1939年9月3日
この日、イギリス・フランス両国は相互援助条約(ポーランド・イギリス相互援助条約)、(ポーランド・フランス相互援助条約)を元にドイツに対し宣戦布告した。しかし、イギリス軍は大部分の兵力がポーランド侵攻に出払っていたドイツ本土に一切攻撃を仕掛けなかった。対してフランス軍はこれを機に一気にドイツ本土に攻めいる準備をしていた。
ポーランド軍は国境付近での戦闘に敗退したことによって徐々にワルシャワやルヴフ等の都市に後退せざるを得なくなっていた。さらにドイツ空軍によって制空権を奪われたポーランド軍と主要都市は定期的な爆撃に曝された。さらに北から攻め込むクルーゲの部隊が国境線から10キロメートル先にあったヴィスワ川に到達し、キュヒラーの部隊がナレフ川に行き着いた。白作戦は驚くほど順調だった。
「全隊一時停止、偵察を出せ」
「了解しました」
男は横にいる副官に命じた。副官は直ぐに偵察部隊を編成して出発させた。
「首尾はどうだね?アルベルト」
「ロンメルか、あの部隊は貴様のか」
その言葉にロンメルと呼ばれた男は頷く。ロンメルとはエルヴィン・ロンメル少将のことで本作戦では歩兵師団長を務めている。
アルベルトとはアルベルト・イェーガー少将のことで本作戦では機甲師団長を務めている。因みにアルベルトには息子のアロイスと娘のエルフリーデがいて、アロイスはロンメルの下で行動している。
「聞いたぞ、エルフリーデちゃんのボーイフレンドと対決して負けたんだってな」
「なぜそれを?」
「有名な話さ、熊がモヤシに負けたって」
「……ふん。それで?からかいに来ただけじゃ無いんだろ?」
ロンメルの表情が真剣なものに変わった。
「フランス軍が本国に侵入してきたそうだ」
「なんだって!?それを早く言え!参謀本部は何と言っている!」
「気にせずそのまま進めとしか言っておらんよ」
「どういうことだ!?」
「知らんよ。総統閣下には秘策があるのだろう」
ヴェーアヴォルフは緊急招集によってフランス軍とドイツ軍が争っている地点に移動中だった。
「さて、私たちの出番ですね。姉上、準備は良いですか?」
「ん……。大丈夫」
「二人とも、ヘルメットを脱ぐなよ。我々の参加は極秘事項だ」
「分かっています。敵の機甲部隊は任せます」
「了解だ!この一月の成果を見せてやるよ!」
フランス軍は兵器の質的にドイツと引けを取らなかったが第一次世界大戦での勝利の経験が足を引っ張り、戦車の有効活用が出来ていなかった。それゆえ、強固な陣地形成をしたドイツ軍に苦戦していた。戦闘区域から離れた後方では本作戦の指揮官が作戦の遅れに苛立っていた。
「ええい!まだ破れんのか!」
「申し訳ありません、敵の防衛ラインが固く、中々突破できないようで……」
「この戦力差なら楽々と突破できると踏んでいたが……」
数の差でじりじりとドイツ軍を追い詰めているも彼我の戦力差に対して時間がかかりすぎていた。
「司令、敵後方に増援が確認されました」
「数は?」
「確認できただけでも戦車13台と歩兵2名とのことです」
「なんだか中途半端だな。歩兵2名ってのが気になるが……」
「緊急連絡です!歩兵連隊の一部がが突破に成功しました!」
その報告に司令官は目を輝かせて立ち上がった。
「よろしい!全部隊を突撃させろ!一気に突破するぞ!」
その頃戦域に到着したヴェーアヴォルフは防衛部隊と連絡を取っていた。
『こちら第1特殊作戦部隊これより防衛作戦に協力する』
『助力感謝する』
『早速だが真ん中の防衛線を意図的に空けてくれ』
『なんだと?それでは敵に突破されてしまうぞ』
『我々に作戦がある。従ってもらいたい』
『……分かった。その作戦に従おう』
通話を終えた忠一郎が弌華と狂璃に話しかけた。
「聞いての通りだ、二人は真ん中から押し寄せてくる歩兵を殲滅しろ。装甲部隊は俺らで対処する。俺らの砲撃に当たるなよ」
「分かっています」
2人は崖を飛び降り、全速力で突撃した。
弌華はまず敵の直上まで飛び、そこからありったけの手榴弾を投げ込んだ。突然の攻撃に怯んだフランス軍にすかさず狂璃が両手に持ったナイフで命を刈り取っていく。着地した弌華は背中に装備した多くの重火器の内、1つを手に取り目の前の敵に放つ。歩兵と共に行動していた戦車には忠一郎率いる戦車部隊と征爾率いる砲兵部隊による攻撃を余すことなく浴びせた。砲撃によって巻き上げられた土煙が茶色から紅色に変わり視界が視界が晴れる頃には立っているのは2人を除いていなかった。
『当該地域における敵兵確認できず、敵部隊殲滅完了』
『了解した。お前らはそのまま前進しろ』
『了解しました』
その頃フランス軍の後方部隊では部隊全滅の報せが届いていた。
「くそっ!どういうことだ!?たったあれだけの部隊に何故やられるんだ!?私の作戦は上手く行っていた筈だ……。それなのに何故……!」
「……撤退しましょう。主力が壊滅した今、これ以上の戦闘行動は不可能です」
「うるさい!!今すぐ全部隊を突撃させろ!」
「……出来ません!これ以上戦ったって被害が増えるだけです!」
突如、言い争っている二人の声を掻き消す程の轟音が自分達の近くで聞こえた。防衛戦の中央を守っていた部隊が二手に分かれ左右から挟撃したのだ。これにはさすがに撤退の意思を決め、残った部隊を率いて撤退し始めた。