ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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その人選に異議あり!

 その発言が部屋に広がった瞬間、クヴァイル家のメイド達は一糸乱れぬ華麗で迅速な動きに出た。手に持っていた物を置いても構わない場所に音を立てずに置き、僕が咄嗟に目を向ければ両手で耳を塞いでいる。

 

 あれは”聞いていませんよ”のポーズ。貴族同士の会話では側に控えた使用人達は居ない者として扱われるか部屋から出されるかだけれど、今回みたいに唐突に出た個人的な話の場合、如何にこんなポーズを取るのかがリュボス聖王国の使用人の嗜みだ。

 流石はウチのメイド達、一切の手抜かりがないなと戦慄さえ覚えたよ。

 

「……えっと、お兄……ちゃん? 覗い……たの?」

 

「事故! 事故だから! 本人の前で事故って連発するのも失礼な気がするけれど事故でしかないから!」

 

 動揺して呼び方が二人だけの時のになっているリアスに必死に弁明して落ち着かせに掛かる。この場で落ち着いて貰わないと本当に不味いぞ、僕!

 メイド達はこの場に居るべきでないと察したのか仕事を装って部屋から出て行き、最低限何かあった時に対応する為に一人だけ残る。

 

「その話、詳しくお聞かせ願いますか? 若様の反応も含めてお願いします」

 

「何でよりによってレナ!?」

 

「それは私が乳母兄弟で一番関係性が近いからでは? アリア様とも他の方と比べれば付き合いも有りますし、先輩方は的確な判断だったと思いますよ?」

 

「そうだけれど! 確かに人選としては間違いではないんだけれど、敢えて言わせて。人選!」

 

 さっきも一人だけ耳を塞いで無かったし、居ない者として振る舞う所かグイグイ入って来るし、親しい仲だけれど、親しい仲に礼儀が無い!

 

 アリアさんだって思わず話しただけだろうし、本来なら話すべきじゃないから恥ずかしいに決まってるしさ……。

 

 

「えっと、ロノスさんは直ぐに立ち去ろうとしたのですが、私が思わず抱きついちゃって……」

 

 ほら、恥ずかしいみたいだし。てか、素直に言わなくても良いんだからね? アリアさんって少しやさぐれているけれど天然な所もあるよね。

 

「それで?」

 

「そ、その後で私の初めて(のキス)を勢いであげちゃって、(歯がぶつかったので)ちょっと痛かったです」

 

「……お兄ちゃん?」

 

「若様、一度経験したのなら後は他の方相手にも。具体的に言うならばパンドラをさっさと相手して私に伽を……」

 

 言い方っ! 大切な部分が凄く足りない!

 

「……」

 

 あっ、レキアとポチが窓を少し開けてのぞき込んでいる。今は誰でも良いから援護を……。

 

「ふんっ!」

 

 助けを求めて視線で合図をするけれどレキアは不機嫌そうに鼻を鳴らすとポチを連れて向こうに行っちゃった。せ、せめて。せめて心の癒しになるポチだけでも残して欲しかった……。

 

 

「えっと、アリアさん? その言い方だと色々と誤解が生まれそうだからさ……」

 

「え? ロノスさんとキスをした事を言っているだけですよ? どんな誤解をされるんですか?」

 

 妹達の視線を浴びて、これ以上の誤解をされてなるものかと冷や汗ダラダラの僕。対するアリアさんは心底疑問って顔だ。くっ! 今の彼女が演技なのか本心なのか分からないだって!?

 

 

「アリア様は私同様に官能小説が愛読書ですし、分かっておいででは?」

 

「……てへ」

 

「キ、キス。ビックリしたぁ……」

 

「姫様もアリア様の冗談の内容が伝わったのですね」

 

 レナの指摘に舌を出して冗談だったと示すアリアさん。可愛いけれど心臓に悪いから勘弁して欲しい。にしても、空気読まないレナの発言に助けられる日が来るだなんて……。

 

 リアスもレナの指摘でキスについては頭から吹っ飛んだらしく、後は勉強に持ち込めば絶対に忘れちゃうだろう。リアスはそんな子だ。

 

「レナ、助かったよ。後でお礼でも……」

 

 まさか猥談大好きで空気を一切読まない事が僕を助ける事に繋がるだなんて意外にも程があった。

 

「では、痛かった、とは?」

 

 あれれ? 嫌ぁな予感。

 

「ちょっと驚く事があって歯がぶつかっちゃったんです。初めてのキスだったのに……」

 

 お陰で変な空気は何処かに行ったし、お礼は何にしよう? 何でも、とか言ったらナニを要求されるのか分かったもんじゃないし、僕のポケットマネーを使おうか。

 

「……ふむ。確か若様もキスは今までしてなかった筈ですよね? ならば互いの初めてを交換し、不慣れな為に痛い思いをしたのですか」

 

