やはり俺がIS学園にいるのは間違っている。   作:Parfait

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初めての授業

 

徐々に女子特有の姦しい声が教室内に飽和していく。

一時間目のIS基礎理論がやっとの終わりを告げ、今は休み時間を各々が自由に過ごしている。

まだ高校生活初日にも関わらず既にグループは出来上がりつつあり、所々から楽しそうな笑い声が聞こえてくる。

その中でも人溜まりが出来ているのは当然のことながら、この学園の数少ない男子、織斑のところだった。というか人の壁で姿が見えない。そこにシャンシャンでもいるの?整理券配ろうか?

ちなみに1人上野動物園をしている俺は、耳にイヤホンを差し込んで顔を伏せているので当然の如く孤高。

え、そんなことしなくても女子は来ない? 知ってた。

 

「……ちまん、おーい、八幡ー」

 

このクラスには俺以外にも八幡なんて名前いるんだな、と思っていたらいきなり肩を揺すられる。

仕方なく顔を上げると何故か目の前にイケメンがいた。

 

「八幡、数少ない男子同士仲良くしようぜ」

 

眩しい、こいつ顔面ニフラムかよ。大丈夫かな、足先とか消えかかってる気がする。

「ああ、よろしく」

「それにしても同じ男が居てくれて助かったよ、女子ばっかりだから肩身が狭くってさ」

 

今度は男臭い笑みを浮かべながら肩を組んできた。あれ?こいつ良いやつじゃね?

チョロイン並みにイケメンに心を許していると、どこからか視線を感じた。

視線の方向を辿ると、凛とした雰囲気のポニーテール美女がこちらを睨みつけている。俺はそっと目を逸らした。

やっぱこいつと居ると碌な目に合わないかもしれない。

思わずただでさえ腐ってる目をさらに腐らせて遠い目をしていると、握手を求めて手を差し出された。

 

「これから宜しくな」

「……ああ、よろしく」

 

手を握り返した所で丁度休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。

よ、よかった……なんかポニテ美女がこれ以上喋るなとでも言いたげに目力でぶん殴ってきてたし。

まあ俺一言しか喋ってなかったけど。

 

「じゃあまた後でな」

 

また来んのかよ。

 

 

♦︎

 

 

三時間目のチャイムがなると何故か魔神こと織斑先生が教壇に立った。

え、二時間目はどうしたのかって? 織斑が電話帳並みの厚さの参考書を捨ててたぐらいしかイベントがなかったから飛ばした。あいつ実はアホなのでは?

そんな感じで織斑、というか先生と苗字が同じでややこしいから一夏と呼ぶ、がクラスで目立っているなか、俺は至って平和だった。平和すぎてノーベル平和賞を貰えるレベル。

というかそもそも既にこのクラスでの俺の立ち位置が決まった気がしてならない。

みんな俺に対して興味なさ過ぎない? IS使える男子って珍しいんじゃないの? 愛の反対は無関心って本当だったんですねマザーテレサ。

いや、一人だけ例外がいたわ。なんか一夏だけはやたらと興味津々だったわ。何なの?あいつホモなの?でも一夏が話しかけてくる度にハッピーセットのようにポニテ美女がこちらを睨みつけてくるんだよね。ハッピーって何だろう。

 

「納得いきませんわ!」

 

そんなどうでもいい思考を遮るように、 いきなり大声が耳に飛び込んできた。反射で向いた先ではロココ時代の姫みたいな髪型の金髪っ娘がバンッと机を叩きいきり立っている。このクラスの女子怖すぎん?

 

「そのような選出は認められません! 大体男がなるなんていい恥晒しですわ! このわたくしにそのような屈辱を一年間も味わえと!」

 

全然話についていけていない。気付かぬ間に話が進んでいる。この娘が何で怒ってるか本当にわからない。

 

「本当にクラス代表をやるべきなのはわたくしですわ! そもそもこんな極東の、しかも文化も後進的な島国で暮らさなければならないこと自体、耐え難い苦痛で——」

「イギリスだって大したお国自慢ないだろ。世界一不味い料理で何年覇者だよ」

「な、な、なんですって! わたくしの祖国をバカにしますの!?」

 

取り敢えず一つだけ分かった、こいつら愛国心強すぎだろ。なんで一夏は他の暴言は黙って聴いてたのに、日本がバカにされた瞬間にキレてんだよ。どう考えても千葉が一番上だろ、このIS学園も千葉に建ってるし。

待てよ、日本がバカにされてるってことは千葉も入ってるのか、俺もキレていい?

 

「静かにしろ」

 

このお国貶し大会に参加しようと尻を浮かした瞬間、織斑先生の言葉が鳴り響く。全員が蛇に睨まれた蛙のように静まり返った。自殺は良くない、千葉愛を語るのは今度にしておこう。

先生はクラスが静寂に包まれたのを確認したあと、一夏と金髪を鋭い視線で射抜いた。

 

「クラス代表は模擬戦で決めることにする。勝負は一週間後の月曜、場所は第三アリーナだ。オルコットと織班は其れ迄に準備しておけ」

 

そう言うと扉に向かってスタスタと去っていく。素晴らしい問題解決能力だな、俺関係ないからどうでもいいし。

尊敬の念を込めて織斑先生を見ていると、何故か目が合った。

 

「比企谷、お前もだ」

 

最悪だった。

 


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