ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい 作:ケツアゴ
「さて、今日は久々に語らせて貰おうか。俺の先祖がどれ程の名工だったのかをな」
灼熱の焔を内包する炉からの熱で室内の空気は吸い込めば肺が焼ける程に熱せられ、こうして正座をしているだけでも玉の様な汗が滴り落ちる。見渡さなくても数多くの工具や武具が並べられたこの場所は鍛冶屋の工房、職人達の戦場だ。
並んで正座をする僕と夜鶴の正面にドッシリ座り込んで十中八九悪人だと判断されるであろう男の人が威圧感たっぷりに話す。どうやら職人の一族としての誇りを刺激しちゃったらしいな。
「あ、あの、リュウ殿? 私が言い出した事ですし、主は……」
「其奴はお前の振るい手だ。武器とは己の命を護る為の存在。故に絶対の信頼を向けなければならない。事情は察したが……それとこれとは別だ」
「……はい」
目の前の人から放たれる威圧感に完全に萎縮した夜鶴だけれど忠義心からか僕だけでも解放しようとするけれど無駄だった。今まで何度も言い聞かされた言葉で却下されたら僕だってこの場から去る訳には行かない。うん、夜鶴と僕は運命共同体だ。
「では、先ずは先祖について再確認するぞ。夜鶴、貴様には言うまでも無いだろうがな」
この状況に至った経緯をどうやって説明すれば良いかと言うと、ちょっと前まで遡るんだ。そう、あれはテストがいよいよ明後日にまで差し迫った日の事だった。最後の追い込みでストレスが限界に達したリアスを気分転換としてポチでの遠乗りに連れ出して部屋に戻ったんだけれど、ドアを開けるなりギョッとしたよ。
「主様。誠に勝手なのは重々承知では御座いますがお願い致したい儀が御座います。どうかお聞き届け下さい」
「夜鶴? どうしたのさ?」
何せ夜鶴が床に片膝付いて深々と頭を下げてそんな事を告げて来たんだ。普段はお願いを言うとしても本体である刀の手入れとかの当然の事だし、此処まで畏まって言って来るだなんて珍しい。
「取り敢えず座ろうか? 落ち着いて話をしよう
うん、お願いが有るのも話を聞くのも僕は別段構わない。夜鶴は大切な部下で愛刀だしさ。でも、今の姿はちょっと不味い。いや、見ていたいって欲望も少しは有るんだけれど、目の保養だし。
此処で再確認だ。夜鶴の服装はどんなのだった? 答えは胸元が大きく開いたセクシー仕様の忍者装束。その下は網タイツなんだけれどスケスケだし、正直言って網タイツの方が素肌よりもエロい。……跪いてるとさ、この距離からだと谷間が嫌でも目に入るんだよ。嫌じゃないけれど。寧ろ嬉しいけれど刺激が強い。
「はっ! 主の寛大なお心に深く感謝致します」
駄目だ。凄く嬉しそうに忠誠心を向けて来る彼女を見ていたら良心が痛む。胸の谷間が気になっていたとか絶対に言えない。言ったら”お望みでしたら”とか言って恥ずかしそうにしながら脱ぐだろうし、少し見たいけれどさせられない。
何か夜鶴の色気を感じる時って自分が汚く感じるんだよなあ……。
「あ、主? 溜め息とはまさか……」
「違う違う。別の件だから君は無関係だ。じゃあ、話を聞こうか」
自分のお願いに落胆したと勘違いしたらしい夜鶴が不安そうな顔になったし、早くお願いについて話を聞こうか。にしても忠誠心高いし仕事中は完全に道具になって心を殺すのに、普段はメンタルが弱いし残念な所が有るんだよね、この子ってさ。対になる明烏は明烏で喋れないけれど戦闘狂だし、打った職人ってどんな性格をしていたんだろう? 夜鶴を打って数年後に死んだし関わりが少なかったから彼女に訊いても分からなかったしさ。
まあ、目元か作業日誌とかマメな人だったらしいから彼なら知っていそうだけれど……。
「長丁場になりそうで怖いから止めておくけれどさ。……おっと、独り言さ。じゃあ、言ってよ。僕に出来る事なら叶えるからさ。何せ普段からお世話になっている大切な夜鶴のお願いだ。愛妻家が妻の頼みを聞く位の心構えでいるからさ」
「つ、妻!? あわわわわ……」
あーあ、やっちゃった。野球のバッテリーを夫婦って呼ぶみたいな事を聞いた事があるし、相棒的な意味で愛妻って例えた僕だけれども、夜鶴の純情さは計算外だったよ。
信頼を示した積もりだったのに真っ赤になって顔から煙が出そうな勢いだし、これじゃあ話にならないね。
「おーい。夜のメンバーの内で誰か説明出来る子は居るかな? ありゃ? 返事が無いや。全員出払ってるっけ?」
仕方が無いから分体の夜達に話を聞こうと呼びかけるんだけれど、何時もだったら直ぐに姿を見せるのに今回は返事すら無しだ。出せる限界数全員が既に何処かに出ているなら分かるんだけれど、そんな命令は出していないし……。
「もしかして何か怒らせてしまった? 心当たりは……有るな」
思えば忠誠心が高く生真面目なのに変な所で色事に対する夜鶴を恥ずかしがらせるケースが何度かあった。僕としては悪気は無かったんだけれど、個性が芽生えて殆ど別人になっていても夜の面々からすれば自分を弄んでるって認識だったのかも……。
