アサルトリリィPARABELLUM   作:苗陽さんガチ恋勢

6 / 35
危険な遊び


06 ニシキギ ──Burning Bush── 幕間、その二

 

 

 

 無機質な壁が続く廊下を、車椅子が音もなく進んでいく。

 義父上──理事長代行から頂いた和装に身を包む俺は、それを押してくれている少女、白井さんを振り返りながら、感謝を告げた。

 

 

「ありがとう。本当に助かるよ、白井さん。わざわざ付き合って貰って」

「気になさらないで下さい。私も用事がありましたし」

 

 

 少しだけ高い位置にある彼女の微笑みは、嫌がる素振りなど微塵も感じさせない。

 品行方正、文武両道、容姿端麗。そのうえ心根も優しいと来た。

 こんな子と学生時代に出会えていたら…………いや、遠くから見つめているだけになりそうだ。こうしてお世話して貰える、今の幸せに感謝しよう。

 

 白井さんと共に向かっているのは、百合ヶ丘女学院の工廠科だ。

 アーセナルと呼ばれるCHARM技師を育成するための学科であり、特に百合ヶ丘の工廠科は、「戦うアーセナル」の育成が可能な事でも有名らしい。

 当然、学科の一つなのだから学院敷地内に存在する。男子禁制で、本来なら絶対に立ち入れないだろう、女学院の。

 そんな訳で、俺は内心ウッキウキで車椅子に乗っていたのだが……。

 

 

「なんか、見られてるね」

 

 

 廊下で名も知らぬ女生徒とすれ違う度、必ずと言っていいほど見られまくるのが、地味に辛い。

 基本は白井さんが「御機嫌よう」と挨拶し、女生徒達も、俺の事をチラ見しつつ「御機嫌よう」で終わる。俺自身は目礼だ。

 だが時に、興味津々といった感じで“俺の方にも”挨拶してくれる、やけにフレンドリーな女生徒も居るので、そういう時も困ってしまう。まぁ「御機嫌よう」としか返せないのだが。

 後は、遠くの方から、不審者を見るような鋭い視線で射殺そうとしている子を、何人か確認しただろうか。

 おそらく彼女達は白井さん狙い。恐ろしや。

 

 

「百合ヶ丘は女子高ですし、男の人を見かける事自体、珍しいですから」

「珍獣扱いかぁ……。なんかむず痒いよ」

 

 

 いちいち突っかかってくる川添と違い、素直な白井さんとの外出は純粋に嬉しいけれど、こうも注目されると緊張してしまう。

 対外的な俺の設定としては、幼い頃に理事長代行の養子となる事が決まっていたけれど、正式な縁組前にG.E.H.E.N.A.に攫われ、最近ようやっと解放された……というもの。

 防衛軍マギウスとしての姿を知っている子は居ないだろうが(たいがいヘルメット着けて出撃だったし)、用心に越した事はない、という判断である。深く突っ込まれないと助かる。

 

 そうこうしている内に、とある扉の前で車椅子が止まった。

 いかにも研究室じみた自動ドア。ここが目的地らしい。

 

 

「ここ、かな」

「はい」

 

 

 頷き返す白井さんが、ドアの脇のインターホンを押した。

 すると、ほとんど間を置かずにドアがスライドする。

 

 

「いらっしゃーい! 待ってましたよ、お二人さん!」

 

 

 現れたのは、ハイテンションなメガネ少女。

 真島百由──というらしい彼女と知り合ったのは、数日前、川添とリハビリをした日だ。

 曰く、理事長代行の許しを得たので、俺専用の特殊な義肢をテストしたい……とのこと。

 願ってもない申し出に、俺は一も二もなく頷き、今日に至る。

 ちなみに、川添は外せない用事があったのか、ほぞをかむ、という表現のお手本のような顔で、白井さんに同行を頼んでいた。

 川添の、白井さんへの愛は重い。

 

 

「あー、お招きありがとう。真島さん」

「百由でいいですよ。ええと、高松さん? 理事長代行の義息さんなんですよね?」

「まぁ、そうなるかな」

 

 

 挨拶もそこそこに、真島さんの背中に続く。

 彼女は白井さんと同い年ながら、すでに腕利きアーセナルとして有名なようだ。

 なんて言うんだろう。毛先が斜めにカットされたセミロングで、年頃の少女らしいお洒落も忘れていない。

 

