アサルトリリィPARABELLUM   作:苗陽さんガチ恋勢

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不屈の精神


30 クロタネソウ ── Nigella ── 北河原伊紀の恩返し

 

 

「では、君のプランを聞かせてもらおうかの」

 

 

 執務机の上で手を組み、理事長代行である高松咬月はそう告げた。

 重苦しい空気の漂う理事長室には今、三人の人物が居る。

 一人は咬月。対するは二人の少女──北河原伊紀と真島百由だ。

 そして、促された伊紀が優雅に一歩進み出る。

 

 

「結論から述べさせていただきます。あの方を百合ヶ丘に閉じ込めれば、いずれ大惨事が起きます。必ず。下手をすれば、百合ヶ丘に属する全てのリリィが巻き込まれるやも知れません」

「……根拠は」

「持ち得てしまった特性が故に、でしょうか」

 

 

 花弁のような唇から紡がれる、酷く恐ろしい未来予想図。

 咬月の問いには、タブレット端末を片手に百由が答えた。

 

 

「おじ様のスキルは……ユニークスキルは、まさに異能中の異能です。どんな形にも姿を変え、あらゆる状況に対応できる……。

 現在発見されているスキルだけでなく、これから発現するであろう新しいスキルにも、変化させられる可能性があります。

 しかしそのせいで、本来なら抱える必要のないリスクも発生してしまった……」

「狂化、じゃのう」

「はい」

 

 

 狂化。

 ヒュージの体細胞を利用する施術を受けた、強化(ブーステッド)リリィに起こりうる事象である。

 詳しい理由は分からないが、“彼”は強化リリィでないにも関わらず、この状態に陥った。

 定期的に行っていた身体検査によって、強化施術が施されていないのは確実であるため、疑惑は深まるばかりだった。

 百由も頭を悩ませていたのだが、伊紀は違う見解を持っているようで……。

 

 

「狂化が起こりうるのは、基本的に強化処置を受けたリリィのみとされていますが、実際にはどのリリィにも起こりうる現象だと、私は考えます」

「というと?」

「たとえば、桜ノ杜女子高等学校の行う 片神名封神術式(かたかむな ほうしん じゅつしき)です。この術式ではフィニッシュの際、神宿りという状態になります。

 身体能力の著しい上昇。それに見合う心身への負荷。限界を超えて発動すれば、膨大な負のマギが発生してしまうというデメリット。

 これは、制御下に置かれた狂化とも呼べるのではないでしょうか」

 

 

 鎌倉府立、桜ノ杜女子高等学校。

 私立が多いガーデンの中でも珍しい、国公立であるこのガーデンは、古式ゆかしい和の文化を尊ぶ校風であり、ノインヴェルト戦術が普及する以前から、特殊な連携攻撃を行うことでも知られている。

 それが片神名封神術式であり、八人のリリィによる攻撃で「紋傷」と呼ばれるマギの印を刻み、その位置関係と数によって効果・範囲を変動させられるのが特徴だ。

 

 さらに、紋傷へと蓄積されたマギをフィニッシャーの使用CHARMに宿すことで、「終の太刀」と呼ばれるとどめの一撃を放つことも可能。

 この際、リリィは全身にマギのオーラをまとい、頭髪や虹彩の色が変化する。これが「神宿り」である。

 著しい身体能力の向上が見込まれるが、心身への負担も相応に大きく、どんなに長くとも10秒前後が限界とされる。

 しかし、時には限界突破(リミットブレイク)してでも神宿りを行使しなければならない時もあり、実際、延長は可能なのだが、代償として膨大な量の負のマギを発生させることになる。

 

 強大な力を得る代わりに、負のマギを発生させるという危険性を孕む。

 この点だけを抜き出して考えれば、伊紀の意見も正鵠を射ていると言えるかもしれない。

 

 

「つまり、“彼”の狂化は……大惨事は防ぐ事が可能、と」

「いいえ。このままでは、恐らく不可能だと思われます」

 

 

 咬月は思わず眉をひそめた。

 “彼”を擁護するために、「制御下に置かれた狂化」という言い回しをしたのだと考えたのだが、これでは何を意図しているのか分からない。

 すると、今度は百由が進み出た。

 

 

「おじ様の体に起きている若返り現象。あれは、肉体の狂化を抑え込むための、防衛本能である可能性が出てきました」

「防衛本能……?」

 

 

 言いながら、タブレット端末を操作する百由。

 咬月の眼前にプロジェクション画面が同期され、さまざまなデータな表示される。

 

 

