ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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新喜劇は好き?


怪奇! 足元から聞こえた声

 アンデッド系モンスターは名前の通りに幽霊やらゾンビやらお化けっぽいのが特徴だ。学者の中にはモンスターを構成し、倒した奴を強くする特殊なエネルギーが人の持つ恐怖心と組み合わさった結果誕生したって主張するのも居るな。

 

 虫系モンスター同様に苦手な奴も多い。チェルシーの奴もそんな感じだな。ロノスの妹は蠅を素手で叩き潰すし怪談話を聞いてゲラゲラ笑うが……彼奴、貴族令嬢だよな? まあ、要するにそれっぽいだけで本当にお化けって訳じゃない。例えば青白い靄に包まれた人形やら積み木とかの玩具の集まりの”キラートイズ”だが、魂宿った玩具がそう何個も存在するかよ、普通。

 

「今、声がしたよな……。それも俺の独り言に的確な内容で……」

 

 そんなんだから喋れる連中も実際には特定の言葉を繰り返すか笑うだけで会話可能な知識は持っていない筈だ。上級アンデットなら知能が高くて会話だって可能らしいが、少なくてもこんなダンジョンには出ない。

 

 

 なら、さっきの声は一体何なんだ?

 

 カビと埃の臭いが漂い、踏む度にギシギシと軋む音が鳴る床。梅雨の時季だってのに湿気は多いが妙に寒気のする室温。如何にも出ますって感じの雰囲気がお化けが苦手じゃない俺様にすら嫌な予感を覚えさせた。

 

「あの~、聞いています? 今すぐ出て行きましょう」

 

 まただ! また声がした。背後を見ても誰も居ないのに声が聞こえて来る。おいおい、お化けみたいなモンスターに誘われて本物までご登場ってか? ……ふざけんな!

 

「俺様は強くならなくちゃいけないんだ。誰だか知らねえが邪魔すんな!」

 

「いや、誰だか知らないって。毎日会ってますよね!?」

 

「毎日……」

 

 そう言われたら知っている気がする声だ。だが声のした方向には誰の姿もない。おいおい、まさか生き霊って奴か? 俺様の知り合いが体から魂が抜け出して……。

 

 確かそれって早死にするって現象だよな? ったく、誰だか分からねえが手間掛けさせやがって。……気のせいか? どうも声は下の方から聞こえた気が……。

 

 

「おいおい、驚かしてくれるなよ……」

 

 半透明の知り合いが床を通り抜けて俺を見上げている姿を想像して身震いする。俺様は背が高いから普通にしてりゃ足下近くの地面が視界に入らないんだが、そんな近くに生き霊が潜んでいるのに気が付かないんじゃ別の相手なら危険だな。

 

 さて、幽霊とご対面と行こうじゃねえの。俺様は覚悟を決めて下を向く。

 

 

 

 

 担任教師のマナフ・アカーと目が合った

 

「お前かよっ!?」

 

「こらー! 先生に向かってお前とは何ですか、お前とは!」

 

「いや、何でアンタが此処に居るんだ……はあ」

 

 ビビって……いや、俺様はお化け程度でビビってねえが、まさか担任とはな。ハーフエルフのせいで見た目が十歳位な上に背が低めなせいで見えなかったのか。

 

「何で此処にってのは先生の台詞ですよ。見回りの当番だから来てみれば君が入って行くのが見えて驚きました。レイスハウスは一年生立ち入り禁止です! 実力があってもなくても許可出来ませんからね!」

 

 ……駄目だ。どう見ても背伸びしてる餓鬼にしか見えねえな、この先生確か俺様の記憶じゃ四十代妻子持ちだってのに、どう見ても十歳の子供だ。

 

「そもそも背後から声を掛けたのに下を見るまで気が付かないだなんて。声は聞こえど姿は見えず。見下げてごらんよ、下に居る。はっはっは、面白い面白い。……ちっ!」

 

 うおっ!? 急に表情を変えたと思ったら舌打ちの上に八つ当たりをし始めたよ。頼りない感じなのにおっかねえ所も有るんだな。

 

「悪かった。俺様が悪かったからキレるなや。壁を蹴ってんじゃねえよ。ボロボロなんだから穴が開いてるだろうが。……なあ、今日だけは見逃して貰えねえか? 俺様はさっさと強くならなくちゃ駄目なんだ。近々面倒な事が控えててよ」

 