 雑多な部屋の奥に据えられた作業台には、多くのケーブルが伸びた検査機器と、ノートPC、他にも色々な機材があった。

 特に目を引くのは、上半身を覆うような金属製ハーネスにヘッドギア、人間の右腕を模したメカメカしい義腕だ。

 

 

「今回お願いしたいのは、こちらの装備のテストです」

「……これは?」

「筋電位と脳波を検出して出力する装置と、それを受け取って動く義腕……。肉体と精神を直接に繋ぐ、新技術を使用した装備です」

 

 

 淀みなく説明する真島さん。

 それが事実ならば、まさしく次世代の技術による産物となるが、にわかには信じられない。

 白井さんも同じようで、示された装備をしげしげと眺めながら問う。

 

 

「肉体と精神を繋ぐ……。思考するだけで動かせる、という事よね。本当にそんな事が可能なの?」

「もっちろん! って言いたいところだけど、まだ机上の空論段階なのよねぇ。マギを持たない人には使えないし、真に目指してるのは、この技術を利用したCHARM開発だし。でも……」

 

 

 言葉を区切り、真島さんは義腕を持ち上げる。

 

 

「こっちもこっちで重要なの。これが実用化されれば、戦線離脱を余儀なくされたリリィに、新しい道を用意してあげられるから」

「……それは、また、彼女達に戦ってもらうために……?」

「いいえ。彼女達が大切だと思うものを、自分の“力”で守れるように、です」

 

 

 まるで我が子を愛おしむような、優しい手つき。

 俺の言葉に対する返事からも、確固たる信念が伺える。

 

 こんな体になるまであまり考えなかった──考えたくなかった事だが、戦闘に出ればリリィも怪我を負い、それが酷ければ、手足を失う事もあり得る。

 傷の治療に使えるレアスキルだって使用者が限られ、肝心な時に間に合わない事の方が多い。

 そうして戦えなくなったリリィは、ガーデンの教導官になるか、マディックに混じって後方支援しか出来なくなる。

 

 戦いたくても戦えない辛さは、俺自身、よく分かっていた。

 それが命を危険に晒す選択肢だとしても、何も選べず、見ているだけの方が辛い事だってある。

 真島さんは、そんな状況に陥ったリリィへ、新たな可能性を示そうとしているのだろう。

 なんというか、最近知り合う年下の女の子は、やけに大人びた子ばかりである。

 背筋を正されるような思いだ。

 

 

「分かった。可能な限り、協力させて貰うよ」

「ありがとうございます! では早速、服を脱いでもらって……」

「えあ、ちょ、待っ」

 

 

 ……が、満面の笑みを浮かべた真島さんは、流れるように俺の服を脱がしに掛かった。

 あまりの遠慮の無さに戸惑い、何も抵抗できずにいると、顔を赤くした白井さんが急いで止めに入る。

 

 

「だ、ダメよそんな! えと、その、わ、私がやるから! 和服はコツが要るし!」

「そお? じゃあお願いするわ。機材の準備しちゃうねー」

「いや、白井さんにやって貰うのも恥ずかしいんですが。自分で脱ぐから。そのくらい出来るから」

 

 

 微妙にテンパっているっぽい白井さんはさておき、俺は服の上をはだける。

 割と傷だらけだし、右腕は欠けているしで見苦しいはずだが、真島さんは全く気にした様子もなく作業に取り掛かった。

 この二人、気の置けない感じのやり取りだけど、友達なんだろうか。正反対なタイプに見えるのに、意外だ。

 

 

「んじゃ、これ着けましょう。ちょっとヒヤッとしますよー」

「うっ……結構、重いな……」

「将来的には、軽量・小型化した接合機を体に埋め込んで、用途に応じた機能を使い分けられるようにしたいですね」

 

 

 まずヘッドギアとハーネスを装着し、ケーブルで計測機器と繋ぐ。

 そのままポチポチとスイッチをいじっては、ノートPCを確認している。

 次に、ハーネスから伸びる端子を、まだ装着していない義腕へ差し込んだ。

 

 

「今回の義腕は、本当に最小限の機能だけを搭載しました。

 機械と人間の精神を繋ぐ事で、どんな反応が起きるのかも分かりませんので。

 動きは鈍いですし、パワーだってありませんし、感覚も鈍いはずです」

「感覚? 感覚があるのか!?」

「理論上は、ですけどね」

 

 

 事も無げに言う真島さんだが、俺は本気で驚いていた。

 機械の塊が、考えるだけで動かせる事自体が凄いのに、感覚まで?

