ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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忘れていた物

 この世の中は不平等だ。生まれ持っての身分や財産、頭の良さに各種才能。それこそ幾ら列挙してもし足りない位にはね。それは王侯貴族制度以外に魔法だのモンスターだの神様などが実在するこの世界でも同じで、ファンタジーだろうが夢がないし、暮らしている僕達からすれば紛れもない現実なんだ。

 

 それは恵まれた側の僕でも感じる事が多くって……。

 

「……ふう。まあ、こんな物かな? リアスは……頑張れ」

 

 明日はいよいよテスト、赤点は勿論として情けない順位になるのは避けたいと最後の追い込みをしていたけれど、明日早朝に起きて勉強する事を考えればそろそろ寝た方が良いだろう。窓から顔を出してリアスの部屋の窓を見てみれば明かりが漏れているし、多分メイド長はギリギリまでやらせる気だろう。あの子、絶対に朝早く起きて勉強する余裕なんて無いんだから。

 

 リアスは本当に朝が弱い。身嗜みを整えるのに時間が掛かるから朝は忙しいのに毎日毎日遅くまで寝ているんだし、メイド長でさえ起こすのに苦労するからね。毛布をはぎ取っても部屋に朝日を入れても体を揺すっても起きない。レナスがキレて拳骨を落としても……いや、あの時は気絶したんだった。

 

 そんなリアスとは反対にアリアさんは睡眠時間はそんなに要らないらしい。短い間寝れば頭がスッキリするとか。

 

 リアスとアリアさん、光と闇。運命なんて自分で作り出す物だってのは物語ではお決まりの言葉で似通ったセリフが幾らでも有るんだろうけれど、神に定められた役目ってのは存在するんだ。

 リュキが自ら切り離した悪心とテュラを封じる為に生み出した存在が光と闇の属性を操る二人であり、闇属性が裏切った事を教訓にして、次に光と闇が必要になった時に裏切った方を始末する役目を持って生まれたのが時属性の僕だ。

 

 光と闇は他の属性に対して絶対的な優位性を持つけれど、時間経過によって朝と夜が繰り返されるみたいに光と闇も時の支配からは逃れられない。故に光と闇の使い手達が”神殺し”なら、それを始末する役目を持って生まれた僕は”神殺し殺し”だ。

 

「……嫌だなあ。絶対にそんな事をしないけれど、そんな役目の為の力ってだけで嫌になるよ」

 

 勉強に使った机の上の整理をしながら呟く。自分で言える位には成績も運動神経も良い上にお金持ちで大貴族の次期当主って恵まれている僕なんだけれど、持ちたくなかった運命に関しては無関係な人が羨ましい。まあ、世の中って不平等って事だよね。

 

「……あれ? これってこんな所に有ったんだ。ちょっとだけなら良いよね?」

 

 問題集の棚に紛れていたのは一冊の本。持ち運びに便利な文庫本サイズで、他の出版元には不可能な高度の製本技術でお馴染みの所の物だ。

 タイトルは『パンダ探偵アンノウン ハシビロコウ帝国の逆襲 中 ~絶望の麻婆春雨~』。漉し餡と粒餡を入れ替えるとかの斬新なトリックで一部に人気の推理小説だ。発想と努力と才能次第で割と何でも有りの魔法の存在が推理小説の人気に火がつかない理由だけれど、このシリーズは別だ。

 

 ……まあ、表紙と中身は別物だけれどね。

 

 

「さてと、これの”中身”は何だっけ? ああ、確か……スパイ物だ」

 

 この小説、表紙と冒頭部分以外は別の小説になっている特別仕様。版元に匿名で発注可能な人気商品だ。実際は僕みたいな年頃の男の子の味方である官能小説なんだけれど、使用人が部屋の掃除をするのが当たり前の貴族だったらそのままで所有するのはちょっと厳しい。貴族に非ずんば人に非ず的な考えのも居るんだろうけれど、大抵の場合は性癖を知られるなんて真っ平御免って事だよ。

 

「まさかフリートがこんな物の情報を持っているだなんて驚きだった。持つべき物は友だね、全く。彼奴の紹介だからって直ぐに買えたし、さては常連だな。……チェルシーには絶対に秘密にしておこう」

 

 僕も隠し本棚とか活用しているけれど何故か中身が入れ替わってる事も有るし、こういった物は助かる。最近、ちょっと刺激が強い体験が多かったし、何とか理性で抑え込んでるんだけれど限界だ。

 

「……数人掛かりで体を洗われたり、裸で抱き付いてキスされたり、下着姿でベッドに潜り込んで来たり、本当によく頑張ったぞ、僕。その上で忙しいから発散するタイミングも困ったしさ」

 

 下着もベッドのシーツも部屋の掃除も毎日行われるし、下手な隠蔽工作じゃ僕が一人で何をしたのか分かっちゃうだろうし、変に気を使われるのを想像したら……うへぇ。

 

「今日はテストの追い込みに集中したいからと夜鶴にも入室は遠慮させているし、絶好の機会なんじゃないか? 普段は警護とかで側にいるからなあ。その上、あんな格好でさ。分体はあからさまに誘惑するし……」

 

 思い出すだけで衝動が込み上げて来る。駄目だ、落ち着け。ここぞって時に失敗して気まずい思いはしたくないし、先ずは……トイレに行ってこよう。

 

「うん、寝る前に軽く発散させて、後は直ぐに寝ようか……うん? 何か忘れている気がするんだけれど……まあ、良いか」

 

 僕は頭の中に引っ掛かる事を無視してトイレに向かう。うーん、小説をあの場所に入れた時に引き出しの奥にも何かを放り込んで忘れていた気がするけれど……。

 

「おっと、その引き出しが開けっ放しだ。トイレから戻ったら確かめてから閉じれば良いや」

 

 まあ、大した事じゃないでしょ、多分さ。忘れるって事はそういう事だ。

 

 

 

 

「……だったんだけどなあ。まさかあんな事を忘れるなんて」

 

 その後、トイレから戻った僕は……ベッドの上に押し倒されていた。

 

 夜鶴の顔は火照り、只でさえ露出の多い服を脱ごうと焦るけれど指先が震えているせいで上手く出来ない。息が荒いんだけれど完全に興奮している。漂って来る甘い匂いが僕の頭をボーッとさせていた。

 

「主、今だけは、今だけはご無礼を御容赦を。私の全身全霊に懸けて主に至福の時間をお捧げしましゅ……す」

 

 あっ、噛んだ。

 

 うーん、しかしどうしてこんな事になったんだろう? 普段のこの子だったらこんな事にはならないんだけれど……。

 

「実は明日の警護任務について相談したい事が有りまして、主の部屋の扉が開いていましたので覗いてみれば居らず、中で待たせて貰おうとした時に引き出しが開いていましたので閉めようとしたら引っ掛かっている物が有って……そろそろ頂きます」

 

「……あっ」

 

 あっ、そうだった。虹色オオミミズのアレ、後で始末しようと放り込んで……しまった。

 

 

 最近溜まりに溜まった物とか、媚薬効果のある匂いとかで流石の僕も……。

 

 結論から言おう。何時もは入る何らかの介入は今回は無かったし、僕も抵抗を諦めて……受け入れた。

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

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