ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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女神の思惑

 お兄ちゃんがテュラの手先に襲われたって聞いた時、込み上げて来たのは怒り、そして恐怖だったの。

 この世界に転生した時、私は大好きな人が居るけれど何処か孤独だった。リアスの部分は周りに沢山人が居るって言っているのに、前世の部分が違うと告げる。

 

 だってリアスを知っている人は多いけれど、前世の私を知っている人は一人も居ないんだから。

 だからお兄ちゃんがお兄ちゃんでもあったのは嬉しかった。

 

「……そんな、まさか」

 

 目の前に現れた女神テュラ。隙を見つければマウントポジションの状態で顔の形が変わるまで殴り続ける予定だったし、実際に会ってみたら更に胸を強制的に垂れるまで引っ張ってやろうと思ったのに、何故かそんな気が起きない。偉そうにしていて見当違いな事を言っているのにどうして敵だと思えないの?

 

 不思議で何処か懐かしい感覚。この感覚を私は知っている。そう、あれはお兄ちゃんと再会した時と同じで……。

 

 

「どうしてその名前を知っているの? だって、その名前は前世の……」

 

 テュラの口から出たお兄ちゃん以外は知らない筈の私の前世の名前。何でテュラが知っているのか私には分からない。読心術? それとも記憶を読まれた? まさか……いや、そんな事は……。

 

 最後に浮かんだ考えを否定しても頭の中がグルグル回って混乱する。でも、そんな状態なのに少しも怖いって感じなくて、どうして?

 

「おいで……」

 

 固まって動かない私に向かい、テュラは両手を伸ばして優しく呟く。抱き締める気だろうけれど、本当なら敵だから応じる必要もない相手。でも、声も見た目も別物なのにどうしてかあの人の……お姉ちゃんの姿が重なっていた。

 

「ほら、良い子だから。久々にお姉ちゃんに甘えて良いのよ」

 

「あっ……」

 

 気が付いた時、私はテュラに抱き付いていた。優しく抱き締めて貰って、頭を撫でてくれて、その全てがお姉ちゃんを思い出させる。前世でお姉ちゃんは私をこうやって抱き締めて撫でてくれていた。

 

「お姉ちゃん…なの……?」

 

「うん、そうだよ。久し振り……本当に久し振りね……」

 

「あぁ、ああああああああああっ!」

 

 テュラは優しい声で頷く。本当だったら倒す筈だった相手。でも、その相手はお兄ちゃんと同じ位に大切で絶対に会いたかった相手で、私は大きな声で泣いていた。

 こんな大きな声で泣いたのは何時以来だろう? 私はずっと泣き続けて、お姉ちゃんは前世と変わらない手付きで私を撫で続けてくれたわ。

 

 ああ、凄く嬉しい。だって家族三人が生まれ変わっても再会出来たのだもの……。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・何だ、これは」

 

 この地に封印され幾星霜経っただろうか? 人の身では途方もない時間も神からすれば欠伸の一つでもすれば過ぎ去る程度の感覚だ。だから私は人への憎悪を決して失わず、何時か復活して目的を果たす瞬間を待っていた。外に干渉するには力の消耗が激しいが不可能ではない。故に使えそうな駒を探そうとしていた時、我は思い出したのだ。

 

 この世界とは別の世界で幼き弟妹の世話を焼く人の子の娘としての人生を。最期には身を呈して二人を守ろうとした理由は愛。心の中が温かくなり、知らぬ内に涙が流れる。

 

 ああ、納得した。人の子が決して敵わぬ相手であろうと立ち向かう理由が分からなかったが、これならば当然だろう。今までの我が持たなかった心地好い物。

 

「だが、それだけだ。人は滅ぼす。神である我はそう決めた」

 

 切っ掛けは戦争が続くだの信仰や権威が欲でねじ曲がって行くからだのだった気がするが今ではどうでも良い。我が滅ぼすと決めたのだから滅ぼすだけだ。

 

 人としての記憶は確かに蘇ったが、前世の我がテュラの肉体と記憶を持っているのではなく、テュラが前世の記憶を持っているのだ。我の神の精神に大きな影響は無い。

 

 だが、だがな・・・・・・。

 

「待っていて。二人の事は今度こそお姉ちゃんが守るから。その為なら何を犠牲にしても構わない」

 

