なんで、なんでなんでなんでナンデ、なんでこうなった?
[デイリークエストが届きました。引き受けますか?]
若い女性の明瞭な声。
ゲームをしているわけでも、夢を見ているわけでも、はたまた妄想に浸っているわけでもない。
本来あってはいけないはずの虚空に、よくゲームである様なクエスト情報ウィンドウが表示されている。
祈るような、悪魔を目の前にしているような震える手で慎重に確認をする。
ピロンッ!
[デイリークエスト:強者を目指して]
[未完了]腕立て伏せ(0/100)
[未完了]腹筋(0/100)
[未完了]スクワット(0/100)
[未完了]10kmランニング(0/10km)
※注意:すべて完了できない場合未完了の度に準ずるペナルティーが科されます。
内容を確認するが、あまりにも受け入れがたい現実に思わず叫びたい衝動に駆られる。
だが、叫んでしまいそうになる前に
「気が付いたようですね?」
聞こえてきた低い声に我に返った。
「意識が戻ったばかりなのにすみません」
「我々もこれ以上遅らせることができませんので」
黒いスーツの男性が二人、近くに来ていた。
"知っている、俺はこの人を知っている"
正確には、知り合いというわけでも会ったことがあるわけでもない。
それなのに、なぜ知っているのか。
それは、この黒いスーツの男が好きな漫画のキャラクターにそっくりであるからだ。
その人は何も言わないこちらを不思議がりながらも名刺を差し出してきた。
「混乱されているようですね、我々はこういう者です」
差し出された名刺を受け取り、書いてある文字を読んでやっぱりと心の中で呟く。
日本ハンター協会監視課課長、犬飼...
俺だけレベルアップな件に出てくる、主要キャラクターだ。
上を見れば真っ白い天井、鼻を刺激する消毒薬の匂い、周りを見渡してみれば、ここは病院の一室で、俺がいるのは真っ白い清潔なベッドの上。
「水篠旬さん?大丈夫ですか?」
「...はい、すみません大丈夫です」
大丈夫なわけがない、気が付いたら病院のベッドの上で、しかも目の前に漫画のキャラクター?
しかも、俺が水篠旬?俺だけレベルアップな件の主人公の?
これはなんの冗談なのか、冗談でなくとも夢であってほしいと切に願う。
にしても、この二人、特に犬飼から感じる威圧感がすごい。
道で会ったら間違いなく目をそらして泣きながら譲ってしまう。
「そうですか、3日も意識を失っていたんですか...」
「えぇ、意識を失う前のことを覚えていますか?」
さて、これは...なんて答えたものか。
俺が意識を失う前といえば、コンビニで買ったご飯を食べ、風呂に入り布団の中へ、日課の漫画アプリ徘徊をしていて気付いたら病院のベッドの上。
しかし、馬鹿正直に話したとしてもふざけているようにしか見えない。
俺が聞いたら間違いなく阿呆を疑うし殴りたくなる。
確か、漫画だとどうだったか、うろ覚えだし変に誤魔化してもばれてしまう可能性が高い。
「すみません、ほとんど覚えていなく、足を切断されて痛みで意識が朦朧としてて...」
「そうですか」
犬飼は少し不審に思いながらも、恐らくすでに他のメンバーに確認し裏取りは済んでいるのだろう。
足が切断されたはずなのに、今は足がしっかりあったとしても突っ込みはこない。
「率直にお聞きします」
「水篠さん、もしかして再覚醒をされたのではないですか?」