「無意識下でZが暴走した結果、肉体が若返ったと考えていましたが、おじ様の意識が戻っても、Zの作用は止まりませんでした。

 狂化を経て、能力を制御できなくなった……とも考えられますけど、それならもっと酷い状態になっていても不思議じゃありません。

 であるならば、Zが作用してしまう原因が、作用しなければならないだけの原因があるはずなんです」

「……狂化は今もなお進行していて、それを押し留める為にZが作用し続けている、という訳か」

「確たる証拠は掴めていませんが、ただ暴走しているのではないという観測結果は出ています」

 

 

 ここで、理事長室には一拍の空白が生まれた。

 特異なスキル。特異な状態。特異なデータ。

 ここまで揃うと、“彼”が本当に人間かどうかも怪しく思えてくる。

 G.E.H.E.N.Aの実験で生まれた人造人間とでも言われた方が、まだ納得できるだろう。

 それでも、考えることをやめるのは許されない。

 “彼”を義息として迎え入れると決めたのは、他ならぬ咬月自身なのだから。

 

 

「北河原くんのプランとは、百由くんの意見を踏まえた上での物と考えて良いのじゃな」

「はい」

 

 

 期待を込めた問いには、自信に満ちた返答がなされる。

 

 

「まず第一に、おじ様の若返りを止める……。一時的にキャンセルすることが可能だと判明しました」

「ほう。具体的には?」

「目には目を、歯には歯を、ZにはZを。おじ様に作用するZの効果に対して、私のZを使用するだけです」

「実際に効果はあると見込まれます。実験時のデータはこちらを」

 

 

 時間を巻き戻すという効果を、さらに巻き戻す。

 とんちのような理屈だが、有効であるのなら明らかな前進だ。

 百由が提示したデータを見るに、他のZ保有者と協力して実験を繰り返し、既に発揮されているZの効果にだけ伊紀のZが作用するよう、効果範囲を絞る特訓をしてから、“彼”に使用したらしい。

 そして、その状態でのマギの流れを観測した結果、効果ありと判断したようである。

 だが、そうなると出てくる問題も。

 

 

「しかし君は先程、“彼”の狂化は進行中だと言った。Zの効果を打ち消しては、進行を推し進めるのではないかのう」

「それについても案があります」

 

 

 咬月の示した懸念にも、伊紀は答えを用意していたのだろう。淀みない声が返された。

 

 

「私のルームメイトである 小野木瑳都(おのぎ さと)さんの持つブーステッドスキル、ドレイン。狂化の原因である負のマギを吸収してしまえば、一時的にではありますが、狂化の進行もおさまるはずです。この場合は、予防的に使うことになると思われますが」

「ふむ……。だが、負のマギを吸収するとなれば、少なからず使用者の精神に影響は出るじゃろう。小野木君は承伏しておるのかね」

「もちろんです。彼女自身との面談をする時間も、後ほど頂戴できればと」

「承知した」

 

 

 頷きながら、咬月は舌を巻いた。

 教導官の承認も得ずに行動したかと思えば、用意されたプランは説得力のあるもの。

 急足な印象はあるけれど、それは“彼”の容体を考えれば自然なことであり、そのために周囲の協力をきちんと得ることも欠かしていない。

 これを主導したのが、未だ十四歳の少女なのだから末恐ろしい。

 どうやら百合ヶ丘とロスヴァイセは、得難い才媛を得られたようである。

 

 

「続けます。第二に、若返りの停止とドレインによる沈静化という安全策をおじ様へと伝え、精神の安定を図ります。

 そもそも、狂化の原因の一つに精神の不安定さが挙げられますから、今後の活動がより安定すると見込まれます」

 

 

 唯一、不安点として挙げられるのは、その少女の“彼”に対する入れ込み様か。

 命懸けで救われたという事実は確かに大きいのだろうが、それにしては言動が重いというか、単なる好意ではなく、崇拝に足を踏み入れてしまっているような。

 定期的なカウンセリングでも、何も問題はないという結果が出ているはずだけれど、けれども、妙に危うい印象なのは何故だろう。

 まぁ、注意深く見守るしかないのが現状なのだが……。

 

 

「そして最後に。おじ様が新たに会得してしまった特性についてです」

「初耳じゃな」

「確証を得られたのがつい先日でして……」

 

 

 横道に逸れていた咬月の思考を、百由の声が引き戻す。

 後頭部に手をやり「あははー」と笑っていたのも束の間、すぐさま表情を引き締めた。

 

 

