大日本帝国から日本国へ   作:紫雷電

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第二十話フランス侵攻②

満州国

今日の夕刊には大きな見出しで『獨軍、マジノ線を突破。勝利に一歩近づく』と書かれていた。新聞を持った青年が「号外、号外だよ!」と叫びながら道行く人に配っていた。

 

「なるほど、あの難攻不落の大要塞をねぇ……」

 

夕食後のティータイムを屋上で楽しみながら沖田楓伽は四時間程前に貰ってきた新聞を広げていた。

 

「あら、楓ちゃんこんなところにいたのね。早く寝ないと明日の作業に差し障るわよ~」

「うん。ありがと癒乃姉ぇ、もうすぐ寝るから先寝てて」

 

階段を下りていく癒乃を背中で見送りながら楓伽は遠くはなれた異郷の地で戦う仲間に思いを馳せた。

 

 

 

 

1940年5月12日

5月10日から始まったマジノ線攻略はドイツ軍の緻密で大胆な作戦によって成功を収め、マジノ要塞は崩壊しつつあった。彼らの疲れを知らぬ行軍は徐々に疲弊していく敵兵団を打ち負かしていった。同時期に行われたB軍集団による空挺降下作戦によってベルギーのエバン・エマール要塞が翌11日に陥落した。その後もドイツ軍は各地に点在する敵の要塞に対して降下作戦を行い、これを破壊し尽くした。

ヴェーアヴォルフはマジノ線を突破した後、要塞に沿ってオランダ方面へと向かった。目的はB軍集団のオランダ攻略を支援するためだ。

彼らは途中で燃料を強奪しながらも800kmにも及ぶ道のりを1日かけて走破した。

 

1940年5月13日

ドイツ軍は降下猟兵による重要拠点制圧作戦を行っていたが彼らのように失敗した部隊もあった。大抵そのような部隊は敵の猛反撃を受けて全滅していた。彼らはがっちりと固められた敵の防衛兵器に阻まれ、全滅こそ免れたものの森林地帯に敗走していた。

 

「隊長、どうします?奴ら血眼になって俺らを探してますよ。まだ気づかれてないうちにこちらから仕掛けた方がよくないですか?」

「この戦力じゃあ敵の歩兵集団を1%も倒せねぇよ。救援が来るまで待つしかないな」

 

我々の近くまで足音が迫ってきて覚悟を決めた瞬間、森の少し奥から地鳴りが聞こえ始めた。その地鳴りの音は少しづつ我々の方に近づいていった。そして敵の集団が我々を発見して狙いを定めた瞬間、その音の発生源が鬱蒼とした暗闇から飛び出てきた。

それは私には象に見えた。彼らは行進のように真っ直ぐと進んでいった。さっきまで我々を撃ち殺そうと銃を向けていた敵の兵は轢かれて原型を留めていなかった。耳を塞ぎたくなるような激しいエンジン音が少しずつ小さくなって群れが止まると中から人が出て来て私の方に駆け寄ってきた。

 

「遅れて申し訳ありません。怪我はありませんか?」

 

流暢なドイツ語だった。顔はフルフェイスヘルメットで隠れて見えなかったが声色からして十代後半であることは予想がついた。私は彼が差し伸べてくれた手を掴んで立ち上がった。

 

「ありがとう。君たちのお陰で難を逃れた。ところで君たちはどこの部隊なんだ?」

「申し訳ありませんが機密のため話せません。ヘルメットも同じ理由で外せないので顔を見せれないことをご了承下さい」

 

なるほど、極秘裏に結成された特殊部隊か。それならば彼らの装備する特徴的な装備にも納得がいく。私の目の前の少年はさらに言葉を続けた。

 

「我々はこれからこの先にある基地の制圧に向かいますのであなた方は撤退してください。すぐ近くまで味方が来ています」

「いや、本来その仕事は我々のだ。我々も同行させて頂きたい」

 

目の前の彼は暫く考える素振りをした後再び私の方を向いた。

 

「了解しました。では、残った兵を集めて乗ってください」

 

空挺降下による奇襲が失敗した以上、彼らが基地を制圧するには正面突破しか残されていなかった。しかし、厳重になった防衛網を突破するのは至難の技である。

そこで活躍するのがジークティーガの装甲の厚さだ。当時の主力戦車の砲弾を弾く程の厚さを持った装甲は正面突破するときの歩兵の盾として非常に役立った。

ジークティーガが一歩ずつ進むごとにトーチカは破壊され、その中にいた兵は逃げる間も無く押し潰された。そうしてトーチカ群を突破したあと、ハッチが開かれ、中から二人ずつ人が飛び出てきた。

合計12人の兵はジークティーガの援護を受けながら襲い来る敵を殲滅した。

彼らが敵兵をあらかた倒した頃、前進していた彼らの味方が支援を開始して、戦闘開始から一時間後に基地はドイツ軍の手に落ちた。

 

「あぶねぇ、もう燃料が空だ」

「吉田大尉、安心してください。戦車用の燃料なら大量の備蓄が有りましたよ」

 

弌華が両脇に抱えてきたドラム缶には200Lのガソリンが満タンの状態で入っていた。

 

「よく見つけたな。よし、燃料補給の間、暫く休息にする。ただしフルフェイスは外すなよ」

 

ドイツ軍との交渉は弌華に任せてヴェーアヴォルフの面々は休息を取った。

 

「吉田、この後はどうするつもりなんだ?」

「そうだなあ……上層部からは特に命令は受けてないんだよな。なあ島田、お前はこの先の戦争の行方を考えたことがあるか?」

「はぁ?いきなり訳分かんないこと言ってんじゃねぇよ。そんな先のことより次の目的地は何処なんだ?」

「………そうだな次はダンケルクに向かうか」

 

 

 

ドイツ軍のA軍集団はさしたる妨害を受けずに森林地帯を突破した。

森林地帯を抜けたA軍集団がムーズ川の対岸で遭遇したのは、予想通り弱体なフランス歩兵部隊だった。5月13日、3個装甲師団がスダンで渡河作戦を開始、激しい支援爆撃の下に橋頭堡を確保し、翌日には渡河に成功した。以後、ムーズ川各所で残りの装甲師団も渡河に成功し、遮る敵部隊のいないフランス北部をイギリス海峡に向けて突進した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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