 ……おい、言い方。駄目だ、前門の虎後門の狼だ。レナのお陰でアリアさんの発言をどうにかしたと思ったら、今度はレナの発言で微妙な空気になったよ。

 

「さて、これは問題ですね。初めての行為で失敗したのがトラウマになって今後に響いてもいけませんし、若様にはキチンと学んで頂かないと」

 

「問題なのはアンタの発言よ、レナ」

 

「一番問題なのは君の思考回路だからね、レナ」

 

「おっとっと、相変わらず息ぴったりのご兄妹ですね。では、姫様も私と若様の口付けを見てお学び下さい。まあ、私が夢中になった挙げ句にどうなるかは保証致しかねますが。半々の確率で大丈夫でしょう」

 

「うん、ちょっと黙ろうか」

 

 これ以上喋らさせたら駄目だ。余計に変な空気になりそうだし、僕はリアスと一緒にレナを追い出そうと手を伸ばしたけれど、逆にその手を掴まれた僕はレナに引き寄せられる。

 

「では、練習を始めましょうか。最初は普通の、続いて舌を使った濃いのを。ええ、ご安心を。私が最初から最後までリードしますので。それで口を塞げばお望み通りに黙りますので黙らせて下さいませ」

 

 レナの頭には何時もは隠している角が伸び、眼鏡の奥が怪しく光る。ほ、本気だ! 練習の口実で僕の唇を奪う気だよ、この淫乱メイド!

 

 振り解こうとしてもレナの腕力はリアス以上、僕じゃちょっと難しい。リアスとアリアさんは慌ててレナを引き離しに掛かるんだけれど、まるで岩山みたいにレナは微動だにしないで掴んだ僕の手を自分の胸に押し当てながら唇を近付けた。

 

「……いただきます」

 

 本音が出たなあ。もう欲望を口実で隠す気も無いらしいレナが僕の唇を貪ろうとし、僕は思わず目を閉じる。そのせいで手に触れる柔らかい感触が鮮明に感じられるし、柔らかい物が唇の先に僅かに触れた事で僕は思わず目を開ける。

 

 目の前にはレナの顔。……僕じゃなくてポチにキスをしていて、ポチもレナもビックリしていた。

 あっ、レナったら嘴の先が歯に当たったらしく悶絶しているよ。アレは痛そうだ。

 

「キュイ? キュ……」

 

 さっきまで庭に居たのに気が付けば室内に居たらしく、屋敷の中に入った事で怒られるんじゃと不安そうに鳴くポチまあ、唇へのキスは別に気にしていない。だってグリフォンだから。

 

「それにしても……」

 

 一瞬だけ触れた唇の感触を思い出して恥ずかしくなる。アザエル学園に通う事になる迄は此処まで女の子に積極的に迫られるのって家柄目当て以外では一回しか無かったし、その一回はトラウマだから無かった事にしたい。ウサギが年中発情期って本当だったんだねぇ……。

 

「ふん。キスの一つや二つで大騒ぎするなど大袈裟だな。妖精の私には意味不明過ぎて余計な茶々を入れてしまったぞ」

 

「ああ、今の入れ替わりはレキアの魔法か。ポチ、部屋を汚しても気にしないで。怒られるのはレキアだから」

 

「……冗談だ。貴様を助ける為にやった。だから怒られるのは根本的な原因のエロメイドだけにしろ」

 

 レキアもメイド長が怖いんだね。こんな僅かな期間で妖精の姫さえ恐れさせる彼女って本当に一体……。

 

「でもさ、キス程度って言っているけれど、キスって妖精にとっては重要なんじゃないの? 認めた勇士に祝福を与える”フェアリーキス”って有名じゃないか」

 

「あれは余程信頼した相手じゃないと祝福を悪用されたら汚名になるからと滅多に行わないだけで、キス自体にはそれ程拘りは無い。……まあ、だからこれにも大した意味は無いな」

 

レキアはそう言うなり僕の頬に手を当てて下唇に軽い口付けをしたんだ。

 

「レ、レキア?」

 

「どうも面倒な事に巻き込まれそうな友に……もう一度言うが友を心配して祝福をくれてやっただけだ。詰まらん勘違いはしてくれるな。私にとって何ら特別な事では無いのだから」

 

 相変わらずの態度のレキアだけれど背ける前に一瞬見えた顔が少し赤かったんだけど、言わない方が良いよね?

 

 

 

 

 

 

「キュイ?」

 

 あっ、うん。風邪じゃないから心配は要らないよ、ポチ。




もう直ぐブクマ1000

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

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  • レキア
  • 夜鶴
  • ネーシャ
  • ハティ
  • レナ
  • パンドラ
  • サマエル
  • シロノ
  • アリア

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