「我々とヒュージの共通点。それはマギを宿すという点です。正負の違い、量の大小はあれど、例外はありません。ここで重要なのはマギの正負……いわば属性です。

 リリィの使うマギは正、ヒュージの使うマギは負。逆にヒュージから見れば、ヒュージの使うマギこそが正で、リリィの使うマギは負。だからこそ互いに干渉が可能で、体内に取り込めば毒となる」

 

 

 マギ。

 魔化革命によって人類が行使するに至った、最新のエネルギー。

 使用者に制限はあるものの、その名が示す通りに、魔法の様な効果を発揮させられる“力”だ。

 人類がこの“力”を手にしていなければ、すでに地球はヒュージの手に落ちていただろう。

 

 

「一年もの長い間、狂化の危機に晒されていた結果として、おじ様のマギは正負の概念が曖昧化してしまったみたいでして。というのも、計測器が示す反発係数が……」

「百由君。要点だけを頼む」

「では、大幅に端折って言わせて頂くと、おじ様のマギはヒュージにとって、一見無害な猛毒になってしまっているんです」

 

 

 話が脇道に逸れそうな気がした咬月は、すかさず話に口を挟む。

 が、百由もそれを予想していたらしく、説明に澱みはない。

 

 

「ヒュージは貪食です。それは物理形質に対してだけでなく、マギに対しても発揮されます。しかし先ほど述べたように、自らの性質と違うマギは、基本的に体が拒絶反応を起こしてしまいます。

 ですが、これを誤魔化すことが可能だったなら。ヒュージにとっての正のマギに見えて、実際にはリリィが使うマギを吸収させられたら……。

 物理装甲やマギ障壁に防がれることなく、ヒュージの体内の奥深くに、直接マギを叩き込むのと同義になります」

 

 

 リリィがヒュージと相対した時、有効打を与えるにはCHARMを使用しなければならないが、これを極端に単純化すると、正のマギを叩きつけている……と表現できる。

 銃などの通常攻撃はヒュージの防御結界を貫けないが、正のマギでこれを強引に突破、もしくは中和し、さらなる攻撃を加えることで、ヒュージに正のマギを押し付けているのだ。

 恐らく百由の言う無害な猛毒とは、この手順を省く、という事か。

 

 ヒュージは人間が呼吸するように空気中のマギを吸い上げ、周囲に二酸化炭素代わりの負のマギを撒き散らす。

 時には生きた人間を狙い、その体に宿ったマギすらも食らおうとする。リリィのマギは毒かもしれないが、リリィ以下の弱々しいマギなら、餌になり得るのである。

 そんなヒュージが、自分達と同じ匂いのするマギを察知したら?

 攻撃自体はしなければならないから、多くは動物的な反射行動を取るかもしれないが、それ以上の反応は示さないのが大多数だろう。

 

 つまり“彼”のマギは、ヒュージの防御力を無視できる、という事になる。

 

 

「確かに、聞く限りでは有用な特性じゃな。しかし、忘れてはおらぬか。“彼”はもうCHARMを持てぬ。持たせられぬ。そのような状態で戦場に出るのは自殺行為じゃ」

「ええ。CHARMは持てません。ですが、あるじゃありませんか。この世界で唯一、おじ様だけに運用実績のある特殊装備が」

「……まさか」

 

 

 百由の眼鏡がキラリと光った。

 この状況で思いつく装備など、一つしかない。

 手足を失ったことで装備可能となった、精神感応型義肢。

 今まではあくまでも義肢、戦闘に耐えうるというだけだった物を、本格的に兵器化するということだろう。

 

 

「おじ様の意志は変えられないでしょう。無理に抑え込んで暴発させるくらいだったら、徹底的にサポートして、戦いの中で能力を制御する術を模索する方が建設的だと考えます」

「そして、その一助をロスヴァイセが担えれば、と」

 

 

 百由と伊紀は並び立ち、まっすぐに咬月を見据える。

 その瞳に迷いは見えなかった。

 上手くいく保証はない。恐らくは前途多難な道のりとなるだろう。

 しかし、それすらも飲み込んだ上で、この二人は“彼”を助けようとしている。咬月には、そう見える。

 

 短い沈黙。

 やがて咬月は革張りの背もたれを軋ませ、同時に深く嘆息した。

 

 

「……見栄を張ったからには、成果を出してもらわねばならぬ」

「っ! では……!?」

「細かい条件を詰める必要があるじゃろう。生徒会や教導官を説き伏せるのは、簡単ではないぞ」

「望むところです!」

 

 

