ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい 作:ケツアゴ
はい、てな訳で場面は一気に飛んで露天温泉でゆっくりと入浴中の僕だったけれど、忍び込んで来たシロノに襲われています。一気に飛び過ぎ? じゃあ、ちょっとだけ経緯を話そうか。
貴族の入浴ってのは色々と面倒臭い。リアスなんて大勢のメイドにお世話されてゆっくり入浴出来る日なんて偶に一人で入れる日が有る位で、そんな日だって何か起きないか脱衣所で控えてるのが居るから気分が落ち着かない。そんな僕にとって開放感のある露天温泉は願っても無い機会だった。
マオ・ニュは少し渋ったけれどレナスが説得してくれて、周りに誰も居ないお風呂を満喫……の筈だったのに。
お風呂に夢中になっていた僕は背後から気配を殺して忍び寄る相手に気が付かず、呼び掛けられて振り向くなり押し倒されそうになっていた!
以上! 説明終了!
「何を拒む? 受け入れろ、ロノス」
「普通は拒むよ!? 未だ結婚した訳じゃないんだからさ!」
有無を言わさずのし掛かって来るシロノの肩を掴んで押し返そうとするけれど、獣化二段階目状態の彼女には力じゃ敵わない。今はギリギリ堪えて居るんだけれど、此処の温泉って微妙に滑り気が有って今にも手が滑りそうだ。……しかも彼女の胸がさっきから当たっているし、凄い弾力を感じて意識を向けてしまう。
「問題無い。私、次期族長になる。つまり私とロノス、夫婦になる。だから、抱く」
「駄目だ、話が通じない! こ、この……あっ」
シロノは僕の肩をガッチリ掴んでいるから時を操って抜け出そうにも抜け出せないし、さっきの戦いで体がガタガタなのに、向こうは平気そうな顔だ。獸人の頑丈さには感心するよ、本当にさ! だけど流されて関係を持つのは色々と不味い。立場的にも周囲の人間関係的にも!
よ、よし! このまま抵抗を続けて向こうがバテるのを待つ耐久戦だ。無理に押しのけても再び来たら意味が無いからね。今の状態の彼女ならそんなに保たない筈。だから押し止める程度にして体力を温存しようとしたんだけれど、彼女の方を見た時、密着していたのを少し押し戻したから胸の先端が見えてさ……思わずビックリした時に両手が内側に滑って胸を掴んでしまう。
うわっ、凄い弾力と重量感……じゃなくてっ!? 再び驚いた拍子に両手を思わず上げてしまう(間抜けな)僕。同じミスを繰り返す事を反省する暇も無く、これを好機と見たシロノに抱きつかれた。
「二回戦、私の勝利。今から、三回戦……」
咄嗟に顔を動かしてキスを避けるけれど首に回した手がガッシリと絡み付き、腹部に膝を当てて下半身の密着を阻むんだけれど温泉の水質が水質だから上手く抑えられない。
あれ? もしかして学園入学前に卒業しちゃう? だ、誰か助け……。
その時、一切の音を立てずにナイフが飛んで来て僕とシロノの顔の間を通り過ぎる。僕には掠りもせず、シロノにだけ頬に僅かな切り傷を作ったナイフはそのまま速度を落とさずに飛んで行き、投げた張本人の手に収まった。
「えっと、一応お聞きしますね? シロノちゃんはロノス君に何をしているのかな?」
「マ、マオ・ニュ……」
五感が優れた獸人のシロノにさえ気取られる事無く僕達の側で座るマオ・ニュは足だけを温泉に付けて軽くバチャバチャ音を立てながら首を傾げる。ニコニコと笑ってはいるんだけれど、絶対にキレてるよ。相変わらず早い上に気配を感じさせない人だなあ。
遠くで僕がシロノに襲われているのを察知して助けてくれたってのは分かるんだけれど、シロノだけに怪我をさせる超精密で超遠距離のナイフの投擲技術。そして自分が投げたナイフを追い越してキャッチする速度。そんな事が可能な人がキレているって思ったら、怒りを向けられていない僕でさえ恐怖を感じたんだ。なら、向けられたシロノならどれだけ怖いんだ?
