ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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端から見ていて面倒臭い

「じゃあアリアさんの寮の門限も有るから急ごうか」

 

 僕達の目の前には人の手が加えられて森の中を進みやすくなった道が続く。

 このまま森の中を少し蛇行しながら進めば森の向こう側まで数時間の道のりだ。

 

 但し、普通に進んだ場合のみだけれども。

 

「おい! 未だ妾が話しているのに進む気か!?」

 

 背後から声が掛かるけれど、本人が助力は不要だって言っているなら構わないだろ? 

 見栄を張って言っているなら兎も角、代価を払っての契約が成立しているのなら僕達が手を出すのはどうかと思うし、構わずに一歩踏み込めば景色が一瞬で変わった。

 

「こ、此処が妖精さんの領域……」

 

 目の前に広がるのは首が痛くなる程に見上げても頭が見えない程に巨大な木が生い茂って空を覆い隠し、代わりに幹自体が発光して淡い光が周囲を照らす不思議な森の中。

 アリアさんは森の入り口から木に囲まれた場所に一瞬で移動した事に戸惑っているけれど、同時に光が泡みたいにな形になって地面から湧き続ける光景に目を奪われていた。

 

「アリアさん、気を付けてね。この場所は見た目通りの道じゃない。空間が歪んでいて、曲がり角を曲がった後で来た道を戻っても別の場所に出る事もあるんだ」

 

「ついでに言うならモンスターも出るわ。どうもこの空間の力で植物が変な風に影響を受けたらしくて。管理者がしっかりしていれば起きない事なんだけれど、そもそも管理の修行用の場所だからそうはいかないわ」

 

まあ、本人に聞かれたら面倒だから口にしないけれど、他の姉妹が管理している領域はもう少しマシな状況だ。

 それは無能って事じゃなく、この領域その物に理由があるんだけれど、リュボス聖王国の貴族でしかないロノスが知っている筈がないから口にはしない。

 

「お二人とも詳しいんですね。あっ! 此処で修行したんですよね。一体どんな修行を……あれ?」

 

 おっと、いけないいけない。二人揃って一瞬意識が飛んでいたらしく、アリアさんが心配そうだ。

 ポチの親と体をローブで繋いで走り回るとか、常に追い立てられて来たモンスターに囲まれた状態で戦い続けるとか、ハルバートを持ったあの人相手に森の中での逃走しながらのサバイバルとか……。

 

「……大丈夫。僕達は加減を知っているから、僕達は」

 

「大丈夫よ、大丈夫」

 

「え、ええ……」

 

 アリアさんは僕達の様子を目にして今からどんな修行が始まるのかと不安になっているけれど、流石にか弱い女の子に無茶はさせやしないさ。

 

「安心して、アリアさん。僕達は君が強くなる為に力を尽くすけれど、何かあれば絶対に助けるからさ」

 

「ロノスさん……」

 

 不安を追い払う為、そっと彼女の手を取る。

 ……ちょっとゲームでの知識を利用するから嫌だけれど、アリアさんの設定として人間関係の希薄さからか手を握られると安心するってのが有ったのを知っているんだ。

 

 流石に見ず知らずだったり不仲だったりする相手なら兎も角、僕への印象は悪くないのか嫌な様子は見られない。

 ……ちょっと罪悪感が有るけれど、不安解消の為であって口説き落とす意図は一切無いから大丈夫……かな?

 

 あっ! 同性のリアスに任せれば良かったや。

 

 僕がちょっと失敗した事に気が付き、慌てて手を離そうとすればアリアさんは少し名残惜しそうにして、離すタイミングを失ってしまう。

 僕はリアスに視線で助けを求めようとしたけれど、助けは思わぬ方向から入ったんだ。

 

「……来てしまったのなら仕方が無い。そのヘンテコ女が修行する許可を出してやる。ロノス、貴様は妾の為に雑用ぞ。木の実を集めるのを手伝う事を許可しよう」

 

 レキアは僕とアリアさんの手を引き剥がすと、そのまま僕の指を小さな手で握って引っ張ろうとする。

 当然、普通は僕は動かせないんだけれど、無理に引っ張ろうとした挙げ句に手が滑って勢い良く飛んで行くだなんて事故が起きても大変だ。

 

 ……仕方無いなぁ。

 

「はいはい。ちょっと僕はレキアの手伝いをして来るよ。女王様との約束だし、臨時の報酬も先払いで貰ったしね。リアス、ポチには追い込み役を任せるからアリアさんをお願いね」

 

「おい! 妾の手伝いという至上の誉れを貴様に与えてやるのだから喜んだらどうだ!」

 

「はいはい、嬉しいなぁ」

 

「……ふん。それで良い」

 

 面倒だけれど約束は約束だし、レキアだって一応女の子だから極力怪我は避けてあげたい。

 だからレキアが引っ張る速度に合わせて歩き出すし、手だって上げたままだ。

 結構適当に返事したけれど、レキアには見抜けなかったのか満更でもない様子だし少し助かったな。

 

 

 自分から提案して連れて来ておいて放置だなんて気が引けるけれど、そもそもレキアの件をついでに済ませようとした罰かな?