 我が意を得たりと、伊紀は大いに意気込む。

 ごきげんようと挨拶をし、優雅な所作で退室する横顔には、まさに花が咲いたような笑顔が浮かんでいた。

 微笑ましさに頬を緩ませる咬月だが、同時に、苦々しさも感じてしまう。

 これは、彼女たちの役目ではない。本来ならば、大人である咬月達が背負うべき責務。

 それを押し付けているに過ぎないと、どうしても思ってしまうのだ。

 

 

「相変わらず甘いな」

「……いらしていたのですか。姉上」

 

 

 不意に、人の気配が現れた。

 覚えのあるそれに振り向くと、スーツ姿のうら若き女性が、壁に背を預けて立っていた。

 そう、“うら若き女性”だ。咬月の孫であってもおかしくない年頃の。

 

 

「暇が出来たのでな。弟に義息ができたと聞いて、ずっと気になっていた。それがまさか、私と“同じ体”になってしまった可能性があるとは……」

 

 

 が、彼女は── 高松 祇恵良(たかまつ しえら)は、咬月を弟と呼び、親しげに語りかける。

 余人には奇妙に見えるやり取りだけれど、紛れもない事実だった。

 祇恵良の年齢は、肉体の全盛期で固定されてしまっているのだから。

 

 

「姉上は……どうすれば良かったのだと、思われますか」

 

 

 何故だろうか。こんな言葉が咬月の口から漏れた。

 本当にこれで良かったのか。

 心を鬼にした方が、結果的に良かったのではないか。

 もはや二人だけとなった肉親同士。甘えが生まれたのかも知れない。

 

 

「らしくもなく、妙なことを聞くな?」

「…………」

 

 

 祇恵良の眼が細められ、柔らかだった声の圧が高まる。

 とある事情から表舞台を退いている彼女は、しかし現百合ヶ丘女学院理事長であり、リリィとしての実力も凄まじい。圧という表現は咬月が慣れているだけで、実際には迫力と言った方が正しいだろう。

 ああ、やってしまった。

 思わず心の中でそう呟いてしまう。

 

 

「すでに心を決めているのに、不安だからと弱気になるな。背を丸めず、胸を張り続けろ。それが人を導く者のあるべき姿だ」

「……たとえそれが虚勢でも、ですか」

「そうだ」

 

 

 背筋をピンと伸ばし、咬月を見下ろしながら、祇恵良は断言する。

 凛々しく、麗しく、儚げでありつつも、確かな力強さを感じさせる佇まい。

 ……眩しすぎる。

 

 いつもこうだった。

 姉は比類なき傑物であり、自分はその代理を務めるのがやっとの凡夫。

 姉の背中を追って、必死に追って。でも届かずに、諦めそうになる。

 

 けれど。

 

 

「それでも。もし、どうしても心が折れそうになったなら、存分に頼るといい。私は、お前の姉なのだからな」

 

 

 ぽん、と優しく頭に手を乗せられ、子供にそうするように、優しく撫でられる。

 その懐かしい感触も、ふわりと香る花の匂いも、あの頃のまま。

 いつもこうだった。

 咬月が諦めそうになると、祇恵良はいつも立ち止まり、追いつくのを待ってくれる。

 厳しい言葉を投げかけても、それが突き放すように聞こえても、決して見捨てはしない。

 高松祇恵良とは、そういう人間だった。

 

 

「もう子供ではないのですが」

「何を言う。いつまで経っても、お前は手のかかる弟のままだ」

 

 

 もう白一色となった髪を、少し乱暴にくしゃりと。

 その遠慮のなさが、妙に嬉しくて。

 いつの間にやら、咬月の胸の内にあった不安は消え去っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……。どこかにワタシ好みの女の子が落ちてないかしら……」

 

 

 数日後。夕暮れ時の百合ヶ丘女学院。

 人気のない学院の廊下で、赤毛の少女──遠藤亜羅椰が独りごちた。

 端的に言うと、亜羅椰はムラムラしていた。

 

 相も変わらず浮名を流し、外部でも百合ヶ丘の問題児の代名詞になりつつある彼女だが、ここ最近は不漁が続いている。というか、逃げられているのだ。

 そこそこ良い関係を築けていたリリィも複数居たのに、数日前から「やっぱり私じゃダメなんですね……」「あの方の代わりには、なれません」「結局は両刀なんじゃない、この裏切り者!」と別れを切り出される始末。

 最後の子とは危うく刃傷沙汰になるところだったほどである。未遂で済んで本当に良かった。

 

