ハッタリに決まってる。そんな高出力の電磁波を発生させようにも大容量のバッテリーセルが内蔵していない……限り…………」

 その先を嫌でも気付いた僕とキリトは絶句し、クラインもそのことに気付き開きかけた口を閉じる。その間にも養父(じいさん)は淡々とアナウンスを続ける。

 

『────諸君が向こう側(現実)に置いてきた肉体の心配は必要ない。現在ありとあらゆるメディアがこの状況を、多数の死者が出ていることを繰り返し報道している。誰かが強制的にギアを引き剝がす事はなく、諸君の現実の肉体は二時間の回線切断猶予時間の内に病院その他の施設へと搬送され、厳重な介護体制のもとに置かれるはずだろう。諸君には、安心してゲームに攻略に臨むがいい』

 

 その宣告にいよいよ怒りが堪えきれなくなったキリトが吠える。

「何を言っている! ゲームを攻略をしろだと!? ログアウト不能の状況で悠長に遊んでいろって言うのかッ!!」

 そう叫ぶキリトはただ僕たちを見つめる真紅のフーデットローブを睨みながら叫び続ける。

「こんなの、もうゲームでも何でもないだろうが!!」

 キリトは怒りの表情でありったけの声で叫んだ。

 その咆哮が聞こえているかのように養父(じいさん)は抑揚が足りない声で、穏やかに告げた。

『しかし。充分に留意してほしい。何故私がこれはゲームであっても遊びではないと言ったのか。……最早この世界、ソードアート・オンラインは諸君のもう一つの現実と言うべき存在であると。…………今後、ゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがゼロになった瞬間。諸君のアバター永久に消失し、同時に諸君らの脳もナーヴギアによって破壊される』

 

 瞬間。僕には形容しがたい憤怒と慨嘆が僕の心に押し寄せた。僕を引き取って面倒を見てくれたのは、この為(デスゲーム)だったのか? あの9年間は噓だったのか? そう思ったと時、自然と抑えきれない激情に従って僕は叫んだ。

 

「どういう真似だ、茅場明彦。いや、養父(じいさん)ッ!! 何故僕を巻き込んだ、なぜこんなもの(ナーヴギア)を寄越した!! あんたにとって僕はただの道具だったて言うのか!!」

 その叫びに全てのプレイヤーが驚愕し、静寂に包まれた。

「今……アイツはなんて言った?」

「じい、さんって言ったわよね……」

「茅場に養子なんていたっけ?」

 ざわざわと周囲のプレイヤーは困惑したが、そんなのお構いなしにユキトは叫び続ける。

「絶対に……絶対に許さねぇぞ、茅場明彦ォォォ!!」

 力の限り茅場明彦(クソじじい)に向かって咆哮する。しかしそれに意を返さぬまま茅場は機械的な声で語る。

 

『諸君がこのゲームから脱出するにはただ一つ。この城の最終ボスをを倒してゲームをクリアすればよい。その際は生き残ったプレイヤー全員が安全にログアウトされることを保証しよう』

 

 この城のボス。つまりは僕たちを吞み込み、幽玄と浮かんでいる巨大な鋼鉄の浮遊城、アインクラッドの最上層で待ち構えているボス倒さなければ終わることはない。何とも非情な話だ。聞いた話ではβテストの時ですら11層までしかたどり着けなかったと聞く。100層にたどり着くころにはプレイヤーはほとんど死んでいるだろうに。

 そう、柄にもなく思っていると茅場明彦(クソじじい)は最後にこう言った。

 

『最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという事の証拠を見せよう。各自、ストレージを確認してくれたまえ』

 

 奴が言った通りにストレージを確認するとそこには何故か()()が入っていた。それを実体化させ、手に持ってしばらくすると突然プレイヤー全員が青白く発光し、視界を白く染め上げた。

「一体……何が、起き……!?」

 数秒後に視界が戻った時にはさっきまでいた美男美女の集団ではなく、そこいらにいる人に兜鎧を付けたような人が大半を占め、もっと言えば男女比がかなり変動した。

「お前……誰だ?」

 そう言って僕を見つめる男は先程まで近くにいた人を考えると可能性は一つ。

 

「あなたがクラインか?」「おめぇがユキトか!?」

 見事に声がハモった。

 

「てことは……おめぇの隣にいるのがキリトか!? どうしてこんな姿に……」

 クラインが顔をしかめて困惑していると静かにキリトが口を開いた。

「恐らく、スキャン機能を応用したんだ。クライン達も受けただろ? ()()()()()()()()()

 

 キリトが確認するように尋ねるとクラインはその記憶を思い出そうと頭をひねる。

「あ? そういえば体のあちこち触らされたな……!? そういう事か!!」

 

 クラインはそれに気付いたのか、手をぽん、と叩いた。

「わかったな、これは茅場がこの世界が現実であるということを俺たちに認識させるためにやったんだろうさ」

 

 顔と身体を現実のものと同じにしたのは、とキリトは心の中で継ぎ足す。

 僕はこの避けようがない現実にしばらくの間硬直した。気が付くと茅場明彦(クソじじい)は最後に、

『これより、ソードアート・オンライン、正式サービスチュートリアルを完了する、諸君らの検討に期待する』

 

 その一言を最後に、顔がない真紅のローブは跡形もなく消失した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




かなり個人的には書けたと思う。次回はこの惨状の続きから始まります。

文字数は今のままでよき?

  • 充分!!
  • 足りないなぁ(あと500文字追加)
  • まだ足りん!(1000以上)
  • むしろ多い?
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