 技術革新とかいうレベルじゃないだろ。この子、本当に、本物の天才なのでは……。

 

 

「それじゃ、右腕を繋ぎますよ? 覚悟はいいですか?」

「ど、ドンと来いっ」

 

 

 ハーネスで固定された右前腕部の接合器具へと、新しい義腕が近づけられる。

 脅かす割に、装着そのものは簡単に終わった。ガチャン、と押し込むだけだ。

 が、真島さんが義腕のスイッチらしき物をいじった途端、マギが吸い込まれるような感覚を覚え、思わず呻いてしまう。

 

 

「ううっ、く……!」

「おじ様っ!?」

「だ、大丈夫っ、大丈夫、だ……っ」

 

 

 焦る白井さんを手で留め、呼吸を整える。

 マギを使うのは、スキラー数値が上昇してからは初めて。久方ぶりの感覚に驚いてしまった。

 と、そこでやっと気付く。

 義腕の拳が握り締められていた。

 最初は間違いなく開かれていたはずだ。それがなぜ?

 恐る恐る、かつて右手を使っていた時のように、指先を開こうとしてみる。

 開いた。

 ゆっくりと、花が開くように。

 

 

「動く……。動く……!」

 

 

 知らず、俺は笑みを浮かべていた。

 手を握る。開く。

 手首を回す。

 グー、チョキ、パー、と形を作る。

 全てに動作が、意識するだけで──いや、意識せずとも行える。

 わざわざ左手で指の形を整える必要も、煩わしさを感じる事も、ない!

 

 

「初期動作は良好、と。次は感覚のチェックをお願いします。はい、これどうぞ」

「おっとと……」

 

 

 感動に打ち震えていると、真島さんは唐突にゴムボールらしき物を右手の上に置いた。

 反射的に、落とさないよう指を閉じる。

 こんな事すら出来なかったのだから、本当に凄い……。

 

 

「それ、揉んでみて下さい」

「あ、ああ。おっ、柔らかくて気持ちいい。しっとりスベスベだ…………ん!? スベスベ!?」

 

 

 しっかりと揉み心地を堪能してから、また驚く。

 今、ボールを持っているのは右手だ。メカメカしくて、生身の腕とは程遠い外見の義腕だ。

 なのに、ボールの感触を確かに感じている。

 指が沈み込むような柔らかさ。吸い付くようなもっちり感。絹のような滑らかさまで。

 

 

「どうです? 触ってる感触ありますか?」

「ああ、ああ! ある! 感触がある! 凄い、凄いぞ、君は天才だ!」

「いやー、それほどでもーあるかなー」

「良かったですね、おじ様……っ!」

 

 

 もはや自分でも、満面の笑みを浮かべているのが分かる。

 もう二度とは味わえないはずだった感触が、堪らなく嬉しい。

 まぁ、正直に言うと、感触自体は弱め……かも知れない。

 試しにボールを左手に持ち替えてみると、右手よりもはるかにリアルな感触を味わえた。

 けれど、やはり失われたはずの感覚が蘇った事は、凄まじい衝撃だった。

 

 

「うん。左手に比べたら鈍いけど、やっぱりちゃんと感触がある。また右腕を使える日が来るなんて……あれ?」

 

 

 ……ところが、しばらくすると右手の感覚が段々と薄れていき、やがて完全に消えてしまった。

 動く事は動くのだが、先程までの感覚は、全く感じられない。

 

 

「おじ様? どうかなさったんですか」

「いや、急に感覚が消えて……」

「ありゃりゃ、ちょっとお待ちを。どれどれぇ」

 

 

 すぐさま真島さんが側へ寄り、細かな工具を使って調整し始める。

 これには時間が掛かった。

 少しいじっては確認を繰り返し、感覚が強くなり過ぎたり、弱くなり過ぎたりもしないよう、左手と比べながらの地道な作業だ。

 やっと終えた頃には、左手と遜色無いほどのレベルまでになっていた。

 

 

「じゃあ、しばらくはこのままで、ボールを触ってて下さい。その間に、夢結の方の用事も済ませちゃいますんで」

「分かった。ところで、白井さんの用事っていうのは?」

「メンテナンスに出していたCHARMの受け取りですよ。……ところで真島さん、なぜ私を呼び捨てに?」

「あれ、だめ? 同い年なんだし、もっと気楽に行きましょーよー」

 

 

