大日本帝国から日本国へ   作:紫雷電

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第四話 ノモンハン事件② 日蒙戦争へ

1939年5月13日

前からモンゴルと満州との間で小競り合いが続いていたが現在、ノモンハン周辺地域は日本とソ連の激戦地となっていた。ソ連から大きな援助を受けたモンゴルは満州に対し急襲を仕掛けることで始まった。

 

「植田司令、第23軍から昨12日朝来、モンゴル、ソ連連合軍がノモンハン西方地区にてハルハ河を渡河し不法越境して満州軍と交戦中との報告が有りました。防衛司令官から『師団の一部と在ハイラル満州軍全軍では戦力差がいかんともし難く、至急増援を要請する』との軍機電報が届いています」

 

「輸送中の戦車師団はどうなっている?」

「先程出立しましたので後三十分すれば到着するかと」

 

植田の部下は腕時計を見ながら答えた。

 

「そうか、ここの部隊の半分も前線に送ってやれ。防衛成功後に進撃するには数が足らないだろう」

「了解しました。しかし、それだけの戦力を割いて良いのですか?」

「前線が要求しているのだ。送らぬわけにはいくまい。それに足りなければ本国に要請すれば良いだけの事。何も困りはせん」

「了解しました。至急輸送準備を始めます」

 

報告に来た士官は急ぎ伝えるため司令室を後にした。

 

 

 

帝機軍は斉斉哈爾(チチハル)に集まり、降下作戦の用意をしていた。作戦は、最初に弌華と狂璃の二人をタムサクホラグの軍事基地に投下、同基地を徹底的に破壊したあと、アールシャンからタムサクホラグに進軍していた帝機軍機甲部隊と合流。その後バローンオルトまで進軍して、後は関東軍に引き継いでもらう手筈だ。

 

「姉上、用意は良いですか?」

 

弌華は眠たげな姉に問いかける。

 

「ん……。大丈夫」

 

フラフラとしながら滑走路に停まっている九七式改輸送機に向かう姿はとても大丈夫と言う人の姿ではなかった。

 

 

 

九七式改輸送機は現地時間午後10時30分に到着した。

 

「お二方、もうすぐ降下ポイントに到着します。用意しておいてください」

「分かりました。姉上、聞いていましたか?用意してください」

「ん。……分かった」

 

二人は席を立ち特殊な改装を施された機体後部に向かった。今回、二人は高度10000メートルからの降下となるがあらゆる超過酷な環境を想定して二人は造られているため酸素マスクなどの生命維持に必要な装備は必要ない。代わりに基地壊滅のための重火器を装備している。

 

『予定ポイント到着、降下作戦開始。御武運を』

 

機内に取り付けられた拡声器から声が流れると同時に2人は輸送機から降下した。

2人が降り立ったのは疎らに木が生える崖のような場所だった。本来なら基地直上に降りる予定だったが思ったより風にあおられてしまい少しずれてしまった。二人は丈の長い草に身を隠して様子をうかがった。

 

「前方に見張りが2人ですか、これは簡単に倒せますね。それとなかなか厚そうな鉄門ですね、破壊するのは無理そうですか。中には沢山の兵がいますね……」

「扉は私が破壊する……。弌華は人を殺って……」

 

狂璃の発言に弌華は賛成した。

 

「そうですね、じゃあ先陣を頼みます。援護は任せてください」

 

狂璃は首を縦に小さく振った。二人は草むらから身を出し眼前の目標に突貫した。

 

 

 

狂璃は鉄門に目一杯拳を叩きつけた。すると鈍い音を発しながら放射状に亀裂が生じ地面に落ちたガラス瓶のように崩れた。基地の各地で怒号が飛び交った。突然の出来事にも関わらず戦闘態勢に移行するまでそう時間はかからなかった。

 

「既に敵に侵入を許している、急ぎバリケードを築け!」

 

敵指揮官の的確な指示によって即座に戦車や土嚢などでバリケードが作られた。高所には狙撃兵、地上には大量の歩兵と万全防備態勢であった。

しかし、バリケードの内側でライフルを持って敵兵が来るのを待ち構えていた列から紅い火花が上がった。

同時に肉の塊となった者たちが次々とドミノを倒すみたいに地面に臥した。

弌華は敵が防衛戦を築き上げる前に後ろに回り込んでいた。

弌華が刀を振るう度に首が飛んだ。身体能力的に距離を詰められてしまうと常人では彼に対抗することは不可能である。しばらくして辺り一面は文字通りの血の海になっていた。

 

各地で爆発が起きた。狂璃が榴弾砲を担いで攻撃していた。彼女は弌華よりも身体能力が強化されているので普通の人が使うと片腕が吹き飛ぶような兵器も問題なく扱える。

 

基地は30分程で壊滅した。各地で黒煙がたなびいていた。弌華は周辺の哨戒を狂璃に任せて通信室に行った。

 

 

 

「司令、モールス信号を取得しました」

「内容は?」

「我レ当該地域制圧ニ成功セリとのことです」

 

楓伽が連絡を受けたのはアールシャンを出発してから一時間半ほど経った頃、丁度半分の距離を進んでいた時であった。楓伽の乗っている九九式司令車両は帝国陸軍が製造したもので帝機軍が性能評価のため試験的に使用している。最新の通信設備を惜しみ無く搭載しているため前線での司令部としての役割を果たすことを期待されている。

 

「あと半分か、二人には少し待ってもらうことになるね」

楓伽は地図を広げて自分達の居場所を確かめた。

 

「返信はどうします?」

「あと一時間半程待っててでお願い」

「了解しました」

 

 

 

蒙ソ連合軍

「なに?後方基地に襲撃だと?」

「はい。10分ほど前から連絡が途絶えています。恐らくは別動隊が動いていたかと」

 

連絡に来た士官は自分で言っている内容に自分で読み上げておきながら疑問を感じせざるを得なかった。

 

「奴らの戦力はスパイによって把握してるんだ。例え増援が来たとしても別動隊に回す余力があるとは思えん。機械の故障ではないのか?」

 

敵の戦力を常に把握している彼らにとって機械の故障を疑わせるほどには信じられないことだった。

 

「先程確認しましたが故障ではありません。未だ敵の防衛戦を破ることが出来て無いときに挟み撃ちにされるのは戦術上よくありません。ここは一度後退した方が良いのではありませんか?」

 

男は暫し考えた後全軍に撤退命令を出した。

 

「全軍に一時撤退を伝えろ。地雷の敷設も忘れずにさせておけ」

 

 

関東軍は最初防衛を強いられていたものの増援が来てからは徐々に攻勢へと持ち込んでいた。

 

「ん?敵の圧力が急に弱くなったな」

「大方我が軍の気迫に恐れおののいたのでしょう」

「そうだといいんだがな……。なんにせよ好機だ敵陣を今のうちに突破しよう。前線に通達、罠に注意を払いつつ進軍せよ」

「了解しました」

 

第一次ノモンハン会戦は日本側の勝利で幕を閉じた。勢いに乗った関東軍は細心の注意を払いつつ戦線を広げ始めた。

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