「ねえ、どうしました? ほら、内容次第では許すかも知れませんよ? ……裸でロノス君を組み伏せようとしているとか、どんな理由なら大丈夫なのか私にはさっぱりですけどね」
「あ……その……」
完全に固まっていて言葉が出ないシロノ。情けないとは口にしないし思わない。だって僕だって今現在威圧されているんだからさ。
マオ・ニュは笑顔のままで口調も穏やか。一見すれば少しお小言で終わりそうだけれど、大事じゃないと終わらないのが彼女だからなぁ。
「はい、タイムオーバー。いえ、私も獸人の本能については理解しているんですよ? 私だって同じく獸人ですし、自分を負かした相手を求めちゃうのは仕方無いですよね? ええ、だから厳しい事は言いません」
温泉から足を出し、そのまま一歩踏み出せばマオ・ニュは水面に立っている。まるで地面の上みたいにゆっくりとした動きでシロノに近付き、肩に優しく触れた。
「だから優しく殺してあげます。本能のままにクヴァイル家の者を襲った罪は命で償わないと」
「マオ・ニュ! ちょっと待ってっ!」
それは紛れもない死刑宣告。僕は止めようと声を上げながらも二人の間の空気の時間を止めて攻撃を防ごうとしたけれど間に合わなかった。僕の魔法が発動した瞬間、既にシロノは天高く蹴り飛ばされていたんだから。
全く見えなかった。人一人を彼処まで高く蹴り飛ばしたのに余波なんて全く存在せず、全くの無風で無音。少し遅れてシロノの体から骨が折れ内臓がやられる音が聞こえて来て、僕はマオ・ニュにこれ以上は止めさせようと手を伸ばしたんだけれどすり抜ける。
「幻? いや、違う。残像だ……」
あまりの速度に僕の脳はマオ・ニュが消えた事を認識出来ていなかった。既に彼女は天高く飛び上がり、蹴り上げられて未だに上昇を続けるシロノさえも起こすと拳を振り上げる。
「ごめんなさい。シロノちゃんの成長を見誤っていたみたいです。一撃で死なせてあげられないなんて。……このまま何もしなければきっとロノス君のお嫁さんになっていましたのに残念です」
聞こえた声は本心から知り合いの子の成長に驚いた上で残念そうに思っている物で、浮かべる顔もそれが口先じゃないと教えてくれる。
でも、彼女はマオ・ニュを殺す気だ。そのまま腕を振り下ろし、今度こそシロノの命を絶つ。
「……あら? 邪魔したら殺せないじゃないですか、ロノス君。長引かせたら苦しむだけですよ? 相手をいたぶるのは悪趣味なのですから。めっ!」
既にシロノの意識が途切れているから魔法を掛けられた。ギリギリ助かったよ。マオ・ニュの腕が振り下ろされ当たる寸前、時を進めて落下速度が上がったシロノは辛うじて死神の鎌から逃れ、腹部に僅かに傷を負っただけ。それでも最初の一撃の痕跡が足跡として深く体に刻まれているし、今度は落下速度を落としてキャッチしたけれど一刻も早く医者の所に行かないと危ない状態だ。
一刻も早く、本来なら僕の得意分野なんだけれど、シロノを殺す事を決定したマオ・ニュから守りながらってのがハードルが高い。正直言って無理なんだけれど、それでもどうにかしないとシロノが死んじゃう。
「男とか女とか無関係で、こんな状況ならやるしかないよ」
「もー! 下手な情けだって同じく駄目ですからね?」
まるで捨て犬を拾ってきた子供相手に困った時みたいな様子でマオ・ニュが告げる。既に落下が始まっているし、着地まで残り数秒。最大限まで加速すれば……こんな事になるのならお祖父様に例の魔法を使うのを遅らせれば良かったよ。今更後の祭りだけれどもさ!
そんな緊迫した状況に突御飛び込んできたのは呆れた様子の声だった。
「……おーい、何やってるんだい。ったく、急に走り出したかと思ったら餓鬼相手に殺気向けて情けないねえ」
「レナス!」
「さっさと医者に連れて行きな。ほら、せめてタオルは巻くんだよ。……彼奴は私が説得するからね」
僕の腰にタオルを巻いたレナスは早く行けと動作で示し、僕は頷くと慌てて駆け出す。背後から途轍もない覇気のぶつかり合いを感じたけれど振り返らずに足を動かした。
「はっ!」
「……どうした?」
あれ? 此処はリュウさんの工房? ああ、そうか。僕はホッと胸をなで下ろす。どうやらトラウマが蘇ったせいで意識が飛んでいたらしい。
「……良かった。本当に良かったよ……」
アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません
-
ポチ
-
レキア
-
夜鶴
-
ネーシャ
-
ハティ
-
レナ
-
パンドラ
-
サマエル
-
シロノ
-
アリア