ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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四章
俺様フラフープは中の上


 この日、私は本来ならば自分の居場所であり、同時に今の私では足を踏み入れる機会など当分訪れない筈の場所に呼び出されていましたわ。

 

 アマーラ帝国皇帝が住まう城内で大理石の回廊に杖と靴の音を立てながら進む私の心中は穏やかではありません。禁忌とされる双子として生まれ、一切合切凡庸な妹とは違って優秀だった私は皇帝の娘として迎えられる日が来ると信じていましたのに、今はこうして実の親との関係は秘匿とされ、皇室御用達の商会の娘として城に呼び出されている。

 

 ……義父も私に気を使って陛下に謁見する時に私をお供にする事は御座いませんでしたし、向こうも私に会おうとはしませんでしたわ。

 まさか双子の妹が何か言い出した? いえ、その程度で動く方ではないでしょう。だからこそ腹を痛めて産んだ私を捨てる事が出来たのですから。

 

「それに変な態度を取られても困りますわ。憐れみも謝罪も私にとっては侮辱ですもの」

 

 城内を護る帝国騎士には聞こえない大きさで呟く。双子の姉妹である事が伏せられている以上は真実を知る者にとっても私は皇女にそっくりなだけの商人の娘でしかありません。不敬罪とか勘弁ですわ。

 

 

 妹に思う所はあるものの恨み言は出て来ない。精々が私から足と立場を奪ったと思うのならば恥じない立ち振る舞いに努め、私を超えなさい、って所ですわね。

 

「にしても随分と心に余裕が出来たものですわ。……他に欲しい物が見付かったから余裕が生まれたのでしょうけれど」

 

 こうして城まで来た事で少し前まで無かった晴れやかな気分に驚かされる。さて、謁見の間も近いですし、下手扱かない為に気を引き締めませんと。何せ私には新たな野望が有るのですから。

 

 

「ああ、愛しのロノス様。どの様な形であっても必ずやお側に……」

 

 私は帝国有数の商会の娘。ならばこの恋心は個人としてだけでなく、商会の一員としても叶えたい物です。私、凄く強欲ですから公私の両方で満足行く結果が欲しいのですわよ。

 

 

 ……まあ、お側じゃなくても現地妻とか通い妻という妥協案も有りますがね。

 

 

 そんな事を考えていたら顔がにやけそうになる。ああ、野望とは、恋心とはとても素晴らしい物ですわ。それが有ればどの様な試練さえも乗り越えてみせるという気力が湧いて来ますもの。

 では、此処から先は正念場、告げられる内容にどの様に対応するかで私の今後が決まる可能性すら有りますわね。だから謁見の間の門の前で心と表情を切り替えて入室の許可を待つ。

 呼び出しておいて待たせる等と商人の取引ならば有り得ない対応ですが、相手は皇帝、国を率いる身分。まあ、当然ですわと思いつつ、私が来た事を伝令役が伝えれば漸く許可が降り、私は絨毯の真ん中を進むと一礼と共に頭を垂れて片膝を付く。

 入った時、一瞬だけ見た母の目は娘に向ける物では無かった。……ああ、本当にあの人にとって私は娘ではなくなったのですね。

 

 理解はしていましたが一抹の悲しさを感じつつ発言の許可を待つ。挨拶すら許可の後なのは面倒ですわね。

 

「頭を上げよ。発言を許す」

 

「ははっ!」

 

 ……それにしても本当に何用でしょうか? 皇帝なのですから伝令文の一つでも送りつければ宜しいでしょうに。……これは極秘事項、それも面倒な内容の予感ですわ。

 案外妹の身代わりになれとでも言うのかしら? いや、流石にヴァティ商会を其処まで煽る事はしないでしょうし……。

 

 恭しく淑女らしく、そんな教科書を丸暗記した様な挨拶をしつつも頭を巡らせる。さて、どうやって利益を引き出そうかしら?

 

「さて、早速本題に入ろう」

 

 相も変わらず親子の情の欠片も感じさせない声と表情で告げる生みの母の前にして心を揺らさずに利益を考えている辺り、私って本当に陛下の娘ですわね。妹、大丈夫かしら? 凡庸で要領が悪くて、良くも悪くも善人だったもの。

 

 こんな時に縁の切れた妹の心配をする私も人が良いのでしょう。そんな私は告げられた要件に思わず固まってしまう事になるのです……。

 

 

 

 

 

「暑い! 暑い暑い暑い暑い! あ~つ~い~!」

 

 さて、舞踏会も無事終わり、警戒していたテュラからの接触も先に襲撃事件が起きたからか発生しなかった今日この頃、僕達は学生らしく勉強に勤しんでいた。

 

 まあ、頭を使うのは苦手なリアスは目標ライン目前で頭の疲れと暑さでダウン。机に突っ伏してだらしなく両手を伸ばしている。服なんて緩められるだけ緩めて今にも下着が見えそうだ。

 

「確かに暑いけれど、屋敷の中だからってだらしない姿見せたら駄目だよ? ほら、しゃんとして。残り三ページ終わらせたら休憩にするからさ。アイスティーと凍らせた果物のかき氷を楽しみに頑張ろうよ」

 

「うん! 頑張るわ! ……にしても王国ってどうして此処まで湿度が高いのかしら? ムシムシしてて服が体に張り付いて不愉快だわ」

 

「氷の魔法を使える使用人が休みじゃなければ氷の霧でも散布して貰うんだろうけれど、今日は我慢しよう。明日には帰って来るし、テストだって近いんだからさ」

 

 貴族の学校だから基本的な領地経営学は学ぶし、一般教科だって当然存在する。そして夏休み前の臨海学校前にはテストだってあるんだ。尚、赤点取ったら居残って追試。大勢の貴族に恥ずかしい所を見られるからって皆必死に勉強している。

 

「うん。友達と楽しみたいし、もう少しだけ頑張るわ。……終わったらポチに乗って全力で飛んで貰いましょう。風が涼しくて気持ち良さそうだもの」

 

 まあ、貴族の学校だから座学は領地関連やら戦術論とかそっち方面が多いし、大抵の貴族は家庭教師に昔から教わっている。なんと驚く事にリアスでさえ最低ラインはクリア可能だ。

 

 問題は数学とかの一般教科。正直言ってリアスは赤点を回避可能か微妙なラインだ。普段から勉強してないからギリギリで困るんだよね。

 

「私も臨海学校は楽しみです! ……追試回避は難しいですけれど」

 

「……うん、頑張ろうか」

 

 そして赤点の可能性が高いのはリアスだけじゃなくてアリアさんもだ。どうも幼い頃にちゃんとした教師を付けて貰えなかったらしい。……闇属性だって理由じゃなくって、うちの領地が繁栄した影響で金の流れが変わった結果だ。

 

 まあ、別に責任云々じゃなくって友達だから勉強に付き合っている。リアスよりは少しはマシなんだけれど、それでも下から数えた方が早い。

 

 さてさて、大丈夫かなぁ……。

 

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

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