 この胸に宿った大切な物だけは、愛だけは手放さない。神の力によって二人もこの世界に転生した事を知り、守れなかった事への罪悪感と絶望、転生さきでも会える事への喜びが同時に押し寄せる。

 この世界を手に入れ、二人を今度こそ守り切る。だって我は・・・・・・私はお姉ちゃんだから。

 

 

「……使うべき駒はあの二人か。物語通りに進めれば問題無い。後は我を倒せる可能性を持つ者を確実に始末すれば」

 

 前世の我が持っていた知識は役に立つ。何せ散々やり込んだ物語。神の頭脳を使えば詳細な所まで思い出せ忘れない。

 

「いや、別に構わんか。別に多少変わっても。寧ろ都合が良い方向に変えるべきだ。悪役であったクヴァイル兄妹、兄の方は要らん。どうせ二人も滅ぼすべき存在には変わりないのだ。ならば操りやすい様に……」

 

 前世の私の価値観ならば思い付いても実行しないが生憎我の人格は我の物だ。人の子の記憶や経験が神の人格に影響を及ぼす筈も無い。

 

 封印された状態であるが故に手出し出来る回数にも方法にも限度が有る。ならば先ず何をすれば都合良く進められるのか。駒を動かしやすい駒に変える事が優先だ。

 

 光属性を持って生まれた悪役令嬢であるリアス・クヴァイル。母親として慕っていた相手を失い、その不安を兄に当たっていた小娘だが、同時に唯一兄を信頼し依存していた。その兄を失い、心の穴につけ込んでやろう。

 

 ……まさかそのリアスが会いたかった守るべき存在だったとはな。

 

 

「お姉ちゃん! ずっと…ずっと会いたかった……」

 

「うん、うん、お姉ちゃんもよ。ずっと二人に会いたかった。だから貴女にだけでも会えて嬉しいわ。お姉ちゃん、女神になっちゃったけれど二人のお姉ちゃんには変わらないからね」

 

「……うん」

 

 これは奇跡と呼ぶべきだろうな。利用しようと接触した相手が探していた妹だったなんて。……駄目だ、この子に関わると前世の私が強く出る。二人を守るにはそれで良いのだが、どうも釈然としないな。何故か最もいけ好かない女が関わっている気がしてならぬのだ。

 

 ……しかし、こうなるとロノス・クヴァイルをどうやって消すべきか。妹は原作のリアスとは違う。もし兄妹仲が良好であれば悲しむだろう。

 

「本当に会えて良かった。後はあの子を……お兄ちゃんを一緒に探そう。お姉ちゃんには分かるの。あの子もこの世界に転生して来るって。お姉ちゃんは動けないからクヴァイル家の力でどうにか探してあげて。私達は三人兄妹だから一緒じゃないと」

 

「……え? お兄ちゃんなら既に会っているわよ?」

 

「……え?」

 

 我の言葉に不思議そうな顔をする妹に嫌な予感が過ぎる。いや、そんな筈がない。膨大な人数の中、ピンポイントで物語の重要人物が転生先だなど。

 

「いや、お兄ちゃんは今もお兄ちゃんなのよ。私がリアスに転生したのと同じでお兄ちゃんはロノスに転生したの」

 

「そん…な……」

 

 嬉しそうに語る妹ととは真逆に我の心臓が高鳴る。だってそうだ。我は誰を殺そうとした? リアスを都合良く操る為にロノスを殺そうと……弟を殺そうとしたのか?

 

「お姉ちゃん? 一体どうしたの? あっ! もしかしてお兄ちゃんを襲ったのを気にしてる? 大丈夫。お姉ちゃんだって分かったし、謝れば許してくれるわよ」

 

「そう…ね……」

 

 世界が歪むのを感じ取る。今回の接触はこれで終わりか。次に会えるのはうん、うん、お姉ちゃん何時になるかは分からない。だが、我がすべき事は分かっている。

 

「また会いに来るわ。その時は三人揃って……」

 

 ずっと抱き締めていたいけれど無理だ。でも、何時か必ず三人で……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、二人を発見出来たのだ。これで復活後に手を拱く事も無い。二人以外の人間は滅ぼそう」

 

 

 

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

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