ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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閑話 とある鍛冶屋とその娘

私のパパは……訂正。私の世界一のパパは世界一の腕前を持つ鍛冶屋だ。元々は戦いを求め戦場を彷徨う放浪民族の出だったらしいけれど、今はこうやって平和に暮らしている。……昔の癖か定期的に居住地を変えるのは娘として困り物だけれど、孤児院から引き取ってくれたパパの為だから仕方が無い。

 

 それに変な虫が寄って来ないのも良い。居住地をコロコロ変える程度で付いて来ない程度の女であればパパに相応しくないし、そもそもパパに相応しい相手など存在しないから。それでも身の程を弁えずに近付く羽虫は……。

 

「……お客」

 

 パパの仕事中にご飯を作っていたら玄関の呼び鈴が鳴る。急なお客か、はたまた忙しいからパパが伝え忘れていた相手か、どっちでも同じ。パパと私の時間の邪魔者には変わらない。

 

「確か此処に……」

 

 パパが子供の頃からお世話になっているというクヴァイル家から貰った魔法のアイテムをタンスから取り出す。お金は十分稼げているし、何なら私が養えば良いのだからお帰りいただこう。取り出したのはペンダント。力を発動させれば私の見た目は幼い少女に。十歳は若返ったし、恐らくパパと出会った九才辺りの姿。

 

 さて、これで大袈裟に騒いで帰って貰おう。子供の姿って本当に便利だ。何せ理屈も何も無視して感情をぶつければ良いのだから。

 

 

 玄関を開ける前に鏡でチェック。不審者に怯えた子供の顔の完成だ。では、大いに泣き叫ぼうか。

 

 

 

 

 

「……どうも」

 

「やあ、久し振り」

 

「……ちっ」

 

 なんだ、クヴァイル家の奴か。流石にこの知り合いに子供を泣かせる不審者の汚名は着せられない。……残念だ。

 

 

「あっ、そうそう。これはほんの気持ちで持って来た手土産なんだけれど。リュウさんの好物のアップルパイだけれど……。所でその姿は?」

 

「…………ウザイ。

 

 

 

 

 手土産は受け取ろう。パパの喜ぶ顔の為だ。だけれど少し気に入らない。パパを喜ばせるのは私の役目であって、他の連中、特に女かも知れない奴の作った物ではないわ。貴方、付き合いが長いのだからその辺の気遣いをいい加減学んだらどうかしら? まあ、手土産にパパが喜ぶ物を選んだ所は評価するし、パパの腕前を買っているのは当たり前の事だけれど少しは認める理由にしてあげる。それとこの姿については言及禁止」

 

「相変わらずリュウさん関連だと饒舌だね」

 

 当たり前じゃない。此奴、何を言っているのかしら? 私はロノスの言葉に呆れながらも家の中に招き入れ、後から続いて入ろうとした女の前で扉を閉める。

 

「夜鶴の事はまだ嫌い?」

 

「ええ、嫌いよ。あの女、刀だって分かっているけれど、パパの興味を引いているもの。その気が無くても悪い虫を家に入れたくないわね」

 

 本当に此奴は当たり前の事を質問して来るわね。

 

 

 

 

 

 

 

「ふう……」

 

 最後に大きく振り上げた鎚を振り下ろし、魂を込めた武器を完成させる。幼き日より続けた鍛冶仕事だが鍛冶場の熱気には心地良さを感じるものの相変わらず玉の様な汗が流れ落ち、首に掛けた手拭いで拭き取れば瞬く間に湿ってしまった。

 

 不意に炎の音に混じって聞こえた小さな音。鳴ったのは俺の腹からだ。仕事に熱中して気が付かなかったが、どうやら俺は空腹らしい。

 

「ああ、今日は昼から何も食べていなかったか。……ミリアムの奴も腹を空かせて待っているだろうし、一旦休憩にするとしよう」

 

 思い浮かべるのは十年前に引き取った娘の姿。俺は仕事中は一切他の事に気を取られないので飯すら忘れてしまうのだが、何度先に食べるようにと言っても彼奴は俺を待ち続ける。

 

 ……可愛い娘だ。白い髪に俺が初めて買ってやったカチューシャを飾り、俺の普段着と同じ極東の服を好んで着る。俺の世話ばかり焼いてないで彼氏の一人でも作れば良いものを、逆に俺に女が近付くのを嫌がって邪魔するのも子供としての我が儘ならば仕方が無いのだろう。そんな所も可愛い奴だ。

 

 十一歳しか年が離れて居ないから偶に夫婦に間違われるのは勘弁して欲しいがな。幼い頃から育てた娘を女として見る趣味は俺にはない。彼奴も俺にベッタリだが、そんな感情があるのかと知り合いに言われた時は珍しく声を上げて怒っていたし、俺もそんな風に勘ぐられるのは不愉快だ。

 

「ああ、俺と同じ様に妹を溺愛する知り合いが来る予定だったな。俺の娘は大人し過ぎるが腹黒く、あっちのはじゃじゃ馬で単純だ。……もしかすれば俺が作業中だからと遠慮して入って来ないだけで既に来ているやも知れん」

 

 彼奴と妹は何かと注文をして来る常連であり、祖父は一族の恩人で、俺個人にとっても世話になった相手だ。娘も他人は嫌いだがあの兄妹達にはちゃんと接するし、俺もちゃんと相手を……遅かったか。

 

 鎚の音が鳴り響かなくなったからだろう。家から工房に続く扉がノックされる。別に職人以外が作業中に入っても怒りはしないのだが、ミリアムもあの二人も変に遠慮してむず痒いばかりだ。

 

 いや、遠慮するのは兄の方だけか。アホの妹の方を制御していたな。

 

「構わない。入ってくれ」

 

 俺が許可を出すとミリアムに先導されて二人が入って来るが、今日は妹と一緒ではないのだな。銀の髪をした小僧の後ろからは青い髪をした少女……偉大なる我が先祖が打った最高傑作の片割れの姿があった。

 

「さて、用件を聞こうか。俺に何を打って欲しい?」

 

 此奴が何の目的でどの様な使い方をするのかは興味が無い。創り出した物に誇りはあっても巣立った雛の世話を焼く親鳥など居ないのと同じで、俺にとっては何を創り出すのかだけが重要だ。例え幾人の命を奪っても鍛冶屋は自分が創り出した物を誇りに思わなければならない。

 

 俺とミリアムにその武器で手出しするならば全力で抗うがな。例えばアース王国の亡き王妃の遣わした兵士みたいにな。王国に従えと高圧的に出て娘を人質に取ろうとした愚か者達。その愚かさの代償は払って貰ったが……。

 

 

 

 

 

「ああ、そのついでに夜鶴と明烏の手入れもしておこう。基本は教えたが、こう云ったのは定期的に本職に任せるべきだ」

 

「確かにリュウ殿は私と明烏を打った職人の子孫ですからね。……どんな人でしたっけ?」

 

「……何?」

 

 俺は一瞬我が耳を疑った。偉大なる先祖について忘れただと? よりにもよって最高傑作であると先祖が認めた妖刀がか?

 

 ああ、駄目だ。流石にこれは聞き逃せない。

 

 

「二人共、正座だ。それほど知りたいなら語ってやろう。二度と忘れる事など出来ない程にしっかりとな」

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

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