大日本帝国から日本国へ   作:紫雷電

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第十五話 ポーランド侵攻終結

ワルシャワは、ドイツ軍の激しい攻撃に対し、他から退却してきて再編成された部隊と義勇市民が応戦し続けたが、ついに9月28日に開城した。ワルシャワ北部のモドリン要塞は16日間の激しい戦闘の後、9月29日に降伏した。各地のポーランド守備隊のいくつかはドイツ軍に包囲されても長い間戦い続けた。グディニャ市郊外の街オクシヴィエの守備隊は9月19日まで持ちこたえた。ポーランド軍はソ連軍に対しシャツクの戦いに勝利したが、その後ソ連軍はこのとき捕虜にすることにできたポーランド軍将校や下士官の全員を殺害した。ソ連軍は9月28日までにナレフ川、西ブーク川、ヴィスワ川、サン川まで到達した。多くの場合、西から進撃してきたドイツ軍と互いに出会うことになった。ポーランド最北部でバルト海に臨むヘル半島の守備隊は10月2日まで抵抗し続けた。ポーランド陸軍最後の作戦部隊となったフランチシェック・クレーベルク将軍の独立作戦部隊「ポレシェ」はルブリン市郊外の4日間にわたるコツクの戦いののち、投降した。10月6日に最後の部隊が投降したことによりポーランド侵攻は終了した。その後占領下のポーランドでは獨ソによる凄惨な事件が起こることになる。

 

 

ポーランドでの戦闘が終結し、その翌々日からドイツはフランスとの戦争を本格的に始めていたがフランス軍は先のポーランドの敗因を徹底的に調査して対策を凝らしていた。これによりドイツ軍は予想外の被害を受け11月8日、ドイツはフランスと休戦協定を結んだ。休戦協定が有効な間にドイツではフランス侵攻再開に向けて新兵器の開発と新たな作戦が練られていた。

 

その頃ヴェーアヴォルフは新型兵器のテストに明け暮れていた。その中には航空隊の面々が要求した旋回性能の高い機体もあった。ドイツ軍の戦闘機としては珍しく空冷式を用いた機体は開発を主にDr.ソフィーとその部下達が、生産はメッサーシュミット社が行った。

 

「さて、君達の要求通り軽快な運動性を求めた機体なんだけどお眼鏡にかなうかな?」

 

Dr.ソフィーはA4サイズの紙をボードに挟めて丁度飛行を終えて機

体から降りたパイロット達に評価を聞いて回っていた。

 

「良い性能です。こちらの求める動きによく答えてくれます。乗ってて楽しい機体です」

「速い、軽快と九七式より性能が良いと思うぞ」

「これ、本国に持ち帰ってもいいですか?いいよね!?」

 

などとパイロット達のその殆どが好印象であった。この機体は日本の技術者も開発に加わっていて操縦感覚が九七式に似ているのはそのせいであろう。そんなやり取りがなされる中、弌華は一人帰路についていた。航空隊と陸戦隊は入れ替わりながら休みを取ることになっている。今日11月8日から2週間は陸戦隊は休みである。

弌華は草原に一本ラインが引かれたような道を歩いていた。車で行くことも出来たがいろいろ考えたいことがあったので丁重にお断りして基地を出たのが約一時間前。ベルリンからでも距離はあるので家につく頃にはもう夜中だろう。

 

弌華は歩きながら思考を巡らしていた。彼の上官である沖田楓伽は先を見通す力が高い。その彼女が人と触れ合うなどと意味の分からない理由だけで自分をドイツに送ったとは思えなかった。それならば国内、もしくは支配地域に放てばいいだけの話だからだ。わざわざドイツまで行く必要はない。弌華の脳には様々な意図が浮かぶがそのどれもが彼の納得のいく答えにはならなかった。

 

「分からない……こんなに考えても分からない。あの人は私に何を理解してもらいたいのでしょうか?」

 

弌華にとって彼女の意図を読み解くことは今まで紙面上で潰してきたどの問題よりも難しかった。ぶつぶつとなにかを言いながら夜道を歩く姿は横を通り過ぎる人を驚かした。この場所は後に何かを言いながら歩く前線で死んだ兵士の霊が出るとして有名になるがそれはまた別の話である。

 

 

家の500m手前につく頃には時刻は20時をまわっていた。基地からここまで3時間かかったことになる。

玄関前に取り付けられたランプにはまだ火が灯っているのが見えた。それに照らされて女性が三段ほどしかない石段にちょこんと座って俯いている。この時間帯で自分の家の前で待つような人を弌華は一人しか知らない。弌華は駆け足で残りの距離を進んだ。

 

「そんなとこにいたら風邪引きますよ。手、冷たくなっているじゃないですか」

 

弌華はしゃがんでその女性の手をとる。時期は11月。雪はまだ降ってはいないとはいえ、外気は冬の訪れを感じさせる程冷たい。そんな場所にいたから当然なのだがエルフリーデの手は冷水のように冷たかった。弌華が帰ってきたことに気付かなかったのか触れられてことによりビクッと体を震わせて始めて弌華の方を見た。

 

「ただいまです。エル、いつからここで待っててくれたんですか?」

 

エルフリーデは弌華の問いに答えることなく抱きついた。その様子はご主人様の帰りを喜ぶ犬のようだった。恐らく尻尾があれば千切れんばかりの勢いで振られていたであろう。弌華は暫く好きにさせた後家の中に入った。後から聞くとエルフリーデは一時間待ってたらしい。弌華は帰るときは必ず連絡することを心に決めたのだった。

 

夕食を終え、二人はソファーでくつろいでいた。エルフリーデは弌華が出兵している間に弌華が帰ってきた後のことを考えて色々計画を練っていた。

 

「弌華さん、明日から休みなんですよね?」

「はい。二週間程頂きました」

 

弌華は読んでいる本に目を落としながら答えた。

 

「なら、明日一緒に散歩に行きませんか?」

「ええ、良いですよ」

 

その瞬間エルフリーデの顔は先程よりも明るくなった。

 

「やった!そ、それじゃあ明後日は一緒に街に遊びに行って明々後日は友達に会って、その後は―――」

 

今後の日程を捲し立てるように話すエルフリーデを無邪気で可愛らしいと思った弌華であった。

 

 

 

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