ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい 作:ケツアゴ
そのイベントは”魔女の楽園”では中盤で起きたイベントだった。一度イベント開始フラグが立つとプレイ時間が一定以上経過する前に進めないと駄目だ。失敗の代償はイベントフラグを立つ条件になる好感度が一定以上で王国出身のキャラの退場。但し流石にルクスは別で、彼はイベントには関わらない。
いや、関われないって方が正しいかな? だってこれは王都から離れた土地で起きる事件。まあ、第一王子が関わるのも難しい。
ああ、因みに一定時間以内に特定の所まで進めさえすればダンジョンとセーブ・回復ポイントを行ったり来たり可能だ。例え五百回宿で休憩してもイベント上は全く時間が経過しない。まあ、レベル上げはフラグを立てるまでと其処から先の所でしろって事だ。
現実じゃちょっと休んで経過した時間で手遅れになる事も多いんだけどさ。何かしたら時間は過ぎるし、何かやってたら普通は行動を変えるものだからねえ……。
「”幸福の門”? 何だよ、その胡散臭い話はさ」
「俺様もそう思うぜ。まさかそんな馬鹿みたいな話が俺様の実家の領地にまで広まるとはよ。……どーも隣の隣の領地から伝わって来た話で、実際にその門を潜ったって奴が財宝を持って現れてよ」
テストの翌日、珍しく気分的に疲れた顔のフリートから聞かされた話に僕は内心焦っていた。潜った先では本人が望む世界が待っていて、生き物以外なら持ち帰る事が出来るって都合の良い話。まあ、圧制とかで追い詰められていたりしたら縋りたくもなるし、僕だって興味半分、物は試しにって見に行くかも知れない。
その裏に神獣将が関わってさえ居なければね。いやいや、凄く面倒だ。放置……は不味いよね。
「隣の隣の領地。……ああ、先代王妃の腰巾着だった所だっけ? 凄く評判悪い所」
「ああ、親父も頭を抱えていてな。罰せられるギリギリを保っていたが近々、っと、此処から先は他国には話せねえよ。悪いな」
まあ、そうなるよね。フリートは喋り過ぎたって感じで口を塞ぐ。僕と彼は友達だけれど所属している国は別々だ。僕もそれ以上は聞こうとしない。だって叔母上様が王妃だろうと国の恥になる事を漏らすのは流石にね。
「それにしても驚いた」
「あっ? まさか俺がマトモな事を言っているのが意外だって言いたいんじゃねぇだろうな? ……おい、何を目を逸らしてやがる。俺様の目をちゃんと見て答えろ」
「ランチ何にしようか。今日は食堂で食べる予定なんだ」
「……ったく、お前はよ。まあ、んな訳で親父からちょっと調べて来いって頼まれてな。お前の所にも広まったら情報くれや」
「そうだね。互いに情報共有しよう。僕達の領地は離れて居るけれど、どうなるかは分からないからね」
「まあ、先に広まるとなるとお前の所より間にあるルメス家の領地だろうけれど」
「……あー、だよね。アリアさんの所って貧乏だから」
その貧乏の理由が僕の家の領地の影響だから言い辛いんだけれど、アリアさんの所であっても僕は大っぴらに関われない。国が違うってのはそんな物だ。
ゲームでは偶々領地に同行した時に情報が入って来て、仕方無く巻き込まれたんだけれど、僕はどうすべきか。ルメス家みたいに小さな家なら兎も角、クヴァイル家が関わるのは大公家が許してくれないだろうし。
……ゲームではイベント攻略に失敗すれば問題が起こった家のキャラは退場する。領地で対応に追われるからだけれど、そんな程度で済むとは限らない。最悪、フリートは死ぬ。僕は友人の為に何かしたいけれど、何をすれば良いんだろうか……。
「さて、マジでどうすべきかねぇ。俺様でも手に余るぜ」
数少ないダチのロノスと別れた後、俺様はぼやきながら廊下を歩いていた。親父から送られてきた資料じゃ胡散臭い話の割には結構面倒な事になっているらしい。
幸福の門とやらの話が最初に広まった領地じゃ農民はクワを放り出し、商人は店を開けずに上の空。
お先真っ暗破滅へ一直線、一族郎党路頭に迷う感じだってのに何故か金だけは持っている。その出所こそが例の胡散臭い幸福の門だってんだから面倒だ。
「普通仕事を投げ出すか? 一人二人なら兎も角よ」
マトモに働いているのは幸福の門を信じずに行かなかった連中で、行ったって連中は揃いも揃って働く事を放棄してるんだが、確かに働かなくても金が手に入るのなら怠惰になるだろうよ。
でもよ、誰も彼もってのは変だろ。金が入ろうが働く奴は働くし、何時までもそんな幸福が続くなんて楽観的な連中ばかりってのもな。
「こりゃ相当面倒な奴が背後に居るな。何か企んで居るのなら力任せにどうにかするしかないんだが、俺と領地の騎士でどうにかなるか分からねえ。……もうちっと手助けが必要か」
何かがあるのは間違い無いし、此処までの規模の真似をしてるのなら並の相手じゃねえ。間違い無く相当の魔法の使い手だが、どんな属性のどれだけの使い手なら可能だ?