 そう言うと、二人は研究室のさらに奥、強化アクリルの向こう側にあるロッカールームへ。

 甲州撤退戦で壊れてしまったダインスレイフは、とっくに直って再び白井さんの手に戻っている。

 俺のアガートラームも学院が保管しているはずだが、今はどうなっているんだろう。気になる。

 もし許されるなら、またアガートラームを使いたいものだ。アガートラームこそ、俺の本当の“相棒”な訳だし。

 この右腕と、両脚分の義肢も完成したら、きっと。

 

 

(そういえば、このボールって何で出来てるんだろう。やたら揉み心地が良いけど。癖になる)

 

 

 右手で弄ぶボールは、自由自在に形を変えて指を楽しませてくれている。

 ふにふに。むにゅむにゅ。ぷりんぷりん。

 可能なら両手に持って、顔にぱふぱふしたいくらいだ。商品化したらバカ売れするんじゃなかろうか?

 そんな事を考えていると、楽器ケースにも見えるCHARMコンテナを持った白井さんを伴い、真島さんが戻って来た。

 

 

「お待たせしましたー。どうです? 動きに違和感とかは」

「今度は出てないかな。少しだけ慣れてきたよ」

「それは良かったです。じゃあ次は、身長とか足の長さの計測ですね。正確な数字が分からないと、体に合った義肢が作れませんから」

「了解」

 

 

 どこからかメジャーを取り出す真島さんに頷き、とりあえず、右手に持っていたボールを白井さんへと預ける。

 作業台の上を片付けているので、その上に横たわればいいのだろうか。

 真島さんの助けを借りて作業台に乗ろうとしていると、俺から受け取ったボールを触っていたらしい白井さんが、それをモミモミしていた。

 

 

「本当に柔らかい……。これって、何で作られているの?」

「CHARMのグリップとかに使われてる強化シリコンゴムよ。硬過ぎず柔らか過ぎず、丁度いい揉み心地にするのが、地味に難しくって」

「へぇ……。何を参考にしたのかしら。なんだか覚えのある揉み心地だけど」

「色々試してみて、最終的にはワタシの二の腕と同じ感触に落ち着いたの。いい塩梅でしょ?」

「なるほど、二の腕だったのね。どうりで……………………え?」

 

 

 白井さんが可愛らしく小首を傾げ、硬直した。

 確か、二の腕の触り心地って、いわゆる、アレだ。……おっ○いと同じって言われてるんじゃなかったか?

 いやまぁ俗説だし、正しいかどうかも分からないが、そう言われるとあの感触、やたら幸福感があったような気がしないでもないような。

 そしてこの俗説が事実ならば、俺は真島さんのおっ○い(相当品)をこれでもかと揉みまくり、白井さんは現在進行形で揉んでいる事に……。

 

 

「あの、確か二の腕の感触って……」

「んー? どうかしたの、夢結。顔が赤いけど」

「……な、なんでもないわ。なんでも……」

 

 

 おそらく白井さんも、二の腕=おっ○い説を知っているのだろう。恥ずかしそうに頬を染めている。

 しかし真島さんは、この事実を知ってか知らずか、全く気にしている様子が見えない。

 それがますます羞恥心を煽っているようで、もう白井さんの顔は真っ赤っかだ。

 ちなみに俺は、おっ○いボールの感触を思い出さないようにするだけで精一杯である。

 この状況で反応したら終わりだよ終わり。

 

 

「はい、計測終了っと。お疲れ様でしたー」

 

 

 そうこうしている内に身体測定も完了し、ハーネスやら何やらを外して、俺は車椅子の上へ戻る。

 白井さんは、気恥ずかしさを誤魔化すように手伝ってくれたが、まだ少し顔が赤い。

 ……俺も、もうおっ○いボールの事は考えないようにしよう。うん。

 

 

「今日はここまでにしましょう。次回までには両脚分の義足を作っておきますから、またテスト、お願いできます?」

「ああ、もちろん。待ち遠しいくらいだよ。楽しみに待ってる」

「あはは。研究者としては、光栄の極みです。あ、そのボールはオマケとして差し上げます」

「え? ……い、いいの、かな」

「はい。というか、ここに置いといても邪魔になるだけなので、むしろ箱ごと持って行って欲しいなー、と。実は作り過ぎちゃって」

「そ、そうか。じゃあ、遠慮なく……?」

 

 