 この世界には実際に神様だって居るし、その内二人は天罰として全人類を滅ぼそうとした事さえ有るのだから可能性は無くはないけれど、それでも僕は無罪を主張しよう。

 

 だってレキア関連の手助けって基本的に一人居れば済む雑用ばかりな上に態度が悪いんだから。

 何時も僕を指名するけれど、嫌いな相手をこき使って楽しんでいるのかな?

 

 

「……面倒ね」

 

「え? あ、あの、本当に私のせいでお手間を……」

 

「違うわよ。面倒なのはレキアの事。昔からお兄様への態度がアレなんだから見ていて嫌になるわ。ポチ、お願いね。適当な数を集めて来て」

 

「キュイ!」

 

「……それにしても酷い扱いですし、ロノスさんも大変ですね」

 

 

 

 

 さて、お兄ちゃんがツンデレ妖精に連れて行かれたし、任されたからには張り切るわ。

 ポチは早速とばかりに森の奥へと飛んで行って、それなりの数を集めるのも時間が掛かるし、取り敢えずアリアの実力を見せて貰いましょうか。

 

「じゃあ、早速だけれど地面に向かって魔法を撃って貰える? 使える奴全部」

 

 魔法ってのはイメージの具現化で、イメージが固まっていないと不発に終わる。

 お兄ちゃんは自転車に乗れるようになるのと同じだって言ったけれど、私が自転車に乗れるようになる前に死んじゃったのを思い出して落ち込んでいたわよね。

 そんなの気にする必要なんて無いのに……。

 

 兎に角、それをちゃんと発動するには兎にも角にも練習有るのみ!

 何度も放ってイメージと比べ、違いを修正して行く。

 他の属性は先人達が作り出しているし、他の人が出すのを見ればイメージが掴みやすいけれど、私達は古い資料に残っているのが幾つか有るだけだし、私も苦労したわ。

 

 ……前世でのゲームやマンガの知識があったから”魔女の楽園”には存在しなかった魔法も生み出せたし、アリアのだって何とかなるわよ……多分!

 

「じゃ、じゃあやります! シャドーボール!」

 

 アリアが両手を突き出して放ったのはゲームでも初期から使える黒いエネルギーの球体。

 教えられる先生が居ないし、火属性の”ファイアボール”を真似て生み出したんだろうその魔法は真っ直ぐ飛んで当たった地面を弾けさせた。

 

「威力は他の属性より高そうね。じゃあ、次は私の魔法の真似をしてみて!」

 

「え? だってリアスさんは”光”ですし、私とは正反対じゃ……」

 

「どっちもよく分からない変なエネルギーを放つから同じ同じ。じゃあ、イメージとしてはさっきの魔法を大きくした後、更に……」

 

 あっ、どうやって説明しようかしら?

 私が今から見せるのは光の魔力を散弾みたいに放つ”ホーリーショット”なんだけれど、この世界って散弾銃なんて存在しない……そうだ!

 

 私は今、凄く分かり易い例えを思い付いた自分を手放しで褒め称えたい気分だったわ。

 

 

「クシャミをして唾を撒き散らすイメージで……ホーリーショット!!」

 

 巨大な光の球体が無数に散らばって地面に深い穴を無数に刻み込む。

 

「じゃあ練習よ! クシャミだからね、クシャミ!」

 

「あ、あの、分かり易くは有りますが……女の子としてはどうなのでしょうか?」

 

 ……あれぇ?

 

 私、もしかして失敗しちゃった?

 

 

「え、えっと……あっ! リアスさんって何度も自分を”世界で二番目に強い”って言いましたけれど、世界一ってもしかして……」

 

「勿論お兄ちゃ……お兄様よ。だって当たり前じゃない。私のお兄様なんだから」

 

 凄く強い私を傍で守ってくれる自慢のお兄ちゃんが世界一強くないなら、一体誰が世界一なのかって話よね。

 

 

「キュイ!」

 

「あら、随分と早かったわね」

 

 鳴き声の方を向けばこっちに向かって飛んで来るポチと、ポチに追い立てられて来た数十匹のモンスターの姿が見えた。

 

 

「じゃあ全部アリア一人で倒しなさい! そうすれば強くなれるから!」

 

「ええっ!?」

 

 所で急に話が変わったのは何故かしら?

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

  • ポチ
  • レキア
  • 夜鶴
  • ネーシャ
  • ハティ
  • レナ
  • パンドラ
  • サマエル
  • シロノ
  • アリア

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