大日本帝国から日本国へ   作:紫雷電

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第二十二話 フランス侵攻④

「二人のことは気にするな。打てっー!!」

 

ジークティーガと曲射砲から砲弾が放たれて円弧を描きながら。敵の最前列の少し前に着弾した。

 

「前から!?ええい、とにかく前進だ!海岸線に着けば道は開ける!」

 

硝煙と血の煙の中をひたすら前進する集団は少しずつ減っていった。しかし、総勢数十万の人を殲滅するのは並大抵の兵器では簡単に出来るものではない。現に絶えず砲撃を加え、弌華と狂璃が確実に倒しているのに怒涛の勢いで迫ってきていた。

 

「やべぇな、このままじゃ飲まれるぞ。おい、航空隊の支援は?」

「まだです……。通信環境が悪くてノイズが酷いんです!」

 

 

 

ドイツ国防海軍は少し前に竣工した新型戦艦ビスマルク級一番艦ビスマルクを旗艦とする主力艦隊を結成し、キール港を出港して作戦計画通りの航路を通っていた。

この艦隊には他にシャルンホルスト級、アドミラル・ヒッパー級、グラーフ・ツェッペリンも含まれている。

 

「艦長、先程からノイズの酷い電波を拾うのですが……」

「一応解析しておけ。進路そのまま、我々はカレーに直行する」

 

ドイツ主力艦隊は敵がいるとされるカレーへと向かって速度を上げた。

 

「艦長、大変です!」

「なんだ?」

「先程の不審な電波のことなんですが、内容が判明しました」

「言ってみろ」

「『数十万の敵を確認。敵はダンケルクから脱出する。至急援護を乞う』です」

「なに、敵はカレーに集まるのでは無かったのか!?ちいッ……進路変更、ダンケルクに向かう!航空隊を先行させよ!」

 

グラーフ・ツェッペリン甲板

グラーフ・ツェッペリンの艦上は慌ただしく人が右往左往していた。いきなりの緊急発進のため整備員が急いで準備をしているからだ。

 

「緊急発進だそうだが近くに敵でもいたのか?」

 

帝国海軍航空隊の瀬尾光政少佐は専属の整備員に問いかけた。

 

「イギリス本土へ撤退する集団を見つけたようですよ」

「ふぅん……だからの爆装か。では行ってくる」

「少佐、御武運を」

 

総勢二十四機のMe140はグラーフツェッペリンの艦上を飛び立ち大空に羽を広げた。

 

 

「………姉上、何人倒しました?」

「ん、四万くらい」

「……そうですか。いくらなんでも多すぎますねこれは」

 

死屍累々の山に立つ弌華の頬に汗が一筋伝った。

 

「クソッ、抜けてきてやがるな………狙いなどつけなくていい、とにかく打ちまくれ!」

「隊長、弾切れです!」

「ちいッ、これまでか……」

 

忠一郎が諦めようとした瞬間、大きな爆発音と共に最前列の敵が消滅した。忠一郎が咄嗟に顔を上げると編隊を組んだMe140が蟻の群れに襲いかかる光景が彼の目に映った。

 

「よぉし、あいつらはまだ生きてたな。全機、爆弾投下後機銃掃射に入れ、仲間を救出する!」

 

Me140は腹に抱えた爆弾を落とし、反転して20mm機銃を絶え間なく放った。敵は全身に穴を開けられて倒れた。

さらに遅れて到着したドイツ海軍主力艦隊が到着し、艦砲射撃を開始した。同時に強襲揚陸艦に搭乗していた兵集団が上陸しさらに攻撃を加えた。

何十万という敵兵は勢いよく数を減らし、降伏する間も無いまま全滅した。

 

「……敵集団の全滅を確認しました。隊長、我々の勝利です」

「ふうっ、死ぬかと思ったぜ」

 

忠一郎は顔にびっしりかいた汗を腕で拭った。目の前は先程とうってかわって開けていた。しかし、一帯が月のクレーターのごとく陥没していて木々は燃え、いたるところから黒煙が立ち上っていた。

 

ドイツ U-1基地

 

「ドクター、例の研究の進捗はどうだ?」

 

Dr.ソフィーの研究室を開けたのはドイツ共和国首相のアドルフ・ヒトラーだった。

 

「おやアドルフ、一人で来るとは珍しい。いつもの付き人は?」

「内容が内容だからな。他人に、もしくは敵軍に漏れでもしたら面倒なことになる。だからこの事は真に信用している君とだけ共有しておきたい」

「それもそうだね。少し待ってて、今まとめた資料を持ってくる」

 

Dr.ソフィーは奥の部屋に行き、ごそごそと書類の束を漁り始めた。

 

「……あった。はい、これが報告書だ。結果から言うと人間を一から造るなんて私でも不可能だ。この世でそんなこと出来るのは彼だけだろうね」

 

Dr.ソフィーは悔しそうに顔をしかめ、舌打ちをしながら手渡した。

 

「そうか……」

 

ヒトラーはわざとかと思えるほど肩を落とした。

 

「おいおいそんな落ち込むなよ。一からは無理だけど私ならクローンくらいは造ることが出来る」

「クローン?」

 

聞きなれない言葉にヒトラーの頭には疑問符が浮かんだ。説明厨のDr.ソフィーはその反応を待ってましたと言わんばかりに目を輝かせて語り始めた。

 

「簡単に言うとアドルフの髪の毛や皮膚などの体組織を使って君と全く同じなコピーを造るということだね。そもそもクローンという言葉が出来たのは――――」

 

「分かった分かった。もう分かったから少し落ち着け。要は私の分身がたくさん造れるということだな?」

 

「そうだね。けど君だけじゃない、優秀な軍人の組織さえ手に入ればその人を量産することだって可能だよ。もちろん死んだ敵兵だって可能だ。そうすれば潜入任務なんか簡単に出来ちゃうね」

 

説明を聞くなりヒトラーの口角が上がった。

 

「よし、費用はいくらでも出す。早急に研究し、完成させてくれ!」

「りょーかい」

 

Dr.ソフィーの返答に満足したのかヒトラーの顔には喜びが満ち溢れていた。

 

「では、私は官邸に戻る。彼らを出迎えてやらねばならんしな」

「うん。じゃあね」

 

ドイツ共和国首相官邸

 

「先日の戦いはよくやってくれた。君たちの活躍で英仏軍は建て直すのに更なる時間が掛かるだろう」

「ありがとうございます。しかし、先の戦闘は我々だけでは到底成功しませんでした。願わくば彼らのことも讃えて上げて頂きたくお願いいたします」

「近く、大々的に式典を行う予定だ。その時に彼らの健闘を讃えようと思う。だが、君たちは公の場に出れる身ではないだろう。だから先に呼んだのだ」

 

ヒトラーは指を鳴らした。すると扉の前で待機していたのか何人かの男がアタッシュケースを持って現れた。

 

「君たちの為だけに特別に作らせた勲章だ。是非受け取ってほしい」

 

アタッシュケースの中にはきらびやかな装飾が施された章飾が人数分入っていた。

 

「名をドイツ大鷲銀翼勲章とでもしようか」

 

ヒトラーはWehrwolfの隊員一人ずつの首に掛けていった。

 

「そうだ、君たちにもう一つ朗報だ。君たちの戦績を考慮して一週間の休暇を与えることにした。交代交代になるかもしれないがゆっくりと羽を休めて次の戦いに備えてくれ」

 

「「ハイル・ヒトラー」」

 

退出するヒトラーをWehrwolfの隊員はナチス式敬礼で見送った。

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