大日本帝国から日本国へ   作:紫雷電

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第三話 ノモンハン事件①

 

清王朝が1734年に定めたハルハ東端部(外蒙古)とフルンボイル平原南部の新バルガ(内蒙古)との境界は、モンゴルの独立宣言(1913年)以後も、モンゴルと中華民国の間で踏襲されてきた。しかし、1932年に成立した満洲国は、フルンボイルの南方境界について従来の境界から10 から20 kmほど南方に位置するハルハ川を境界と新たに主張し、以後この地を国境係争地とした。1939年5月、フルンボイル平原のノモンハン周辺でモンゴル軍と満州国軍の国境警備隊の交戦をきっかけに日本軍とソ連軍がそれぞれ兵力を派遣し、大規模な戦闘に発展することになる。

遡ること11日前。1939年5月1日帝機軍司令沖田楓伽はとある人に呼びだされていた。

 

「失礼します、沖田です」

 

楓伽は扉を2回叩き許可を得てから部屋に入った。

 

「よく来てくれた。座ってくれ」

「失礼します」

 

楓伽は男の対面に腰を下ろした。

 

「東久邇宮殿下、お話というのは?」

 

目の前の男は東久邇宮稔彦王、今は陸軍大将。後に内閣総理大臣となる。稔彦王は頷いたあと話し始めた。

 

「今、満州国とモンゴルでは国境について小競り合いが続いているのは知っているな?」

「もちろんであります。しかし、此のまま激化していくとソ連の介入が有り得るかもしれません」

 

その言葉に稔彦王は頷く。

 

「その通りだ。恐らく君の予想通りに我々はソ連と戦わなくてはいけなくなるだろう。そこで君達の力を借りたい」

「我々の力――ですか?」

 

稔彦王は先程よりも強く頷いた。

 

「君達帝機軍には頑迷な帝国陸海軍と違って先見の明がある。君の前の司令官がそうだったからな。それに、君達の実力は私が一番よく知っている」

「殿下は前の司令官をご存じなのですか?」

「あぁ、彼からは硬く口止めされてるので言えんがな」

 

楓伽の前の司令官は突如として姿を消し、後任に当時海軍学校の学生だった楓伽を推薦している。そして現在楓伽は籍は海軍大佐として軍務に就きながら帝機軍の指揮を執っている。

 

「分かりました。我々の力が帝国の更なる発展に役立つならば是非使わせていただきます」

 

「ありがとう」

 

楓伽は稔彦王から差し出された手を強く握り返した。

 

 

 

同じ頃、玄界島帝機軍本部では開発局が活発に活動していた。帝機軍には独自の兵器開発をする部署がある。それが《帝機軍開発局》である。ここでは帝機軍独自の兵器を開発するのみならず、陸海軍へ独自開発した技術を提供したり、陸海軍から譲渡された兵器を帝機軍の技術力で強化、発展させて軍全体の戦力強化に一役買っていたりする。ここでは今、帝機軍副司令兼兵器開発局局長の河上嘉章と吉田忠一郎で前の作戦で接収した兵器類の実地テストを行っていた。

 

「どうだい乗ってみた感想は。元戦車乗りとして忌憚なき意見を聞かせてくれ」

 

「どの点もよく纏まっていると思いますよ。これを流用すれば九七式の対戦車能力の低さを補えると思います」

 

「なるほど。早速部下に取り掛からせよう」

 

嘉章はテストの終わりを告げ、一足先に工厰の方へ急ぎ足で向かっていった。

 

 

 

帝機軍本部の会議室には稔彦王との会談から帰って来た楓伽と嘉章と忠一郎と弌華の4人が居る。現在、ここでは満州国防衛に対する作戦が練られていた。

 

「――以上から我が軍は近い内にソ連と戦うことになるかもしれない。そこで君達から意見を聞きたい」

 

一番始めに切り出したのは嘉章だった。

 

「現在開発局では、先日鹵獲した敵戦車の技術を九七式にフィードバックしています。これにより、九七式に欠けていた対戦車能力を補完できるものと考えています。一週間以内に十五台出来る予定です。これを使えば――」

 

嘉章は書き上げてきたばっかりの図面を黒板に張り出していった。自信満々に改修点を話す嘉章を差し置いて弌華の口が開いた。

 

「私は空挺降下作戦を提案します。敵の後方基地を奇襲して撹乱すれば規模の大きいソ連軍といえども確実に出鼻を挫くことができると思います」

「しかし、敵陣奥深くまで侵攻して降下するなんて言うほど容易くはないぞ。例え成功したとしてもどうやって戻る?」

 

忠一郎の懸念は尤もだった。その懸念に

 

「吉田大尉、我々姉弟が造り出された理由をお忘れですか?降下作戦は私と姉上の二人で行います。私達が最も力を発揮できる環境は単独で、そして乱戦になった時です」

 

忠一郎からは反論は出なかった。楓伽は決着を見て取ったのかこの場を締めくくった。

 

「それじゃあ弌華と狂璃は改輸送機で降下をするという事で。私達はいつも通り陸軍の支援に回ることにしようか」

 

 

 

満州国

御堂信靖は陸軍戦車連隊の隊長として部下を率いて満州までやってきていた。彼は誰が見ても分かるほど機嫌が悪かった。というのも3日ほど前に彼にある命令が下ったからである。

 

「どういうことですか、この命令は!?」

 

信靖は執務室の机に勢いよく手を置いて目の前の上官に詰め寄った。

 

「どうもこうもない。我々は侵攻中の戦域から撤退して満州に引き返す。それだけだ」

 

上官は信靖の気迫に臆した様子を見せず淡々と告げた。

 

「あと少しで突破できるんです。ここを制圧すれば支那に大きな打撃を与えられるんですよ!」

 

「君は上の命令に逆らうのか?叛意ありとして報告しても良いのかね?」

 

信靖は上官の言葉に押し黙るしかなかった。反乱の兆しありとなれば自分の部下にも何かしら悪影響があるからだ。上官はこれで話は終わりだと言わんばかりに手を振って追い払う仕草をする。

信靖は渋々従ってその場を後にした。

 

 

「そろそろ機嫌を直したらどうです?ずっと眉間に皺よせてたら直らなくなりますよ」

 

声の主は信靖の部下だった。九七式戦車の車体に寝そべる信靖にコーヒーの入ったマグカップを手渡す。そして履帯の前で腰を下ろした。

 

「……ほっといてくれ」

 

信靖は起き上がり、コーヒーを口にしながら言った。

 

「明日、新型が来るらしいですよ。噂だと現在陸軍が保有するどの戦車よりも性能が良いとか」

 

信靖は興味が無かったのか特に反応を返さずコーヒーを飲み干した。

 

「先に寝る。お前も飲み終わったらさっさと宿舎に戻れよ」

 

信靖はマグカップを部下に返して自室へ戻った。

 

 

 

翌日、見慣れない戦車二十台が駐機場に運び込まれていた。陸軍主力である九七式戦車より一回りか二回り大きかった。その重厚なフォルムは陸軍の精強さを表しているかのようにも見えた。




皆さんこんにちは。 スーパーファントムのプラモデルが売ってたのでつい買っちゃいました。カッコいいので仕方ないですね。
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