大日本帝国から日本国へ   作:紫雷電

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第九話 纏弌華ドイツに立つ

1939年8月5日

四機の大鷲はドイツのフランクフルト空港に着陸した。空港には軍関係者がズラリと並んでいる。大鷲の後部ハッチが解放されると同時に音楽隊による演奏が開始された。

 

「なんか凄い歓迎のされようだな」

「ええ、正直ここまでして貰えるとは思いませんでした……」

 

弌華達は空港に引かれたレッドカーペットの一本道を通った。暫く歩くと口元に髭を蓄えた男を先頭にした一団とぶつかった。

 

「大日本帝国派遣団団長の吉田忠一郎です」

「ドイツ帝国首相のアドルフ・ヒトラーだ。君達を歓迎しよう」

 

二人は互いに差し出された手を握りあった。ヒトラーに促され車に乗った弌華達は首都ベルリンへと向かった。弌華達はベルリンへ着いた後、技術者達と別れ、ヒトラーと共に総統官邸に来ていた。ヒトラーの対面に弌華、忠一郎、征爾の順で座る。

 

「改めて我がドイツ帝国にようこそ。君達の二年間が有意義なものになることを願おう」

「ありがとうございます」

「早速だが我々が要求していたものは持ってきてくれているかな?」

「これでございます」

 

忠一郎はビジネスバッグから資料を取り出し、ヒトラーに手渡した。ヒトラーは中を少し捲って見た後側近の男に渡した。そして側近の男に人払いを頼んだ。

 

「君達は白作戦に参加するのだったね」

「はい。しかし、日本軍であることを絶対に知られてはなりません」

「成る程、相分かった。バレぬよう取り計らおう」

「ありがとうございます」

「そろそろ演習が始まる、君達も見ていくと良い。だが弌華君には会ってもらいたい人がいるからすまないが君は私に付いてきてくれ」

「了解しました」

 

一旦三人は別れて、弌華はヒトラーの後に付いて目的地まで車で向かった。二人は街を離れ山のさらに奥へと行き、暫く舗装されてない道を通った後車を停めた。目の前には巧妙に隠されたコンクリート製のトンネルのようなものがある。ヒトラーが車を降りてコンソールパネルに数字を入力すると液晶に人が現れ、一言二言会話した後ゆっくりと地震のような音を立てて壁が左右に開いた。

暫く構内を走るとまた同じような設備が二個ほど現れその度に同じ手順を踏んで進んだ。

現れたのはとても大きな工場だった。ここはU-シフト計画によって最初に建設された地下基地で、名をU-1基地と言う。ここは新兵器の開発や生物兵器の生産などをしていて、さらに石油の精練施設まで存在している。帝国にはこのような基地が既に何個かあるらしく、さらに増やすつもりらしい。

ヒトラーは駐車場に車を停め、研究室のような建物に向かった。

 

「Dr.ソフィー、いるかね?」

「よく来たねアドルフ。その子が例のかい?」

「そうだ。我が友の娘の部下だ」

 

Dr.ソフィーと呼ばれた白衣を来た美女は二十代中頃だろうか。女性にしては身長は高い部類に入ると思う。金髪はショートに揃えられていて眼鏡をかけた姿はとても理知的に見える。

 

「君、名前は?」

 

Dr.ソフィーは弌華の顔を覗き込んで名を聞いてきた。

 

「纏弌華と言います」

「マトイ……。成る程、君を造ったのは誠十郎さんだね?」

「そうですがなぜドクターが博士を知っているのですか?」

「二十年くらい前に会ったことがあってね。あの人と話した内容はとても面白かったから今でも覚えているよ」

 

Dr.ソフィーは懐かしむように言った。

 

「さて早速だけど君のデータを取らせてもらいたいんだけど」

「了解しました」

 

様々な検査は終わるのに小一時間程かかった。とりあえずDr.ソフィーの用事は終わったらしく、暫く施設内を見て回った後ベルリンへ帰ることになった。

 

「そうだ、君にこれを渡しておこう。サイズが合わなかったら言ってくれ」

 

基地を出る前にヒトラーから渡された袋に入っていたのは親衛隊の制服だった。襟に少尉の階級章が取り付けられている。

 

「これは私の君に対する信頼の証と思ってくれて良い。これから我が帝国のために職務に励んでくれ」

「ご期待に添えるよう努力いたします」

 

 

 

基地から総統官邸へ戻ると汗だくになった忠一郎と陸軍兵士がいた。

 

「運動してきたのですか?」

「俺も演習に参加してたんだ、とても良い経験だったよ。それはそうと、お前のその服どうしたんだ?」

 

今、弌華が来ているのは一時間ほど前に貰った親衛隊の制服だ。忠一郎の問いに答えたのはヒトラーだった。

 

「私が彼に譲渡したのだ。君達のも人数分あるから一段落したら受け取りに来てくれ」

「了解しました」

「では私はこれで。君達の宿舎は後で案内を寄越すから彼に付いていってくれ」

 

ヒトラーは弌華を連れて官邸の中へ入っていった。

 

 

 

「さて弌華君、君の処遇について我が友の娘から頼み事をされていてね」

 

ヒトラーが言う我が友とは沖田楓伽の実の父沖田和隆(おきたかずたか)の事である。

 

「私の処遇ですか?」

「うむ。君には軍人施設内でなく、長閑な場所で人と触れ合いながら生活して欲しいとのことでな」

「何故そのようなことを……?」

「私に分かるわけ無いだろう。此方で幾つかめぼしい場所をピックアップしておいた。好きなところを選んでくれ」

 

そう言うとヒトラーはデスクに地図を広げた。赤丸が四つ程囲まれている地点がある。弌華は四つの中で比較的ベルリンに近い場所を選んだ。

 

「宜しい。では案内を出すから彼に従ってくれ」

「了解しました」

 

弌華はナチス式敬礼をして官邸を後にした。

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