「駄目です。フリート君の強さは先生だって認めていますし、このダンジョンだって相当無理をしなければ大丈夫でしょう。ですが、君だけを許可するのは道理が通らず、君が許されたのだからと忍び込んだ子が取り返しの付かない事になる可能性もある。先生は生徒全員を守り導く責務を背負っているんです。だから君の散策は許可出来ません」

 

「……そうか」

 

 最後に俺様は真っ直ぐに目を見て頼んだが、相手も同じく目を真っ直ぐ見て告げて来る。内容が内容だ、無視は出来ねえよな。

 この先生が大公家の権力に怯むのなら楽だったんだが、見た目と違ってしっかりしてやがる。

 

 こりゃ駄目だ。信念持ってやってる奴ってのはテコでも引き下がらないからな。

 

「アンタを可愛いとか言って狙ってる連中ばかりは何を考えてるんだろうな。表面しか見てねえよ」

 

「……僕も困っているんですよね。妻も僕もハーフエルフですけれど娘はヒューマンの血が濃く出たのか背が高くって、生徒達と大きな違いは無くって、そんな子達に狙われるのはちょっと……」

 

「えっと、元気出せよ」

 

 こりゃ相当参ってるな。まあ、端から見て近寄りたくねえし当の本人ならな。

 心底疲れた様子で少しやつれて見えた相手に俺様は同情するしかなかった。関わりたくないから何もしないけれどな!

 

「そうですね。娘が十歳の時には背を追い越されて、”パパはどうして小さいの?”と純粋な表情で訊かれた時に比べれば大丈夫ですから……」

 

 

 こりゃ言ってはならぬ事を言っちまったって感じだな。……さて、別の所に行くか。効率は悪いが此処で駄々を捏ねてもこの真面目な先公は折れねえ。

 

「じゃあ、俺はこの辺で……」

 

「駄目ですよ。ちょっと待って下さい」

 

時間を無駄にしない為に入り口の扉に手を掛けた時、服の裾を掴まれる。振り返って顔を見れば少し迷った顔だった。

 

 

「勝手に入ったのですから罰則が有りますよ。反省文と……先生の見回りに同行して貰いますから」

 

「……良いのか?」

 

 実質的に見張り付きでの探索を許可したのと同じだ。学年主任でも、いや、学年主任って立場だから尚更そんな事は責任を重くするだろうに。

 信念とか家族とか立場とか守る物が多いんじゃねえのか?

 

 

「言った筈ですよ。先生の役目は生徒を導く事だって。迷い焦っている生徒を見捨てるという選択肢は先生には在りません。じゃあ、行きましょう」

 

 こりゃ俺の目はマジで節穴だったわ。この先生、頼れる奴だ。

 俺は張り切って前を進む先生の背中を見る。小さな背中が大きく見えた。

 

 

 

 

 

 

 

「今日中に何度かレベルが上がったら良いですね。経験値を稼ぎましょう!」

 

「レベル? 経験値? 何だ、そりゃ?」

 

「ああ、有名な話じゃなかったですね。経験値とはモンスターを倒してたら貰える強くなる為のエネルギーで、レベルは強くなった回数の単位ですよ。とある女神様が口にしまして……」

 

「ふーん。先生は物知りなんだな」

 

 今までそんな言葉を聞いた事もなかったな。俺が感心していると前方から呻き声と共に骨が露出したボロボロの死体がフラフラしながら向かって来ていた。

 一見すれば本当に死体が動いてるみたいだがデザインが全部同じだ。手抜きだな、手抜き。

 

「”ゾンビ”ですね。本来この時期の一年生には難しい相手ですが、君なら倒せるでしょう。このダンジョンでは最弱ですし、フリート君一人で倒して下さい」

 

「上等! さっさと倒して先に進ませて貰うとするか」

 

「油断は駄目ですよ。侮って臭い液体を吐かれても知りませんからね?」

 

俺様は魔法の詠唱を始め、腰回りに炎の輪っかを作り出す。その光に誘われるみたいにゾンビ達は腕を振り上げながら向かって来た。

 

 

 

 

 

 

「矢張り彼は強いですね。近接も魔法も申し分ない。先生が信仰する尊き女神様も彼の事は気に入りそうです。その内引き合わせる機会が有れば良いのですが。彼もあの御方に出会えば威光を感じ取れるでしょうしね。さて、本日も信仰を捧げましょうか」

 

 

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

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