土なら金だのを作り出せるだろうし、後は洗脳の類。なら下手に数を揃えても邪魔になる。少数精鋭で行くしかない。
……こんな時こそロノスが居てくれたら心強いが、彼奴は隣国の有力貴族。アース王国の大公家がクヴァイル家に助力を求めるってのは後々火種になるだろうし、俺が何とかするしかねえか。
「先ずは騎士の選抜に連携訓練やら能力の把握。洗脳が直ぐに解けたら良いが、そうじゃない場合は……」
貴族や王族ってのは背負う物が多い。領地内部の役所仕事やら軍務やらの最終的な責任を背負うからな。今回俺に任せたのは将来の為なんだろうが、ちょっと荷が重いな。
「ダンジョンに行くか。やる事は多いが、少しでも力を付けねえと。チェルシーは……連れて行かなくて良いか。これ以上差が開いたら一生尻に敷かれる」
どんな理屈かは知らねえが、モンスターを倒してりゃ筋トレの効果が出るのとは別に強くなる。雑魚を倒しても意味が無いってのは厄介だがな。
俺も次期当主としての教育の一部としてお供と一緒に戦ったりしたんだが、安全優先な上に人数が多いからかそんなに強くなったって感じたのは十回そこそこ。婚約者のチェルシーなんかロノス達の修行に巻き込まれて二十回は強くなったって感覚を経験してるのにな。……ぶっちゃけ彼奴の方が俺より強い。誘うのはちょいと危ないな。将来的な意味で。
効率良くモンスターを倒すならダンジョンだが、この辺でダンジョン、それも俺が強くなる為に行くのは学園ダンジョンの中でも中級レベルの彼処か。
「……うん。彼奴は誘っても絶対に来てくれないな。一年生は入る許可が出るのはずっと先だし、出るモンスターがモンスターだし……はあ」
力が足りないなら力を付けるべく鍛えるのは当然だ。だが、俺様にだって男の意地ってもんが有る。自信無いから一緒に来てくれって親友だろうが婚約者だろうが頼めねえよ。
でも、溜め息吐いて肩を落とす程度は良いよな? ……まあ、誰も見ていないから良いだろ。
「さてと、行きますか。学園ダンジョンが一つ、アンデット系モンスターが蠢く”レイスハウス”にな」
こんな風に格好付けている俺様だが、入っちゃ駄目なダンジョンに入るんだから人目を忍んでコソコソだ。情けねえなあ……。
「……此処か。絶対チェルシーは一緒に来てくれないだろうなあ。規則に五月蠅いし、何よりも……」
俺様が木の陰から眺めるのは建物の周辺だけ空が四六時中暗雲に覆われたボロボロの屋敷。如何にも何か出そうって感じで、窓を見れば誰かが俺様を眺めてる気さえする。
「さて、行くか」
近くに誰かが来る前に急いで中に入る。途端にカビと埃の濃密な臭いが漂って来た。
「やっべえ。俺様も速攻帰りたい」
「そうですね。帰るのをお勧めします」
「っ!?」
背後からの声に思わず振り返る。俺様視界には誰の姿も入っていなかった……。
「おいおい、マジで出たのか? 本物が……」
アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません
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