 身を引かれる理由も、糾弾される理由も、亜羅椰としては全く身に覚えがなく、途方に暮れているのが現状だ。

 このままでは美少女成分不足で干からびてしまう。早急に新しい“お友達”が必要だった。

 と、そんな時……。

 

 

「ん? あれは……神琳じゃない。どこ行くのかしら」

 

 

 ふと、見覚えのある後ろ姿が目に入った。

 亜麻色の髪。すらりと伸びた長い脚。ただ歩いているだけなのに、まるでトップモデルのウォーキングのような華やかさ。

 間違いなく郭神琳である。

 どこへ行くのだろうか。時折、人目を気にするように左右を見回している。

 

 

「暇潰しには最適ね。後でからかってあげるわぁ」

 

 

 まだ気づかれていないだろうと判断した亜羅椰は、秒で尾行することを決定した。

 本当に暇だったというのもあるが、神琳の普段は見せない素振りが気に掛かった、というのもある。

 とにかく、亜羅椰は身を低くしたり、柱に体を隠したりしながら、神琳の跡を追う。

 ややあって辿り着いたのは、いつだったか、“彼”と神琳を並ばせてスケッチした足湯の東屋だった。

 

 

「え」

 

 

 そして、そこには一人の男性が立っていた。……“彼”だ。

 他に人影もなく、神琳と待ち合わせしていたのは、やはり“彼”なのだろう。

 腑に落ちないのは、何故ここに居るかである。

 

 

(なんで? 未だに軟禁状態なんじゃなかったの?)

 

 

 反射的に物影へと隠れ、様子を伺う亜羅椰。

 二人が互いの姿を認めると、杓子定規に頭を下げあっての挨拶が交わされた。

 と言っても、かなりの距離があるので、見える範囲での話だが。

 

 

「く……! 距離があるせいで何を話してるのか聞こえない……! もっと近くに遮蔽物があれば……!」

 

 

 別に、どうしても内容を確かめたいわけではないのだが、立ち位置的に見える神琳の顔がやたらと嬉しそうで、なんだか妙な心持ちだった。

 亜羅椰に対しては厳しめで、呆れ顔ばかり見ているから尚更だろうか。

 “彼”相手に楚々と振る舞うというだけでは、からかうにしても少し弱い。

 いっその事、乱入して話をまぜっ返そうかしら? と、亜羅椰が身を乗り出したのも束の間。

 

 

「────付き合って欲しいんだ────」

 

 

 一陣の風が、予想外の声を耳に運んだ。

 

 

「何、今の。聞き間違い……?」

 

 

 付き合って欲しい。

 これは“彼”が発した言葉だ。

 前後は逆に風でかき消されて分からない。

 常識的に考えれば、どこかへ行くのに付き合うとか、買い物に付き合うとか、そんな内容が連想される。

 だというのに、亜羅椰の心臓は早鐘を打ち始めていた。

 

 

(ちょっと待ちなさい神琳、なんであなた嬉しそうなの? その口の動き、わたくしでよければって言ってない? あれ? なんなのこれ? え?)

 

 

 夕日に照らされる神琳の頬は、赤く染まって見えた。

 ……本当に? 本当に夕日のせいで赤いの?

 いやいや、赤くなっていたからなんだっていうのよ。

 年の差カップルなんて珍しくもないし、現役のまま結婚するリリィだって少なからず居るんだし。

 でも中等部で結婚は流石に……いやいやいや実際にはどこにも出てないじゃない結婚なんて単語!

 

 

(なんなのよこの状況はぁあああっ!?)

 

 

 混迷を極める脳内で、亜羅椰が叫ぶ。

 当たり前だが、それに共感してくれる人物は、誰も居ないのであった。

 

 

 






ロリババアって良いよね。

去年のラスバレで一番驚いたのが、祇恵良○○さんのプレイアブル化でした。○○の部分は好きな文字で埋めてみよう!
まぁ祇恵良さんは妙齢の女性って感じなので、厳密に言うと違うんでしょうけど。個人的には、「へんたいふしんしゃさん」呼ばわりをしてくれそうな感じでも良かったんじゃないかなぁと。……いいじゃん一人くらい合法ロリが欲(自主規制)
ちな作者は未コネクトです。男PCに立ち絵があるソシャゲと、ガチャから男が出てくるソシャゲは絶対にやらない主義。
テンパってる亜羅椰ちゃんの行く末は……誰もが予想した通りの結末に落ち着くとは思いますが、ヤキモキしてる亜羅椰ちゃんを描きたいので描きます。
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