「僕が何か気に障る事をしたなら謝るよ。だけど、夜鶴も夜の皆も僕にとっては大切な存在だって事は信じて欲しい。君達にずっと側で支えて欲しいと思っているよ。だから、僕に悪い所が有るのなら……」
「あっ、いえ。何か深刻そうな感じだったので訂正しますけれど、別段不満は無いですよ? このまま放置した方が本体と主のやり取りが楽しめそうだなって満場一致になっただけで」
「ほら、起きて下さいよ、本体」
「じゃないと素っ裸に剥いて媚薬盛った主に差し出しますよ?」
「その時は私達も是非!」
直すから言って、と最後まで言い切る前に夜鶴の中から数人分体が出現。最初の一人は気まずそうにしていたけれど、残りがちょっと。最後の一人なんて胸元を掴んで脱がす演技さえしてるしさ。まあ、出なかった動機が動機だから全員揃って問題でしか無いんだけれども!
「……お前達、幾ら主が温厚な方であっても無礼が過ぎるぞ」
真っ赤になったまま”新婚”だの”ハネムーン”だのブツブツと譫言を呟いていた夜鶴も服を脱がす振り迄されていたら我に返った夜鶴は瞬時に表情を切り替える。生真面目で照れ屋な可愛い女性から瞬時に心を捨てた冷徹な忍者へと早変わり。慌てて逃げようとした分体に次々と拳を振るって行ったんだ。
「へぶっ!」
「ごふっ!」
仮にも自分と同じ肉体相手に一切の容赦が無い姿は凄まじい物を感じたよ。鳩尾に肘鉄を叩き込み、横腹に回し蹴り。まったく容赦を見せないし、完全にキレてるな。
「ヤバっ……」
「何処に行く?
逃げようとした一人の腕を掴み、ふざけて脱がす真似をしていた最後の一人に向かって振り抜く。その分体は逃げようとしたんだけれど網タイツが指に引っ掛かって逃げられず、見事に天井にまで吹っ飛ばされた。
「あべっ!」
「ぶべらっ!」
あれ? 今、変な音がした気が……。
「成敗完了。まったく、アレが本当に私なのだろうか?」
振り抜いた時に僕に背中を向けたまま夜鶴は呟くけれど、それには僕も同感だ。いや、本当に制作者がどんな人なのか気になって志方無いよ。
そんな事を思いつつ最後に吹っ飛ばされた分体の方を見れば天井にぶつかった後で頭から床に落ちて居たんだけれど、指に何か網みたいな物が絡まって……。
「主、お見苦しい真似……を……」
「……あっ」
さっき聞こえた何かの音と分体の手に引っかかった物の正体が判明した。吹っ飛ばされた時、網タイツに指が絡んでそのままビリって破けたらしく、大きく開いた胸元から押さえつける物の無い胸が飛び出して揺れていた。
……デカい。
「ひゃ、ひゃわぁああああああああああっ!? ……きゅう」
「結局振り出しに戻っただけかぁ。にしても凄くエッチな服装なのに純情過ぎない? まあ、それは置いといて……」
今はキャパオーバーで立ち尽くしている夜鶴を座らせるなりして休ませるべきだ。だから僕は近寄ったのだけれど、気絶して転がっていた分体の一人に躓いて倒れ込んでしまった。
「おっと、危ない……あっ」
咄嗟に前に手を突きだして触れた物を掴んで転ばずに済んだけれど、凄く柔らかいし、何だろうと思って顔を上げたら夜鶴の胸だった。どうやら転びそうになった僕を助けるべく動いた結果、タイミングが重なったらしい。幸か不幸かは別として。……幸寄りと言えなくも無いかな? 夜鶴は完全に気絶だけれど。
「取り敢えず誰かに見られる前に……あれ? 網タイツに僕の指も絡んで……」
残った網に指が絡んで離れられず焦る僕。だけれども無情な事に背後で扉が開く音がした……。
尚、露出した胸は掴んだままである。
アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません
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ポチ
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レキア
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夜鶴
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ネーシャ
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ハティ
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レナ
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パンドラ
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サマエル
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シロノ
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アリア