 おっ○いボールがぎっしり詰められた段ボールを押し付けられ、俺と白井さんは研究室を後にした。

 膝に置いた段ボールの中で、揺れに合わせておっ○いボールがぽゆんぽゆんと跳ねている。

 俺はその一つを左手で摘み上げ、改めて揉んでみる。

 やっぱり、幸せな揉み心地だった。

 

 

「……なぁ、白井さん」

「なんでしょう、おじ様」

「真島さんは、アレだ……天然、なんだろうか」

「……天才肌なのは、間違いないと思います」

 

 

 白井さんの返答には、なんとも名状しがたい感情が込められているように思えた。

 余談だが、おっ○いボールは「責任を持って処分します」と言う白井さんに、有無を言わさず没収された。

 筆舌に尽くしがたい喪失感だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、と」

 

 

 寮の自室へ戻った夢結は、抱えていた段ボールをベッドの上に置き、小さな溜め息をつく。

 

 

「持って帰ったはいいけど、どうしたらいいの、これ……」

 

 

 腕を組み、部屋の中をうろうろと。何故だか非常に落ち着かない。

 中身は、一応、友人である真島百由の、二の腕の感触を再現したらしいシリコンボール。

 酷く残念がる彼から、ほぼ強奪に近い形で貰い受けたものだ。

 こんなものを男の人が持っていてはいけない、という強迫観念に駆られたからだが、間違った選択ではなかった、と思いたい夢結である。

 

 

「シリコンは燃えるゴミだったかしら……? でも、下手に処分すると、何か……祟りそうな気も……」

 

 

 しかし、問題なのは“これ”の処理方法だ。

 友人の体の一部を模している訳だし、単に燃えるゴミとして出すのは忍びない。

 かといって人形のようにお焚き上げしては、幾らなんでも仰々し過ぎるだろう。

 一体どうしたものか。

 

 

「あ」

 

 

 そんな時、夢結はふと思いついた。

 これだったら、無為に物を捨てる罪悪感を覚えずに済むし、無駄がない。

 足早にクローゼットへ向かい、引き出しの奥で仕舞いっ放しだった、予備の枕カバーを取り出す。

 その中へとボールをぎゅうぎゅう詰めにして、形を整え……。

 

 

「よし、出来たわ」

 

 

 完成したのは、シリコンボールで一杯の、柔らか感触枕。

 名付けるとしたら、真島百由のおっ○い──もとい、二の腕枕だろうか。

 即席にしては良い感じである。

 出来栄えに満足した夢結は、早速それをベッドへと配置し……はたと気付く。

 

 

(もしかして私、今、とっても変態的な事をしてるんじゃ……?)

 

 

 紛い物とはいえ、友人のおっぱ○──ではなく、二の腕の感触を再現した物体で、勝手に枕を作ってしまった。

 勿体無い精神がさせた事とはいえ、誰かに知られでもしたら……。

 自分から言わなければバレそうにもないが、今更ながらに「早まったかしら」と後悔し始める。

 けれど、作ってしまった物は仕方ない。

 悪いのは自分。この枕に罪はない……と言い訳し、夢結は思い切って枕へダイブした。

 

 

「え、えいっ」

 

 

 ぽふん。

 と気の抜ける音を立て、夢結の顔が枕に埋まる。

 ……動かない。

 十秒経っても、一分経っても、更に十分が経過しようとも、夢結は全く動こうとしない。

 何故ならば。

 

 

「…………くぅ…………すぅ…………」

 

 

 ○っぱい──違った、二の腕枕の感触があまりに心地良く、瞬く間に眠ってしまったからである。

 その寝顔はまるで、子供が母親の腕の中で眠っているかの如く、無垢で安らかなものだった。

 この日、中途半端な時間に昼寝してしまった事で、夢結は翌日の講義中、教師の前で思いっきり舟を漕ぐという失態を犯す事になるのだが、まさしく夢見心地な彼女に、それを知る由はなかった。

 なお、睡眠の質が著しく向上し、戦闘能力評価値が10%も向上するという副作用があった事も、ここに記しておこう。

 

 






 Q:つまりどういう事だってばよ?
 A:おっ○いは偉大

 やっぱり夢結様は、見た目完璧美少女でも、実はそれなりにポンコツな所が可愛いと思います。
 可能な限りそれを描いていきたい所存。

 ラスバレ? 大丈夫、ああいう感じになるのは予想してました。
 無料分で隊服・J・さんを引けたし、ストーリーのクオリティーは高いので、充分です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。